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【PW】AD199908《純真の騎士》
少年の白昼夢 3
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「それは、無視するのが本分だと俺は思うけど?」
崇央のその言葉に暁は呆れた表情をしながらその顔を見た。
確かに崇央の言ってる事は、間違っていない、本来の公安調査は、知られてはいけない。
例え、それが身内でもだ。その為には殺人が起きたとしても、だが。
「それが調査の妨げになったとしても?」
暁がそう言うと崇央の眉がピクリと動いた。
「つまり、これが牧原のリンクを知る為には妨げになっていると?」
「さぁ、わからん。わからんから調査してんだろ?」
暁がそう応えると崇央はその問答に飽きたのか頭を掻きながら反論をするの止めた。
「そういや、黒原が入ったBARについて何かわかったか?」
暁がそう聞くと崇央は、呆れた目を向けてきた。
「現在調査中」
ブロッサムについては、次の日には報告が上がってきた。
煌祐の朝からの行動の報告を受けながら昨日の調査していた内容も一緒に伝えられたのだ。
ブロッサムは、2年前に30代の男が始めたものでその男は、田中 孝之(たなか たかゆき)、問題はこの男の素性だった。
関東を拠点に動く鋼和組系列の真錬会(しんれんかい)の組員だったと言う事だった。
真錬会と言えば、数年前まで鋼和組の汚れ仕事を引き取っていた会で、警察の捜査が入った事で解体に追い込まれた組織だった。
そんな男と黒原は、繋がっている。
そして、星見の見たあの映像を考えるととても穏やかな状況じゃないというのだけは嫌でも理解出来た。
しかし、黒原と深山、そして煌祐がどうしてそれに繋がるのか良く分からないのも事実だった。
煌祐は朝5時には家を出て近所を散歩している。
流石に人通りが疎らの中で終始尾行しているワケにもいかず数分間の消失をさせたりしているが概ねのルートは抑えたらしい。
朝焼けか夕日か、昨日見た映像を思い出す。
日を背にした男、あの場所が何処か分からない限りあの映像が何を指すかわからない。
だが、命を落とすのは深山という事だけはわかっている。
煌祐は彼女を守る為に行動をしている、それは今までの行動パターンで理解が出来たが彼のリンクは一体どんな力なのか?もし星見と同じならコチラの存在に気づいてもおかしくない、それとも彼の見る未来にコチラは出てこないのか?
暁は、そんな事を考えながら図書館に向かった。
とりあえず、気をつけるべきなのは金髪の男だがその姿は確認できなかった。
その代わり相変わらず黒原が深山の周りをウロウロしている。
星見が見た未来には、黒原は出て来なかった、その代わりに金髪の男が現れた。つまり黒原と金髪の男が繋がっている。
相変わらず煌祐も深山の姿をチラチラと見ながら何かを警戒していた。
こうして、なんの変化もないまま一日が過ぎる。
暁は、星見と西端と解散すると電車に乗り、川越の田中のブロッサムへ足を向けた。
夕方となれば流石に店は開いていた。
出入口を開けると店のウェルカムベルがなり、カウンターと3つのテーブル席があった。
カウンターには、同じ歳ぐらいの短髪の男が立っていて暁が入るとゆっくりと頭を下げた。
「いらっしゃいませ、おひとり様ですか?」
暁が頷くとそっとカウンター席へと案内された。
店内には暁を含めて3名程の先客が各々小さなグラスで酒を楽しんでいた。
暁もウィスキーロックを頼み、タバコを吸いながら1時間ほどで店を後にした。
客は全部で5名の出入りがあった。
