2 / 18
透視能力(回顧録 小学生)
しおりを挟む
私の名前は赤城大和。超能力者である。
超能力者と言っても、どこぞの塔に住んでいて三つのしもべを従えている少年や、どこぞのサ○ィアンに住んでいた自称超能力者のおっさんとは違い地味に生きて行きたかったのである。
私が超能力に目覚めたのは、小学校6年の時だ。クラスメートが自宅の納屋で見つけたゼナー・カードと呼ばれる――丸、十字、波、四角、星の書かれたカードを言い当てる遊びが流行った時である。クラスの連中は、『当たった~!』、『外れた~!』と、一喜一憂して大騒ぎである。遠回しに私も見物としていると、クラスのアイドルである田中舞ちゃんに話し掛けられる。
「ね~ね~! 大和君も、これやってみない?」
艶のある美しい濡れ羽色の髪を肩まで伸ばした、目のパッチリした愛くるしい美少女である。
「そうだな! やってみるか」
彼女の笑顔にドキドキしながらも平静を保ち、机の上に並べられているカードに手をかざすと、何処からともなく私を呼びかける鈴の音のような澄んだ美しい声が頭の中に響き渡る。
「君は凄い才能を秘めてるみたいね! ちょっと若すぎるけど私の好みだし、今の内に唾を付けといても悪くないわね。ふふっ! 君の隠れた力を引き出して上げるから、大きくなったら私の使徒になって協力してね。それから大和君! いい男になりなさいよ。それじゃ~ね! ちゅっ♡」
一方的に自分の意見を告げただけで、美しい声は途絶えた。辺りを見回すが特に異変は無く、狐につままれたような気分である。
「大和君、どうしたの?」
舞ちゃんが、心配そうに私の顔を覗き込んでくる。
「ははっ! 変な声が聞こえたと思ったけど気のせいかな? ゴメン、透視をやってみるね!」
呼吸を整え集中力を高めていく。目を閉じてカードを透過する思念を形成すると、頭の中でスクリーンに映し出されたように図柄が浮かび上がる。
宣言しながら、端から順に捲っていく。
「十字、星、波、四角、丸」
予想がピタリと的中し、クラスの中で割れんばかりの歓声が上がる。
「すげー! 大和、なんで分かったんだよ!」
「大和君凄いね! びっくりしちゃった! そうだ、私にもコツを教えてよ」
何故こんな事が出来たのか戸惑っている私の元に、舞ちゃんが微笑みながら近寄ってくる。春の木漏れ日のような暖かく優しい笑顔だ。心の中でほんのりと温かくも切ない感情が目覚め、心なしか顔が僅かに赤く染まった気がする。
照れ隠しに、ちょっとぶっきら棒に彼女に説明をする。
「カードの上に手をかざして、集中力を高めると何と無く分かるんだよ」
「え~~! そう言われても分かんないよ! そうだ。こうすれば私でも分かるかな?」
突然、彼女が私の手に触れ、綺麗でキメの細かいしっとりした白い手を重ねてくる。滑らかな手の感触と彼女から僅かに漂う甘い香りで、むず痒くも愛おしい感情が胸を突き上げてくる。
「きゃ~~! 舞ちゃん、大胆!」
「くぅ~~! 大和の奴、何て羨ましい事を……」
「「「大和! まさかお前――舞ちゃんの服の下も、透視しているじゃないだろうな?」」」
「何て事言うのよ! 男子のH!」
女子の黄色い声と、男子の羨望と嫉妬を含んだ声が教室に響く。憧れの舞ちゃんとの距離が近くなった気がして、密かに喜んでいた私であったが、この透視能力の開花が波乱に満ちた人生の始まりであったのだ。この時の私は、この事を知る由も無かったのである。
超能力者と言っても、どこぞの塔に住んでいて三つのしもべを従えている少年や、どこぞのサ○ィアンに住んでいた自称超能力者のおっさんとは違い地味に生きて行きたかったのである。
私が超能力に目覚めたのは、小学校6年の時だ。クラスメートが自宅の納屋で見つけたゼナー・カードと呼ばれる――丸、十字、波、四角、星の書かれたカードを言い当てる遊びが流行った時である。クラスの連中は、『当たった~!』、『外れた~!』と、一喜一憂して大騒ぎである。遠回しに私も見物としていると、クラスのアイドルである田中舞ちゃんに話し掛けられる。
「ね~ね~! 大和君も、これやってみない?」
艶のある美しい濡れ羽色の髪を肩まで伸ばした、目のパッチリした愛くるしい美少女である。
「そうだな! やってみるか」
彼女の笑顔にドキドキしながらも平静を保ち、机の上に並べられているカードに手をかざすと、何処からともなく私を呼びかける鈴の音のような澄んだ美しい声が頭の中に響き渡る。
「君は凄い才能を秘めてるみたいね! ちょっと若すぎるけど私の好みだし、今の内に唾を付けといても悪くないわね。ふふっ! 君の隠れた力を引き出して上げるから、大きくなったら私の使徒になって協力してね。それから大和君! いい男になりなさいよ。それじゃ~ね! ちゅっ♡」
一方的に自分の意見を告げただけで、美しい声は途絶えた。辺りを見回すが特に異変は無く、狐につままれたような気分である。
「大和君、どうしたの?」
舞ちゃんが、心配そうに私の顔を覗き込んでくる。
「ははっ! 変な声が聞こえたと思ったけど気のせいかな? ゴメン、透視をやってみるね!」
呼吸を整え集中力を高めていく。目を閉じてカードを透過する思念を形成すると、頭の中でスクリーンに映し出されたように図柄が浮かび上がる。
宣言しながら、端から順に捲っていく。
「十字、星、波、四角、丸」
予想がピタリと的中し、クラスの中で割れんばかりの歓声が上がる。
「すげー! 大和、なんで分かったんだよ!」
「大和君凄いね! びっくりしちゃった! そうだ、私にもコツを教えてよ」
何故こんな事が出来たのか戸惑っている私の元に、舞ちゃんが微笑みながら近寄ってくる。春の木漏れ日のような暖かく優しい笑顔だ。心の中でほんのりと温かくも切ない感情が目覚め、心なしか顔が僅かに赤く染まった気がする。
照れ隠しに、ちょっとぶっきら棒に彼女に説明をする。
「カードの上に手をかざして、集中力を高めると何と無く分かるんだよ」
「え~~! そう言われても分かんないよ! そうだ。こうすれば私でも分かるかな?」
突然、彼女が私の手に触れ、綺麗でキメの細かいしっとりした白い手を重ねてくる。滑らかな手の感触と彼女から僅かに漂う甘い香りで、むず痒くも愛おしい感情が胸を突き上げてくる。
「きゃ~~! 舞ちゃん、大胆!」
「くぅ~~! 大和の奴、何て羨ましい事を……」
「「「大和! まさかお前――舞ちゃんの服の下も、透視しているじゃないだろうな?」」」
「何て事言うのよ! 男子のH!」
女子の黄色い声と、男子の羨望と嫉妬を含んだ声が教室に響く。憧れの舞ちゃんとの距離が近くなった気がして、密かに喜んでいた私であったが、この透視能力の開花が波乱に満ちた人生の始まりであったのだ。この時の私は、この事を知る由も無かったのである。
0
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~
味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。
しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。
彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。
故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。
そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。
これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜
水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。
その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。
危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。
彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。
初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。
そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。
警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。
これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる