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【PW】AD199905《氷の刃》
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「はぁ~」
香樹実は、大きなため息を漏らしながら天を仰いだ。
見慣れた教室の天井に休み時間には騒がしくなる教室が少しだけ煩わしく感じた。
「香樹実!」
時折思う。この人の何処が良かったんだろ?
和之の話し掛けてくるタイミングは、本当に最悪だ。出来ればそっとしておいて欲しい時に近づいてくる。
「お前、才田と随分仲良くなってんな」
そして聞いてくる内容も最悪と来る。
「だから何?」
余りにも面倒で香樹実がぶっきらぼうに返すと和之は、1歩下がりそうになるのを堪えていた。
「前の時ってお前らそんなに仲良かったっけ?」
「何が言いたいの?」
「もしかしたら、才田も藤と同じ様に…」
「あのさ!」
和之の言葉を香樹実が遮った。
苛立ちもピークに達し始めていた。
「今現在、あの時と今は違うの、それと、ここでその話をするのは、ダメだって言われてるでしょ?何を考えてるの?」
「しょうがないだろ!別の所で話をしようとしてもお前は俺を無視するじゃないか!」
声を押し殺しながら言う香樹実に対して和之の声は、大きくなっていく。
少しづつだがクラスの視線がゆっくりと集まってきた。
「声がデカイ、そういう配慮が聞かないのがダメだって今言ったよね?」
「だから、それはお前が…」
「はいはい!!ご両人!落ち着いて~喧嘩なんてどうしたのさぁ~」
そんな香樹実と和之の間に入ってきたのは、西端だった。
西端は、和之の背中をさすりながらゆっくりと自分の席に戻る様に促し、和之はその言葉にのせられる様に自分の席へと戻って行った。
香樹実の気持ちはより不快なモノになる。
「大丈夫?」
そっと背中を擦りながら燈が後ろから声をかけてきた。香樹実は苦笑しながらそっと頷いた。
それ以降も燈は、何かを口にしようとしたが香樹実の顔を見てそれを閉ざした。
きっと話す気はない、そう思われたのだろう。
燈は、察しがいい、だからこそ余計な事には口を挟んでこない。
それが香樹実にとってとても都合がいい反面どうしても物足りなさに感じてしまう。
でも、それはきっと西端や燈などのただの接続者達には、荷が重い話だろう。っと言う事も十分理解しているからこそ香樹実もまた余計な事は言えない。
時折考える、私達はこれから何処に向かうのだろうか。
かつては、感じる事は、なかった焦りがゆっくりと足元から這い上がってくる。
これなら何も知らない方が、あの時に死んでしまっていた方がどれだけ楽だったろうか、どうしてあの時にあんなに必死に生きたいと願っていたのか分からなくなった。
死んでもしかしたらあの子にも会えたのかもしれないのに…
香樹実は、泣きそうになるをグッと堪えながら燈に向かいゆっくりと笑顔を向けた。
「大丈夫だから」
そう告げると燈は、何処か悲しそうな笑顔を向けながら「何かあったら言ってね」っと言って自分の席に戻って行った。
暫くチャイムが鳴り。
程なく先生も入ってきた。教壇に立つなり先生が不思議そうな表情をしながら一点を見つめていた。
視線の先は、香樹実の隣の席、才田の席だった。
「ありゃ、アイツが居ないとか珍しいな」
そういうと教室の出入り口に向かい、開けると廊下を眺めた。
「あっいた、才田~才田晴人(さいだ はると)~キリキリ歩け~始めるぞ~」
先生の呼びかけに、才田は変な悲鳴を上げながら廊下中に走るを音を鳴らせながら教室に滑り込んできた。
「すいません~使用で電話してておくれましたァ~」
才田は、いつもの調子で頭を下げながら自分の席に座るとフト香樹実と目が合った。
香樹実は、その表情がいつもの才田と違うのを直ぐに察し、才田もまた香樹実の何かを察したのかもしれない。
「お互いなんか色々大変そうだな」
席に着くなり才田が呟いた。
「そうだね」
香樹実もそれに静に応えた。
香樹実は、大きなため息を漏らしながら天を仰いだ。
見慣れた教室の天井に休み時間には騒がしくなる教室が少しだけ煩わしく感じた。
「香樹実!」
時折思う。この人の何処が良かったんだろ?
