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新たな能力の覚醒と封印(回顧録 中学生)
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舞ちゃんの突然の引越しにより、心に負った悲しみの傷は徐々に癒えていった。事情を知った由佳ちゃんが、今まで以上に優しくしてくれるし、舞ちゃんとも頻繁に電話で話をして、手紙も送っているからだ。
――電話や手紙だけでは満足できない。やっぱり舞ちゃんに会いたいな……
私がそんな事を考えていると、忍者のように足音を消して近づいてきた由佳ちゃんに、背後から抱きしめられる。
「大和君、確保♪」
ムギュ~~!!!!
「や、やめてよ、由佳ちゃん!」
今日も、いつも通りの平和な日常が始まろうとしていた。
最近の由佳ちゃんは日に日に綺麗になり、いつも顔を会わしている幼馴染の私でも目を奪われるくらい大人っぽく見える。
制服の胸元は、弾力感のある形の良い膨らみでムッチリと盛り上がっている。キュッと引き締まった腰回りやスカートの裾からスラリと伸びる白い足も眩しいほど魅力的で、少女とは思えない女の色香を放っていた。
当然、彼女の人気は高く、学年を問わず彼女に憧れていたり狙っている男が多いのだ。しかし、少し天然な由佳ちゃんは、周りの視線など気にせず遠慮なく私に抱き付いてくるのだ。私としては当然嬉しいのだが、嫉妬や羨望の視線が容赦なく突き刺さり、上級生に妬まれて絡まれたことも一度や二度ではなかったのだ。
「大和君、どうしたのかな~?」
艶やかな黒髪を纏めたポニーテールと、青いリボンを揺らしながら、由佳ちゃんが私の顔を覗き込んでくる。
胸のドキドキが大きくなり、彼女を意識すると自然と顔が赤くなってしまう。それと同時に――舞ちゃんも好きだけど、由佳ちゃんも他の男に奪われたくないという、勝手な独占欲が沸々と込み上げてくる。
「な、何でもないよ、由佳ちゃん!」
口では平静を装っているが、心は穏やかではない。
――由佳ちゃんは誰か好きな人がいるのかな? 私の事をどう思っているのかな?
そんな、嫉妬じみた感情が心の底で渦を巻いていた私は、うっかりと口走ってしまった。
「由佳ちゃんは、僕の事をどう思っているの?」
「ふふっ! いきなり、どうしたのかな~? お姉ちゃんは大和君の事、大好きだよ!」
由佳ちゃんの言う好きとは――多分、姉が弟を想うような愛情なのだろう。分かっていても、彼女の口からそんな言葉を聞きたくない。傷つくのを恐れた私は、悪いと分かっていながらも彼女の心を読み取るイメージを高め、本心を探ろうとするのであった。
正直な所、相手の心を読むような能力に目覚めるかは、過去のサイコキネシスの件があるとはいえ半信半疑であったのである。しかし、集中力の高まりと共に、突然頭の中にノイズのような物が走り、断片的な記憶や感情が次々と頭の中に流れ込んでくるのであった。
川に水遊びに行った時の事、追いかけて来た野良犬から助けてもらった時の事、勉強を教えてもらった時の事。
色々な出来事が走馬灯のように頭の中を巡っていくが、記憶の中の由佳ちゃんはいつも優しく私を包み込んでいてくれる。
間を置いて、私に対する彼女の感情が流れ込んでくる。
肉親の情のように慈愛に満ちた温かい気持ちだ。それと、僅かだが異性としての恋愛意識や、私が連絡を取り合っている舞ちゃんへの嫉妬心も存在しているようだ。そして、最大の懸念であった由佳ちゃんが好意を持っている異性は、今の段階では私しかいないようだ。
私は、安堵感と共に猛烈な後悔に襲われる。
――由佳ちゃんは、こんなに私の事を想っていてくれているのに、自分のやっている事は何だ? こそこそと好きな相手の気持ちを探っているだけの卑怯者じゃないのか? 由佳ちゃんを他の男に奪われたくない? それなら、なぜ由佳ちゃんに相応しい男になるように努力しないんだ?