ウチ2人は恐らく常連だろう、カウンターの店員の動きが慣れたものだった。
しかし、それ以外の収穫は無に等しかった。
肝心な金髪の男の出入りは無し、肝心な黒原の出入りもなし。
正直いって情報が足りない…暁は悩んだ末に餅は餅屋だと思い、埼玉県警のマル暴の本郷に何か聞けないかと一類の望みをかけた。
『はい、本郷です』
数回のコールの後に本郷は、軽やかな口調で電話に出た。
「お久しぶりです、大浦です。少し時間大丈夫ですか?」
『あぁ、大浦さんお久しぶりです。ごめんなさい今クライアントの方をお待ちしてる最中なんで、この後にかけ直しをさせて貰う形でお願いしたのですが』
明らかな営業モードでの応対に暁は、素直に謝罪しながら電話を切った。
得られる情報は無しか。
暁は正直折り返しの電話を期待してなかったので少しだけブロッサムの周辺を見回ると帰路に着いた。
自宅に着くと同時に携帯電話が鳴り、白黒のディスプレイを確認すると本郷からのかけ直しだった。
「はい、大浦」
『よぅ、すまんな、んで急にどうした?』
受話器から聞こえる本郷の声は、歴戦の猛者としての声に変わっていた。
「こちこそすいません、忙しいところに、大浦さんは真錬会の事はどれぐらい情報持ってます?」
『藪から棒になんだ?』
「案件上、任務の事は、言えないんですけど、真錬会の元組員が関わってそうなので、情報が欲しくて」
『ふん、それならいつも通り横取りすれば良いだろ?戻ったんだろ、古巣に?』
まぁ耳に入ってるとは思っていたがここでそれを引き合いに出されるとは、思ってもいなかった暁は答えに少し困った。
「その横取りした情報が正確ならそれも良いでしょうけど、多分それ抜けた情報でしょ?俺が欲しいのは、正確な情報なので」
『俺が正確な情報を伝えなかったら?』
「そこは、個人的な信頼で本郷さんならちゃんと情報くれると思ってますから」
『いやらしい奴だな、そこで信頼って言葉を出すかい?』
ニヤニヤと笑う、本郷の顔が見えてきたそうな笑い声に暁もまた肩を竦めた。
「悪いっすけど、俺は出世ってのに興味無いんですよ、そして本郷さんもそうだと読んでます、あるのはお互い目の前の事案をしっかりと片付ける事、結果はその後に着いてくるオマケ程度だと思ってるでしょ?」
『嫌なところを突いてくるねお前さんは。まぁいい、情報はくれてやるよ、その代わり俺の質問にも答えて貰えるか?』
「内容によりけりですけど?」
『岩倉は今どんな状態だ?』
その問いに暁は、一瞬どう応えるか戸惑ったがここで下手に嘘をついて信頼を損なうぐらいならしっかりと応える方が正解だと踏んだ。
「この前、太々しい態度で聴取を受けてたので、めっちゃ挑発して、その後に来た専門家って奴等に丸裸にされて肝っ玉冷やして怯えてたのが最後に見た姿ですかね」
その応えに岩倉は、吹き出し、大声で笑いだした。
『挑発とは、お前もよくやったなぁ~』
「その前の態度が余りにも舐めきってたので、しこたま、挑発してやったら結構ボロボロ情報くれましたよ」
『ハハハ、わかったよ、お前は嘘ついてないのは信用してやる、それで何が聞きたい?』
本郷のその言葉に暁は、ブロッサムという河越のBARと田中の情報を知りたいと伝えると本郷は、唸り声を上げた。
『田中とは、お前もまた随分面倒な男に目をつけたな』
「どんな奴です?」
『真錬会の窓口と実行者の管理だった男で、真錬会の手入りの際に逸早く組から足を洗った男だよ』
「足を洗った?窓口と実行者の管理って事がわかってるなら引っ張れなかったんですか?」
『それが出来なかった、証拠が消されててな、真錬会の奴等は殆ど殺人じゃ立件できなかった』
「誰かがたれ込んでた?」
『まぁな、多分先生方の誰かだろ、そこもハッキリしてるからいずれは、芋づる式で行けると思うが』
