やさぐれ男の異世界革命記

悪代官と越後屋

文字の大きさ
上 下
4 / 18

新たな能力の覚醒(回顧録 小学生)

しおりを挟む
「大和君! 円の面積の求め方は半径×半径×3.14だよ。何度言ったらわかるかな~!」

 当時、算数が苦手だった私は、母親の陰謀で夏休みだというのに連行されるように由佳ちゃんの部屋に引きずり込まれ猛勉強をさせられているのであった。

「大和君、もっと気合を入れて! 大和君のお母さんにお小遣いまで貰ったんだから、今度のテストで良い点を取ってもらわないと困るんだよ」
「ひどいよ、由佳ちゃん! もっと優しく教えてよ!」
「ビシビシいくよ! 大和君が良い点を取ってくれれば、更に臨時のお小遣いが……えへへっ!」
「由佳ちゃん?」
「な、何でもないよ! さ~! 頑張っていこう!」

 ジト目で見つめる私の視線に気付いたのか、由佳ちゃんは視線を逸らし口笛を吹き始める。

「はあっ~! わかったよ大和君! 少し休憩にしよう」

 私の視線に耐えられなくなったのか、由佳ちゃんが休憩にしてくれた。

「大和君、お菓子と飲み物を持ってくるから、ちょっと待ってて」

 私を男として意識していないのか、ただ単に警戒心が薄いのか――。由佳ちゃんは胸元にレースが施された白いタンクトップと、裾がふんわりと広がったフレア感の青いミニスカートというラフな格好である。彼女が立ち上がると、キュッと括れたウエスト、形の良い曲線を描いたヒップ、スラッと伸びた白い足が露になる。頬に赤みが差して、ドキドキと心臓が脈打ち心拍数が上がっていった。 

「大和君、どうかしたの?」

 ボーっとしていた私を、心配そうに由佳ちゃんが覗き込む。気付いた時には彼女の顔がすぐそこにあり、ほのかに香る甘い匂いが鼻腔をくすぐる。更に顔が赤く染まり、恥ずかしさのあまり俯いてしまった。そんな私を見た由佳ちゃんは、ちょっと意地悪そうな笑みを浮かべるのであった。

「ふふっ! 大和君、ひょっとしてお姉ちゃんの魅力で、メロメロになっちゃったのかな~!」
「そ、そんな事は……」
「うんうん! 大和君も女の子に興味を持つ年頃だもんね! だけど覗きなんかしちゃダメだよ」
「由佳ちゃん! 前も言ったけど覗きなんかしていないよ」
「ムキになっちゃって~、本当に大和君は可愛いな♪」
「由佳ちゃん! そこまで言うなら僕の本気の能力を見せてあげるよ! トランプを持ってきてよ」
「はいはい! 大和君、ちょっと待っててね」

 由佳ちゃんは、私の言う事をまったく信用していなかった。こうなったら本気を出して、彼女を驚かせるしか手はないだろう。

 由佳ちゃんから受け取ったトランプをテーブルに並べ、手をかざして集中力を高めていくとトランプの絵柄が頭の中にスクリーンのように映し出される。そして、私は右上のトランプから順番に捲り始めた。

「ダイヤのA、スペードの7、ハートの3、ハートの9、クラブの2」

 百発百中である。自慢げに由佳ちゃんの方を見ると、彼女は驚愕の表情で固まっているのであった。

「凄いよ、大和君!!! その手品私にも教えてよ!」

 私は壮大にズッコケそうになってしまった。由佳ちゃんの辞書には透視能力と言う文字は無いようだ。私が頭を抱えていると、目をキラキラと輝かせた由佳ちゃんが迫ってくるのであった。

「ねぇ、大和君! ケチケチしないで教えてよ」

――由佳ちゃんは、透視能力を手品と思っているようだ。それならば、どうすれば良い? もっと凄い超能力を見せれば納得するんじゃないか? 例えばサイコキネシス(念動力)とか出来ないかな。

 そう考えた私は再びトランプに手をかざし集中力を高め、先程と違いトランプが浮遊していくイメージを強く意識したのだ。 


 カタッカタッ!


 気が高まっていく感覚と共に、トランプが僅かに震え動き出す。やがて何枚かのトランプが、フラフラとしながらもゆっくりと浮き始める。初めての感覚に四苦八苦しながらも浮遊状態を保っていると、興奮冷めやらない由佳ちゃんが立ち上がり、歓喜の声を上げるのであった。

「凄い、凄いよ! 大和君、その手品も教えてよ!」
「違うよ、由佳ちゃん! これは手品じゃ……あっ!」
 集中力が乱れた為か、テーブルの上にあったトランプが吹き上がる様に飛散する。それと同時に由佳ちゃんのミニスカートも捲れ上がり、白くすべすべの太腿と可愛らしい下着が垣間見えて、思わず凝視してしまった。

「しましま!」
「や、や、大和君のH! スケベ!!!」

 バチーーーーーン!!!

 思わず呟いた私の頬に、強烈なビンタをお見舞いされるのであった。



「まったく、大和君はどうしてHなイタズラばっかりするのかな~」

 私は正座させられ、お説教の真っ最中であった。

「違うよ由佳ちゃん! あれは超能力だよ! それに由佳ちゃんが邪魔するから失敗……むぎゅ~!」
「大和君は、まだそんな事を言うのかな~」
「いひゃい、いひゃい! やめてよ、由佳ちゃん! それに、僕は嘘なんかついてないよ! 何で信じてくれないんだよ! グスン……」
 
 頬を抓ねられて涙目の私であったが、手を離した彼女に慈しむように優しく抱きしめられた。

「ごめんね、大和君! お姉ちゃん超能力は信じられないけど、大和君がそこまで言うんだったら本当の事なんだね」
「うん!」
「あのね、大和君! お姉ちゃん思うんだけど……。その能力は、私以外の人の前で使ったらダメだよ。人は理解できない事を恐れたり、排除しようとするんだよ。それに大和君の能力を悪用しようとする人が出てきて、大和君に何かあったらお姉ちゃん耐えられないよ」

 由佳ちゃんの言っている事は少し大げさだと思ったが、本気で私の事を心配してくれる彼女の情愛に激しく胸を打たれた。

「そ、それから、大和君! その能力をHな事に使うのは、もっての外だからね! でも、大和君も年頃だし――どうしても我慢できない時は、お姉ちゃんが……ごにょごにょ!」
「由佳ちゃん! 今、何て言ったの? 良く聞こえなかったんだけど……」
「な、何でもないよ! この話はこれでおしまい。さ~! 勉強するよ」
「待ってよ由佳ちゃん! もう少し休ませてよ! それに正座していたから足が痺れて……」
「何、甘ったれた事を言ってるのかな大和君は……。それっ! ツンツン♪」
「や、やめてよ由佳ちゃん! 足の裏を突っつかないでよ」
「うんうん! 大和君はやっぱり可愛いな♪」

 由佳ちゃんと過ごす穏やかな時が流れていく。

 言いようの無い安堵感に私の心が満たされていく。

 こんなに心地良く満ち足りた時間が未来永劫に続くと、当時の私は信じていたのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~

味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。 しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。 彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。 故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。 そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。 これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜

水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。 その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。 危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。 彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。 初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。 そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。 警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。 これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...