異世界で娼館と商館経営⁉ ~チートを駆使したオッサンの剛腕繁盛記~

悪代官と越後屋

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2.ゲーマー女神

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「ハハハッ、遂にこの日が来た! 早速、換金しに行くぞ!!!」

 私は当選した宝くじをバックに入れると、ルンルン気分で身支度を整え始めた。

 私の名前は金森富貴とみたか、中小企業のしがないサラリーマンである。下からは悪口を言われ、上からはネチネチ責められる中間管理職を長年務めていた薄給の社畜であった。名前と反して富貴とは縁のない生活を送っていたが、遂に私にも幸運の女神が訪れた。そう、宝くじで一等10億円が大当たりしたのである。

 早々に辞表を叩き付けて、ブラック企業からの卒業を成し遂げた私は、今までのうっ憤を晴らすように自由を謳歌していた。そしてついに来た宝くじの換金日――私は喜び勇みながら玄関のドアを開け外に出た。するとそこには、派手な甲冑を身に纏い、大剣を振りかざしてくる若い男の姿が……。そのゲームのアバターのような男は、炎に纏われた大剣を躊躇なく振り下ろす。刹那、爆音が耳をつんざき、灼熱の熱風と衝撃が私の身体を難なく引き裂いていった。そして私の記憶は、ここで完全に途切れたのである。 



「ごめんなさーーーーーい!」

 少女の声で眠りを破られ、私はおもむろに身体を起こす。玄関を出た直後に、妙な男に剣で斬り付けられたのは夢だったのだろうか? 私はゆっくりと辺りを見回してみる。

 まだ夢の中なのだろう――周りには靄が立ち込め、白いドレスを纏った少女が土下座をしながらエグエグと泣いている。

「えーっと、お嬢さん――此処は何処なのかな? それからお嬢さんはどうして泣いているのかな?」
「グスン! 怒らないで私の話を聞いてくれますか?」
「勿論だよ。こう見えても私は、ブラックな会社で散々な目に遭っていたからね、多少の事では動じないよ。それに今の私は凄く機嫌が良いんだよ、怒る要素なんてこれっぼっちも無いよ」

 ワンマン経営者の元で、理不尽なクレームを数えきれないほど処理してきた私は、感情を制御する自信があったのだ。そしてバラ色の人生が約束された私は――三度目の過ちを許せない仏より慈悲深く、心に余裕があったのだ。そう、彼女から次の言葉を聞くまでは……。

「私は複数の世界を管理している女神の一人で、テュケーと申します。誠に言いにくいのですが、貴方は此方の手違いで……たった今、お亡くなりになられました」
「えっ? 変な男に剣で斬られたけど、あれって夢だよね???」
「これにはマリアナ海溝よりも深い訳がありまして……実は、かくかくしかじか……」
「ざけんなーーーーーーーっ!!!」
「キャーーーーー! 怒んないって言ったじゃないですか!」

 女神の話を要約するとこうである。

 このアホ女神のいる天界では日本文化が流行中で、この女神はオタク文化や日本のオンラインゲームモドキにご執心らしい。そして女神がハマっているゲームのタイトルはモンスタークエストウォークとやらで、自分が設定したアバターで日本全国を探索するゲームのようだ。そしてモンスターを倒しながらレベルを上げ、アイテムや素材を獲得していく仕組みらしい。しかし運の悪い事に今回のイベント発生ポイントが自宅で、ギガモンスターであるゴールドリッチマンが出現したそうだ。それを見た女神は大興奮。狂喜乱舞しながら特大の攻撃スキルを発動。結果、勢い余って多大の神力を垂れ流し、ゲームに深刻なエラーを発生させたようだ。それが原因で見えないはずのアバターは具現化し、放たれた攻撃も現実のものとなって自宅近辺に多大な被害を与えたそうだ。

「お前、真性のアホだろ、脳みその代わりに糠みそでも詰まってんのかぁぁぁっ! 女神のくせに人様に迷惑を掛けるなあぁっっーーーー!!」
「うわーーーーーん! だってだって、10億ゴールドも持ってるモンスターが出現したんですよ。誰でも血沸き肉躍って、獣の血が騒いで、胸が弾んで暴走しますよぉぉぉ」
「弾むような胸が何処にあるんだよ! このまな板娘があぁぁぁぁっ!」
「言った! 言ってはいけない事を言ったぁぁっ! うわーーーーーん!」
「……ごめんごめん、ちょっと言い過ぎたね。謝罪するから許してね」

