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夏の思い出(回顧録 中学生)
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「大和君! あーん♡」
今、私達は海の家にいる。さっきの騒動の後、由佳ちゃんと海で泳いでいたのだが、何かを思いついたのだろうか――にししっ!とイタズラな笑みを浮かべた彼女に連れてこられたのだ。
テーブルを挟んで向かいにいる舞ちゃんと慎二は、終始不機嫌である。加えて、周りにいる男達の視線も刺すように痛いのであった。
「ねえっ、大和君! お腹すいちゃった! お姉ちゃんにも、あーん♡して欲しいな~」
メニューは、海の家定番の不味い焼きそばであるが、味なんか分かりはしない。ひたすら、恥ずかしいだけである。
「ねっ! 大和君、お願い!」
期待に満ちた澄んだ瞳には逆らえず、ひな鳥のように口を開けている由佳ちゃんの口元に焼きそばを近づけると、満面の笑みを浮かべた彼女は、パクッと口を付けるのであった。
「はあっ~! 大和君に食べさせて貰うと、こんなに美味しいなんて……」
惚けた顔の由佳ちゃんが、しな垂れかかるように私の肩に頭を寄せてくる。彼女の頬はバラ色に染まり、熱っぽい視線は何ともいえない艶を含んでいる。
「大和君! 今度は、フーフーしてから……『由佳さん、時間です! 代わってください!』」
不機嫌な顔の舞ちゃんが、私の手を引き由佳ちゃんから引き離す。
「やぁ~ん! 舞ちゃん、あと五分延長して! お願い!」
「ダメです! 大和君、早く行きましょう」
舞ちゃんに引き摺られるように海の家を出て行く私に、怒りに燃える男達の視線が絡みつくのであった。
「舞ちゃん、ゴメン! こんな事になって……」
「……」
私の手を引いて砂浜を歩く舞ちゃんだが、かなり不機嫌である。先程から口をきいてくれない。やがて、人気の無い岩場に辿り着くと私の手を放した舞ちゃんが、岩場の影の砂浜に腰を下ろすのであった。
そこは大きな岩場で上部には草木が鬱蒼と生い茂り、心なしか頬を撫でるそよ風も涼しく感じる。私も舞ちゃんの横に腰を下ろすと、拗ねた顔の舞ちゃんが私に話し掛けてくるのであった。
「大和君! 私が大和君と会えるのを、どれだけ楽しみにしていたか分かっているんですか?」
「僕だって、舞ちゃんと会いたいとずっと思ってたんだよ!」
「由佳さんに迫られて、デレデレしていた大和君の言う事なんか信じられません!」
「うぐっ!」
舞ちゃんの言う事は正論である。正にぐうの音も出ない状態である。頭をうなだれ視線を落としたまま黙り込む。白く穏やかな波が、飽くことなく打ち寄せ引いていく。どれほど時間が過ぎたのだろうか、舞ちゃんが私の肩に、ちょこんと頭をのせてきたのであった。
「や、大和君も反省しているみたいだから、許してあげます! でも、その代わりに……」
私を見つめていた舞ちゃんの瞼が、ゆっくりと閉じられる。潮の匂いを含んだそよ風が、熱い胸を抜けて行く。
「んっ! ちゅっ……」
軽く唇を重ねただけのライトキスだが、柔らかく蕩けるような甘い感触にドキドキと胸が高鳴っていく。
「や、大和君……好き、大好きだよ!」
「僕もだよ、舞ちゃん!」
舞ちゃんの華奢な身体を優しく抱きしめながら、潮風で揺れているサラサラの黒髪を優しく撫でる。彼女の体温と、トクントクンと脈打つ心音がダイレクトに伝わってくる。湧き上がる愛しさに耐えられず、抱きしめた手を強めると、顔を紅潮させた舞ちゃんが、はにかみながら私の耳元で囁くのであった。
「私のファーストキスを奪われちゃいました。ふふっ! 大和君も初めてですか?」
「く、口以外にされた事が……」
「むうっ! 相手は、由佳さんですね! はぁっー! ムード台無しです」
「ゴ、ゴメン舞ちゃん!」
