悪役令嬢は家族に支えられて運命と生きる

西 ゆう

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もうすぐ一年を迎える頃、後数日アルフォンスの誕生日パーティーが迫る中、エリーナはいつもの様に王妃教育を終え、王太子執務室に向かった。
中に案内されると、今までだとドアの前までアルフォンスが迎えに来て抱き締めてくれるが、今日は椅子に座り机に向かって書類を書いていた。

「ごきげんようアル。
今日は忙しいのかな?」
いつもとは違う不安な気持ちを押し殺し、アルフォンスに声を掛けた。

アルフォンスは顔だけを上げ
「そうなんだ。今日中に終わらせないといけない書類がまだ沢山あってね。
だから今日は執務の方を優先させていいかな?」


どうしたんだろう?いつもと様子が違う。
どんなに忙しくても紅茶の一杯ぐらい付き合ってくれるのに……
でも邪魔したら悪いわ。今日はこのまま家に帰ろう。

「分かりました。あんまり無理しないで下さいね」
「ありがとう。送れなくてごめんね。気をつけて帰ってね」
アルフォンスは椅子に座ったままエリーナを見送った。

そんな日が続き、エリーナは情緒不安定になり、使用人に当たり始めた。
それを見たエリーナの家族をはじめ、国王陛下、宰相、クレインはアルフォンスの行動に戸惑いを隠せなかった。

そんな中迎えたアルフォンスの16歳の誕生日パーティーで、エリーナはエスコートはされだが、一線を引いたアルフォンスの態度に不安を噛み締めていた。

挨拶まわりで、多くの貴族の祝電を聞きながら、蛇科のオッタァ侯爵は
「いゃーお二人は相変わらず仲がよろしいですな。
これから何事もなくお幸せになって、この国を導いて行って下さい」
とエリーナの方を見ながらニヤリと笑い、去って行った。

あの方は野心が強く、いつも会うと嫌味のように何か言ってくる。
お父様にも気をつけろと言われてたけど、なんか今日言われると一段と堪えるわ。

顔色が悪くなったエリーナを見たアルフォンスは
「大丈夫かな?
後は僕1人で挨拶回りをするから、エリィは何処かで少し休んでおいで」
と心配してる様だけど、突き放したように言うと、エリーナ1人を残しアルフォンスは挨拶回りの為離れて行った。

最近こんな事ばかり。
アルはもう私のことツガイとしても人としても好きじゃ無くなったのかな?と涙を堪えて、家族の元に歩き始めた。

パーティーが終わると精神的な疲れが出たのか、エリーナは熱を出し寝込んでしまった。
アルフォンスはお見舞いに来ることもなく、メッセージと花束が送られて来た。
そのことにより、余計不安定になりツガイ狂いの様に叫び、暴れ、突然泣き出し、熱を出し、ご飯も食べれなくなった。

(ツガイ狂いとは
最愛のツガイが不慮の事故なので突然居なくなった場合に起きる現象である)

そんなエリーナを家族は支え、エリーナは落ち着きを取り戻し、約1ヶ月振りにアルフォンスに会いに行く事が出来た。
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