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【PW】199909《箱庭の狂騒》
紡がれる欠片
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立ち話もなんだからっといって、香樹実は目の前の公園に場所を移動する事を提案するとテツは、「そうだね」っと了承してくれた。
移動している途中に何かを見つけたのかとテツは、先に行っていてと香樹実に告げると駆け足でどこかへ向かい暫くすると両手に何かを持ちながら帰ってきた。
「はい」
そう言いながらテツが香樹実に差し出したのは、お茶のペットボトルで、それも香樹実がよく好んで飲んでいる銘柄だった。
「ありがとうございます」
見た目の変化はあれどこう言う所は、変わらないでいる事に香樹実は少しだけ安堵した。
「それで急にどうしたんですか?まさか車木を警戒してたわけでもないですよね?」
香樹実がそう訊くとテツは、苦笑いを零しながら視線を地面へと向けた。その時、一瞬その瞳が黒い空洞になるのを香樹実は見逃さなかった。
「星見さんに1つ聞きたいことがあるんだ、能力は使いたくない、だから素直に答えてくれ」
そう言いながらテツは、地面を見つめたまま言う。
香樹実は、そんなテツの雰囲気に返事が出来ずに静かに頷くだけだった。
「爆破の時にハルと同時に君も何かを見たとマツが言っていた、それは何を見たんだい?」
テツの問いに香樹実は、最初何を言われているのか飲み込めなかったが直ぐにそれが何かを思い出した。
「それは…燃え盛る風景の中に跪く才田と目の前に立ちはだかるもう1人の男の姿です」
テツが息を飲み、香樹実の方を向く。
「それは、君が知っている人かい?」
「その前に、私からも聞きたいことがあります」
突然の香樹実の返しにテツは、呆けた様な表情を見せた。
「星見 誠って子供に心当たりは、ありませんか?」
しかし、その問いに対するテツからの応えはなかった。だがその表情で全てを香樹実は、察する事が出来た、いやきっと誰でもわかったであろう、それ程にテツの表情は、苦悶の表情を浮かべていたのだ。
「誠とマルクトは、どんな関係なんですか?どうして誠はマルクトに殺されないといけなかったんですか!?」
香樹実は、堰を切った様にテツに迫り、テツは立ち上がって香樹実から一気に距離を取った。
「詳しくは、わからない…だけど…ハルが言うには、誠は糸だと言っていた、アイツがアイツでいる為の最後の糸だと」
「最後の糸?アイツがアイツでいる為?誰の事です?」
「それを君に聞きたいんだ、君が映像で見たハルと対面していた人物、それは誰だったんだい?」
香樹実は、その問いに一瞬躊躇った。
もし、これを言ったらどうなるのだろう、何か良くない事が起きようとしているのでは、ないか。
そう告げていた。しかしそれと同時に誠に何があったのか知りたいという気持ちにも駆られていた。
そして、その気持ちに負けた。
「西端です」
その応えにテツは、ゆっくりと目を瞑ると頷きながら立ち上がった。
「彼は、今どこにいるかわかるかい?」
「いいえ、ここ2、3日サボって学校に来ていないので…」
西端は、時折学校サボる事が以前からあった、任務に就く様になってからは減ったのだがココ最近は、そのサボり癖が見え始めた。
「そうか」
テツは、そう言うとゆっくりと香樹実の方へ向いた。
目と目が合う、香樹実にはその目の奥に微かに赤黒い炎の様な揺らめきが見て気がした。
ダメだ、直感的にそう何かが頭の奥底で告げている。
「これを暁さんに言うかどうかの君の判断に任せるよ、だけど俺は自分のやり方を曲げるつもりは無い」
テツの語る言葉に香樹実の背筋に冷たいものが走った。
「俺は、西端くんを殺す、それがこの世界の為になるから」
そう言うと、テツは香樹実に向かい頭を下げてそのまま公園を出ていった。
香樹実は、その背中を止め様と声をかけようとしたが言葉が出ずにその背中が街の中に消えていくのを見送る事しか出来なかった。
移動している途中に何かを見つけたのかとテツは、先に行っていてと香樹実に告げると駆け足でどこかへ向かい暫くすると両手に何かを持ちながら帰ってきた。
「はい」
そう言いながらテツが香樹実に差し出したのは、お茶のペットボトルで、それも香樹実がよく好んで飲んでいる銘柄だった。
「ありがとうございます」
見た目の変化はあれどこう言う所は、変わらないでいる事に香樹実は少しだけ安堵した。
「それで急にどうしたんですか?まさか車木を警戒してたわけでもないですよね?」
香樹実がそう訊くとテツは、苦笑いを零しながら視線を地面へと向けた。その時、一瞬その瞳が黒い空洞になるのを香樹実は見逃さなかった。
「星見さんに1つ聞きたいことがあるんだ、能力は使いたくない、だから素直に答えてくれ」
そう言いながらテツは、地面を見つめたまま言う。
香樹実は、そんなテツの雰囲気に返事が出来ずに静かに頷くだけだった。
「爆破の時にハルと同時に君も何かを見たとマツが言っていた、それは何を見たんだい?」
テツの問いに香樹実は、最初何を言われているのか飲み込めなかったが直ぐにそれが何かを思い出した。
「それは…燃え盛る風景の中に跪く才田と目の前に立ちはだかるもう1人の男の姿です」
テツが息を飲み、香樹実の方を向く。
「それは、君が知っている人かい?」
「その前に、私からも聞きたいことがあります」
突然の香樹実の返しにテツは、呆けた様な表情を見せた。
「星見 誠って子供に心当たりは、ありませんか?」
しかし、その問いに対するテツからの応えはなかった。だがその表情で全てを香樹実は、察する事が出来た、いやきっと誰でもわかったであろう、それ程にテツの表情は、苦悶の表情を浮かべていたのだ。
「誠とマルクトは、どんな関係なんですか?どうして誠はマルクトに殺されないといけなかったんですか!?」
香樹実は、堰を切った様にテツに迫り、テツは立ち上がって香樹実から一気に距離を取った。
「詳しくは、わからない…だけど…ハルが言うには、誠は糸だと言っていた、アイツがアイツでいる為の最後の糸だと」
「最後の糸?アイツがアイツでいる為?誰の事です?」
「それを君に聞きたいんだ、君が映像で見たハルと対面していた人物、それは誰だったんだい?」
香樹実は、その問いに一瞬躊躇った。
もし、これを言ったらどうなるのだろう、何か良くない事が起きようとしているのでは、ないか。
そう告げていた。しかしそれと同時に誠に何があったのか知りたいという気持ちにも駆られていた。
そして、その気持ちに負けた。
「西端です」
その応えにテツは、ゆっくりと目を瞑ると頷きながら立ち上がった。
「彼は、今どこにいるかわかるかい?」
「いいえ、ここ2、3日サボって学校に来ていないので…」
西端は、時折学校サボる事が以前からあった、任務に就く様になってからは減ったのだがココ最近は、そのサボり癖が見え始めた。
「そうか」
テツは、そう言うとゆっくりと香樹実の方へ向いた。
目と目が合う、香樹実にはその目の奥に微かに赤黒い炎の様な揺らめきが見て気がした。
ダメだ、直感的にそう何かが頭の奥底で告げている。
「これを暁さんに言うかどうかの君の判断に任せるよ、だけど俺は自分のやり方を曲げるつもりは無い」
テツの語る言葉に香樹実の背筋に冷たいものが走った。
「俺は、西端くんを殺す、それがこの世界の為になるから」
そう言うと、テツは香樹実に向かい頭を下げてそのまま公園を出ていった。
香樹実は、その背中を止め様と声をかけようとしたが言葉が出ずにその背中が街の中に消えていくのを見送る事しか出来なかった。
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