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亜人の姉妹!

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 声を頼りに私とセレーヌは、ひしめく樹々の間を抜けながら森の中を疾走していく。やがて鬱蒼と茂った森林の中に、僅かに開けた場所があった。そこにはゴブリンに取り囲まれ、怯えながらもショートソードを振るう少女と、巨体なゴブリンに組み敷かれている少女の姿が見える。組み敷かれた少女の服は引き裂かれており、両腕は下卑た笑みを浮かべる小さなゴブリンに押さえられていた。そして巨体のゴブリンが少女の脚を強引に割り開き、ヌラヌラ光る巨大なイチモツを少女に押し当て始めた。

「いやぁぁぁぁぁぁっ! 離しなさいよ、このケダモノ! ああっ、やっ、やめてっ! それだけは許して、あああぁぁぁっ!!!」
「うわぁぁぁぁん! おねえちゃん、おねえちゃん!」

 ショートソードで抵抗していた少女も、ゴブリンたちに抑え込まれ、少女たちの悲痛な叫びが辺りに響く。刹那、私とセレーヌはゴブリンの群れに目掛けて猛然と突進していった。

「はっ!」

 大柄のゴブリンの背中を袈裟斬りに斬り下げる。首を刎ねて仕留める事も出来たが、少女に血飛沫が撥ねたり、のしかかっている巨体のゴブリンに押し潰されるのを防ぐためである。背中を斬られたゴブリンは思わず少女から手を放し、怒号を上げながら怒りの形相で此方を振り向く。

「とあああっ―――!」

 返す刀で真一文字の斬撃をゴブリンの顔面に放つ。血飛沫を飛ばさないための峰打ちであるが、殺傷力は十分であった。骨が軋み砕けた感触と共に巨体のゴブリンは吹っ飛び地面に激突する。轟音が響き、地面に叩き付けられたゴブリンの体はヒクヒクと不規則な痙攣を続けていたが、やがて動かなくなった。

「ウギャッー!」「ギヤッギヤッギヤッーー!」「フギャーーー!」

 ボスと思われるゴブリンを失い、手下のゴブリンたちに動揺が走る。戦慄の表情を浮かべながら、我先にと逃げ出し始める。しかしゴブリンに恨みのあるセレーヌは、一切の容赦をしない。逃げ惑うゴブリンを追い回しながら、確実に刈り取っていくのであった。

「君っ、大丈夫? 怪我してない?」

 残党狩りはセレーヌに任せて、私は少女に声を掛けてみる。目の前で起きた急展開について行けず、茫然としているようだ。改めて少女に視線を巡らす。年の頃は17、18歳ぐらいだろうか――スラリとしたスレンダーの美少女である。艶めいた美しいブランドの髪が煌めき、瞳は澄んだ湖のように碧色であった。しかし特筆すべきは、彼女の長く尖った耳である。どう見てもエルフとしか思えないのであった。

「エルフ! キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!」
「え、えっ、何? なぜ人間がこんな所に? ど、どうしよう……人間に捕まったら酷い目に……でも、でも、この人は私たちを助けてくれたし、格好良いし……あっ! き、きゃーーーーーーーっ!」

 私の驚嘆の声に驚き、少女は正常の意識を取り戻した。しかし殆ど裸であった事に気付くと、慌てて胸と下半身を隠し、非難じみた目で私を見るのであった。

「あっ、ご、ごめん!」

 白く端麗な裸身に見惚れていた私は、慌てて目を逸らす。そしてアイテムボックスから取り出した私の上着を渡すと、少女は躊躇しながらも受け取るのであった。


「おねえちゃん、ごめんなさい。私のせいで……」

 暫くするとセレーヌに付き添われて、幼いエルフがやって来た。そのエルフは姉と思しきエルフに謝り続け、今にも泣きそうであった。

「ふふっ、リサが悪いわけじゃないのよ。敵の接近に気付けなかった私のミスよ。だから気にしないで」
「でもリーアおねえちゃん、私が逃げ遅れたせいでこんな事になって……人間に捕まった私たちは、売り飛ばされちゃうの?」
「大丈夫よ、リサ。この人たちは、今までの下劣な人間と雰囲気が全然違う。それにあの男の子は黒髪で黒い瞳で、持っている武器は刀だよ。きっと、私たちの村を救ってくれたショウイチ様の再来だよ」
「ショウイチ様の再来……。そ、それじゃあ、村に帰れるんだね。乱暴されたり売り飛ばされたりしないで、おねえちゃんと帰れるんだね! ぐすん! うわぁぁぁぁん」

 緊張の糸が切れたのだろうか――堰を切ったようにリサは泣き始めた。そんな妹を慈しむように、リーアはリサの頭を優しく撫でるのであった。


「お礼を言うのが遅れました。私の名前はリーアです。そしてこちらが、妹のリサです。私たち姉妹を助けていただいて、ありがとうございます」
「ははっ、そんなに気にしなくていいよ。偶々この辺りで修行をしていただけだからね。ああそうだ自己紹介がまだだったね。私の名前はミツルで、こちらの美少女がセレーヌだよ」
 
 私たちに深々と頭を下げるリーア。リーアの背中に隠れていたリサも、チョコンと頭を下げる。そんな様子がなんとも微笑ましく、私とセレーヌは思わずほっこりしてしまうのであった。


「ミツルさんとセレーヌさん、本当にありがとうございました。お二人とも本当にお強いんですね。ところで、あの、厚かましいお願いなのですが……私たちの村まで来てもらえないでしょうか?」
「んっ?! 村に行くのは吝かでないけど、よそ者の私たちが村を訪ねて問題ないの?」

 エルフが住んでいる村には興味があるし、今まで誰とも接触できていない私たちは、この近辺の情勢も知りたい所であった。しかしリーアたちの言葉の端々には、人間を恐れている気持ちが見て取れていた。私たちが村を訪ねると、ひと騒動起きそうだが――リーアはグイグイと迫ってくる。

「本来ならば人間を村に招くような事はしません。人間に村の存在を知られたら大変な事になります。でも、ミツルさんとセレーヌさんは別です。私たちをゴブリンから助けてくれましたから……。それにミツルさんの姿形は、私たちが唯一尊敬している人間で、救世主だったショウイチ様の再来としか思えません。それと……恥ずかしい話ですが、まだ足腰に力が入りません……」

 へなへなと座り込んでしまったリーア。それを見たセレーヌが耳元でそっと囁く。

「ミツル様! おんぶして差し上げればよろしいかと存じます。そうすれば、私ほどのボリューム感はありませんが、胸の感触が楽しめますよ! ……痛いです!!」

 残念な美少女になっていくセレーヌにチョップをお見舞いすると、私たちはリーアの住んでいる村へと向かうのであった。
 
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