和之の話し掛けてくるタイミングは、本当に最悪だ。出来ればそっとしておいて欲しい時に近づいてくる。
「お前、才田と随分仲良くなってんな」
そして聞いてくる内容も最悪と来る。
「だから何?」
余りにも面倒で香樹実がぶっきらぼうに返すと和之は、1歩下がりそうになるのを堪えていた。
「前の時ってお前らそんなに仲良かったっけ?」
「何が言いたいの?」
「もしかしたら、才田も藤と同じ様に…」
「あのさ!」
和之の言葉を香樹実が遮った。
苛立ちもピークに達し始めていた。
「今現在、あの時と今は違うの、それと、ここでその話をするのは、ダメだって言われてるでしょ?何を考えてるの?」
「しょうがないだろ!別の所で話をしようとしてもお前は俺を無視するじゃないか!」
声を押し殺しながら言う香樹実に対して和之の声は、大きくなっていく。
少しづつだがクラスの視線がゆっくりと集まってきた。
「声がデカイ、そういう配慮が聞かないのがダメだって今言ったよね?」
「だから、それはお前が…」
「はいはい!!ご両人!落ち着いて~喧嘩なんてどうしたのさぁ~」
そんな香樹実と和之の間に入ってきたのは、西端だった。
西端は、和之の背中をさすりながらゆっくりと自分の席に戻る様に促し、和之はその言葉にのせられる様に自分の席へと戻って行った。
香樹実の気持ちはより不快なモノになる。
「大丈夫?」
そっと背中を擦りながら燈が後ろから声をかけてきた。香樹実は苦笑しながらそっと頷いた。
それ以降も燈は、何かを口にしようとしたが香樹実の顔を見てそれを閉ざした。
きっと話す気はない、そう思われたのだろう。
燈は、察しがいい、だからこそ余計な事には口を挟んでこない。
それが香樹実にとってとても都合がいい反面どうしても物足りなさに感じてしまう。
でも、それはきっと西端や燈などのただの接続者達には、荷が重い話だろう。っと言う事も十分理解しているからこそ香樹実もまた余計な事は言えない。
時折考える、私達はこれから何処に向かうのだろうか。
かつては、感じる事は、なかった焦りがゆっくりと足元から這い上がってくる。
これなら何も知らない方が、あの時に死んでしまっていた方がどれだけ楽だったろうか、どうしてあの時にあんなに必死に生きたいと願っていたのか分からなくなった。
死んでもしかしたらあの子にも会えたのかもしれないのに…
香樹実は、泣きそうになるをグッと堪えながら燈に向かいゆっくりと笑顔を向けた。
「大丈夫だから」
そう告げると燈は、何処か悲しそうな笑顔を向けながら「何かあったら言ってね」っと言って自分の席に戻って行った。
暫くチャイムが鳴り。
程なく先生も入ってきた。教壇に立つなり先生が不思議そうな表情をしながら一点を見つめていた。
視線の先は、香樹実の隣の席、才田の席だった。
「ありゃ、アイツが居ないとか珍しいな」
そういうと教室の出入り口に向かい、開けると廊下を眺めた。
「あっいた、才田~才田晴人(さいだ はると)~キリキリ歩け~始めるぞ~」
先生の呼びかけに、才田は変な悲鳴を上げながら廊下中に走るを音を鳴らせながら教室に滑り込んできた。
「すいません~使用で電話してておくれましたァ~」
才田は、いつもの調子で頭を下げながら自分の席に座るとフト香樹実と目が合った。
香樹実は、その表情がいつもの才田と違うのを直ぐに察し、才田もまた香樹実の何かを察したのかもしれない。
「お互いなんか色々大変そうだな」
席に着くなり才田が呟いた。
「そうだね」
香樹実もそれに静に応えた。
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