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闘技大会開催!
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「ゴホン! 祐太殿! 妾の話も聞いて欲しいのじゃ!」
リンちゃんをお姫様抱っこしながら、ベッドに運んでいると、顔を赤らめたお市様が話し掛けてくる。
「祐太殿! 妾とも、ランバダ……『『ギロッ!!』』……ではなく、闘技大会にも出場して欲しいのじゃ」
「私が、ですか? 久太郎殿をはじめ、お市様の護衛は猛者揃いだと思いますが……」
「連中では、少々荷が重いのじゃ! 祐太殿が引き受けてくれれば、妾の身体を……『『ギロッ!!』』……ではなく、これを授けるのじゃ」
侍従である愛と祐希に睨まれて、お市様は半泣きである。ベソをかきながらも取り出した桐の刀箱には、家紋である織田木瓜紋が施された刀袋が収められていた。お市様に手渡された刀袋の紐を解き、中の刀を拝見する。平巻きの柄に手を掛け、刃を上向きにしてから彫金が施された黒塗りの鞘から刀を引き抜く。それは、刀身が三尺を超える大太刀で反りも美しい孤を描いていた。平地の境にある、ゆったりとした波のような湾れ刃の刃文が魅力的で、思わず驚嘆の声が漏れてしまう。
「その刀は日本神刀と言って、妾が偶然手に入れた業物なのじゃ! しかも、妾の鑑定によると、この刀は魔力を注ぎ込む事によって属性が変化するようなのじゃ! 祐太殿、試してみるのじゃ」
お市様達を引き連れて、宿の裏にある庭に向かう。庭には、幹の太い枯れた大木が佇んでいた。指示に従い魔力を込めていくと、淡い光に包まれた刀身が輝きを強め、青みを帯びた神威なオーラに覆われていく。本来なら、レー〇ーブレードと叫んでから、ギャ〇ンダイナミックを放ちたかったが、この雰囲気では、流石の私でも出来なかったのであった。
静かに正眼で構え、裂帛の気合もろともに、枯れ木に斬撃を放つ。刀身に触れた樹皮が紙の如く切り裂かれ、一陣の風が駆け抜けたかと思うと、地を引き裂くような音と共に枯れた大木が地に転がり落ちる。
「な、な、何という破壊力なのじゃ! 祐太殿、それは風の属性かえ?」
「そうですが……ここまで凄まじいとは思いませんでした」
「初見の試し斬りで、ここまで使いこなせるとは……妾は、男も刀も見る目があるようじゃ」
ずっしりと重い日本神刀に目を掛ける。どこぞにあった政党のような名前に最初は困惑したが、折り紙つきの名刀のようだ。陶酔した目で見つめてくるお市様を尻目に、今度は火の属性を込めてみる。刀身を包んだ赤い焔が熱を放ちながら煌き、揺らめくような赤いオーラに覆われていく。心気を澄まして刀を斬り下すと倒木は真っ二つに割れ、赤い一閃の光が切り口を焼き尽くしていく。
「祐太殿! 其方は、やはり妾の婿にふさわしいのじゃ」
目の前の光景に興奮したお市様が、ヒシと抱き付いてくる。いつも以上の積極さに、困惑してしまうほどだ。抜き身の刀を鞘に戻して、お市様に返そうとすると、お市様は静かに首を振る。
「祐太殿以上に、その刀を使いこなせる者はおるまい! それは、其方の物じゃ」
「こんな高価な物を、受け取るわけにはいかないですよ」
「遠慮する事は無いのじゃ! 妾と祐太殿は、もはや一蓮托生なのじゃ!」
「コラッ―――!!! ご主人様の正妻はリンだよ! 市ちゃんは、引っ込んでてよ」
いつの間にか目を覚ましたリンちゃんがお市様に絡み、アリスちゃんやユイちゃんも参戦してくる。収拾がつかない状態に、私は頭を抱えるのであった。
その後、庭の木を勝手に切り倒してしまった事を、宿の女将に話したら笑いながら許してくれた。女将の話によると、あの木は元々切り倒すつもりで、手間が省けた上に薪にもなると喜んでくれた。年齢以上に落ち着いた、優雅な仕草が美貌を際立たせ、屈託のない柔和な笑みに思わず見とれてしまうのであった。
打ち上げられた花火の音が、耳をつんざくように辺りに響き、人々のボルテージは徐々に上がっていく。ただでさえ人通りの多い街路は、身動きできないほどの群衆で埋め尽くされている。闘技大会が行われる円形の建造物の周りは熱い熱気で包まれ、入場を求める観客で長蛇の如く長い行列が出来ていた。
