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熊の名は

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 こっそり二人の背後に回った私は、問答無用でグズの背後から、ヤクザキックをお見舞いした。吹っ飛んで、半死半生になったグズが恐怖の為か「優しく殺して~!」とかほざいていたが、刀で引っ叩いて気絶させた。

 一方、ジュビの方は逃げようとしたドジと対峙しているが、何だか足元がおぼつかない。どうやら勝手に酒を飲んでいたようで、千鳥足になっている。それでもドジの放つ矢を、次々と回避していく。

(酔犬?いや、酔拳か?)

 そのうち、ドジが弓に矢を番える一瞬の隙を突いて、ジュビの跳び蹴りがドジの股間にクリーンヒットした。

 あれは痛い。私の頭に、あの歌のフレーズが流れる。

(金太、負けるな 金太負けるな キ○タマ ケルナ )


 のた打ち回っているドジの頭も刀で引っ叩いて気絶させ、二人とも村の牢に放り込んでおいた。朝になれば、巡回の兵士が来るのでその時に引き渡そう。

 改めて、眠りに就こうとしたが騒ぎが大きくなり、ほとんど眠れないまま朝を迎え巡回の兵士に三人を引き渡した。アホ三人組は『俺達三人揃えば、ジェット気流攻撃が~~~』とか叫んでいたが、そのまま連れて行かれた。予想外だったが、多少報奨金を貰えた。あんな連中でも一応、賞金首だったようだ。

 ジュビと二度寝し目覚めると、村長のダンとユイが、私の部屋に礼を述べにやって来た。ダンは『娘だけではなく、村まで救ってくださってありがとうございます。改めてお礼を言わしてください』と頭を下げてきた。ユイはジュビを抱っこして、私の隣に座りドジ達との決闘の話をねだってくる。ダンはそんな私達を見て、にこやかな笑顔をうかべていた。

 ダンやユイと談笑していると、村人達が家に飛び込んできた。村の近くに熊が現れ、村の家畜が襲われたそうだ。ダンの話によると、テム村より50kmほど北にあるヘンナーオージ山に、突然変異の大熊が住み始め、周囲の熊を配下に収めてボスとして君臨しているそうだ。最近では配下が増え、村の傍まで出没するようになったそうだ。村としてもギルドに討伐依頼を出しているが、貧しい村の為、報奨金が少なく引き受ける人がいなくて困っているそうだ。兵士に関しても役立たずで、最近では熊を恐れて、申し訳程度の巡回で町に戻ってしまうそうだ。

 村の傍に熊が出没し家畜が襲われた事態を受け、ダンは重い口を開く。

「何度も世話になり、こんな事を言えた義理ではありませんが、祐太様お願いがあります」

 ダンと村人達は、一斉に頭を下げる。この流れは、あれだな・・・

 「相、分かった皆まで言うな。そのボス熊を倒す為に、ジュビが『男』を探す旅に出て各国を回り仲間を集め、何とかの三兄弟とか忍犬と協力してボス熊を倒すという事だ。そしてその熊の名は、ア○カブトだ」


 ジュビが以心伝心のスキルを使い『そんな訳あるか~馬鹿主人』と鼻をブーブー鳴らして文句を言ってくる。

 ユイが口を開く。

 「あの、祐太様何の話か分かりませんが、ボス熊の名前はレオナルドですよ」

 「レオナルド・・・・・・・熊?」

 (ククク、こりゃおかしい。久しぶりに名前を聞いた気がする)

 村人達が真剣な目で訴えている。こんな状況で笑うわけにも行かず、私は俯いて必死に笑いを堪えているのであった。

 
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