異世界で娼館と商館経営⁉ ~チートを駆使したオッサンの剛腕繁盛記~

悪代官と越後屋

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21.魔性の女リルル

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「はぁ~っ、こ、これは驚きましたわ! トミタカ殿がエリスにプレゼントした指輪も名品でしたが、これはレベルが違いますわ……強いて言うならば、神が作りし芸術品ですわね」
「はわわっ、ステキなアクセサリーがこんなに……これもあれも欲しいですぅ」

 アタッシュケースの中にはネックレスにペンダント、イヤリングにブレスレットに指輪にブローチと――より取り見取り、五●みどりである。うっとりとアクセサリーに見入っているアネット様に、センターストーンがハート型の貴重な指輪を薦めるのであった。

「アネット様、こちらの指輪など如何でしょうか? これはハートシェイプカットと申しまして、カット可能な原石が希少なうえに、コストや手間も掛かる貴重な品です。恐らくは、この国……いや、この大陸でも唯一の物と思われます。それ故に、美しく高貴なアネット様には相応しい逸品かと……」
「あらあら、トミタカ殿は口がお上手ですわね♪ でも褒められて悪い気はしませんわ。あなたぁ~、トミタカ殿が薦めてくれたこの指輪ですけど、私に似合うと……」

 辺境伯様に視線を向けたアネット様が、身体をワナワナと震わせている。つられるように視線の先を見てみると、これまたビックリ。辺境伯様とリルルがイチャコラしているじゃあーりませんか。

「リルル、君は本当に魅力的な女性だな。美しく艶めいたブロンドの髪、吸い込まれるような澄んだブルーの瞳、しなやかで磨きのかかった肢体。妖艶でミステリアスな美女とは実に興味深い」
「うふふっ、辺境伯様のようなステキな殿方にご愛顧いただくとは、女冥利に尽きますわ♡ あんっ、そんなに熱い視線で見られると、ドキドキして身体が火照ってしまいますわ。クスッ、少し失礼しますね♡」

 リルルはブラウスの胸元に指を掛けて少し広げると、パタパタと右手で扇ぎ始めた。胸元を大きく膨らませているブラウスの下からは、白い柔肌と煽情的な下着が垣間見えている。たわわで透き通った乳肌はしっとりと汗ばんでおり、これでもかという程に男の劣情を刺激していた。辺境伯様はリルルの胸元を凝視しており、彼女のエロチックな仕草と淫靡な魅力に首ったけのようである。

「アネット様、も、申し訳ございません! リルルには、後でよく言って聞かせますので……」
「おほほ、あれぐらいの事は日常茶飯事ですわ! それよりトミタカ殿、その指輪を私の指に着けてくださいな」

 アネット様は、白魚のような美しい指を差し出してくる。それはそれで良いのだが、何故か左手の薬指である。辺境伯様への意趣返しと思われるが、とんでもない修羅場に巻き込まれてしまったようだ。

「ア、アネット様、さすがにそれはマズいのでは……」
「おほほ、ほんの戯れですから気にしないでくださいませ。それから手にキスをして、愛の告白もお願いしますわね♪」

 あーーっ、何でこんな事態に……。これは全てリルルのせいである。あのサキュバスは、何かろくでもない事を企んでいるのだろう。後で絶対にお仕置きしてやるぞ。

「アネット様! 君の笑顔をこれからもずっと見ていたい!」

 クサいセリフの後、手の甲にキスをして薬指に指輪をはめていく。しかしアネット様の様子が少しおかしいのだ。恥ずかしそうに身を捩らせ、艶を含んだ笑みを浮かべている。

「あらあら、本当に告白してくれるとは思いませんでしたわ♪ でもステキな言葉ですわね……年甲斐もなく、ときめいてしまいましたわ♡ ふふっ、私も『喜んで!』と返事をした方が良かったかしら?」
「むぅ~っ、お母様ばかりズルイです。トミタカ様、私にも告白してくださいよ!」

 あーーっ、エリス様まで無理難題を……。しかし戯れとはいえ、アネット様に告白をしてしまったのだ。これで断ったらエリス様を傷つけてしまうだろう。子煩悩の辺境伯様に気付かれたら面倒な事になりそうだが、私は腹をくくるのであった。

「エリス様、君のいない人生は考えられない!」

 もう完全にヤケである。キザなセリフの後、エリス様にはテリの強いホワイトピンクのパールネックレスを差し出した。エリス様には指輪をプレゼントしているので、敢えてネックレスを選択したのだ。

「えへっ、嬉しいです♡ トミタカ様、ネックレスを付けてもらえますか?」

 エリス様は後ろを向くと、ゆっくりとプラチナブロンドの髪を掻き上げる。私がネックレスの留め金を閉じると、彼女は花が綻ぶような笑顔を見せるのであった。


「うふふっ、トミタカ殿――これらの品物は全て買い上げますわ。全部で御幾らかしら?」
「は、はいっ! アネット様の指輪とエリス様のネックレスは、私からのプレゼントにしますので、全部で白金貨130枚と大金貨7枚(1億3070万円)でお願いします」

 ブラックマーケットで800万円程で仕入れた品物を、インド人もビックリの強気価格での販売である。私としても前回の利益の大半をつぎ込んだ大勝負だ。ゴクリと生唾を呑み込みながら、事の成り行きを見守っていた。

「あらあら、とても良心的なお値段ですわね。しかも指輪とネックレスまでプレゼントしてくれるなんて……ふふっ、良かったわねエリス――そのネックレスは貴女の物よ」
「トミタカ様、あ、ありがとうございます! あの、その……こ、これはお礼です。……チュッ♡ 」

 駆け寄って来たエリス様が頬に口付けをしてくる。彼女の大胆な行動に驚いたが、当の本人も恥ずかしかったようである。顔をカーッと赤くして、うつむきながらモジモジとしている。キッ●オフのような甘酸っぱい空気が醸し出され、私も思わず照れてしまうのであった。

「セバスチャン、直ぐにお金を用意しなさい」
「は、はい。しかしアネット様――辺境伯様に相談も無く、この様な高額な買い物は如何かと思いますが?」
「良いのです。色ボケの主人には、後でゆーーーーくりっとお話をしておきますから💢 」
「か、畏まりました! 直ちに用意いたしますので、少々お待ちください」

 アネット様の異様な迫力に気圧されて、セバスチャンは慌てて部屋を出て行った。普段温厚な人を怒らせると怖い――というが、アネット様はそれに該当するようだ。私は辺境伯様の冥福を祈るのであった。


「ははっ、アネットとの商談も終わったようだな。待たせてすまなかったなトミタカ殿――リルルとの会話が思いのほか弾んでしまってな。……ところでトミタカ殿、此処だけの話なのだが……リルルを私に譲ってくれないか? 勿論、お礼なら如何様いかようにも……」

 ギロッ!!
 
 リルルに鼻毛を抜かれ、のぼせ上がっている辺境伯様は周りが見えていないようだ。浮かれてノコノコとやって来た境伯様に、アネット様たちの絶対零度の冷たい視線が突き刺さる。辺境伯様は慌てて取り繕うとしているが、もはや手遅れであろう。

「ゴホンゴホン、アネットの指輪もエリスのネックレスも似合っているではないか! さすがトミタカ殿が扱っている品々だな。うむうむ、美しいアネットと可愛らしいエリスにはピッタリの逸品だな」
「うふふっ、トミタカ殿がプレゼントしてくれましたのよ♪ 私の薬指に指輪を通して熱い愛の言葉を……。はあぁっ、思い出すだけで、ドキドキと胸が高鳴ってしまいますわ♡ 」
「えへへ、私もトミタカ様にステキなネックレスをプレゼントしてもらいました♪ し、しかも、告白までされちゃいました♪ きゃ~~~~~っ♡ 」
「そ、そんな高価な品をプレゼントだと……しかも愛の言葉に、告白された?……い、一体どういう事なのかなトミタカ殿? 事と次第によっては、いくら貴殿でも……」

 辺境伯様の首だけがギギギと此方を向く。真後ろまで首が回りそうな勢いである。貴方は異世界の司馬懿ですか? あるいはエ●ソシスト? 怖いから本当に止めてください。

「貴方は黙っていてください! 大体、妾や愛人が何人もいるのに、トミタカ殿の部下にまで手を出すとはどういうつもりですか? 取引というものは、お互いの信頼があって成り立つものですよ。ここでトミタカ殿との仲が拗れたら、このような逸品は二度と手に入らないのですからね」
「お父様、不潔です! お母様と私の目の前で、女の人を堂々と口説くなんて非常識です! しかも嬉しそうにリルルさんの胸やお尻を触っていましたよね? 娘として恥ずかしいです!」
「そ、そんなことは無いぞ! あ、あれは……そう、スキンシップだ! 信頼の証なのだよ。うん」
「そうですか、信頼の証ですか……それならば、私がトミタカ殿とスキンシップをしても何の問題もありませんよね?」

 アネット様は微笑みながら、私の首に腕を巻き付けて抱き付いてくる。熟れた身体の柔らかな感触や肌の温もりが伝わってくる。

「えへへ、私もトミタカ様とスキンシップします♪」

 今度はエリス様が抱き付いてくる。スリスリと頬ずりしてくるエリス様は可愛らしくて、思わず頭を撫でてしまった。正妻と愛娘の当てつけ効果は抜群で、辺境伯様はヘナヘナと床に崩れ落ちてしまった。しかし、げに恐ろしきはリルルの魔性の魅力である。イケメンで女たらしの辺境伯様でさえ、あっけなく骨抜きにされてこのザマである。

「リルル……恐ろしい子!」

 サキュバスクイーンの恐ろしさを改めて思い知らされた私は、そう呟かずにいられなかった。

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