遂に、闘技大会が開催されたのである。参加登録は事前に済ましてあったので、女性陣と一緒に選手の控室へと向かう。部屋の空気は鉛のように重く――嫉妬、怒気、殺意を含んだ容赦の無い複数の視線を浴びせられる。控室に入る前に、類まれな美しさを誇る美少女達と、イチャイチャしていたのが原因だろう。もめ事を起こすと失格になるので、直接絡んでくる者はいないが、監視されているような圧迫感で居心地が悪い。突き刺すような視線を受け流しながら出番を待っていると、私の名前が呼び出される。席を立った私は、建造物の中央にあるアリーナへと向かう。長い石畳みを歩いて行くと、薄暗い通路にゆるりと明かりが差し込んでくる。やがて、割れんばかりの歓声と拍手の音が響き、辺りを揺るがし始めた。
「ぐふふっ! 一回戦の相手は、冴えないおっさんか! これじゃ勝負にもならんな!」
アリーナの中心で対戦相手を待っていると――真打ち登場とばかりに、腕を突き上げた大柄の男が入場してくる。黒い縞模様が特徴の虎の獣人で、鋼の筋肉に覆われた精悍な体つきである。武器は携帯してないが、研ぎ澄まされたような鋭い爪と俊敏な動きに特化した格闘家のようだ。
獣人が、アリーナの中央に辿り着くと観客の歓声はピタリと止まり、スピーカーのような魔道具から大声量の実況が流れ始める。
「お~~~っと!! ここで、優勝候補の登場だ! 現代に蘇ったネプチューン、美しき殺人兵器、電気を自在に操るエレクトリックファイターーー、電虎!!! 対するは~、人間サンドバッグ、試合前に美女とイチャつく私生活のワールドチャンピオン、無名戦士~祐太!!!」
総立ちの会場からは、電虎を称賛する声と私への嘲笑が、次から次へと降り注ぐ。古〇伊知郎を彷彿させる、余りと言えば余りの実況と現状に、私は膝から崩れるのであった。
「貴様も、よくよく運のない男だな! ぐふふっ! 一撃で決めてやるぜ!」
目をギラつかせた電虎の拳が、妖しく輝き始める。青白い放電を繰り返す拳からは、ピリピリとした重圧が伝わってくる。
「これで終わりだ!」
試合の合図と同時に、電気をまとった拳を振りかざしながら、電虎が猛然と突っ込んでくる。観客からの野卑な罵声と、電虎の舐めきった態度に遂に私はキレてしまった。
「てめぇ! その名前なら、電気を大切にしろ! 謝れぇぇ、東〇電力に、謝れぇぇぇッ!!!」
私は日本神刀を抜刀すると、殆ど八つ当たりの斬撃を見舞った。
「ギエ―――ッ!」
踏みつぶされた蛙のような声と共に電虎の巨体が吹っ飛び、会場の床をボールのように転がっていく。
――アカン! 無属性の峰打ちで、この破壊力とは……本気出したら、完全にオーバーキルだろ、これ。
驚愕する私を尻目に、観客席は凍り付いたように静まり返るのであった。
リンちゃんをお姫様抱っこしながら、ベッドに運んでいると、顔を赤らめたお市様が話し掛けてくる。
「祐太殿! 妾とも、ランバダ……『『ギロッ!!』』……ではなく、闘技大会にも出場して欲しいのじゃ」
「私が、ですか? 久太郎殿をはじめ、お市様の護衛は猛者揃いだと思いますが……」
「連中では、少々荷が重いのじゃ! 祐太殿が引き受けてくれれば、妾の身体を……『『ギロッ!!』』……ではなく、これを授けるのじゃ」
侍従である愛と祐希に睨まれて、お市様は半泣きである。ベソをかきながらも取り出した桐の刀箱には、家紋である織田木瓜紋が施された刀袋が収められていた。お市様に手渡された刀袋の紐を解き、中の刀を拝見する。平巻きの柄に手を掛け、刃を上向きにしてから彫金が施された黒塗りの鞘から刀を引き抜く。それは、刀身が三尺を超える大太刀で反りも美しい孤を描いていた。平地の境にある、ゆったりとした波のような湾れ刃の刃文が魅力的で、思わず驚嘆の声が漏れてしまう。
「その刀は日本神刀と言って、妾が偶然手に入れた業物なのじゃ! しかも、妾の鑑定によると、この刀は魔力を注ぎ込む事によって属性が変化するようなのじゃ! 祐太殿、試してみるのじゃ」
お市様達を引き連れて、宿の裏にある庭に向かう。庭には、幹の太い枯れた大木が佇んでいた。指示に従い魔力を込めていくと、淡い光に包まれた刀身が輝きを強め、青みを帯びた神威なオーラに覆われていく。本来なら、レー〇ーブレードと叫んでから、ギャ〇ンダイナミックを放ちたかったが、この雰囲気では、流石の私でも出来なかったのであった。
静かに正眼で構え、裂帛の気合もろともに、枯れ木に斬撃を放つ。刀身に触れた樹皮が紙の如く切り裂かれ、一陣の風が駆け抜けたかと思うと、地を引き裂くような音と共に枯れた大木が地に転がり落ちる。
「な、な、何という破壊力なのじゃ! 祐太殿、それは風の属性かえ?」
「そうですが……ここまで凄まじいとは思いませんでした」
「初見の試し斬りで、ここまで使いこなせるとは……妾は、男も刀も見る目があるようじゃ」
ずっしりと重い日本神刀に目を掛ける。どこぞにあった政党のような名前に最初は困惑したが、折り紙つきの名刀のようだ。陶酔した目で見つめてくるお市様を尻目に、今度は火の属性を込めてみる。刀身を包んだ赤い焔が熱を放ちながら煌き、揺らめくような赤いオーラに覆われていく。心気を澄まして刀を斬り下すと倒木は真っ二つに割れ、赤い一閃の光が切り口を焼き尽くしていく。
「祐太殿! 其方は、やはり妾の婿にふさわしいのじゃ」
目の前の光景に興奮したお市様が、ヒシと抱き付いてくる。いつも以上の積極さに、困惑してしまうほどだ。抜き身の刀を鞘に戻して、お市様に返そうとすると、お市様は静かに首を振る。
「祐太殿以上に、その刀を使いこなせる者はおるまい! それは、其方の物じゃ」
「こんな高価な物を、受け取るわけにはいかないですよ」
「遠慮する事は無いのじゃ! 妾と祐太殿は、もはや一蓮托生なのじゃ!」
「コラッ―――!!! ご主人様の正妻はリンだよ! 市ちゃんは、引っ込んでてよ」
いつの間にか目を覚ましたリンちゃんがお市様に絡み、アリスちゃんやユイちゃんも参戦してくる。収拾がつかない状態に、私は頭を抱えるのであった。
その後、庭の木を勝手に切り倒してしまった事を、宿の女将に話したら笑いながら許してくれた。女将の話によると、あの木は元々切り倒すつもりで、手間が省けた上に薪にもなると喜んでくれた。年齢以上に落ち着いた、優雅な仕草が美貌を際立たせ、屈託のない柔和な笑みに思わず見とれてしまうのであった。
打ち上げられた花火の音が、耳をつんざくように辺りに響き、人々のボルテージは徐々に上がっていく。ただでさえ人通りの多い街路は、身動きできないほどの群衆で埋め尽くされている。闘技大会が行われる円形の建造物の周りは熱い熱気で包まれ、入場を求める観客で長蛇の如く長い行列が出来ていた。
遂に、闘技大会が開催されたのである。参加登録は事前に済ましてあったので、女性陣と一緒に選手の控室へと向かう。部屋の空気は鉛のように重く――嫉妬、怒気、殺意を含んだ容赦の無い複数の視線を浴びせられる。控室に入る前に、類まれな美しさを誇る美少女達と、イチャイチャしていたのが原因だろう。もめ事を起こすと失格になるので、直接絡んでくる者はいないが、監視されているような圧迫感で居心地が悪い。突き刺すような視線を受け流しながら出番を待っていると、私の名前が呼び出される。席を立った私は、建造物の中央にあるアリーナへと向かう。長い石畳みを歩いて行くと、薄暗い通路にゆるりと明かりが差し込んでくる。やがて、割れんばかりの歓声と拍手の音が響き、辺りを揺るがし始めた。
「ぐふふっ! 一回戦の相手は、冴えないおっさんか! これじゃ勝負にもならんな!」
アリーナの中心で対戦相手を待っていると――真打ち登場とばかりに、腕を突き上げた大柄の男が入場してくる。黒い縞模様が特徴の虎の獣人で、鋼の筋肉に覆われた精悍な体つきである。武器は携帯してないが、研ぎ澄まされたような鋭い爪と俊敏な動きに特化した格闘家のようだ。
獣人が、アリーナの中央に辿り着くと観客の歓声はピタリと止まり、スピーカーのような魔道具から大声量の実況が流れ始める。
「お~~~っと!! ここで、優勝候補の登場だ! 現代に蘇ったネプチューン、美しき殺人兵器、電気を自在に操るエレクトリックファイターーー、電虎!!! 対するは~、人間サンドバッグ、試合前に美女とイチャつく私生活のワールドチャンピオン、無名戦士~祐太!!!」
総立ちの会場からは、電虎を称賛する声と私への嘲笑が、次から次へと降り注ぐ。古〇伊知郎を彷彿させる、余りと言えば余りの実況と現状に、私は膝から崩れるのであった。
「貴様も、よくよく運のない男だな! ぐふふっ! 一撃で決めてやるぜ!」
目をギラつかせた電虎の拳が、妖しく輝き始める。青白い放電を繰り返す拳からは、ピリピリとした重圧が伝わってくる。
「これで終わりだ!」
試合の合図と同時に、電気をまとった拳を振りかざしながら、電虎が猛然と突っ込んでくる。観客からの野卑な罵声と、電虎の舐めきった態度に遂に私はキレてしまった。
「てめぇ! その名前なら、電気を大切にしろ! 謝れぇぇ、東〇電力に、謝れぇぇぇッ!!!」
私は日本神刀を抜刀すると、殆ど八つ当たりの斬撃を見舞った。
「ギエ―――ッ!」
踏みつぶされた蛙のような声と共に電虎の巨体が吹っ飛び、会場の床をボールのように転がっていく。
――アカン! 無属性の峰打ちで、この破壊力とは……本気出したら、完全にオーバーキルだろ、これ。
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