9 / 53
9.お前もくっころの騎士にしてやろうか!
しおりを挟む
「撃っていいのは撃たれる覚悟のある奴だけだぁぁぁ!!!」
ドヤ顔で名セリフを放ったが、山賊たちは聞いている余裕がないようだ。立ちはだかる者は全て張遼ちゃんに斬り捨てられ、その上に銃という未知の武器まで現れたのだ。度肝を抜かれた山賊たちは混乱状態に陥っている。
「くそっ、また変な奴が現れたぞ!」
「気を付けろ! あの変なオッサンは妙な魔道具を持ってるぞ!」
「うるせぇ! 変なのはお前らの方だろ!」
無礼な山賊たちに無慈悲な鉄槌をお見舞いする。本官さんもビックリの銃の乱射で、山賊たちは忽ち腰砕けになっていく。そして一人また一人と後退りを始めた。それを好機と捉えた騎士たちは、気勢を上げると一斉に反撃に転じた。
「今こそ好機! この機を逃さず敵を殲滅するぞ!」
「くっ、不味いですぜ! 頭、ここはひとまず退却を……げっ、頭がいねえじゃねえかぁぁぁ」
「俺たちは捨て駒にされたんだ! 冗談じゃねえ、俺は逃げるぞ」
山賊の頭は戦況の不利を悟り、配下を置き去りにして既に逃走していた。頭を失って山賊たちは大混乱である。蜘蛛の子を散らすように、我先にと逃げ出していった。
「追うんですよ、張遼ちゃん! つかまえなさい!」
どこぞの帝王のような命令を思わず出してしまった。しかし、このような状況ではお約束のセリフであり――何より山賊の頭に逃げられると後腐れが残るからである。そして張遼ちゃんは私の意を酌んでいるようだ。弾かれたように飛び出すと、数分で山賊の頭や幹部らしき連中を捕らえてくるのであった。
「エリス様の危機を救っていただき、なんとお礼を申し上げてよいやら言葉も見つかりません!」
女騎士が礼の言葉を述べ、他の騎士たちも一斉に頭を下げる。そう、私ではなくて張遼ちゃんにだ。見目麗しく一騎当千の彼女と、冴えないオッサンの二人組である。私は下男か荷物持ちと思われているのだろう。
「い、いや……礼を言うならば、私ではなく主に述べて欲しいのですが……」
落ち込む私を気遣うように、張遼ちゃんは此方をチラチラと伺っているが、女騎士の耳には届いていないようだ。無遠慮にグイグイと張遼に迫ってくる。
「はあはあ、貴女様のお名前をお教え願いたい!」
「我が名は張遼……しかし、お礼なら主の方に……」
「チョウリョウ様ですか……エレガントで素敵な名前です。単騎で並みいる敵を薙ぎ倒し、窮地からエリス様を救う武勇と剛胆……。惚れました! 姉妹の縁を結び、ぜひ私のお姉さまに♡ はあっ、はあっ……」
張遼ちゃんを見つめる女騎士の目が非常にヤバい。恍惚とした表情で瞬きさえもしないのである。そして張遼ちゃんの手をしっかりと握ったままである。息遣いも徐々に荒くなっており、はっきり言ってドン引きである。
「主よ……申し訳ないが、この女人は手に負えません。それに欲望めいた危ない視線をヒシヒシと感じるのですが……」
多少の事では動じない張遼ちゃんであったが、本能的にこの女性を恐れているようだ。涙目になって私の後ろに隠れてしまった。
う~ん、オジサンの庇護欲を掻き立てる張遼ちゃんは、やっぱり可愛いなぁ――などと考えていると、目尻を吊り上げた女騎士が私の胸倉をムンズと掴むのであった。
「貴様ぁぁぁ💢 荷物持ちの分際で、お姉さまとの会話を邪魔するとはどういう了見だ!」
「いやいやいや、こう見えても私――張遼ちゃんの主なんですよ」
「チョウリョウ様の主だと?! 嘘を吐くな! 貴様のような匹夫にチョウリョウ様が仕えるわけがないだろう!」
ダメだよこいつ、全く人の話を聞きやしないよ。
思い込みの激しいポンコツ騎士の行動に困惑していると、彼女の行動は更にエスカレートしていった。
「そうか、奴隷契約だな! ……きっと妹御を人質にして、抵抗できないチョウリョウ様を奴隷にしたんだろ! そして、あんなことやこんなことを……ぐぎぎっ、何て卑劣な真似を……許せん斬り捨ててやる!」
「お待ちなさいレイラ! それ以上の非礼は許しませんよ」
理解しがたい妄想に困惑していると、凛とした鈴のように澄んだ声が響き渡る。視線を向けると、倒れた馬車の影から白いドレスの美しい少女が姿を現した。
「レイラ! 命の恩人に対して、その不遜な態度は何なのですか! それと騎士としてあるまじき言動の数々――さすがに看過できません! 下がりなさいレイラ!!」
「はっ、申し訳ございません――エリス様!!」
少女に一括されると、レイラとかいう女騎士は深々と頭を下げて素直に引き下がる。しかし私を見つめる目は敵意と憎悪に満ち溢れていた。
一体、私が何をしたって言うんだよー。くそっ、いずれ四肢を拘束してくっころの刑にしてやる。
「申し遅れました――エリス・ド・アルデンヌでございます。危ない所を助けていただき感謝いたします」
危険なエロ妄想をしていると、スカートの裾を持ち上げた華憐な少女が、花も綻ぶような笑顔を見せる。キラキラと艶めくプラチナブロンドの髪、澄んだグリーンの瞳、柔らかで華奢な身体つき――正しくTHEお嬢様である。私は胸に手を当て膝を折るのであった。
