2 / 11
それは前触れもなく突然に
しおりを挟む
キーン…コーン…カーン…コーン……。
午後の授業の終わりを知らせる鐘が鳴った。
(あー…眠かった…。)
教師の楽しくもない雑談が途中で鐘に遮られチラホラと笑いが起こる中、自分はさっさと帰る支度を進める。
「また次の機会にこの話をするとしよっか、忘れずにノート提出しておけー。
クラス委員は集めてチェックしたら俺の机によろしくな。」
教師は担任と入れ替わりで教室を出ていく。
担任は明日の必要事項を話し解散。挨拶を済ませ昇降口に向かおうと鞄を持って行こうとすると、
「ま、待って…白澤さん!」
「ん、何か用?」
「えっ、あ…ノート提出してください…。」
「机の上に置いたから勝手に持っていってくれない?じゃ。」
「まだっ―」
「まだ何か?」
「あのこ…これっ、良かったら食べて…。」
可愛くラッピングされた袋に入っているクッキーを差し出された。
いや、はいって渡されても正直困る。
「貰っとく、ありがと。」
とりあえず貰えるなら貰っておこう主義なので有り難く頂く。
クッキーの入った袋をくわえ、昇降口へ急ぐ。後ろで「〇〇が倒れたっ。」とか何とか騒いでいたけど自分には関係ないよね。
靴を履き替え表門に着くと晃兄さんが待っていてくれた。
「糸、お疲れ。
冬二は先に帰らせて悠斗は打ち合わせで帰りが遅くなるってさ。スーパーで買い物するだろ?手伝うよ。」
然り気無く鞄を持って歩き出し、その後ろを着いていく。
(さっき貰ったクッキーを食べながら行こ。)
「アキ兄、これ食べる?」
「クッキーか、それどうしたんだ?」
「クラスの子に貰った。」
「まさか男か…?」
「女子だよ、女子。帰り際に貰った。」
般若になったアキ兄に否定しつつクッキーを口にいれてあげる。
アキ兄はこう見えて甘い物好き、甘い物に目がない。結局一つ食べた後アキ兄に全部あげてしまった。
スーパーで必要な食材を買ってお会計を済ませアキ兄は2つ、自分は1つ袋を持って来た道を並んで歩く。
「学校はどうだったんだ糸?」
「まぁまぁ…かな、可もなく不可もなくってとこ。」
「そうか。
嫌な事があったら俺に話せよ、そいつをぶん殴ってくるから安心しろ。」
「アハハッ、アキ兄がぶん殴ってどうすんのさっ。やられたら10倍返しでボコボコにするから安心してよ。」
アキ兄は優しい。
勿論、冬兄も悠兄も優しいけどそれとは違う。些細な事に気づいても自分が相談するまでなにも言わずに傍で待っていてくれる優しさ。
「アキ兄…ありがとう。」
「ん、どういたしまして。
帰ったらハンバーグ作るから手伝ってくれ。」
「りょーかい、玉ねぎは切ってあげ…る?」
今視界がグラッと揺れた気がした。
アキ兄はこっちを見て心配そうに聞く。
「糸…?大丈夫か??」
「よく分かんない…。ーーえ、何…あれ?」
アキ兄の後ろを指差す。
さっきまで誰も居なかったはず。
なのにそれはこっちを見ていた。
『―ミツケタ…サシダセ、ムトゥヤージャハワレノモノ……』
それは一歩ずつ向かってきた。
先に我に返った晃は糸の手を取り、を今来た道へと引き返す。
「糸走れっ!!」
「っ!!」
アキ兄の呼ぶ声に気づき、足がもつれそうになりながらもその手に掴まって必死で走った。
そんな自分を嘲笑うようにそれは自由を奪ってきた。
身体が地面に崩れる。
(体が動かないっ)
それは止まることなく近づいてくる。
「糸っ。
この野郎っ!ふざけた真似しやがって!!」
晃がそれに立ち向かう姿がぼんやり見える。
(駄目…だ。力が……抜け…て―)
ここで意識が途切れた。
午後の授業の終わりを知らせる鐘が鳴った。
(あー…眠かった…。)
教師の楽しくもない雑談が途中で鐘に遮られチラホラと笑いが起こる中、自分はさっさと帰る支度を進める。
「また次の機会にこの話をするとしよっか、忘れずにノート提出しておけー。
クラス委員は集めてチェックしたら俺の机によろしくな。」
教師は担任と入れ替わりで教室を出ていく。
担任は明日の必要事項を話し解散。挨拶を済ませ昇降口に向かおうと鞄を持って行こうとすると、
「ま、待って…白澤さん!」
「ん、何か用?」
「えっ、あ…ノート提出してください…。」
「机の上に置いたから勝手に持っていってくれない?じゃ。」
「まだっ―」
「まだ何か?」
「あのこ…これっ、良かったら食べて…。」
可愛くラッピングされた袋に入っているクッキーを差し出された。
いや、はいって渡されても正直困る。
「貰っとく、ありがと。」
とりあえず貰えるなら貰っておこう主義なので有り難く頂く。
クッキーの入った袋をくわえ、昇降口へ急ぐ。後ろで「〇〇が倒れたっ。」とか何とか騒いでいたけど自分には関係ないよね。
靴を履き替え表門に着くと晃兄さんが待っていてくれた。
「糸、お疲れ。
冬二は先に帰らせて悠斗は打ち合わせで帰りが遅くなるってさ。スーパーで買い物するだろ?手伝うよ。」
然り気無く鞄を持って歩き出し、その後ろを着いていく。
(さっき貰ったクッキーを食べながら行こ。)
「アキ兄、これ食べる?」
「クッキーか、それどうしたんだ?」
「クラスの子に貰った。」
「まさか男か…?」
「女子だよ、女子。帰り際に貰った。」
般若になったアキ兄に否定しつつクッキーを口にいれてあげる。
アキ兄はこう見えて甘い物好き、甘い物に目がない。結局一つ食べた後アキ兄に全部あげてしまった。
スーパーで必要な食材を買ってお会計を済ませアキ兄は2つ、自分は1つ袋を持って来た道を並んで歩く。
「学校はどうだったんだ糸?」
「まぁまぁ…かな、可もなく不可もなくってとこ。」
「そうか。
嫌な事があったら俺に話せよ、そいつをぶん殴ってくるから安心しろ。」
「アハハッ、アキ兄がぶん殴ってどうすんのさっ。やられたら10倍返しでボコボコにするから安心してよ。」
アキ兄は優しい。
勿論、冬兄も悠兄も優しいけどそれとは違う。些細な事に気づいても自分が相談するまでなにも言わずに傍で待っていてくれる優しさ。
「アキ兄…ありがとう。」
「ん、どういたしまして。
帰ったらハンバーグ作るから手伝ってくれ。」
「りょーかい、玉ねぎは切ってあげ…る?」
今視界がグラッと揺れた気がした。
アキ兄はこっちを見て心配そうに聞く。
「糸…?大丈夫か??」
「よく分かんない…。ーーえ、何…あれ?」
アキ兄の後ろを指差す。
さっきまで誰も居なかったはず。
なのにそれはこっちを見ていた。
『―ミツケタ…サシダセ、ムトゥヤージャハワレノモノ……』
それは一歩ずつ向かってきた。
先に我に返った晃は糸の手を取り、を今来た道へと引き返す。
「糸走れっ!!」
「っ!!」
アキ兄の呼ぶ声に気づき、足がもつれそうになりながらもその手に掴まって必死で走った。
そんな自分を嘲笑うようにそれは自由を奪ってきた。
身体が地面に崩れる。
(体が動かないっ)
それは止まることなく近づいてくる。
「糸っ。
この野郎っ!ふざけた真似しやがって!!」
晃がそれに立ち向かう姿がぼんやり見える。
(駄目…だ。力が……抜け…て―)
ここで意識が途切れた。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
甘々に
緋燭
恋愛
初めてなので優しく、時に意地悪されながらゆっくり愛されます。
ハードでアブノーマルだと思います、。
子宮貫通等、リアルでは有り得ない部分も含まれているので、閲覧される場合は自己責任でお願いします。
苦手な方はブラウザバックを。
初投稿です。
小説自体初めて書きましたので、見づらい部分があるかと思いますが、温かい目で見てくださると嬉しいです。
また書きたい話があれば書こうと思いますが、とりあえずはこの作品を一旦完結にしようと思います。
ご覧頂きありがとうございます。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
王女、騎士と結婚させられイかされまくる
ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。
性描写激しめですが、甘々の溺愛です。
※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。
保健室の秘密...
とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。
吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。
吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。
僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。
そんな吉田さんには、ある噂があった。
「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」
それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixabay並びにUnsplshの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名などはすべて仮称です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる