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砂漠のバザール

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 日ノ本へ向かう為、ドラゴンシティを出た私達は、クリスタル王が統治しているレリクス国の砂漠にある――きまぐれオレンジ道路という名前の道をSUVで東に向かって爆走している。私が前の世界で乗っていた、8人乗りの青いランドクルーザープ○ドである。この道路の名前を聞くと、優柔不断の少年を姉妹のような美少女が奪い合うイメージが浮かぶのだが、たぶん気のせいだろう。


 旅立つ時にホモオーダさんや、ホモオーダさん主催の――カルチャー愛好家のメンバーである褌姿のガチムチや、マッチョで角刈りのむさい男達が歓喜しながら、『カモンベイビーア○ル姦♪』と聞いた事も無い恐ろしい歌を歌いながら見送ってくれた。恐怖の余り逃げるように街を出た私は、人目が無い事を確認してからからプ○ドを取り出したのであった。

 エロメスは商会を維持する為、涙を呑んで日ノ本への同行を諦めたのだが、その代わりに米が主食の日ノ本で重宝されている――赤い炊飯のジャーという通常より三倍は速く炊ける高価な魔道具を購入するように私に頼んできたのだ。理由を訊いても答えてくれなかったが、断ると『悪い人だ! ジャーを買ってくれない悪い人だ!』と言われる気がするので、彼女の願いを叶えることにしたのだ。


 プ○ドをアイテムボックスから取り出した時は、『鉄の魔物なのじゃ~』と叫びながら逃げ惑っていたお市様が、ちゃっかりと助手席に座っている。リンちゃんとの壮絶なジャンケンバトルに勝利したお市様が、奪い取ったのだ。ふくれっ面のリンちゃんは運転席の後ろの席に座り、その横をアリスちゃんとユイちゃんが座っている。3列目の席は、お市様の侍女である愛と祐希の二人と、『あたしも行くからねっ!!』と叫びながら、無理やり乗り込んできた春丕である。そして荷室は久太郎と春丕の相棒のキョンシーである。ちなみにジュビはお市様の膝の上で、変なイビキをかきながら爆睡していた。

 私達の最初の目的地は、砂漠にあるオアシスで開かれているバザールである。久太郎は、『バザールでござ~る~! バザールでござ~る! 砂漠のバザールに行くでござ~る!』と、大はしゃぎである。久太郎の話によるとバザールでは掘り出し物が多数売られている上に、夜になると妖艶な衣装に身を包んだ美女達が、官能的なベリーダンスを披露する場所があるそうだ。それを聞いた私は、一も二もなくサ○ポール・・・ではなく、賛成したのであった。


「祐太殿も、人が悪いのじゃ! こんな凄い乗り物を何で隠していたのじゃ!」

 プ○ドを運転している私に、お市様が話しかけてくる。私としても、本来は人前で文明の利器を使用するのは目立ちすぎるので控えたい所であったが、前に馬車で移動した時の乗り心地の悪さとスピードの遅さに辟易としていたのであった。 

「今回は長旅になりそうなので、仕方なく使用するだけですよ。それよりお市様! 日ノ本で用意した馬車で移動したほうが良かったのでは? 他の護衛の方が心配してると思いますけど・・・」
「嫌なのじゃ! こんな乗り心地の良い便利な乗り物に乗ってしまったら、馬車には乗れんのじゃ! 祐太殿のせいで、妾はどんどん堕落してしまったのじゃ! 責任を取って欲しいのじゃ!」

 余りの無茶振りに溜め息を吐いていると、柔らかく艶のある髪をかき上げながら、猫なで声のお市様が私に迫ってくるのであった。

「そんな嫌そうな顔をするでない。祐太殿であったら、美少女である妾の事を好きにして良いのじゃぞ! ほれほれ!」

 お市様は流し目で誘惑するように着物を着崩しながら、胸元や白い首筋を晒し始めた。それを見た愛は、大慌てで止めに入るのであった。

「お市様! はしたのうございます! 弁えて下され!」 

 大声で叱責されるお市様を横目に、私は車を走らせるのであった。


 長いお説教からようやく開放されたお市様は、完全にグロッキー状態であった。

「お市様! 大丈夫ですか?」

 珍しくしおらしいお市様に話し掛けると、涙目で答えるのであった。

「優しくしてくれるのは、祐太殿だけなのじゃ! 妾がちょっと戯れただけで、皆が直ぐ怒り出すのじゃ! グスン!」
「あははっ! それでは気分転換で、久しぶりに親父ギャグの勝負でもしますか?」
「それは良い考えなのじゃ! 祐太殿が勝ったら妾の身体を好きにして・・・『ギロッ!!!』」

 懲りないお市様は、複数の冷たい視線を浴びせられ震え上がるのであった。

 何はともあれ、親父ギャグ対決が再び幕を開けるのであった。


「アザラシを叩いたら、痣らしい物が出来た!」
《OGP+3》
「オットセイを、谷底におっとせい! なのじゃ!」
「銅貨を落すなんて、どうかと思うよ」
《OGP+2》
「導火線を、どうかせんといかんのじゃ!」
「寒すぎて凍るど(Cold)!」
《OGP+1》
「体の上の方にあっても舌なのじゃ!」
「尾張は、もう終わりだ! 逃げるのは駿河にするがな!」
《OGP+4》
「ヒラメが居たので閃いたのじゃ!」
「砂漠のラクダはさばくの楽だ!」
《OGP+5》
「生姜が無いなんて、しょうがないのじゃ!」
「狂気の男が、狂喜しながら凶器を使ったのは、今日聞いた」
《OGP+2》
さわらを触らないのじゃ!」
いかめしい顔の人が、イカ飯いっぱい食べた!」
《OGP+2》

 

 その後も飽きなく対決が続き、お市様が降参したと同時に謎の音声が鳴り響き、私は新たな神々の豪華特典を下賜されたのであった。


【パラライズ銀貨(アイテム)】
 銭○平次のように、この銀貨を投げてぶつける事により、一定時間相手を麻痺させる事が出来ます。
 ※一日30枚まで使用可。次の日には補充されます。但し敵意の無い相手を動けなくさせて、Hなイタズラをするような悪事に使用してはいけません。天罰が下ります。

【剣の舞】
 戦場で刀剣を振るって華麗に舞踊り、相手を幻惑する。攻撃力、素早さが大幅に上昇。
 ※レベルにより一日に使用できる回数が変化します。

【ダンス全般】
 どんなダンスでも直ぐ踊れるようになります。ローラースケートを履きながら、バック転などのアクロバットをしながら踊る事も簡単に出来ます。

――ぎゃ~~! この特典は拙いでしょ! どう考えても、ヒモやクスリやDNA鑑定で世間を騒がしたあのグループしか思いつかない。作者のアホ~~~!!!


 とんでもない特典を貰い精神的に疲労困憊した私であったが、ようやく砂漠のバザールの開催の地に辿り着いたのであった。騒ぎになるのは拙いので、少し離れた場所でアイテムボックスにプ○ドを収納してから歩き始める。バザーは未だ始まっていないようだが、人々が行き交い活気に満ちている。屋台のような小さな店から、天幕で出来た店や、石造りの本格的な店が所狭しと並んでいる。私が、しんみりと異国情緒に浸っていると、興味津々のお市様とリンちゃんが暴走を始めるのであった。

「祐太殿! あれは何なのじゃ! 妾と見に行くのじゃ!」
「ダメだよ、市ちゃん! ご主人様は、リンと一緒に行くんだから! あーーーっ! あのお菓子美味しそう! ご主人様、買ってよ~」

 苦笑しながら二人の手を取り、中央に向かって歩いて行くと、突然人ごみが真っ二つに割れ始めた。そこには、人々を睥睨へいげいしながら肩で風を切り、G○ン'75のタイトルバックのように横一列で歩く迷惑な連中が現れたのである。そんな連中が、多数の美少女で編成された私達を見逃すはずも無く、即行で絡まれるのであった。

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