「これはこれはご丁寧に――。私、しがない旅の商人で富貴と申します。こちらが護衛の張遼です。以後お見知りおきを」
「トミタカ様とチョウリョウ殿ですか……。名前や服装から察するに、異国の方のようですね。ところで窮地から救ってくれたお礼をしたいのですが、お望みのものはございませんか?」
「いえいえ、義を見てせざるは勇なきなしと申しますし、当然の事をしただけですよ。もっとも張遼ちゃんが殆どの山賊を蹴散らしたんですけどね。あはは!」
「うふふっ、ご謙遜を! あの不思議な魔道具での戦いぶり――しかと拝見していましたよ。チョウリョウ殿の強さにも驚きましたが、私としては貴方様に非常に興味がありますのよ」
エリスという少女は、人懐っこい笑みを浮かべながら私を見つめている。あどけなさが残る可愛らしい少女であるが、怜悧で高貴な風格が漂っている。そしてこの少女との出会いが、波乱に満ちた異世界生活の幕開けとなるのであった。
ドヤ顔で名セリフを放ったが、山賊たちは聞いている余裕がないようだ。立ちはだかる者は全て張遼ちゃんに斬り捨てられ、その上に銃という未知の武器まで現れたのだ。度肝を抜かれた山賊たちは混乱状態に陥っている。
「くそっ、また変な奴が現れたぞ!」
「気を付けろ! あの変なオッサンは妙な魔道具を持ってるぞ!」
「うるせぇ! 変なのはお前らの方だろ!」
無礼な山賊たちに無慈悲な鉄槌をお見舞いする。本官さんもビックリの銃の乱射で、山賊たちは忽ち腰砕けになっていく。そして一人また一人と後退りを始めた。それを好機と捉えた騎士たちは、気勢を上げると一斉に反撃に転じた。
「今こそ好機! この機を逃さず敵を殲滅するぞ!」
「くっ、不味いですぜ! 頭、ここはひとまず退却を……げっ、頭がいねえじゃねえかぁぁぁ」
「俺たちは捨て駒にされたんだ! 冗談じゃねえ、俺は逃げるぞ」
山賊の頭は戦況の不利を悟り、配下を置き去りにして既に逃走していた。頭を失って山賊たちは大混乱である。蜘蛛の子を散らすように、我先にと逃げ出していった。
「追うんですよ、張遼ちゃん! つかまえなさい!」
どこぞの帝王のような命令を思わず出してしまった。しかし、このような状況ではお約束のセリフであり――何より山賊の頭に逃げられると後腐れが残るからである。そして張遼ちゃんは私の意を酌んでいるようだ。弾かれたように飛び出すと、数分で山賊の頭や幹部らしき連中を捕らえてくるのであった。
「エリス様の危機を救っていただき、なんとお礼を申し上げてよいやら言葉も見つかりません!」
女騎士が礼の言葉を述べ、他の騎士たちも一斉に頭を下げる。そう、私ではなくて張遼ちゃんにだ。見目麗しく一騎当千の彼女と、冴えないオッサンの二人組である。私は下男か荷物持ちと思われているのだろう。
「い、いや……礼を言うならば、私ではなく主に述べて欲しいのですが……」
落ち込む私を気遣うように、張遼ちゃんは此方をチラチラと伺っているが、女騎士の耳には届いていないようだ。無遠慮にグイグイと張遼に迫ってくる。
「はあはあ、貴女様のお名前をお教え願いたい!」
「我が名は張遼……しかし、お礼なら主の方に……」
「チョウリョウ様ですか……エレガントで素敵な名前です。単騎で並みいる敵を薙ぎ倒し、窮地からエリス様を救う武勇と剛胆……。惚れました! 姉妹の縁を結び、ぜひ私のお姉さまに♡ はあっ、はあっ……」
張遼ちゃんを見つめる女騎士の目が非常にヤバい。恍惚とした表情で瞬きさえもしないのである。そして張遼ちゃんの手をしっかりと握ったままである。息遣いも徐々に荒くなっており、はっきり言ってドン引きである。
「主よ……申し訳ないが、この女人は手に負えません。それに欲望めいた危ない視線をヒシヒシと感じるのですが……」
多少の事では動じない張遼ちゃんであったが、本能的にこの女性を恐れているようだ。涙目になって私の後ろに隠れてしまった。
う~ん、オジサンの庇護欲を掻き立てる張遼ちゃんは、やっぱり可愛いなぁ――などと考えていると、目尻を吊り上げた女騎士が私の胸倉をムンズと掴むのであった。
「貴様ぁぁぁ💢 荷物持ちの分際で、お姉さまとの会話を邪魔するとはどういう了見だ!」
「いやいやいや、こう見えても私――張遼ちゃんの主なんですよ」
「チョウリョウ様の主だと?! 嘘を吐くな! 貴様のような匹夫にチョウリョウ様が仕えるわけがないだろう!」
ダメだよこいつ、全く人の話を聞きやしないよ。
思い込みの激しいポンコツ騎士の行動に困惑していると、彼女の行動は更にエスカレートしていった。
「そうか、奴隷契約だな! ……きっと妹御を人質にして、抵抗できないチョウリョウ様を奴隷にしたんだろ! そして、あんなことやこんなことを……ぐぎぎっ、何て卑劣な真似を……許せん斬り捨ててやる!」
「お待ちなさいレイラ! それ以上の非礼は許しませんよ」
理解しがたい妄想に困惑していると、凛とした鈴のように澄んだ声が響き渡る。視線を向けると、倒れた馬車の影から白いドレスの美しい少女が姿を現した。
「レイラ! 命の恩人に対して、その不遜な態度は何なのですか! それと騎士としてあるまじき言動の数々――さすがに看過できません! 下がりなさいレイラ!!」
「はっ、申し訳ございません――エリス様!!」
少女に一括されると、レイラとかいう女騎士は深々と頭を下げて素直に引き下がる。しかし私を見つめる目は敵意と憎悪に満ち溢れていた。
一体、私が何をしたって言うんだよー。くそっ、いずれ四肢を拘束してくっころの刑にしてやる。
「申し遅れました――エリス・ド・アルデンヌでございます。危ない所を助けていただき感謝いたします」
危険なエロ妄想をしていると、スカートの裾を持ち上げた華憐な少女が、花も綻ぶような笑顔を見せる。キラキラと艶めくプラチナブロンドの髪、澄んだグリーンの瞳、柔らかで華奢な身体つき――正しくTHEお嬢様である。私は胸に手を当て膝を折るのであった。
「これはこれはご丁寧に――。私、しがない旅の商人で富貴と申します。こちらが護衛の張遼です。以後お見知りおきを」
「トミタカ様とチョウリョウ殿ですか……。名前や服装から察するに、異国の方のようですね。ところで窮地から救ってくれたお礼をしたいのですが、お望みのものはございませんか?」
「いえいえ、義を見てせざるは勇なきなしと申しますし、当然の事をしただけですよ。もっとも張遼ちゃんが殆どの山賊を蹴散らしたんですけどね。あはは!」
「うふふっ、ご謙遜を! あの不思議な魔道具での戦いぶり――しかと拝見していましたよ。チョウリョウ殿の強さにも驚きましたが、私としては貴方様に非常に興味がありますのよ」
エリスという少女は、人懐っこい笑みを浮かべながら私を見つめている。あどけなさが残る可愛らしい少女であるが、怜悧で高貴な風格が漂っている。そしてこの少女との出会いが、波乱に満ちた異世界生活の幕開けとなるのであった。
31
お気に入りに追加
193
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。



Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
男が少ない世界に転生して
美鈴
ファンタジー
※よりよいものにする為に改稿する事にしました!どうかお付き合い下さいますと幸いです!
旧稿版も一応残しておきますがあのままいくと当初のプロットよりも大幅におかしくなりましたのですいませんが宜しくお願いします!
交通事故に合い意識がどんどん遠くなっていく1人の男性。次に意識が戻った時は病院?前世の一部の記憶はあるが自分に関する事は全て忘れた男が転生したのは男女比が異なる世界。彼はどの様にこの世界で生きていくのだろうか?それはまだ誰も知らないお話。

高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜
水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。
その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。
危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。
彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。
初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。
そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。
警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。
これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。
ゲート0 -zero- 自衛隊 銀座にて、斯く戦えり
柳内たくみ
ファンタジー
20XX年、うだるような暑さの8月某日――
東京・銀座四丁目交差点中央に、突如巨大な『門(ゲート)』が現れた。
中からなだれ込んできたのは、見目醜悪な怪異の群れ、そして剣や弓を携えた謎の軍勢。
彼らは何の躊躇いもなく、奇声と雄叫びを上げながら、そこで戸惑う人々を殺戮しはじめる。
無慈悲で凄惨な殺戮劇によって、瞬く間に血の海と化した銀座。
政府も警察もマスコミも、誰もがこの状況になすすべもなく混乱するばかりだった。
「皇居だ! 皇居に逃げるんだ!」
ただ、一人を除いて――
これは、たまたま現場に居合わせたオタク自衛官が、
たまたま人々を救い出し、たまたま英雄になっちゃうまでを描いた、7日間の壮絶な物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる