黄泉返りの勇者。

亀様仏様

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旅立つ準備は念入りに。

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【神託の儀】にて僕は世にも珍しい?らしいユニークスキル【黄泉返り】を賜った。スキルを賜り、ハイエルフじいさんと社殿の中央へと戻った。

「これにて勇者候補殿の【神託の儀】は終了でございます。これから勇者候補殿達には穢れを祓う旅の前に旅立つ準備として準備金を用意してございます。勇者候補殿達は此方の世界の通貨をお持ちで無い筈なので、少しばかりではありますが準備させて頂きました。準備金を受け取り次第各自世界を救う為、旅立って頂くたく存じます。」

「うおっ!マジで!?へへっ。じゃあ遠慮なく貰えるもんは貰ってくわ。」

井伊君は出された小袋を迷わず受け取り中を確認した。中身を開けジャラジャラと掌の上に出し枚数を確認する。

「へぇ~これって本物の金貨か。初めて見たわ。丁度10枚か。多いか少ないか分かんねーけど、ま、いっか。じゃあお前らお疲れさん!俺は先に行くわ。じゃあな!」

そう言って井伊君はお先にと社殿を後にした。
行動力がある人は凄いな。
それを見た他の皆もじゃあと言わんばかりに後へと続いていった。

「ウチも貰おうっと、それじゃあ待ったね~。そうそう!松平くーん。途中まで一緒に行こうよ~。色々見て回ろうよ。」

「そうだね。井伊君は先に行ってしまったけれど、僕達はこの世界の事を何1つ分かっていないからね。ライバルとは言ったけれど、先ずは協力していこう。榊原さんも酒井君もそれで良いかな?」

松平君はそう言ってニコリと微笑み二人に握手を求めた。

「あ、あの、その、は、はい。宜しくお願いします。」

「・・・・・・宜しく。」

こうして松平君を含む本多さん、榊原さん、酒井君の四人はパーティーを組んで社殿を後にした。

あれ?松平君僕は?声すら掛けて貰えず行ってしまった。

僕はどうやらハブられたみたいだ。

【神託の儀】に続いて此処でも僕は一人ポツンと取り残されてしまった。それを見ていたハイエルフじいさんが、少し気まずそうに声を掛けてくれた。

「ゴホンッ!あぁ~その勇者候補殿元気を出して下され!ドンマイですぞ!」

煩いやい!別にハブられたからっていじけてないやい!逆に慰めるの止めて余計辛くなるから。

僕は一人気を取り直して、金貨の入った小袋を受け取った。
先ずはこの金貨で、旅の準備をしなくちゃ。と、その前に。

「あのう~1つ聞いても良いですか?」

「何ですかな?儂に答えられる事でしたら何なりと。」

「此処って一体何処ですか?」

「此処はエルフの大森林と呼ばれる場所ですじゃ。その中でも祭祀を司る最も神聖な社殿の中に今、儂らはおりますじゃ。付け加えるならば、儂はここで司祭を務めておると同時にこの街を治める長でもあります。」

「そうなんですね。この森も穢れが溜まっているんですか?」

「そうなのですじゃ!此処からちと行った先に泉があるのですが、最近になって泉の水に淀みが見え始め、穢れによる影響が出始めておるのです。なので、先ずは勇者候補殿にはこれを調査して頂き浄化して欲しいのですじゃ。」

「分かりました。でもそれは皆がいる時に言ってくれても良かったんじゃないですか?」

「伝える前に他の勇者候補殿達は皆行ってしまわれたので。」

「あぁ・・・ごめんなさい。」

「いえいえ。儂も伝え切れず申し訳ない。」

気まずい空気が辺りを包み込む。

「じゃ、じゃあ僕も行きますね!」

「宜しくお願いしますじゃ。」

僕は気まずい空気に耐えきれず、その場を後にした。社殿の外に出るとそこは和風感満載の町並みだった。通りを歩く人達は、皆エルフなんだけど、着ている服が僕の予想を遥かに超えていた。皆和服なんだもん。僕は自分の目を一瞬疑ってしまった。エルフの人達は皆、比較的長身で美形、なのに着ている服が和服って。町並みもそう。古い日本家屋が建ち並んでいる。此処はいつの時代背景の日本ですか?と突っ込みたくなる感じだ。けれど、大森林と呼ばれるだけあって木々も多く日本家屋の様な木造建築と自然との調和が相成って凄くホッとする気持ちになる。けれど、ふと見ると通る人達はエルフだからここはつくづく異世界なんだなぁと思い知らされる。

結局一通り町の中を買い物しながらブラブラし、必要な物を買い揃えていった。因みに和服に着替えました。制服のままっていうのも何だかね。郷に入っては郷に従え的な感じかな。ただ単に和服を着たかったってのも内心ありますが。
その他にも武器や回復薬等も買った。武器に至ってはエルフ=弓かと思いきや何故か武器屋の店頭には刀が陳列されており、通りを歩くエルフの人も刀を差している人がちらほら見える。勿論主武器である弓も置いてあった。う~ん色々と僕の中でのエルフ像が音を立てて崩れていくのを感じていた。

僕は一応?の装備を整え、ハイエルフじいさんに教わった泉へと向かう事にした。
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