やさぐれ男の異世界革命記

悪代官と越後屋

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春は別れの季節(回顧録 中学生)

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 幼馴染の由佳ちゃんに可愛がられたり、クラスメートの舞ちゃんと楽しく過ごした日々は瞬く間に過ぎ去り、私は中学生になっていた。

 蒼穹の下で桜の花が咲き乱れ、時折風に吹かれた花びらが美しく舞っている。

 新緑の香りが漂い、優しい春の日差しを感じるが私の心は晴れなかった。


「大和! 何、ぼーっとしているんだ?」

 突然、声を掛けられ振り向くと、小学校6年の時のクラスメートだった渡辺慎二がそこにいた。毬栗頭と垂れ目が特徴の愛嬌のある男の子である。

「大和、どうせ舞ちゃんの事を考えていたんだろ? でも、クラスのアイドルだった舞ちゃんが引越しして、悲しんでいるのはお前だけじゃ無いんだぞ」

 そう、クラスのアイドルであった田中舞ちゃんは、親の仕事の都合で都会に引越ししてしまったのである。ゼナー・カードの件以降、彼女と親しくなった私は、小学校の卒業式の前日に誰よりも早く彼女からその話を聞き、ショックの余り心に穴が開いた様に呆然と立ち尽くしてしまったのである。

 卒業式の当日、その話を聞いたクラスメートは深い悲しみに包まれていた。特に憧れの舞ちゃんと、中学校でも同じクラスになりたいと思っていた男子の落ち込みは酷く、号泣する者まで現れる始末であった。卒業式後、人目を避けるように舞ちゃんが私に近づいてきた。無理に微笑む彼女の姿は痛々しく、ひしひしと胸を締め付けられるような痛みと悲しみが込み上げてくる。

「大和君! 私の事を絶対に忘れないでね」

 目に涙を滲ませた舞ちゃんは私に手作りのオシャレな封筒を渡した後、走り去って行った。途中で振り向いた舞ちゃんに、私は手を振りながら大声を張り上げ叫んだ。

「舞ちゃんの事は絶対に忘れないよ! それに、絶対に会いに行くからね」

 クスッと舞ちゃんが微笑んだような気がした。彼女の姿は次第に遠ざかり、喧騒に包まれた人ごみの中に消えていった。手元に残った封筒の中には可愛らしい動物の模様が描かれた便箋があり、きれいな字で引越し先の住所と電話番号が書かれていた。便箋の中央には小さな字で、――大和君、大好き――と書かれていた。堪えていた涙が後から後から溢れ出す。私は感情の赴くまま、ひとしきり泣きじゃくるのであった。



「大和君、発見♪」

 ムギュ~~!!!!

 私が感傷に浸っていたら、いつものパターンで由佳ちゃんに背後から抱きしめられる。

「うんうん! 中学生になっても大和君は可愛いな!」
「や、やめてよ、由佳ちゃん! 友達がそこにいるんだよ。は、恥ずかしいよ……」

 慎二の方を見ると、私が美少女にハグされているというシチュエーションが余程ショックだったのだろう――。目を皿のように丸くして、口をパクパクさせて完全に硬直している。私が由佳ちゃんの抱擁から逃れようと四苦八苦していると、我に返った慎二が私に話し掛けてくるのであった。

「や、大和君! この美人のお姉さんは誰なの? 紹介して!!!」
「ふふっ! 君は大和君の友達なのかな? 私は3年生の伊勢由佳! 大和君の幼馴染で、お姉ちゃんでもあるんだよ」
「ぼ、僕の名前は渡辺慎二です! 大和君の大親友です! 恋人はいません! よろしくお願いします」

 さりげなくお姉ちゃんポジションをアピールする由佳ちゃんと、調子の良いことを言って――恋人いませんアピールを必死にする慎二を見た私は、頭を抱えるのであった。

「くぅ~! 大和は良いよな! 可愛い舞ちゃんと凄く仲良いのに、こんな美人のお姉さんもいるなんて、羨ましすぎるよ」

 由佳ちゃんの眉が、ピクリと動く。そして、心なしか抱きしめる力が強くなった気がする。

「へぇ~~! 大和君にそんな可愛いガールフレンドがいたんだ! お姉ちゃん、ちっとも知らなかったよ! うふふっ!」

――こ、怖い! 

 由佳ちゃんに密着されて、背中に感じる彼女の体温と――ムニュムニュした柔らかい膨らみの感触が心地良いのに、何故か寒気がする。

 恐怖でプルプルと震えている私を尻目に、由佳ちゃんが慎二に話しかける。

「慎二君、今日は貴重な情報をありがとうね! これからも大和君が悪い事をしないように見張っていてね」
「はいっ! 不束ながら渡辺慎二、由佳様のために大和君の行動を監視して、逐一報告したいと思います」
「くすっ! 君は本当に面白い男の子だね」

 毬栗頭をナデナデされて、敬礼までしていた慎二の鼻の下が伸びていき、デレデレ顔に変わっていく。私は拘束が解けた一瞬の隙を突いて逃げようとしたが、あっけなく由佳ちゃんに捕まってしまうのであった。

「大和君、何処に行くのかな~? お姉ちゃん、まだ訊きたい事が色々あるんだけど~!」

 背後から私の首に回された由佳ちゃんの腕が、徐々に絞まって行く。完全にスリーパーホールドである。命の危機を感じた私は、咄嗟に超能力を使ってしまったのである。

「ひゃあっ!?」 

 可愛らしい悲鳴を上げて、由佳ちゃんが手を離して飛びのく。頬を赤らめ、胸元を手で押さえながら肢体を振るわせる由佳ちゃんは妙に艶やかであった。その艶姿を見た慎二は湯気が出るほど顔を真っ赤にさせ、今にも鼻血を噴出しそうである。

 私が使った超能力は、透視能力とサイコキネシスの複合技である。透視能力で由佳ちゃんのブラの位置を確認して、サイコキネシスでブラのホックを外したのである。こうすれば、走って私を追いかけてもブラがずり落ちそうになり追跡を中止するだろうし、まさか人前でブラのホックを留める事は出来ないだろう。正に諸葛孔明もびっくりの巧妙なる策略と言えよう。

「や、大和君! よくもやってくれたね! お姉ちゃん、本気で怒ったんだから💢」
「ぼ、僕は子供だから何の事だか全然わかんないよ! それに、僕は忙しいからその話はまた今度ね! てへっ♡」

 由佳ちゃんが、私を捕まえようと両手を伸ばす。その瞬間、ブラの締め付けから解き放たれた弾力のある形の良い膨らみが、服の上からでも分かるくらいプルンと揺れ動く。何が起きたか理解できないまま、由佳ちゃんのあまりの色っぽさに慎二が鼻血を噴出し卒倒する。

「あばよ、由佳つぁん!」

 ル○ンの真似をして逃走を開始したのだが、ここで大誤算が生じたのだ。怒りに我を忘れた由佳ちゃんが、本気で追いかけてきたのだ。剣道部のエースで、スポーツ万能の由佳ちゃんには到底敵わず、あっさりと捕まってしまったのである。

 再びスリーパーホールドで拘束された私は、服越しとはいえ柔らかな至高の感触と、スリーパーホールドによる呼吸困難という天国と地獄を同時に味わうのであった。その後、怒りに任せてお説教する由佳ちゃんにブラがズレてる事を指摘したら、カアッと顔を赤らめた彼女に睨まれ、お説教の時間が更に延びるのであった。 グスン!

 
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