町のお医者さんは異世界転生してきたようです？

神谷電丸

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第1章

幸せな食事（シャルル編）

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——シャルルはずっと館の中で生きてきた。つまりは箱入り娘だ。
だから彼女は初めて見るものに興奮気味だった。

「あ、あの。質問ばっかりで悪かった。」と反省して謝る。

「いえいえ、薬屋の主人として薬のことを色々と聞かれるのは嬉しい限りですシャルル様。」

ニコッと微笑みかける。

「あ、あぁ。そうなのか。…それで私はこの薬屋で何をすればいいのだ？」

「お、中々鋭いですね。シャルル様にはこの薬屋の経営を二週間してもらいます。」

「に、二週間!?そんなことをしたらお父様が…。」

「…やはり原因はお父様ですか。」

ぎくりとしつつも平静を装い「…何のだ？」と聞いた。

「当然、男性恐怖症のことです。予想ですが酷い暴力や完全に無視などをされていたのでは？」

「……あぁ、私はお父様に殴られるのが日課と化していた。夜、起きていると酒に酔ったお父様が私のことを殴ってき」

「そうですか。ならお父様を殺してきます。」

は、はい？薬屋の主人が貴族を殺すことなど…。

そこでシャルルは思い出してしまった。
何十人もの屈強な男たちがその名前を聞けだけで逃げ出していったことを。

「ま、待ってくれ。少し待ってくれ。確かにお父様は乱暴だがそれを私は恨んだことはない。」

クロは少し考えるような仕草をすると「優しいですね。」と言って包み込むようにシャルルを抱きしめた。

「く、クロ殿!?」

「落ち着いてください。…俺は貴方を絶対に傷つけません。ですから一度休んでください。ゆっくりと…ゆっくりと……。」

あ、あれ…。何だが眠くなってきた。……疲れて…いたのだな……。

「あれ？睡眠薬を使うまでもなく普通に寝てしまいましたね。…まぁそちらの方が良いことには変わりないので良いんですけど。」

クロはシャルルを抱え、そのまま店の奥へと消えていった。

目が覚めるとそこは何かの上だった。
あたりを見渡す限りベッドの上のようだ。
しかしそのベッドの感触は独特だった。

自分の形に沿って沈み込むベッドは変に意識することなくゆっくりと落ち着けた。

「…あ、そういえば私。」

く、くく、クロ殿の胸の中で…。

「お目覚めですか？」

いつの間にか私の顔を覗き込んでいた。

手には何やら料理を乗っけた板を持っている。

「粗品…まぁそうですね。この国で最高級の粗品ですがどうぞお召し上がりください。」

そのベッドの横のレバーを引くとベッドをまたがる机が出現した。

「あ、ありがとう。」

シャルルはまっすぐこちらに微笑みかけるクロから目を逸らし、
その運ばれてくる食べ物を見つめた。

「…これは？」

「はい、右からコーンスープ、トマトパスタになります。」

「聞いたことのない料理に聞いたことのない名前だ。」

って…腕が動かない？

「あぁ、シャルル様は至る所に怪我をされていましたのでそれを治させていただきました。その反動で少しの間動かなくなります。」

「…一応聞くが至る所というのは？」

「いえ、回復魔法で全体を治しましたので服を脱がしたりなどはしておりませんよ。」

「なので今回限りは差し支えがなければ俺がシャルル様に食べさせようと思うのですが。」

「え、え、え、えぇ!?ちょ、ちょ、え、え!?」

「い、嫌でしょうか。」

いつも笑顔のクロが珍しく暗い顔をする。

「い、いや、嬉しいぞ。うむ、とても嬉しい。それに食べ方も分からないしな。」

するとクロはニコッと笑う。

「そうですか。では口を開けてもらえますか？」

え、えっと…。いや、私から頼んだんだし……。いや、うん。仕方ない。覚悟を決めるんだ私！

「あ、あ～ん。」

思いっきり口を開けた。

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