 ビービー泣き出す女神に若干イラつきながらも、話が進まないので適当に宥めておく。しかしバラ色の人生計画に黄色信号が灯ったのは否定できない。私は慎重に考えながら行動するのであった。

「お嬢さん! 凄まじく猛烈に著しく非常に如実に尋常じゃないぐらい誠に遺憾だけど、貴女の戯れで虫けらの如く殺されたのは理解できたよ。それで、私という存在はこれからどうなるのかな?」
「うーうー、そんなにネチネチ言わなくてもいいじゃないですか。……申し訳ありませんが、貴方の選択肢は二つしかありません。元の世界で輪廻転生して赤ん坊から始めるか、私の管理している別の世界――貴方から見れば異世界への転移という形になります。勿論どちらを選んでも特典はお付けします」
「お嬢さん! 宝くじで当選した10億円分の補償も、当然してくれますよね?」
「あーうー、その何と言うか……只今生活にゆとりが無くて……非常に困窮していまして……金銭の方はとてもとても……」
「廃課金乙」
「はわわわわっ、そんなに使っていませんよ。それに私は、ガチャを回しているのではなくて、経済を回しているのですよ。てへぺろ(・ω<)」
「💢すいません――殴っていいですか? ……よし決めた! 貴女の管理している異世界への転移を選びます。そして特典として、どこぞのラノベの様にお嬢さんも連れていきます。そしてタイトルは、この素晴らしい世界にを!だーー!!」
「キャーーーーー! 完全にパクリじゃないですか! それに復讐って何ですか? 私に何をするつもりですか?」
「勿論ナニだ! ロリ趣味の貴族相手に×××な事をさせたりピーーーな事をさせて、10億円分身体で返してもらおうか!」
「うわーーーーーん! 鬼、悪魔、人でなし、サディスト、サイコパス!」
「人様の人生をメチャクチャにしといて、おまいう💢 どんなに温厚な人間でも限界というものがあるんだよ。うわっはははは、今から私は社畜から鬼畜へとバージョンアップだあぁぁぁ!」
「キャーーーーー! ど、どこがバージョンーアップなんですか? 可愛くて可憐な女神に酷い事をしないでえぇぇぇっ! そ、そうだ、スキルとアイテムを特典として複数授けますので、それで手打ちにして下さいぃぃぃ」
「ふむふむ!? 複数のスキルとアイテムですか……当然レアなやつですよね?」
「勿論レア物です。ジャンジャジャ~~~ン♪ これを授けます」

 

 スキル 

 無限収納ボックス 異世界言語 鑑定

 アイテム
 
 自宅×1 ヘブンイレブン(コンビニ)×1 五階建ての団地(昼下がりの情事がありそうな、昭和の匂いが漂うおんぼろ団地)×1 豪邸×1 普通の住宅×5 物置小屋×3 映画館(廃館)×1 


「しょぼ! ていうか、スキルはありきたりの物だし、このアイテムは我が家の近所にあった建物だろ! ……あーーーーっ、さては壊した建物を証拠隠滅で押し付けるつもりだな! ゴルァァァ!」
「ヤ、ヤダナーーー、ソンナコトアルワケナイデスヨ」
「おいっ、何で横を向いているんだ? 私の目を見ながら、もう一度同じセリフを言ってみろよ」
「そんな面白い顔をマジマジと見たら、吹き出してしまうので無理で~~~す♪」
「💢秘技モーレツごっこ(死語)!」
「キャァァァァァァァーーーーー! な、何て事をするんですかぁぁぁーーー!! バカァー、スケベ、エッチスケッチワンタッチィィィ!!!」

 人の神経を逆なでするアホ女神のドレスを思いっ切り捲り上げてやった。ちなみに見えた下着は透け透けレースの黒色で、ロリ女神には似合わないエッチな代物であった。  

 
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