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16.キングカスの屋敷と獣人たち
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ぶっ倒れているレイラを放置して小部屋を出ると、応接間のソファーには仏頂面の辺境伯様が待ち構えていた。
「トミタカ殿、アネットの下着姿はどうだったかな? まさかと思うが、邪な気持ちを抱いたりしなかっただろうな?」
立ち上がった辺境伯様が、私の肩をバンバンと叩きながら問いかけてくる。どうやらかなり嫉妬しているようだ。
「あらあら、そんなにトミタカ殿を責めたらいけませんわ。私がお願いしたのですから」
「アネット、君も君だよ。いくらサプライズの為とはいえ、私以外の男に下着姿を晒すのは感心できないな。男は所詮ケダモノだよ。君は男への警戒心が足りないんじゃないか?」
「うふふっ、トミタカ殿は熱心に仕事をしていただけですわ。常に紳士的な態度でしたし、そのような事を言っては可愛そうですわ」
ごめんなさい、欲情していました。ついでに波動砲も発射寸前でした。
「と、ともかくだ――君は私の妻としての自覚が足りないようだ。誰の女なのか、もう一度分からせる必要がありそうだな!」
「あらあら、今日の貴方は、とても強引ですわね♪ ふふっ、どんな事をされちゃうのかしら♡」
まだ昼前なのにお二人ともお盛んである。エリス様に弟か妹ができそうな勢いだ。サプライズは既に成功したと言っても良いだろう。
「それでは辺境伯様、アネット様、この辺で失礼します。今からキングカスの屋敷と敷地の見分に行って参ります」
「うふふっ、早く商館を立ち上げて、色々な商品を見せてくださいな。今から楽しみですわ♪」
「うむっ、トミタカ殿の取り扱っている品物は逸品揃いなので私も楽しみだ。……ところで、トミタカ殿――エリスに妙な下着を売ったりしてはいないだろうな?」
げっ、また面倒な事を言い出したよ。透け透けヒラヒラのセクシーランジェリーを売っちゃいました。てへぺろ(・ω<)――なんて言ったら、どんな目に遭わされるやら……。ここは当たり障りのない言葉でお茶を濁しておこう。
「ご安心くださいませ。淑女に相応しい逸品をお渡し致しました。辺境伯様の心配は杞憂かと……」
うん、淑女の基準など人それぞれだ。だから嘘ではないはずだ。多分……。
「それならば良いが……。エリス、念の為に下着を見せてみなさい」
あーーーっ、また辺境伯様がしでかしたよ。今度はメガトン級のデリカシーのなさである。怒りと恥ずかしさでエリス様がプルプルと震えていますよ。私は速やかに転進します。
「お父様のバカァーーーー! む、娘の買った下着を確認するなんて、デリカシーが無さすぎです」
「い、いや、私はエリスの事を思ってだな……」
「お父様なんて大っ嫌いです! もう口をきいてあげませんから!」
バタンと扉を閉めると、エリス様は応接間から出て行ってしまった。愛娘に嫌われてしまった辺境伯様は、ショックで硬直しているようだ。さて、私もキングカスの屋敷に出掛けますか。
「辺境伯様、これにて失礼いたします」
魂が抜けたように茫然としている辺境伯様は放置しました。後はアネット様に慰めてもらってください。
張遼ちゃんを引き連れてキングカスの屋敷へと向かう事にした。準備を終えて客室を出ると、執事のセバスチャンと護衛の騎士が既に待機していた。アネット様が配慮してくれたようである。セバスチャンの案内でキングカスの屋敷へと向かって行く。城の西にある平民街と北側の貧民街がキングカスの縄張りであったらしく、屋敷も平民街の最奥にあるそうだ。平民街の表通りは露店が立ち並んでおり、人々は活気に溢れている。しかし奥に進むにつれて、空気は一変していった。入り組んだ細い道に沿って酒場や娼館が所々にあり、昼間だというのに娼婦らしき女性が客引きをしている。そして私たちの姿を見ると、建物の中に逃げるように消えていった。整備されていない道は至る所で泥濘んでおり、鼻をつくイヤな臭いが漂っている。感じからして色街のようだが、雰囲気は暗く治安はよくないようだ。
青龍偃月刀を携えた張遼ちゃんが先頭に立ち、警戒体制のまま街の中を進んで行く。やがて周囲を威圧するような、高い塀に囲まれた広大な邸宅が姿を現した。しかし塀の一部は焼け崩れており、門の周りには数名の兵士が待機していた。未だに戦闘の傷跡を引きずっているようだ。
「トミタカ殿、どうぞお通りください」
セバスチャンが渡した辺境伯様の手紙を確認すると、兵士たちは門を開ける。刹那、近くのボロ家から四人の女性が飛び出して来た。全員が若い女の子のようだが、服は粗末で誰もが薄汚れている。しかし特筆すべきは彼女たちが獣人だという事だ。大きな猫耳や犬耳や兎耳がピコピコ動いており、全員がとても可愛いのだ。彼女たちは止めようとする兵士を難なく躱し、張遼ちゃんの前に辿り着くと一斉に地面にひれ伏した。
「私たちを、あの家から追い出さないでほしいにゃ」
ははっ、やっぱり獣人たちにも、張遼ちゃんの方が主に見えますか。そうでしょうとも……元々、彼女は乱世の奸雄――曹操の重鎮で合肥城の城主ですからね。こちとら、しがない元サラリーマンのオッサンだ。威厳も品位もありませんからね。……グスン!
いじけている私を見て、張遼ちゃんは困り果てるのであった。
「トミタカ殿、アネットの下着姿はどうだったかな? まさかと思うが、邪な気持ちを抱いたりしなかっただろうな?」
立ち上がった辺境伯様が、私の肩をバンバンと叩きながら問いかけてくる。どうやらかなり嫉妬しているようだ。
「あらあら、そんなにトミタカ殿を責めたらいけませんわ。私がお願いしたのですから」
「アネット、君も君だよ。いくらサプライズの為とはいえ、私以外の男に下着姿を晒すのは感心できないな。男は所詮ケダモノだよ。君は男への警戒心が足りないんじゃないか?」
「うふふっ、トミタカ殿は熱心に仕事をしていただけですわ。常に紳士的な態度でしたし、そのような事を言っては可愛そうですわ」
ごめんなさい、欲情していました。ついでに波動砲も発射寸前でした。
「と、ともかくだ――君は私の妻としての自覚が足りないようだ。誰の女なのか、もう一度分からせる必要がありそうだな!」
「あらあら、今日の貴方は、とても強引ですわね♪ ふふっ、どんな事をされちゃうのかしら♡」
まだ昼前なのにお二人ともお盛んである。エリス様に弟か妹ができそうな勢いだ。サプライズは既に成功したと言っても良いだろう。
「それでは辺境伯様、アネット様、この辺で失礼します。今からキングカスの屋敷と敷地の見分に行って参ります」
「うふふっ、早く商館を立ち上げて、色々な商品を見せてくださいな。今から楽しみですわ♪」
「うむっ、トミタカ殿の取り扱っている品物は逸品揃いなので私も楽しみだ。……ところで、トミタカ殿――エリスに妙な下着を売ったりしてはいないだろうな?」
げっ、また面倒な事を言い出したよ。透け透けヒラヒラのセクシーランジェリーを売っちゃいました。てへぺろ(・ω<)――なんて言ったら、どんな目に遭わされるやら……。ここは当たり障りのない言葉でお茶を濁しておこう。
「ご安心くださいませ。淑女に相応しい逸品をお渡し致しました。辺境伯様の心配は杞憂かと……」
うん、淑女の基準など人それぞれだ。だから嘘ではないはずだ。多分……。
「それならば良いが……。エリス、念の為に下着を見せてみなさい」
あーーーっ、また辺境伯様がしでかしたよ。今度はメガトン級のデリカシーのなさである。怒りと恥ずかしさでエリス様がプルプルと震えていますよ。私は速やかに転進します。
「お父様のバカァーーーー! む、娘の買った下着を確認するなんて、デリカシーが無さすぎです」
「い、いや、私はエリスの事を思ってだな……」
「お父様なんて大っ嫌いです! もう口をきいてあげませんから!」
バタンと扉を閉めると、エリス様は応接間から出て行ってしまった。愛娘に嫌われてしまった辺境伯様は、ショックで硬直しているようだ。さて、私もキングカスの屋敷に出掛けますか。
「辺境伯様、これにて失礼いたします」
魂が抜けたように茫然としている辺境伯様は放置しました。後はアネット様に慰めてもらってください。
張遼ちゃんを引き連れてキングカスの屋敷へと向かう事にした。準備を終えて客室を出ると、執事のセバスチャンと護衛の騎士が既に待機していた。アネット様が配慮してくれたようである。セバスチャンの案内でキングカスの屋敷へと向かって行く。城の西にある平民街と北側の貧民街がキングカスの縄張りであったらしく、屋敷も平民街の最奥にあるそうだ。平民街の表通りは露店が立ち並んでおり、人々は活気に溢れている。しかし奥に進むにつれて、空気は一変していった。入り組んだ細い道に沿って酒場や娼館が所々にあり、昼間だというのに娼婦らしき女性が客引きをしている。そして私たちの姿を見ると、建物の中に逃げるように消えていった。整備されていない道は至る所で泥濘んでおり、鼻をつくイヤな臭いが漂っている。感じからして色街のようだが、雰囲気は暗く治安はよくないようだ。
青龍偃月刀を携えた張遼ちゃんが先頭に立ち、警戒体制のまま街の中を進んで行く。やがて周囲を威圧するような、高い塀に囲まれた広大な邸宅が姿を現した。しかし塀の一部は焼け崩れており、門の周りには数名の兵士が待機していた。未だに戦闘の傷跡を引きずっているようだ。
「トミタカ殿、どうぞお通りください」
セバスチャンが渡した辺境伯様の手紙を確認すると、兵士たちは門を開ける。刹那、近くのボロ家から四人の女性が飛び出して来た。全員が若い女の子のようだが、服は粗末で誰もが薄汚れている。しかし特筆すべきは彼女たちが獣人だという事だ。大きな猫耳や犬耳や兎耳がピコピコ動いており、全員がとても可愛いのだ。彼女たちは止めようとする兵士を難なく躱し、張遼ちゃんの前に辿り着くと一斉に地面にひれ伏した。
「私たちを、あの家から追い出さないでほしいにゃ」
ははっ、やっぱり獣人たちにも、張遼ちゃんの方が主に見えますか。そうでしょうとも……元々、彼女は乱世の奸雄――曹操の重鎮で合肥城の城主ですからね。こちとら、しがない元サラリーマンのオッサンだ。威厳も品位もありませんからね。……グスン!
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