「くすっ! 大和君は正直なんですね。ますます好きになりました。それに、口でのキスは私が初めてと分かっただけでも良かったです」
「舞ちゃん……」
遠くで聞こえる喧騒の音も、ザーッと音を立てて渚で泡立つ波の音も耳に入らない。舞ちゃんを抱きしめたまま、再び唇を重ねようとしたのだが――その瞬間、私の後頭部にビーチボールが炸裂するのであった。
「おい、大和! ビーチボールやろうぜ!」
とごぞの音痴な苛めっ子のようなセリフを吐きながら、嫉妬と憤怒で身を焦がした慎二がこちらに迫ってくる。
「きゃっ!」
舞ちゃんは、恥ずかしさの余り頬を紅く染めて、私の背後に隠れてしまった。余りと言えば余りの嫌がらせに、アホの慎二を張り倒してやろうと思ったのだが――次の瞬間、慎二の後ろから由佳ちゃんが颯爽と現れるのであった。
「やあやあ、大和君に舞ちゃん! 折角の夏の海なんだから、皆で健全にビーチボールで遊ぼうじゃないか!」
「……由佳さん! ちょっと、こっちに来てください……」
全身を怒りのオーラに染め上げた舞ちゃんが、由佳ちゃんの腕を掴んでズルズルと引きずっていく。
「いや~ん! 舞ちゃん、乱暴しないでよ! 私達は、まだ学生だから清く正しく遊ぼうと思っただけで……」
「大和君に、あんなHな事をしといて、どの口が言ってるんですか?」
ムギュ~~~!
「痛い、痛い。ホッペを抓らないでよ! それに、舞ちゃんだって――大和君に、あんな大胆な事を……」
「きゃあっ! い、いつから見ていたんですか!?」
「えへへっ! 秘密♡」
「ゆ、由佳さんのバカ! もう絶対に許さないんだから!」
二人の会話から、舞ちゃんとのキスシーンを覗き見された事が分かり唖然としていたのだが、そんな私の肩に手を掛けた慎二がとんでもない事を言い始めた。
「大和! お前は俺の心の友だろ!? つまり、お前の物は俺の物だ! だから4人で×××……」
バキッ!!!
「たわばっ!!!」
己の欲望に赴くまま、ジャイアニズムを炸裂させる慎二に鉄拳制裁をお見舞いするのであった。
今、私達は海の家にいる。さっきの騒動の後、由佳ちゃんと海で泳いでいたのだが、何かを思いついたのだろうか――にししっ!とイタズラな笑みを浮かべた彼女に連れてこられたのだ。
テーブルを挟んで向かいにいる舞ちゃんと慎二は、終始不機嫌である。加えて、周りにいる男達の視線も刺すように痛いのであった。
「ねえっ、大和君! お腹すいちゃった! お姉ちゃんにも、あーん♡して欲しいな~」
メニューは、海の家定番の不味い焼きそばであるが、味なんか分かりはしない。ひたすら、恥ずかしいだけである。
「ねっ! 大和君、お願い!」
期待に満ちた澄んだ瞳には逆らえず、ひな鳥のように口を開けている由佳ちゃんの口元に焼きそばを近づけると、満面の笑みを浮かべた彼女は、パクッと口を付けるのであった。
「はあっ~! 大和君に食べさせて貰うと、こんなに美味しいなんて……」
惚けた顔の由佳ちゃんが、しな垂れかかるように私の肩に頭を寄せてくる。彼女の頬はバラ色に染まり、熱っぽい視線は何ともいえない艶を含んでいる。
「大和君! 今度は、フーフーしてから……『由佳さん、時間です! 代わってください!』」
不機嫌な顔の舞ちゃんが、私の手を引き由佳ちゃんから引き離す。
「やぁ~ん! 舞ちゃん、あと五分延長して! お願い!」
「ダメです! 大和君、早く行きましょう」
舞ちゃんに引き摺られるように海の家を出て行く私に、怒りに燃える男達の視線が絡みつくのであった。
「舞ちゃん、ゴメン! こんな事になって……」
「……」
私の手を引いて砂浜を歩く舞ちゃんだが、かなり不機嫌である。先程から口をきいてくれない。やがて、人気の無い岩場に辿り着くと私の手を放した舞ちゃんが、岩場の影の砂浜に腰を下ろすのであった。
