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月明かりの下で!

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 焚火の炎がユラユラと揺らめく。スヤスヤと眠るセレーヌを、オレンジ色の光が優しく照らしている。

「う~ん! ミツル様…」

 寝返りを打ったセレーヌの口から心細げな声が漏れる。私は手を伸ばし、そっとセレーヌの頭を撫でる。

「えへへ!」

 あどけない寝顔に笑みを浮かべると、セレーヌは安堵したように再び小さな寝息を立て始めた。

 私は自分の上着をセレーヌに掛けると、水辺に向かって歩き出す。セレーヌを救えた喜びと、危機に追いやった不甲斐なさで、頭の中は未だにごちゃごちゃである。私は熱くなっている身体を冷やすべく、水の中に足を浸した。

 滝の音が夜の静寂の中でしんみりと鳴り響いている。川面を涼しい夜風が吹き抜けていく。周りには魔物の気配も無く、はるか遠くで狼の遠吠えのような声が、微かに聞こえてくるだけである。私は心地よい清涼を感じながら、独り物思いに耽るのであった。

「ミツル様、水浴びですか? 私を誘ってくれないなんて水臭いです」

 ボーっと考え事をしていると、背後から声が聞こえる。弾かれる様に振り向くと、そこにはセレーヌの姿があった。しかし、殊更に驚いたのは、セレーヌが上着を羽織っただけの下着姿であったことだ。月の光に照らされて、セレーヌの銀色の髪が絹の様に艶めき、月明かりで浮かび上がった流線型の美しいボディは、神々しいまでに美しかった。蠱惑的な魅力に目が離せず思わず息を呑む。そんな私を見たセレーヌは、岩場に上着を置くとブラの紐を肩から外し、下ろしたショーツを脚から抜き取っていく。そして、一糸纏わぬ姿になったセレーヌは、いたずらな瞳で私を見つめると――ザブンと滝壺にダイブするのであった。

「ミツル様、一緒に泳ぎませんか?!」

 私に手招きすると、滝壺を滑るようにセレーヌが泳ぎだす。青白い月明かりの下で、美しい裸体が水面から見え隠れする。私は服を脱ぎ捨てると、誘われるままにパンツ一丁で滝壺に飛び込んでいった。


「ふふっ、ミツル様! 私を捕まえたら、ミツル様の願いを何でも叶えて差し上げます」

 水面から顔を出した私に、バシャバシャと水を掛けながら、セリーヌが艶然と微笑む。彼女が水を跳ね上げる度に、量感のある形の良い膨らみがプルンプルンと揺れ動く。セレーヌの大胆で甘美な誘惑に、平静をよそおう事など土台無理な話であった。私はセレーヌを捕まえるべく、彼女に向かって怒涛の勢いで泳ぎ始めるのであった。


「いや~ん! ミツル様のエッチ♡」

 セレーヌは、つかず離れずの距離を保ちながら、私の伸ばした手をスルリスルリと躱していく。私の猛攻を物ともせず、大はしゃぎで滝壺の中を逃げ回っている。そして、暫しの追いかけっこの後、私はやっとの思いで滝壺の奥の岩壁にセレーヌを追い詰めたのであった。

「はあっ、はあっ! セレーヌさん! 男にあんなエッチな挑発をしたら、どんな目に遭うか……少しお仕置きが必要みたいだね」
「クスッ、ミツル様なら一向に構いません。早く私を捕まえて、お仕置きして下さい」

 追い詰められているのに、小悪魔的な笑みを浮かべるセレーヌ。そんな彼女を捕まえようと、私は手をワキワキさせながら両腕を伸ばすのだが――。

 チャポン!

 水の跳ねる音と同時に、彼女の姿が消える。どうやら、水の中に潜ったようだ。月明かりの届かない水底に潜られて、セレーヌを見失ってしまった。私は耳を澄まして辺りの様子を窺う。再び浮かび上がった所を捕まえる腹積もりだ。そして、刻々と時間が過ぎ、やがて私の背後からポコポコと気泡の音が聞こえ始める。

「そこだ!」

 振り向きざまに両腕を広げ、セレーヌを抱え込もうとする。しかし、威勢の良い掛け声とは裏腹に、セレーヌの姿はそこには無い。私はスクリューパイルドライバーを失敗したザ〇ギエフの如く、スカりモーションのまま立ち尽くすのであった。


「ミツル様、私はここですよ!」

 音もなく水中から飛び出して来たセレーヌに、背後から抱き付かれる。先程の気泡は、セレーヌが魔法で発生させたトラップのようだ。まんまと引っ掛かった私だが、悔しさなど微塵もない。私は背中越しにピッタリと密着した柔らかな膨らみと、瑞々しい柔肌の感触を存分に堪能するのであった。


「あっ! セレーヌさん、身体の方はもう大丈夫なの?!」

 セレーヌの艶姿と雰囲気に流されていた私は、今更ながら素っ頓狂な声を上げる。

「ふふっ、ミツル様のお陰で完全に回復しました。ミツル様は命の恩人です」

 キュッと私に抱き付くセレーヌであったが、身体は心なしか震えている気がする。やがて、涙を呑み込むような声でセレーヌは胸の内を語るのであった。


「ミツル様は身の危険を省みず、私を助けに来てくれました。戻ってきたミツル様を見た時は、本当に胸が張り裂けそうでした。私なんか見捨てて、ミツル様は生き残って欲しいと思ったんです。ミツル様の身にもしもの事があったら、私は死んでも死にきれません」
「セレーヌさんを見捨てられるわけないよ! それに、セレーヌさんが頑張ってくれたから、エコエコアザラシから勝機を掴めたんだよ。それからセレーヌさん――死ぬなんて言わないでよ!」
「でも、でも、ミツル様を危険に晒してしまいました。一歩間違えれば、ミツル様の命も危なかったです。その上、私を助ける為に高価な素材をファラ様に献上させてしまって……従者失格です」
「私はセレーヌさんの事を従者なんて思ってないよ。大事なパートナーだと思っているんだけど」
「パ、パートナー?! 私とミツル様はパートナー! つまり、私とミツル様は人生のパートナーで、これからお互いに手を取りあって……えへへ!」
「セレーヌさん?」
「な、何でもありません! でも、でも、あの素材は小国を買えるぐらいの価値があったのではないですか?……私なんかの為に……」
「ははっ! 素材なんて、命があれば幾らでも手に入れる事が出来るよ。まあ確かに反省すべき事はたくさんあるけど……セレーヌさんが助かるなら、素材なんて惜しくも無いよ」
「ミツル様……」
「はい! この件はもう終わり! セレーヌさんは回復したばかりだから、あんまり身体を冷やすのは良くないよ。早く水から上がろうよ」

 私はセレーヌの手をしっかりと握ると岩場まで歩き出す。岩場に着いた私は、身体を拭くタオルをアイテムボックスから取り出して、セレーヌに渡そうとしたのだが――。

「ミツル様!」

 気が付くと、紅潮したセレーヌの顔がすぐそこにあり、熱い吐息が耳元をくすぐる。そして、セレーヌの両手が私の背中に回されたかと思うと、私は岩場に押し倒されるのであった。

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