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山月 春舞《やまづき はるま》

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【PW】AD199908《純真の騎士》

少年の白昼夢 4

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   警察と言えど地方公務員であり、その管理をしているのは各都道府県の県庁である。
   そこの地方議員の権力は、下手すれば国会議員より大きく作用する事もある。その圧力のせいでこっちの調査が打ち切られる可能性も大いに出てくるのだ。

「田中は今もその手の案件に手を出してると思いますか?」

『0じゃない、アイツの店の従業員には、何人か殺し屋が居るしな』

   つまり、あの金髪の男も田中の店の従業員である可能性が高い、しかしなんの為に、深山を殺さないといけないのだろうか…

   十分に情報を得られた暁は本郷に礼を告げて電話を切った。
   何が何だか分からない。
   全く接点が無いわけでは、ない。
   だけど、そこまで濃くもない接点ばかりがフワフワと浮いている、そんな感覚だった。

   仮説としてもし、黒原が深山に脅されていたとしよう、何らかの弱みを握られて、それで彼女を付け回している…
   付け回している…そのワードが頭を掠めると自己主張する様に妙に頭の中でこびり付いた。

   そう、黒原は深山を付け回しているんだ。これでは、事態がアベコベだ。
   もし、弱みを握られているならそんな行為はバレたらより危なくなる、それならばしない方が良いに決まっている、では何故そんなことをしているのか?

   一つの仮説を立てて暁は咄嗟にまさかっと思いながら首を横に振った、だがそういう性癖の奴等は確かに存在する。10年程前にもそれで幼児を何人も殺害した男もいた。
   つまり、その可能性は0じゃない。
   とりあえず、明日から少し調査の方向性を変えていこうと考えながら風呂と食事を済ませて暁は、ベッドで眠りについた。

   その日は、妙に寝つきが良かった。
   最近の熱帯夜のせいか、エアコンをつけていてもどうも寝つきがココ最近悪かったのに今日は布団に入り込み、目をつぶると意識はゆっくりと落ちていった。

    だからなのか、それは余りにも生々しく妙な夢だった。

   1人の少女が川沿いの公園から明ける空を見ながら呟き、それを横目で自分は眺めている。
   視界がやや下気味なのは、子供の体をしているからなのかもしれない。
   時折、俯く視界に映る手は小さく、肌もキメ細かく丸い。

   後ろから聞こえる物音に振り返るとタンクトップの金髪の男と他に2人の半袖のジャージを着た男がゆっくりと迫ってくる。
   何を思ったのか、視界の主が茂みに駆け込む、持ち出したのは、1本の木製のバットだった。
   視界の持ち主は、果敢にも自分の何倍も大きい体の大人達に立ち向かっていく、しかし、1人は膝を振り抜いたバットが命中し倒す事が出来たが2人目の大人に頭を蹴られ目の前の視界が歪んだ。

   歪む視界の中で金髪の男が迫ってくるのが見える、登る日差しに銀色の光が反射し、それが迫ってくる。

   殺られる!咄嗟に思った次の瞬間、視界に黒何かが覆いかぶさった。


「大丈夫…守ってあげるから…コウ…」

   少女の掠れる様な言葉に暁は、苦しなり目が覚めた。
   全身に嫌な汗をかき、身体中がベトベトしていた。

   今の夢は?
   あの時に見たモノの続きなのか?
   それが何で…今?

   暁は、まだフワフワする思考をまとめる為にタバコに火をつけるとゆっくりと紫煙を吐いた。
   出来るだけ、カラッポにして、見たまんまを繋げる。
   今それが暁に出来る最善の事だと思えたからだ。

   夢で見た少女、あれは間違いなく深山里穂だった。
   だとしたら、今の夢はこの前の白昼夢で見た以前の出来事と言うことになる。
   でも、何故今こんな夢を見たのだろう?
   仕事で考えすぎていたからなのか?
   ふと、部屋のデジダル時計に目が行った、時刻は4時10分を差している。
   夏場の日の出は大体4時30分から50分ぐらいだ。

   何となくだ、深い考えも何も無い。
   ただ、本当に何となく、今から出ないといけない、じゃないと間に合わない。
   そんな気持ちに駆られ、気づくと半袖とジャージの長ズボンに着替え、久し振りに履く運動靴で部屋を後にしていた。

   数ヶ月前に買ったマウンテンバイクに跨り、その行く先は富士見市方向だった。

   自分でも何故かわからない。
   だけど、行かなければならない。

   空は、深い黒からゆっくりと群青に染まっていこうとしていた。
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