そこは大きな岩場で上部には草木が鬱蒼と生い茂り、心なしか頬を撫でるそよ風も涼しく感じる。私も舞ちゃんの横に腰を下ろすと、拗ねた顔の舞ちゃんが私に話し掛けてくるのであった。
「大和君! 私が大和君と会えるのを、どれだけ楽しみにしていたか分かっているんですか?」
「僕だって、舞ちゃんと会いたいとずっと思ってたんだよ!」
「由佳さんに迫られて、デレデレしていた大和君の言う事なんか信じられません!」
「うぐっ!」
舞ちゃんの言う事は正論である。正にぐうの音も出ない状態である。頭をうなだれ視線を落としたまま黙り込む。白く穏やかな波が、飽くことなく打ち寄せ引いていく。どれほど時間が過ぎたのだろうか、舞ちゃんが私の肩に、ちょこんと頭をのせてきたのであった。
「や、大和君も反省しているみたいだから、許してあげます! でも、その代わりに……」
私を見つめていた舞ちゃんの瞼が、ゆっくりと閉じられる。潮の匂いを含んだそよ風が、熱い胸を抜けて行く。
「んっ! ちゅっ……」
軽く唇を重ねただけのライトキスだが、柔らかく蕩けるような甘い感触にドキドキと胸が高鳴っていく。
「や、大和君……好き、大好きだよ!」
「僕もだよ、舞ちゃん!」
舞ちゃんの華奢な身体を優しく抱きしめながら、潮風で揺れているサラサラの黒髪を優しく撫でる。彼女の体温と、トクントクンと脈打つ心音がダイレクトに伝わってくる。湧き上がる愛しさに耐えられず、抱きしめた手を強めると、顔を紅潮させた舞ちゃんが、はにかみながら私の耳元で囁くのであった。
「私のファーストキスを奪われちゃいました。ふふっ! 大和君も初めてですか?」
「く、口以外にされた事が……」
「むうっ! 相手は、由佳さんですね! はぁっー! ムード台無しです」
「ゴ、ゴメン舞ちゃん!」
「くすっ! 大和君は正直なんですね。ますます好きになりました。それに、口でのキスは私が初めてと分かっただけでも良かったです」
「舞ちゃん……」
遠くで聞こえる喧騒の音も、ザーッと音を立てて渚で泡立つ波の音も耳に入らない。舞ちゃんを抱きしめたまま、再び唇を重ねようとしたのだが――その瞬間、私の後頭部にビーチボールが炸裂するのであった。
「おい、大和! ビーチボールやろうぜ!」
とごぞの音痴な苛めっ子のようなセリフを吐きながら、嫉妬と憤怒で身を焦がした慎二がこちらに迫ってくる。
「きゃっ!」
舞ちゃんは、恥ずかしさの余り頬を紅く染めて、私の背後に隠れてしまった。余りと言えば余りの嫌がらせに、アホの慎二を張り倒してやろうと思ったのだが――次の瞬間、慎二の後ろから由佳ちゃんが颯爽と現れるのであった。
「やあやあ、大和君に舞ちゃん! 折角の夏の海なんだから、皆で健全にビーチボールで遊ぼうじゃないか!」
「……由佳さん! ちょっと、こっちに来てください……」
全身を怒りのオーラに染め上げた舞ちゃんが、由佳ちゃんの腕を掴んでズルズルと引きずっていく。
「いや~ん! 舞ちゃん、乱暴しないでよ! 私達は、まだ学生だから清く正しく遊ぼうと思っただけで……」
「大和君に、あんなHな事をしといて、どの口が言ってるんですか?」
ムギュ~~~!
「痛い、痛い。ホッペを抓らないでよ! それに、舞ちゃんだって――大和君に、あんな大胆な事を……」
「きゃあっ! い、いつから見ていたんですか!?」
「えへへっ! 秘密♡」
「ゆ、由佳さんのバカ! もう絶対に許さないんだから!」
二人の会話から、舞ちゃんとのキスシーンを覗き見された事が分かり唖然としていたのだが、そんな私の肩に手を掛けた慎二がとんでもない事を言い始めた。
「大和! お前は俺の心の友だろ!? つまり、お前の物は俺の物だ! だから4人で×××……」
バキッ!!!
「たわばっ!!!」
己の欲望に赴くまま、ジャイアニズムを炸裂させる慎二に鉄拳制裁をお見舞いするのであった。
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