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【PW】AD199907 《新しい道》
接続者 3
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「見識者と呼ばれている人物達は、近い未来から意識だけがタイムスリップしてきた人達を差していて、帰還者とか生還者とかも呼ばれてたりする」
「ちょっとまった!いきなり情報が多過ぎるぞ!お前!」
崇央の言葉に遂に暁の頭がパンクした。
それをわかっているのだろう崇央は暁の言葉に素直に応じる様にそのまま押し黙った。
タイムスリップ、帰還者、生還者と呼ばれていたりする。
その言葉の羅列を必死で暁は頭で整理するがその言葉の差す意味を考えると事態は思った以上にややこしいと事だけはわかった。
少なくとも今現在、聞いてもなんの身にならないのだけは、よく理解出来た。
「悪い、崇央、その話もうちょい後でもいいか?」
暁が素直にギブアップを申し出ると崇央は、軽く数度頷いた。
「まぁまだ時間はこれから沢山あるし、頃合いを見てまた再度話すよ」
そう言って崇央は、立ち上がるとデスクから1冊のファイルをテーブルに置いた。
「とりあえず、先輩に担当して欲しいのは、星見が所属するグループのパイプ係」
つまり、林の仕事を引き継げという事だ。
予想通りの仕事の内容に暁は、少し重い頭を手で支えながらファイルを開いた。
1ページに乗っていたのは、暁も見た事があるまだ茶色い長い髪の目がクリっとしたあどけない顔立ちの少女だ。
星見 香樹実(ほしみ かずみ)、15歳、帰還者。
写真の下には、名前と簡単なプロフィールが載っていたが肝心な能力については、記載されていなかった。
写真で見ると本当に普通の女子高生だ。だが実際に会うとその印象は妙な違和感によって変わってくる。
車木 和之(くまき かずゆき) 、15歳、帰還者。次のページに載っていたのは、目がクリっとした少年と青年の子供が無邪気な笑顔を見せていた。星見と一緒に居た青年だ。彼もまた星見と同じ印象を持つが、彼の場合は達観というより疲れた中年という印象だった。
熊切 燈(くまきり あかり)、15歳、接続者。ショートカットに切れ長の目、どこか活発的な印象を持たせる少女と言うよりもはや女性という表現があっている顔立ちだ。
西端 伸治(にしばた しんじ)、15歳、接続者。こちらは、車木と違い完全に少年と言うよりも男性という表現が似合っている、暁の記憶が確かならばこの子は、岩倉と対峙していた子だろう。顔立ちからも察するにまだ視野の狭さが目立つタイプだとも言えた。
為永 仁良(ためなが ひとよし) 26歳、監視者。聞いてないワードの表記が目を停めたが柔和な表情の男性の写真に暁はどこか親近感を覚えた。
「この為永は、監視者ってことは、こっちか?」
あえて崇央にそれを確認すると崇央は言わずもながなと言う様に軽く頷くだけだった。
暁は、6名の簡単なプロフィールと特性が書かれたファイルを目に通し頭の中に書き込む。
慣れた作業は、終えるのが早い。
ファイルを開いてから5分後には、ファイルを閉じて崇央に返した。
「連絡要員としては、副担任として入り込んでる為永を使って欲しい、さすがに大人が高校生と接触するにはちゃんとした言い訳ながないと不自然過ぎるから」
ファイルを受け取りながら崇央が言う。
確かにその通りだけど…
暁の頭の中にフト、あの日の夜の光景を思い出した。
「彼等の戦闘技術とかは、どうなってる?」
暁のその問いに、崇央は表情だけで何故と聞いていた。
「お前な?この子達に俺らは何をやらせてるんだ?」
「単なる調査だ、危険な事は無いだろ?」
「この間の一件を踏まえても同じこと言えるか?」
そう言われ崇央の表情が固まった。
「その件ばかりは、俺達は何とも言えない。俺達はあくまで彼等に調査の依頼しかしてない、だけど彼等が独断で行動した時の事態までは俺達の範疇を越えている」
「だが、あれは、人命や事を第一に考えた行動の末だろ?」
「だから、それが余計なんだよ。先輩、元公安ならアンタもわかる筈だ。俺達の第一目標はなんだ?」
崇央に言われて暁は、そうだっと気付かされる。
公安の基本的に情報収集とそれに伴う渉外、もしそれが拗れたり余計な派生をするならば対処をする。
暁は押し黙ってしまった。
その押し黙ったのが応えだと察したのか崇央は、小さなため息を漏らした。
「これは、林の時にも星見達に念押して言ってある、だが、正義感からか何なのか制御出来てなかったりする」
「林は、それについて?」
「アイツはダメだ、序盤で得体の知れない力にビビって最後の方はアイツらと俺達の筒にしかなってなかった。岩倉の件が起きそうだって報告の時にはパンクしたんだろ、辞めたいと言ってきた」
暁の脳裏に病院であった時の林が見せた一瞬の表情を思い出した。
かつて、自分と仕事をした事があるとはいえ、たかだか擦れ違った程度で明らかに苦悶にも近い動揺の表情を伺わせるというのは、余りにも違和感があった。
公安の捜査員ならどんな時でもポーカーフェイスを求められるし、それを訓練してきている。
それを一瞬でも脆くも崩したのだ、何かあるとは、踏んでいたが…あの時にはもう精神を疲弊しきっていたのだろう。
「そういう俺も正直、お手上げ状態だけどね」
崇央は、そう言いながら胸ポケットからタバコを取り出すと徐ろに火を灯した。
「お前タバコやめたんじゃなかったけ?」
暁の問いに崇央は苦笑いをこぼした。
「やめてたよ、この任務に着くまでは」
着いて行けない、また着いて行けてない自分に対する苛立ちと起きてる事への対処が見つからず四苦八苦している状態なのだろう。
相変わらずの不遜な態度の中に弱みを見せている崇央の態度に相当追い込まれているのが嫌でもわかった。
「オマケに岩倉の件をこちらが解決したって事になってる分、面倒な案件が舞い込みそうだしね」
「なんだよ、面倒な案件って」
「今現在、リンクを使って犯罪を起こしている接続者に対しては逮捕も裁判も出来ない、だけど野放しにも出来ない、それを国が運営している精神病院を入院という形で拘束している、そこには捜査員や自衛隊員なんかを使って拘束してきた接続者達がいる」
「それが?」
「その拘束をこちらでもやらせるようにする案の話が出ているらしい」
その言葉に自然と暁は立ち上がってしまった。
「一般国民にやらせるって事か?俺達の仕事を!?」
「一般国民ではある、だがそれ以上にリンクを使える能力者というところに上は着目しているらしくてね」
「無謀だ!」
「だけど、今回やってしまった。彼等の独断の行動とは、言え実績を生んでしまった」
「だが、実際にやったのは、乗り込んできた3人組の奴等だ、あのままだったら俺達は全員死ぬか藤によって岩倉が殺されていたんだぞ?」
「だが体裁上、俺達と埼玉県警で解決した事にされてる。先輩、俺がこの話をしている理由は理解して貰えるよね?」
変な正義感を出すな、彼等を制御する事に専念しろ。
崇央は、それを暗に暁に伝えていた。
暁は、その事に半分納得出来たがもう半分は出来ていなかった。
確かに、捜査もした事ない素人にコチラと同じ仕事をさせるなんてのは、危な過ぎるし何なら彼等を耳や目の様に扱っている現状は、反対でしかない。
だが上の言い分もまた理解出来る。
得体の知れない力を操れる、それと同じ様にその力に対して対抗も出来る、もしかしたら抑止も出来るかもしれない。
だからこそ、彼等の力を必要だと言うのもあの現状を観てきたからこそ理解は出来る。
暁は、それを理解すればする程に自分の無力さに歯痒くなり、その場は黙っていることしか出来なかった。
「ちょっとまった!いきなり情報が多過ぎるぞ!お前!」
崇央の言葉に遂に暁の頭がパンクした。
それをわかっているのだろう崇央は暁の言葉に素直に応じる様にそのまま押し黙った。
タイムスリップ、帰還者、生還者と呼ばれていたりする。
その言葉の羅列を必死で暁は頭で整理するがその言葉の差す意味を考えると事態は思った以上にややこしいと事だけはわかった。
少なくとも今現在、聞いてもなんの身にならないのだけは、よく理解出来た。
「悪い、崇央、その話もうちょい後でもいいか?」
暁が素直にギブアップを申し出ると崇央は、軽く数度頷いた。
「まぁまだ時間はこれから沢山あるし、頃合いを見てまた再度話すよ」
そう言って崇央は、立ち上がるとデスクから1冊のファイルをテーブルに置いた。
「とりあえず、先輩に担当して欲しいのは、星見が所属するグループのパイプ係」
つまり、林の仕事を引き継げという事だ。
予想通りの仕事の内容に暁は、少し重い頭を手で支えながらファイルを開いた。
1ページに乗っていたのは、暁も見た事があるまだ茶色い長い髪の目がクリっとしたあどけない顔立ちの少女だ。
星見 香樹実(ほしみ かずみ)、15歳、帰還者。
写真の下には、名前と簡単なプロフィールが載っていたが肝心な能力については、記載されていなかった。
写真で見ると本当に普通の女子高生だ。だが実際に会うとその印象は妙な違和感によって変わってくる。
車木 和之(くまき かずゆき) 、15歳、帰還者。次のページに載っていたのは、目がクリっとした少年と青年の子供が無邪気な笑顔を見せていた。星見と一緒に居た青年だ。彼もまた星見と同じ印象を持つが、彼の場合は達観というより疲れた中年という印象だった。
熊切 燈(くまきり あかり)、15歳、接続者。ショートカットに切れ長の目、どこか活発的な印象を持たせる少女と言うよりもはや女性という表現があっている顔立ちだ。
西端 伸治(にしばた しんじ)、15歳、接続者。こちらは、車木と違い完全に少年と言うよりも男性という表現が似合っている、暁の記憶が確かならばこの子は、岩倉と対峙していた子だろう。顔立ちからも察するにまだ視野の狭さが目立つタイプだとも言えた。
為永 仁良(ためなが ひとよし) 26歳、監視者。聞いてないワードの表記が目を停めたが柔和な表情の男性の写真に暁はどこか親近感を覚えた。
「この為永は、監視者ってことは、こっちか?」
あえて崇央にそれを確認すると崇央は言わずもながなと言う様に軽く頷くだけだった。
暁は、6名の簡単なプロフィールと特性が書かれたファイルを目に通し頭の中に書き込む。
慣れた作業は、終えるのが早い。
ファイルを開いてから5分後には、ファイルを閉じて崇央に返した。
「連絡要員としては、副担任として入り込んでる為永を使って欲しい、さすがに大人が高校生と接触するにはちゃんとした言い訳ながないと不自然過ぎるから」
ファイルを受け取りながら崇央が言う。
確かにその通りだけど…
暁の頭の中にフト、あの日の夜の光景を思い出した。
「彼等の戦闘技術とかは、どうなってる?」
暁のその問いに、崇央は表情だけで何故と聞いていた。
「お前な?この子達に俺らは何をやらせてるんだ?」
「単なる調査だ、危険な事は無いだろ?」
「この間の一件を踏まえても同じこと言えるか?」
そう言われ崇央の表情が固まった。
「その件ばかりは、俺達は何とも言えない。俺達はあくまで彼等に調査の依頼しかしてない、だけど彼等が独断で行動した時の事態までは俺達の範疇を越えている」
「だが、あれは、人命や事を第一に考えた行動の末だろ?」
「だから、それが余計なんだよ。先輩、元公安ならアンタもわかる筈だ。俺達の第一目標はなんだ?」
崇央に言われて暁は、そうだっと気付かされる。
公安の基本的に情報収集とそれに伴う渉外、もしそれが拗れたり余計な派生をするならば対処をする。
暁は押し黙ってしまった。
その押し黙ったのが応えだと察したのか崇央は、小さなため息を漏らした。
「これは、林の時にも星見達に念押して言ってある、だが、正義感からか何なのか制御出来てなかったりする」
「林は、それについて?」
「アイツはダメだ、序盤で得体の知れない力にビビって最後の方はアイツらと俺達の筒にしかなってなかった。岩倉の件が起きそうだって報告の時にはパンクしたんだろ、辞めたいと言ってきた」
暁の脳裏に病院であった時の林が見せた一瞬の表情を思い出した。
かつて、自分と仕事をした事があるとはいえ、たかだか擦れ違った程度で明らかに苦悶にも近い動揺の表情を伺わせるというのは、余りにも違和感があった。
公安の捜査員ならどんな時でもポーカーフェイスを求められるし、それを訓練してきている。
それを一瞬でも脆くも崩したのだ、何かあるとは、踏んでいたが…あの時にはもう精神を疲弊しきっていたのだろう。
「そういう俺も正直、お手上げ状態だけどね」
崇央は、そう言いながら胸ポケットからタバコを取り出すと徐ろに火を灯した。
「お前タバコやめたんじゃなかったけ?」
暁の問いに崇央は苦笑いをこぼした。
「やめてたよ、この任務に着くまでは」
着いて行けない、また着いて行けてない自分に対する苛立ちと起きてる事への対処が見つからず四苦八苦している状態なのだろう。
相変わらずの不遜な態度の中に弱みを見せている崇央の態度に相当追い込まれているのが嫌でもわかった。
「オマケに岩倉の件をこちらが解決したって事になってる分、面倒な案件が舞い込みそうだしね」
「なんだよ、面倒な案件って」
「今現在、リンクを使って犯罪を起こしている接続者に対しては逮捕も裁判も出来ない、だけど野放しにも出来ない、それを国が運営している精神病院を入院という形で拘束している、そこには捜査員や自衛隊員なんかを使って拘束してきた接続者達がいる」
「それが?」
「その拘束をこちらでもやらせるようにする案の話が出ているらしい」
その言葉に自然と暁は立ち上がってしまった。
「一般国民にやらせるって事か?俺達の仕事を!?」
「一般国民ではある、だがそれ以上にリンクを使える能力者というところに上は着目しているらしくてね」
「無謀だ!」
「だけど、今回やってしまった。彼等の独断の行動とは、言え実績を生んでしまった」
「だが、実際にやったのは、乗り込んできた3人組の奴等だ、あのままだったら俺達は全員死ぬか藤によって岩倉が殺されていたんだぞ?」
「だが体裁上、俺達と埼玉県警で解決した事にされてる。先輩、俺がこの話をしている理由は理解して貰えるよね?」
変な正義感を出すな、彼等を制御する事に専念しろ。
崇央は、それを暗に暁に伝えていた。
暁は、その事に半分納得出来たがもう半分は出来ていなかった。
確かに、捜査もした事ない素人にコチラと同じ仕事をさせるなんてのは、危な過ぎるし何なら彼等を耳や目の様に扱っている現状は、反対でしかない。
だが上の言い分もまた理解出来る。
得体の知れない力を操れる、それと同じ様にその力に対して対抗も出来る、もしかしたら抑止も出来るかもしれない。
だからこそ、彼等の力を必要だと言うのもあの現状を観てきたからこそ理解は出来る。
暁は、それを理解すればする程に自分の無力さに歯痒くなり、その場は黙っていることしか出来なかった。
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