30 / 93
【PW】AD199907 《新しい道》
接続者 5
しおりを挟む
「大浦さん!」
川井を後ろから追けていた星見達が目の前に現れた暁の元に駆け寄ってきた。
その後に続く様に向かってくる車木達は、暁の先回りに怪訝な表情を浮かべていた。
「川井は?」
暁は間髪入れずに星見に聞くと、星見は直ぐ先の交差点を指差した。
「そこを右へ走って行きました」
走っていった?
「君は、川井を見えるのか?」
暁がそう聞くと星見は首を横に振った。
「川井の姿は見えてません、でもリンクの残滓は、追えます」
そう言われると暁は、星見に対して手招きをし、西端、熊切、車木をその場に残し警察来るまでの間に被害者と一緒に居る様に頼んだ。
3人共何をすれば良いのか戸惑っていたが暁にそれを構ってる暇は無く、星見に先頭を歩かせて残滓を追った。
残滓は、宇田川町から井の頭通りの方面へ向かい、その先の代々木公園の方へ向かっていると星見の言葉を聞き、暁は携帯電話を取り出し、応援の捜査員のリーダーに掛け、西端達の補佐に1人と救急車と警察の呼び出しを頼み、対象が代々木公園に対象が移動するらしいと言う事を伝えると簡潔な返事と共に電話は切れた。
「君は何処まで見えてたの?」
暁が先頭を歩く星見の背中に声を掛けると星見は暁を一瞥した。
「正直言えば、あの人を襲って大浦さんが来る所まで見えてました」
だから、特別驚く様子もなく自分に近づいてきたのかと暁は納得した。
星見以外の3人は、暁の先回りに明らかに事態を把握出来てない様子だった、まぁあの行動ならば事態がどうなるのかの予測や想像などしてないのだろうから当然だ。
「この先は、何か見えたかい?」
暁の問いに星見は、首を傾けた。
「代々木公園の中だと思うんですが、そこで何かを捨てる様です」
星見は、少し曖昧な表現で言った。しかしその言葉とは、裏腹にその足取りに何の迷いもなく井の頭通りに出て暫く直進を歩き右に曲がり代々木公園の南門に向かうと桜の園の茂みでその足を止めた。
少しだけ周りを見たわしたかと思うと徐に歩き出すと茂みの奥にあるそれをそっと指差した。
「恐らくこれを捨てたのだと思います」
暁は、ポケットからペンライトを取り出すと茂みの中を照らした、そこには皮のブランド物の長財布が隠す様に捨てられていた。
暁は白手をはめると長財布を取り上げると中身を開けて確認した。
免許証やクレジットカードなどのカード類には、手をつけれられてないがお札の場所は空っぽだった。
暁は、携帯電話を取り出すと免許証を確認しながら被害者の元に置いてきた捜査官に電話をかけた。
『はい』
2コールで簡潔な声が受話器伝いに聞こえてきた。
「被害者の氏名を確認したい、松野重樹(まつのしげき)53歳で間違いないか?」
『はい、間違いありません、今救急隊と警察官に話してましたから』
「財布を無くしたとかは?」
『言ってました、見つかったんですか?』
「あぁ、代々木公園の桜の園に、ブツは再度置いておくから直ぐに1人こっちに寄越してもらえるか?」
『わかりました、それで大浦さんはこれから?』
「少しだけ、気になる場所を見てから事務所に戻る」
『了解です、彼等は?』
「そのまま、事務所に戻る様に言ってくれ」
『了解です』
そうして、プツリと電話は切れると暁は、携帯電話をポケットにしまった。
電話から数分後にラフな格好の男が暁達に近づいてくる、数mまで近づくと胸ポケットを探る様な仕草をしたので暁は指先で頬を2回叩くと星見を連れて通りに出た。
「今のは?」
星見がポツリと呟く様に聞いてくる。
「合図さ、交代のね」
暁のその言葉に納得した星見はゆっくりと頷き、今度は暁の後を追う様に代々木公園を後にした。
通りに出て原宿駅に向かっていく。その際も暁は、周囲を確認しながらゆったりた歩き、星見はその後ろを付いていた。
「変なことを聞いても良いですか?」
明治神宮の前の橋に差し掛かった時に黙っていついていた星見が聞いてきたので暁は、ゆっくりと振り返り、首を横に傾けた。
「もしかして、大浦さんも残滓が見えてたりします?」
「唐突にどうしたの?」
星見の問いに思わず暁は苦笑いをこぼしてしまった。
「いや、時折ですけど川井が通ったであろう感覚があるので…もしかしたらって思いまして…」
そういう事か…
だとしたら、これで自分の読みは正解だったのだと暁は改めて確信を取れた。
「残念ながら俺には、リンクは無いよ、もし川井の後を追えてるなら単純な推理が正解しただけの話だよ」
暁は、そう応えると再び原宿駅へと向かい歩き出した。
「単純な推理ですか?」
星見も後を追いながら聞いてくる。
「今回の川井の目的なんだと思う?」
暁は、ゆったりと歩きながら星見の横に立った。
星見は、その歩幅に合わせながらゆったりと歩きながら俯いた。
「能力の試運転とか?」
「なるほどね、それなら何故わざわざ彼を狙ったと思う?」
暁の返答に星見の表情が怪訝なモノになる。
「アイツの目的は、多分試運転じゃなく、単なる金さ」
原宿駅の改札を通りながら暁がそう応えると星見はなぜ分かるのかという様に首を傾げた。
「この一週間、アイツの生活みていて変だなって思うところはなかったかい?」
「特別…よく遊んでるなってぐらいで…」
「なら、遊ぶのに時間以外何が必要?」
「お金ですかね…あっ…」
暁の誘導に漸く星見は、気づいたのか顔がパッと明るくなった。
「お金を稼いでない…でも、もしかしたら実家が金持ちの可能性も…」
「大手企業の工場勤務の父親にスーパーのパートで働く母親、3人兄妹の長男、それに地方から上京してきた、その可能性は事前情報から有り得ない」
池袋方面に向かう電車が到着し、暁と星見は乗り込んだ。
「そんな情報…」
「書いてあったよ、鷲野が見せたファイルね」
そう言うと星見は、ゆっくりと俯いた。
暁は、そんな星見に何も言わずにゆっくりと目を車窓に向けた。
「私達が素人で未熟なのは、重々承知してます…今回の事も、岩倉の事も、私達が上手く立ち回る事が出来たらあんな事にならなかったと思ってもいます…だけど…」
新宿駅に向かう間に星見が小さく呟いた。
暁は、そんな星見に目を向けずに車窓を眺めながら口を開いた。
「だけど…どうすれば良いのかわからない?」
「はい…車木は私を甘くみてるし、西端は勝手に突っ走るし、熊切は皆の様子伺ってからしか行動出来ないし…」
なるほど、ちゃんと周りを見ているのか…
暁は、思った以上に星見が状況を見ているのだとわかっているのだと感心した。
「それなら、そこからは俺達の出番だな」
暁は、そう言いながら星見を一瞥すると星見は目を丸々と広げながら暁を見ていた。
「とりあえず、俺の知る限りの技術と考え方を君達に教えていく、とりあえずそこから始めてみよう」
暁のその言葉に星見がハイっとしっかりと応えた。
その返事を待っていたかの様に電車は事務所のある池袋に到着するアナウンスが流れた。
暁は、そのアナウンスに従う様にゆっくりとドアへ目を向けながら小さく気合い息を一つついた。
川井を後ろから追けていた星見達が目の前に現れた暁の元に駆け寄ってきた。
その後に続く様に向かってくる車木達は、暁の先回りに怪訝な表情を浮かべていた。
「川井は?」
暁は間髪入れずに星見に聞くと、星見は直ぐ先の交差点を指差した。
「そこを右へ走って行きました」
走っていった?
「君は、川井を見えるのか?」
暁がそう聞くと星見は首を横に振った。
「川井の姿は見えてません、でもリンクの残滓は、追えます」
そう言われると暁は、星見に対して手招きをし、西端、熊切、車木をその場に残し警察来るまでの間に被害者と一緒に居る様に頼んだ。
3人共何をすれば良いのか戸惑っていたが暁にそれを構ってる暇は無く、星見に先頭を歩かせて残滓を追った。
残滓は、宇田川町から井の頭通りの方面へ向かい、その先の代々木公園の方へ向かっていると星見の言葉を聞き、暁は携帯電話を取り出し、応援の捜査員のリーダーに掛け、西端達の補佐に1人と救急車と警察の呼び出しを頼み、対象が代々木公園に対象が移動するらしいと言う事を伝えると簡潔な返事と共に電話は切れた。
「君は何処まで見えてたの?」
暁が先頭を歩く星見の背中に声を掛けると星見は暁を一瞥した。
「正直言えば、あの人を襲って大浦さんが来る所まで見えてました」
だから、特別驚く様子もなく自分に近づいてきたのかと暁は納得した。
星見以外の3人は、暁の先回りに明らかに事態を把握出来てない様子だった、まぁあの行動ならば事態がどうなるのかの予測や想像などしてないのだろうから当然だ。
「この先は、何か見えたかい?」
暁の問いに星見は、首を傾けた。
「代々木公園の中だと思うんですが、そこで何かを捨てる様です」
星見は、少し曖昧な表現で言った。しかしその言葉とは、裏腹にその足取りに何の迷いもなく井の頭通りに出て暫く直進を歩き右に曲がり代々木公園の南門に向かうと桜の園の茂みでその足を止めた。
少しだけ周りを見たわしたかと思うと徐に歩き出すと茂みの奥にあるそれをそっと指差した。
「恐らくこれを捨てたのだと思います」
暁は、ポケットからペンライトを取り出すと茂みの中を照らした、そこには皮のブランド物の長財布が隠す様に捨てられていた。
暁は白手をはめると長財布を取り上げると中身を開けて確認した。
免許証やクレジットカードなどのカード類には、手をつけれられてないがお札の場所は空っぽだった。
暁は、携帯電話を取り出すと免許証を確認しながら被害者の元に置いてきた捜査官に電話をかけた。
『はい』
2コールで簡潔な声が受話器伝いに聞こえてきた。
「被害者の氏名を確認したい、松野重樹(まつのしげき)53歳で間違いないか?」
『はい、間違いありません、今救急隊と警察官に話してましたから』
「財布を無くしたとかは?」
『言ってました、見つかったんですか?』
「あぁ、代々木公園の桜の園に、ブツは再度置いておくから直ぐに1人こっちに寄越してもらえるか?」
『わかりました、それで大浦さんはこれから?』
「少しだけ、気になる場所を見てから事務所に戻る」
『了解です、彼等は?』
「そのまま、事務所に戻る様に言ってくれ」
『了解です』
そうして、プツリと電話は切れると暁は、携帯電話をポケットにしまった。
電話から数分後にラフな格好の男が暁達に近づいてくる、数mまで近づくと胸ポケットを探る様な仕草をしたので暁は指先で頬を2回叩くと星見を連れて通りに出た。
「今のは?」
星見がポツリと呟く様に聞いてくる。
「合図さ、交代のね」
暁のその言葉に納得した星見はゆっくりと頷き、今度は暁の後を追う様に代々木公園を後にした。
通りに出て原宿駅に向かっていく。その際も暁は、周囲を確認しながらゆったりた歩き、星見はその後ろを付いていた。
「変なことを聞いても良いですか?」
明治神宮の前の橋に差し掛かった時に黙っていついていた星見が聞いてきたので暁は、ゆっくりと振り返り、首を横に傾けた。
「もしかして、大浦さんも残滓が見えてたりします?」
「唐突にどうしたの?」
星見の問いに思わず暁は苦笑いをこぼしてしまった。
「いや、時折ですけど川井が通ったであろう感覚があるので…もしかしたらって思いまして…」
そういう事か…
だとしたら、これで自分の読みは正解だったのだと暁は改めて確信を取れた。
「残念ながら俺には、リンクは無いよ、もし川井の後を追えてるなら単純な推理が正解しただけの話だよ」
暁は、そう応えると再び原宿駅へと向かい歩き出した。
「単純な推理ですか?」
星見も後を追いながら聞いてくる。
「今回の川井の目的なんだと思う?」
暁は、ゆったりと歩きながら星見の横に立った。
星見は、その歩幅に合わせながらゆったりと歩きながら俯いた。
「能力の試運転とか?」
「なるほどね、それなら何故わざわざ彼を狙ったと思う?」
暁の返答に星見の表情が怪訝なモノになる。
「アイツの目的は、多分試運転じゃなく、単なる金さ」
原宿駅の改札を通りながら暁がそう応えると星見はなぜ分かるのかという様に首を傾げた。
「この一週間、アイツの生活みていて変だなって思うところはなかったかい?」
「特別…よく遊んでるなってぐらいで…」
「なら、遊ぶのに時間以外何が必要?」
「お金ですかね…あっ…」
暁の誘導に漸く星見は、気づいたのか顔がパッと明るくなった。
「お金を稼いでない…でも、もしかしたら実家が金持ちの可能性も…」
「大手企業の工場勤務の父親にスーパーのパートで働く母親、3人兄妹の長男、それに地方から上京してきた、その可能性は事前情報から有り得ない」
池袋方面に向かう電車が到着し、暁と星見は乗り込んだ。
「そんな情報…」
「書いてあったよ、鷲野が見せたファイルね」
そう言うと星見は、ゆっくりと俯いた。
暁は、そんな星見に何も言わずにゆっくりと目を車窓に向けた。
「私達が素人で未熟なのは、重々承知してます…今回の事も、岩倉の事も、私達が上手く立ち回る事が出来たらあんな事にならなかったと思ってもいます…だけど…」
新宿駅に向かう間に星見が小さく呟いた。
暁は、そんな星見に目を向けずに車窓を眺めながら口を開いた。
「だけど…どうすれば良いのかわからない?」
「はい…車木は私を甘くみてるし、西端は勝手に突っ走るし、熊切は皆の様子伺ってからしか行動出来ないし…」
なるほど、ちゃんと周りを見ているのか…
暁は、思った以上に星見が状況を見ているのだとわかっているのだと感心した。
「それなら、そこからは俺達の出番だな」
暁は、そう言いながら星見を一瞥すると星見は目を丸々と広げながら暁を見ていた。
「とりあえず、俺の知る限りの技術と考え方を君達に教えていく、とりあえずそこから始めてみよう」
暁のその言葉に星見がハイっとしっかりと応えた。
その返事を待っていたかの様に電車は事務所のある池袋に到着するアナウンスが流れた。
暁は、そのアナウンスに従う様にゆっくりとドアへ目を向けながら小さく気合い息を一つついた。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/essay.png?id=5ada788558fa89228aea)
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/horror.png?id=d742d2f035dd0b8efefe)
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる