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【PW】AD199908《純真の騎士》
3人の背中 2
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「おらぁ!!」
暁が一息ついたと同時に怒声と共に乱雑なステップ音が聞こえ、視線を向けるとアロハシャツの男が不器用なダンスでも踊るかの様に折り畳み式ナイフを振り回していた。
それを飄々とした男は、軽やかなダンスでも踊るかの様にスウェイで躱している。
「くっそが!ちょこまかと!」
飄々とした男は、時折死角に移動しては軽く息を整えている、対してアロハシャツの男は苛立ちからか息を整えるより先に飄々とした男の姿を探してしまっている為に体力がかなり削られていた。
こうなると勝敗は火を見るより明らかだった。
折り畳み式ナイフを躱し、死角に入り、飄々とした男は、アロハシャツの男の後頭部目掛けて手刀を走らせた。
一瞬の斬撃の様な手刀が振り抜かれ、脳震盪を起こしたのだろうか、アロハシャツの男は、目を開けながら口をパクパクさせたかと思うとその場に膝を落とした。
まだ意識は、ある、たがその瞬間を飄々とした男が見逃す筈もなく、かろうじて上がっていたナイフを持っていた手を背中に回しながら捻りあげると空いた片手でその頭を道路に叩きつけた。
ダメ押しの一打、確実に意識を失ったのを知らせる様に握っていた折り畳み式ナイフがてから転げ落ちた。
「いっちょ、上がり」
そう言いながら飄々とした男はポケットから結束バンドを取り出すとアロハシャツの両手を背中に回し拘束した。
この手際の良さ、もしかして。
暁がそんな飄々とした男を見ているとその視線に気づきポケットからも1本の結束バンドを取り出して暁に渡してきた。
「これ使って、拘束して、起きると面倒だから」
「お前、ハルか?」
結束バンドを受け取りながら暁が唐突に聞くと飄々とした男、ハルは首をゆっくりと肩を竦めた。
「名前を言うのは野暮ですぜ旦那」
ハルは、そう言いながら視線を金髪の男と渋い声の男に向けた。
暁は、貰った結束バンドで甚平の男を拘束しながら2人の様子を伺った。
明らかに練度が、甚平の男やアロハシャツの男とは違う。
金髪の男と渋い声の男は、見合いながらお互いの間合いを測り、時折ジャブをぶつけ合うがどちらも牽制なのだろう、直ぐにまた同じ様な距離に戻った。
「あの男は?」
「俺と同じ見識者ですぜ」
サラリと言うハルの言葉に少しだけ頭が痛くなった暁は眉間の辺りを少し指でマッサージした。
「アイツは、今のところ何処にも属してない、本人も属するつもり無いでしょうね」
「どんな男だ?」
「見ての通りの堅物、俺や煌佑とは、元同僚」
同僚、つまり元仲間って事だ、ならここに来たのも正直納得は出来た。
しかし。
「わざわざ、なぜ助けに来た?教えたのか?」
ハルは、まだ分かる。
暁が星見の話をする際に煌佑の話もしていた。それを踏まえてハルが呼んだとなれば別段おかしな話でもない。
だけど、暁の中の何かがそれを絶対違うと否定していた。
「教えるわけないじゃないですかぁ、コイツら程度なら俺1人でも行ける自信あるし」
ハルは、そう言いながらゆっくりとタバコに火をつけた。
暁は、慌ててそのタバコを取り上げた。
「お前、未成年だろ?」
「いえ、20歳です」
「嘘つけ、白硝子高校で制服着たお前と擦れ違ったの覚えてるぞ!」
岩倉の一件の際に本郷と学校に入る直前で校門で入れ違った、携帯電話で話しながら入れ違いで出ていく男子高校生、その顔は、間違いなくハルだった。
「まぁ、相変わらずの気持ち悪い記憶力ですこと」
明らかに舐めた表情をしながらハルは、驚いた振りをしていた。
相変わらず、その単語から察するにハルはきっと自分の事も知っている。
しかし、暁にはハルの様な男と関わった記憶は無い、なら、彼が知っているのは藤と同じ様に未来の自分だと言う事だ。
少しだけ、未来の自分が何のか気になる暁だったが唐突に刺さる様な寒気に首筋を走った。
その寒気を感じる方に目を向けると未だに向き合う、金髪と渋い声の男だったが金髪の構えの向きが変わっている。
確か、さっきまで包丁持つ方を後方で空いた手の方を前に出していた筈なのに今では、包丁を持つ手が前に出され、空いた手の方が後ろに下がっていた。
そして、空いた手がゆっくりとポケットに入ると直ぐに長方形の携帯電話が姿を現した。
番号をプッシュしてる、どこかに電話をかける気か?こんな状況で?
次の瞬間、金髪はゆっくりと高く上げるように携帯電話を投げた。
放物線を描きながら携帯電話が渋い声の男の顔に向かっていく。
暁の頭の中で強烈なフラッシュの様な痛みが走る。
「縁!!防御しろ!!」
気づくと暁は、そう吠え、その言葉に反応する様に渋い声の男、縁は後方にステップしながら両手で顔をガードした。
乾いた音がなり、携帯電話が爆発した。
ロケット花火の様な軽い爆発だったが3人の視野を一瞬でも遮るには十分な威力だった。
金属同士が擦れる音が微かに暁の耳に届き視線を向けると金髪の男が公園のフェンスを飛び越そうとしている姿が見えた。
やられた!
暁は、体を跳ねらせ、出入口にある自転車を倒す様にどかせたが、それよりも早く金髪の男は、煌佑と里穂に迫っていた。
煌佑は、バットを剣道の正眼の構えの様に握り、向かってくる金髪に先端を向けていた。
ふと、暁は、煌佑と目が合った気がした。
その瞬間、暁は再び吠えていた。
暁が一息ついたと同時に怒声と共に乱雑なステップ音が聞こえ、視線を向けるとアロハシャツの男が不器用なダンスでも踊るかの様に折り畳み式ナイフを振り回していた。
それを飄々とした男は、軽やかなダンスでも踊るかの様にスウェイで躱している。
「くっそが!ちょこまかと!」
飄々とした男は、時折死角に移動しては軽く息を整えている、対してアロハシャツの男は苛立ちからか息を整えるより先に飄々とした男の姿を探してしまっている為に体力がかなり削られていた。
こうなると勝敗は火を見るより明らかだった。
折り畳み式ナイフを躱し、死角に入り、飄々とした男は、アロハシャツの男の後頭部目掛けて手刀を走らせた。
一瞬の斬撃の様な手刀が振り抜かれ、脳震盪を起こしたのだろうか、アロハシャツの男は、目を開けながら口をパクパクさせたかと思うとその場に膝を落とした。
まだ意識は、ある、たがその瞬間を飄々とした男が見逃す筈もなく、かろうじて上がっていたナイフを持っていた手を背中に回しながら捻りあげると空いた片手でその頭を道路に叩きつけた。
ダメ押しの一打、確実に意識を失ったのを知らせる様に握っていた折り畳み式ナイフがてから転げ落ちた。
「いっちょ、上がり」
そう言いながら飄々とした男はポケットから結束バンドを取り出すとアロハシャツの両手を背中に回し拘束した。
この手際の良さ、もしかして。
暁がそんな飄々とした男を見ているとその視線に気づきポケットからも1本の結束バンドを取り出して暁に渡してきた。
「これ使って、拘束して、起きると面倒だから」
「お前、ハルか?」
結束バンドを受け取りながら暁が唐突に聞くと飄々とした男、ハルは首をゆっくりと肩を竦めた。
「名前を言うのは野暮ですぜ旦那」
ハルは、そう言いながら視線を金髪の男と渋い声の男に向けた。
暁は、貰った結束バンドで甚平の男を拘束しながら2人の様子を伺った。
明らかに練度が、甚平の男やアロハシャツの男とは違う。
金髪の男と渋い声の男は、見合いながらお互いの間合いを測り、時折ジャブをぶつけ合うがどちらも牽制なのだろう、直ぐにまた同じ様な距離に戻った。
「あの男は?」
「俺と同じ見識者ですぜ」
サラリと言うハルの言葉に少しだけ頭が痛くなった暁は眉間の辺りを少し指でマッサージした。
「アイツは、今のところ何処にも属してない、本人も属するつもり無いでしょうね」
「どんな男だ?」
「見ての通りの堅物、俺や煌佑とは、元同僚」
同僚、つまり元仲間って事だ、ならここに来たのも正直納得は出来た。
しかし。
「わざわざ、なぜ助けに来た?教えたのか?」
ハルは、まだ分かる。
暁が星見の話をする際に煌佑の話もしていた。それを踏まえてハルが呼んだとなれば別段おかしな話でもない。
だけど、暁の中の何かがそれを絶対違うと否定していた。
「教えるわけないじゃないですかぁ、コイツら程度なら俺1人でも行ける自信あるし」
ハルは、そう言いながらゆっくりとタバコに火をつけた。
暁は、慌ててそのタバコを取り上げた。
「お前、未成年だろ?」
「いえ、20歳です」
「嘘つけ、白硝子高校で制服着たお前と擦れ違ったの覚えてるぞ!」
岩倉の一件の際に本郷と学校に入る直前で校門で入れ違った、携帯電話で話しながら入れ違いで出ていく男子高校生、その顔は、間違いなくハルだった。
「まぁ、相変わらずの気持ち悪い記憶力ですこと」
明らかに舐めた表情をしながらハルは、驚いた振りをしていた。
相変わらず、その単語から察するにハルはきっと自分の事も知っている。
しかし、暁にはハルの様な男と関わった記憶は無い、なら、彼が知っているのは藤と同じ様に未来の自分だと言う事だ。
少しだけ、未来の自分が何のか気になる暁だったが唐突に刺さる様な寒気に首筋を走った。
その寒気を感じる方に目を向けると未だに向き合う、金髪と渋い声の男だったが金髪の構えの向きが変わっている。
確か、さっきまで包丁持つ方を後方で空いた手の方を前に出していた筈なのに今では、包丁を持つ手が前に出され、空いた手の方が後ろに下がっていた。
そして、空いた手がゆっくりとポケットに入ると直ぐに長方形の携帯電話が姿を現した。
番号をプッシュしてる、どこかに電話をかける気か?こんな状況で?
次の瞬間、金髪はゆっくりと高く上げるように携帯電話を投げた。
放物線を描きながら携帯電話が渋い声の男の顔に向かっていく。
暁の頭の中で強烈なフラッシュの様な痛みが走る。
「縁!!防御しろ!!」
気づくと暁は、そう吠え、その言葉に反応する様に渋い声の男、縁は後方にステップしながら両手で顔をガードした。
乾いた音がなり、携帯電話が爆発した。
ロケット花火の様な軽い爆発だったが3人の視野を一瞬でも遮るには十分な威力だった。
金属同士が擦れる音が微かに暁の耳に届き視線を向けると金髪の男が公園のフェンスを飛び越そうとしている姿が見えた。
やられた!
暁は、体を跳ねらせ、出入口にある自転車を倒す様にどかせたが、それよりも早く金髪の男は、煌佑と里穂に迫っていた。
煌佑は、バットを剣道の正眼の構えの様に握り、向かってくる金髪に先端を向けていた。
ふと、暁は、煌佑と目が合った気がした。
その瞬間、暁は再び吠えていた。
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