自己嫌悪に駆られている間も、彼女の記憶や感情が絡み合い、奔流のように後から後から頭の中に流れ込んでくる。能力のコントロールが出来ずに身体が小刻みに震え、息苦しい圧迫感が込み上げてくる。
やがて、視界が霞んで意識が遠のいていく。由佳ちゃんの悲痛の声が微かに聞こえるが、私の意識はそこで途絶えたのであった。
「うっ……!」
意識が徐々に覚醒していき、目を開けてみると見慣れない天井が見える。
ベッドから頭を起こして辺りを見回すと、スラリと背の高い白衣の女性が見える。校医の柳田先生だ。
どうやら、学校の保健室にいるようだ。
「あらっ! 目が覚めたのかしら?」
先生が、こちらに向けてくる眼差しはとても優しく、笑顔も慈愛に満ち溢れていた。
「貧血だったみたいね。でも、もう大丈夫よ! そうそう! 伊勢さんに、ちゃんとお礼を言いなさいよ。倒れた君を、ここまで運んでくれたんだから。そ・れ・に! 伊勢さんは、君の事が心配で心配で堪らなかったみたいよ。泣きそうな顔をして、さっきまでそこに居たんだから」
「そ、そうですか、由佳ちゃんが……」
「はあっ~! 青春だね! 独り身の先生には眩しすぎるよ」
柳田先生と話をしていると、保健室のドアが開き由佳ちゃんが入ってくる。
「大和君、目が覚めたんだ! もうっ! 心配したんだからね!」
ムギュ~~!!!!
いつも通りに抱きしめられる。それを見た柳田先生は、クスクスと笑っている。
「君たちは本当に仲が良いんだね! でも、もう夕方だよ。早く帰りなさい」
「「先生! ありがとうございました!」」
由佳ちゃんに手を引かれて保健室を出る。
燃えるように美しい夕日が地平に沈み始め、グランドを赤色に染めている。
「大和君、今日は家に着くまで手を離さないからね!」
「は、恥ずかしいよ! 手を離してよ、由佳ちゃん!」
「ダメだよ! お姉ちゃんを心配させた大和君が悪いんだから! さ~! 帰るよ♪」
由佳ちゃんが、私の手を引いたまま走り出す。細く伸びた二人の影絵が重なり揺れ動き、ダンスを踊っているように見える。
『人は理解できない事を恐れたり、排除しようとするんだよ!』
由佳ちゃんが、前に言っていた言葉が頭を駆け巡る。
今なら、彼女が言っていた事が理解できる気がする。
――この能力は危険すぎる。人は、誰でも知られたくない事を心に秘めている。隠している事を易々と見透かす能力は、嫌忌感や恐怖心を人々に植え付けるだろう。こんな能力を使える事を周りに知られたら、私はどうなってしまうのだろう? 由佳ちゃんを悲しませたり、迷惑を掛けてしまうのではないか?
純真の心で、私の事を大事に想ってくれる由佳ちゃん。そんな彼女の心をこっそり読んだり、悲しませる行為は断じてしてはいけない。
私は手に入れた人の過去を知る能力(サイコメトラー)、人の心を読む力(テレパシー)を、封印する事を心に決めたのであった。
――電話や手紙だけでは満足できない。やっぱり舞ちゃんに会いたいな……
私がそんな事を考えていると、忍者のように足音を消して近づいてきた由佳ちゃんに、背後から抱きしめられる。
「大和君、確保♪」
ムギュ~~!!!!
「や、やめてよ、由佳ちゃん!」
今日も、いつも通りの平和な日常が始まろうとしていた。
最近の由佳ちゃんは日に日に綺麗になり、いつも顔を会わしている幼馴染の私でも目を奪われるくらい大人っぽく見える。
制服の胸元は、弾力感のある形の良い膨らみでムッチリと盛り上がっている。キュッと引き締まった腰回りやスカートの裾からスラリと伸びる白い足も眩しいほど魅力的で、少女とは思えない女の色香を放っていた。
当然、彼女の人気は高く、学年を問わず彼女に憧れていたり狙っている男が多いのだ。しかし、少し天然な由佳ちゃんは、周りの視線など気にせず遠慮なく私に抱き付いてくるのだ。私としては当然嬉しいのだが、嫉妬や羨望の視線が容赦なく突き刺さり、上級生に妬まれて絡まれたことも一度や二度ではなかったのだ。
「大和君、どうしたのかな~?」
艶やかな黒髪を纏めたポニーテールと、青いリボンを揺らしながら、由佳ちゃんが私の顔を覗き込んでくる。
胸のドキドキが大きくなり、彼女を意識すると自然と顔が赤くなってしまう。それと同時に――舞ちゃんも好きだけど、由佳ちゃんも他の男に奪われたくないという、勝手な独占欲が沸々と込み上げてくる。
「な、何でもないよ、由佳ちゃん!」
口では平静を装っているが、心は穏やかではない。
――由佳ちゃんは誰か好きな人がいるのかな? 私の事をどう思っているのかな?