先生方、つまり地方議員か国会議員の誰か…この場合、後援会に連ねる誰がだろうが、そう考えるとかなり厄介なのかもしれない。
崇央のその言葉に暁は呆れた表情をしながらその顔を見た。
確かに崇央の言ってる事は、間違っていない、本来の公安調査は、知られてはいけない。
例え、それが身内でもだ。その為には殺人が起きたとしても、だが。
「それが調査の妨げになったとしても?」
暁がそう言うと崇央の眉がピクリと動いた。
「つまり、これが牧原のリンクを知る為には妨げになっていると?」
「さぁ、わからん。わからんから調査してんだろ?」
暁がそう応えると崇央はその問答に飽きたのか頭を掻きながら反論をするの止めた。
「そういや、黒原が入ったBARについて何かわかったか?」
暁がそう聞くと崇央は、呆れた目を向けてきた。
「現在調査中」
ブロッサムについては、次の日には報告が上がってきた。
煌祐の朝からの行動の報告を受けながら昨日の調査していた内容も一緒に伝えられたのだ。
ブロッサムは、2年前に30代の男が始めたものでその男は、田中 孝之(たなか たかゆき)、問題はこの男の素性だった。
関東を拠点に動く鋼和組系列の真錬会(しんれんかい)の組員だったと言う事だった。
真錬会と言えば、数年前まで鋼和組の汚れ仕事を引き取っていた会で、警察の捜査が入った事で解体に追い込まれた組織だった。
そんな男と黒原は、繋がっている。
そして、星見の見たあの映像を考えるととても穏やかな状況じゃないというのだけは嫌でも理解出来た。
しかし、黒原と深山、そして煌祐がどうしてそれに繋がるのか良く分からないのも事実だった。
煌祐は朝5時には家を出て近所を散歩している。
流石に人通りが疎らの中で終始尾行しているワケにもいかず数分間の消失をさせたりしているが概ねのルートは抑えたらしい。
朝焼けか夕日か、昨日見た映像を思い出す。
日を背にした男、あの場所が何処か分からない限りあの映像が何を指すかわからない。
だが、命を落とすのは深山という事だけはわかっている。
煌祐は彼女を守る為に行動をしている、それは今までの行動パターンで理解が出来たが彼のリンクは一体どんな力なのか?もし星見と同じならコチラの存在に気づいてもおかしくない、それとも彼の見る未来にコチラは出てこないのか?
暁は、そんな事を考えながら図書館に向かった。
とりあえず、気をつけるべきなのは金髪の男だがその姿は確認できなかった。
その代わり相変わらず黒原が深山の周りをウロウロしている。
星見が見た未来には、黒原は出て来なかった、その代わりに金髪の男が現れた。つまり黒原と金髪の男が繋がっている。
相変わらず煌祐も深山の姿をチラチラと見ながら何かを警戒していた。
こうして、なんの変化もないまま一日が過ぎる。
暁は、星見と西端と解散すると電車に乗り、川越の田中のブロッサムへ足を向けた。
夕方となれば流石に店は開いていた。
出入口を開けると店のウェルカムベルがなり、カウンターと3つのテーブル席があった。
カウンターには、同じ歳ぐらいの短髪の男が立っていて暁が入るとゆっくりと頭を下げた。
「いらっしゃいませ、おひとり様ですか?」
暁が頷くとそっとカウンター席へと案内された。
店内には暁を含めて3名程の先客が各々小さなグラスで酒を楽しんでいた。
暁もウィスキーロックを頼み、タバコを吸いながら1時間ほどで店を後にした。
客は全部で5名の出入りがあった。
ウチ2人は恐らく常連だろう、カウンターの店員の動きが慣れたものだった。
しかし、それ以外の収穫は無に等しかった。
肝心な金髪の男の出入りは無し、肝心な黒原の出入りもなし。
