悪役令嬢は家族に支えられて運命と生きる

西 ゆう

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翌日王太子殿下の執務室で、
アルフォンスは普段隠してある耳と尻尾を出し、振り回しながら、そわそわニヤニヤ落ち着かない様子で椅子に座っていた。

乳兄弟で、狐科の側近のフクス伯爵家クレインは今までのアルフォンスの違う様子に戸惑いを隠せなかった。

「いつもとご様子が違うようですけど、殿下何があったんですか?」

その言葉待ってたかのように、アルフォンスは興奮しながら、
「エリィが可愛いんだ。
ずっと触って居たいあの猫毛の黒髪。
あの紫色のアネモネの様な清純無垢の瞳。
小鳥の囀りの様な可愛らしい声。
そしてずっと嗅いでいたいあの果実の様な甘い匂い。
エリィが可愛い!
沢山勉強したのにエリィの事は可愛いしか言えなくなる。
あー早く会いたい」

「はぁ?
アル頭大丈夫か?
なんか悪い食べ物でも食べたか?」

執務中で側近を忘れてクレインはアルフォンスを見ていた。

「違うツガイに『運命のツガイ』に昨日会ったんだ」
と昨日エリーナにあった事をクレインに説明した。

それを聞いたクレインは
「ツガイと判断するには、早すぎるし、何が術でも掛けられたんじゃないのか」
と様々なことを考え心配した。


「そんなわけない!レオパルト公爵は中立で、家族第一で、野心がない。
そんな彼がそんな術を欠けるわけない。
それにこのピアスも着けて居たんだ」

左耳のピアスを触りながらアルフォンスは尻尾をピンと張り威嚇した。

「レオパルト公爵はそんな野心がある様な人ではない事はわかってる。
それに執務が始まる前に陛下から贈られた、術や攻撃魔法を弾いてくれる魔法具のピアスだもんな…
ただアルの様子が違いすぎて正直戸惑ってるだけなんだ…
そんなに威嚇しないでくれ…」

「すまん。エリィの事になるとどうも気持ちが不安定になる。
クレインが心配してくれるのは、分かってし、これから色々な貴族から、同じような事を言われると思う。
俺自身も気を付けるからエリィの事を守って欲しい」

「わかりました。我が主」

クレインは臣下の礼を取る。
そんなクレインを見てアルフォンスは微笑んだ。

そんな会話をしていると、アルフォンスが急に立ち上がって、耳をピンと立て尻尾を振り回し、「エリィの匂いだ」と言いながら執務室を飛び出した。

そんなアルフォンスを見てクレインは呆気を取られて立ち尽くしていた。
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