そんな、嫉妬じみた感情が心の底で渦を巻いていた私は、うっかりと口走ってしまった。
「由佳ちゃんは、僕の事をどう思っているの?」
「ふふっ! いきなり、どうしたのかな~? お姉ちゃんは大和君の事、大好きだよ!」
由佳ちゃんの言う好きとは――多分、姉が弟を想うような愛情なのだろう。分かっていても、彼女の口からそんな言葉を聞きたくない。傷つくのを恐れた私は、悪いと分かっていながらも彼女の心を読み取るイメージを高め、本心を探ろうとするのであった。
正直な所、相手の心を読むような能力に目覚めるかは、過去のサイコキネシスの件があるとはいえ半信半疑であったのである。しかし、集中力の高まりと共に、突然頭の中にノイズのような物が走り、断片的な記憶や感情が次々と頭の中に流れ込んでくるのであった。
川に水遊びに行った時の事、追いかけて来た野良犬から助けてもらった時の事、勉強を教えてもらった時の事。
色々な出来事が走馬灯のように頭の中を巡っていくが、記憶の中の由佳ちゃんはいつも優しく私を包み込んでいてくれる。
間を置いて、私に対する彼女の感情が流れ込んでくる。
肉親の情のように慈愛に満ちた温かい気持ちだ。それと、僅かだが異性としての恋愛意識や、私が連絡を取り合っている舞ちゃんへの嫉妬心も存在しているようだ。そして、最大の懸念であった由佳ちゃんが好意を持っている異性は、今の段階では私しかいないようだ。
私は、安堵感と共に猛烈な後悔に襲われる。
――由佳ちゃんは、こんなに私の事を想っていてくれているのに、自分のやっている事は何だ? こそこそと好きな相手の気持ちを探っているだけの卑怯者じゃないのか? 由佳ちゃんを他の男に奪われたくない? それなら、なぜ由佳ちゃんに相応しい男になるように努力しないんだ?
自己嫌悪に駆られている間も、彼女の記憶や感情が絡み合い、奔流のように後から後から頭の中に流れ込んでくる。能力のコントロールが出来ずに身体が小刻みに震え、息苦しい圧迫感が込み上げてくる。
やがて、視界が霞んで意識が遠のいていく。由佳ちゃんの悲痛の声が微かに聞こえるが、私の意識はそこで途絶えたのであった。
「うっ……!」
意識が徐々に覚醒していき、目を開けてみると見慣れない天井が見える。
ベッドから頭を起こして辺りを見回すと、スラリと背の高い白衣の女性が見える。校医の柳田先生だ。
どうやら、学校の保健室にいるようだ。
「あらっ! 目が覚めたのかしら?」
先生が、こちらに向けてくる眼差しはとても優しく、笑顔も慈愛に満ち溢れていた。
「貧血だったみたいね。でも、もう大丈夫よ! そうそう! 伊勢さんに、ちゃんとお礼を言いなさいよ。倒れた君を、ここまで運んでくれたんだから。そ・れ・に! 伊勢さんは、君の事が心配で心配で堪らなかったみたいよ。泣きそうな顔をして、さっきまでそこに居たんだから」
「そ、そうですか、由佳ちゃんが……」
「はあっ~! 青春だね! 独り身の先生には眩しすぎるよ」
柳田先生と話をしていると、保健室のドアが開き由佳ちゃんが入ってくる。
「大和君、目が覚めたんだ! もうっ! 心配したんだからね!」
ムギュ~~!!!!
いつも通りに抱きしめられる。それを見た柳田先生は、クスクスと笑っている。
「君たちは本当に仲が良いんだね! でも、もう夕方だよ。早く帰りなさい」
「「先生! ありがとうございました!」」
由佳ちゃんに手を引かれて保健室を出る。
燃えるように美しい夕日が地平に沈み始め、グランドを赤色に染めている。
「大和君、今日は家に着くまで手を離さないからね!」
「は、恥ずかしいよ! 手を離してよ、由佳ちゃん!」
「ダメだよ! お姉ちゃんを心配させた大和君が悪いんだから! さ~! 帰るよ♪」
由佳ちゃんが、私の手を引いたまま走り出す。細く伸びた二人の影絵が重なり揺れ動き、ダンスを踊っているように見える。
『人は理解できない事を恐れたり、排除しようとするんだよ!』
由佳ちゃんが、前に言っていた言葉が頭を駆け巡る。
今なら、彼女が言っていた事が理解できる気がする。
――この能力は危険すぎる。人は、誰でも知られたくない事を心に秘めている。隠している事を易々と見透かす能力は、嫌忌感や恐怖心を人々に植え付けるだろう。こんな能力を使える事を周りに知られたら、私はどうなってしまうのだろう? 由佳ちゃんを悲しませたり、迷惑を掛けてしまうのではないか?
純真の心で、私の事を大事に想ってくれる由佳ちゃん。そんな彼女の心をこっそり読んだり、悲しませる行為は断じてしてはいけない。
私は手に入れた人の過去を知る能力(サイコメトラー)、人の心を読む力(テレパシー)を、封印する事を心に決めたのであった。
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