正直いって情報が足りない…暁は悩んだ末に餅は餅屋だと思い、埼玉県警のマル暴の本郷に何か聞けないかと一類の望みをかけた。
『はい、本郷です』
数回のコールの後に本郷は、軽やかな口調で電話に出た。
「お久しぶりです、大浦です。少し時間大丈夫ですか?」
『あぁ、大浦さんお久しぶりです。ごめんなさい今クライアントの方をお待ちしてる最中なんで、この後にかけ直しをさせて貰う形でお願いしたのですが』
明らかな営業モードでの応対に暁は、素直に謝罪しながら電話を切った。
得られる情報は無しか。
暁は正直折り返しの電話を期待してなかったので少しだけブロッサムの周辺を見回ると帰路に着いた。
自宅に着くと同時に携帯電話が鳴り、白黒のディスプレイを確認すると本郷からのかけ直しだった。
「はい、大浦」
『よぅ、すまんな、んで急にどうした?』
受話器から聞こえる本郷の声は、歴戦の猛者としての声に変わっていた。
「こちこそすいません、忙しいところに、大浦さんは真錬会の事はどれぐらい情報持ってます?」
『藪から棒になんだ?』
「案件上、任務の事は、言えないんですけど、真錬会の元組員が関わってそうなので、情報が欲しくて」
『ふん、それならいつも通り横取りすれば良いだろ?戻ったんだろ、古巣に?』
まぁ耳に入ってるとは思っていたがここでそれを引き合いに出されるとは、思ってもいなかった暁は答えに少し困った。
「その横取りした情報が正確ならそれも良いでしょうけど、多分それ抜けた情報でしょ?俺が欲しいのは、正確な情報なので」
『俺が正確な情報を伝えなかったら?』
「そこは、個人的な信頼で本郷さんならちゃんと情報くれると思ってますから」
『いやらしい奴だな、そこで信頼って言葉を出すかい?』
ニヤニヤと笑う、本郷の顔が見えてきたそうな笑い声に暁もまた肩を竦めた。
「悪いっすけど、俺は出世ってのに興味無いんですよ、そして本郷さんもそうだと読んでます、あるのはお互い目の前の事案をしっかりと片付ける事、結果はその後に着いてくるオマケ程度だと思ってるでしょ?」
『嫌なところを突いてくるねお前さんは。まぁいい、情報はくれてやるよ、その代わり俺の質問にも答えて貰えるか?』
「内容によりけりですけど?」
『岩倉は今どんな状態だ?』
その問いに暁は、一瞬どう応えるか戸惑ったがここで下手に嘘をついて信頼を損なうぐらいならしっかりと応える方が正解だと踏んだ。
「この前、太々しい態度で聴取を受けてたので、めっちゃ挑発して、その後に来た専門家って奴等に丸裸にされて肝っ玉冷やして怯えてたのが最後に見た姿ですかね」
その応えに岩倉は、吹き出し、大声で笑いだした。
『挑発とは、お前もよくやったなぁ~』
「その前の態度が余りにも舐めきってたので、しこたま、挑発してやったら結構ボロボロ情報くれましたよ」
『ハハハ、わかったよ、お前は嘘ついてないのは信用してやる、それで何が聞きたい?』
本郷のその言葉に暁は、ブロッサムという河越のBARと田中の情報を知りたいと伝えると本郷は、唸り声を上げた。
『田中とは、お前もまた随分面倒な男に目をつけたな』
「どんな奴です?」
『真錬会の窓口と実行者の管理だった男で、真錬会の手入りの際に逸早く組から足を洗った男だよ』
「足を洗った?窓口と実行者の管理って事がわかってるなら引っ張れなかったんですか?」
『それが出来なかった、証拠が消されててな、真錬会の奴等は殆ど殺人じゃ立件できなかった』
「誰かがたれ込んでた?」
『まぁな、多分先生方の誰かだろ、そこもハッキリしてるからいずれは、芋づる式で行けると思うが』
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