【Destination】

夕凪志織

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【Destination】プロローグ

第1話 奇跡の星

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「太陽系アマノガワ銀河」

それは現在より138億年前、宇宙誕生から数億年という、途方もない時間をかけて形成された太陽系が属する銀河、「銀河系」とも呼ばれている。


銀河とは数百から数千個の恒星やコンパクト星、ガス状の星間物質や宇宙塵、そして正体不明の暗黒物質(ダークマター)などが、重力によって拘束された巨大な天体。


銀河は無数の星の集まりであるのに対し、宇宙は無数の銀河の集まり。すなわち宇宙は銀河を包括するものであり、銀河は宇宙の一部。


宇宙を構成する要素として、まず無数の星々がある。星々の集まりは「銀河」を形成し、銀河が数多く集まったものを「銀河団」と呼ぶ。


「アマノガワ銀河」

その名の由来は、「ある星」から夜空を観測すると、星群の一部が川のように輝いて見える姿からきている。


アマノガワ銀河は、小惑星や彗星といった恒星同士のぶつかり合い「天体衝突」が絶えず起こる危険地帯から遠く離れ、生命の維持に絶対不可欠な化学元素も存在、神が創造したとされる領域。


そこに、ほかの惑星より、ひときわ青く美しい輝きを放つ「ティエラ」という星があった。


ティエラの起源は、アマノガワ銀河に太陽が誕生した46億年前にまでさかのぼる。


銀河の中心部で漂っていた星間雲(水素ガスの塊)が生き物であるかのように、自らの重力で回転しながら収縮。


周りの微惑星を取り込みながら、次第に膨れあがり、中心の塊が大きな熱と圧力をうけ、集まった水素ガスが発火、まばゆい輝きを放ち始める。

こうして、光り輝く生命の源「太陽」が誕生。暗黒の世界だった宇宙に光と温もりをもたらした。

表面温度は6000℃、鉄が溶ける1500℃の4倍という超高温。


さらに表面から約2000km上空には「灼熱層」と呼ばれる大気の層があり、そこは表面温度を遥かに超える100万℃。表面から離れた灼熱層の温度が、これほど高くなる理由はいまだ解明されていない。


太陽は水素が全体の約75%、残りの約25%はヘリウムガスが占める。

中心部では水素がヘリウムに変わる核融合反応が常に起き、高温と光エネルギーを生みだしている。中心部はもっとも温度が高く1600万℃。


その後、太陽に取り込まれずに残ったガスや塵が結びつき、大きくなって直径数kmの微惑星を形成。微惑星は互いに衝突と合体を繰り返しながら巨大化していった。


やがて直径1000kmを超える原始惑星に成長、その結果、生まれたのが「ティエラ」である。


内部は、地殻、マントル、外核、内核という4つの層から成り立つ。地殻はティエラの表面を覆う、もっとも薄い層、マントルは地殻の下に位置し、星の体積の大部分を占めている。


また、ティエラは自転と公転を行い、これによって昼夜や季節の変化が生じる。自転は自身の軸を中心に1日(24時間)で1周する動き、公転は星が太陽の周りを1年(約365日)で1周する動きのこと。


誕生したばかりのティエラは、現在の姿とは大きく異なり、生物が生きていける環境ではなかった。大地は存在せず、表面は深さ数百kmにもおよぶ、マグマの海が果てしなく広がるだけの世界。


そこに巨大天体が衝突、マグマは水蒸気となって大気中に拡散。時間の経過とともに冷めていったマグマの海は徐々に固まりだす。


同時に気温も下がり、大気中に存在していた大量の水蒸気が大雨に変わって降り注ぎ、地表は冷され硬い岩石となり、雨がたまって海ができあがった。そして、海中で出現したある植物がティエラの環境を大きく変化させていく。


現在から24億4000万年前「シアノバクテリア」という微生物(細菌の一種)が海のなかで誕生。

ほとんど無酸素状態だったティエラは、シアノバクテリアが行う光合成により、大気中の酸素濃度が増加。やがてオゾン層を作りだし、太陽から降り注ぐ有害線(紫外線)を遮断。


だが、宇宙には紫外線以外にも、生物にとって有害なものが存在する。

それは宇宙空間を飛び交う、高エネルギーの放射線(宇宙線)。主成分は陽子で、ほかにもアルファ粒子、リチウム、ベリリウム、ホウ素、鉄などの原子核が含まれ、これは常時ティエラに飛来している。

放射線をじかに浴びると、体を作るタンパク質が破壊され、ほとんどの生物は息絶えてしまう。


この大きな問題を解決したのはティエラ自身だった。それは、まるで我が子を守る母親のよう。


この星の中心部には、おもに鉄でできた「核」という部分(内核)がある。その周りを覆う、溶けて液体になった鉄の部分(外核)が動くことで、電流が流れ磁場が発生。このため、ティエラは星全体が大きな磁石となっている。


方位磁石が北極をS極、南極はN極と示すことからも明らかで、この巨大な磁石が作り出す「磁場」が、宇宙線や太陽風を避ける盾の役割を果たし、生命誕生への糸口を掴む。



銀河系に数多くある星のひとつにすぎないティエラが、奇跡の星と呼ばれる由縁は、オゾン層と強力な磁場だけではなく、ほかの惑星との位置関係にもある。


太陽とティエラの距離は推定1億5000万Km。この距離のおかげで、星の温度は生命にとって理想的なものに維持されている。


円軌道もほぼ完璧で、今ある軌道から5%太陽寄りだったならば、液体は蒸発し灼熱の星に、20%離れていれば、氷で埋め尽くされた極寒の星となっていた。


太陽のみならず、月との距離(約38万Km)も絶妙で、その潮汐力はティエラの自転スピードを遅くする作用をもつ。


月との距離がわずかでも離れていれば、1日8時間という猛烈なスピードで回転、地表と海は大荒れの状態となり、万にひとつの確率で生命が誕生できたとしても、その進化は望めず、海の満潮、干潮以前に「命の惑星」ではなかっただろう。


ティエラの最終的な姿、それは表面を約71%の水で覆い、残り29%が陸地、大気は窒素と酸素を主成分とし、強力な磁場のベールによって生命を守る「母なる星」。




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