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 念のため部屋には結界を張ってから寝たので気持ちよく目覚めた翌朝。


昨日、ジョシュア達が持ってきてくれていた朝食を三人でいただいてからイシュマを先にゲートでリアザイアの王様と王妃様の元へ送る。

それから私はシュゼット様と少しお話がしたかったのでセオドア一緒にとザイダイバへ向かう。

「兄上、ただいま戻りました」

セオドアがエリアス陛下と少し話をしてからこちらへ来る。

「エリアス陛下、お久しぶりです」

私も礼をしてご挨拶をすると、元気そうだね、あまり堅苦しくしないで欲しいと、微笑むエリアス陛下は相変わらず美しい。

「トーカ、お久しぶり」

シュゼット様登場。 こちらも相変わらずの落ち着きぶりと美しさ。

セオドアがエリアス陛下と話があると言うのでシュゼット様と私はシュゼット様のお部屋へ移動してお茶を飲むことにした。

お部屋に入り、シュゼット様がメイドさんを下がらせるとクルリと振り返り近づいてくる。

「トーカ!」

抱きつかれた……いい匂い……

「突然いなくなったと聞いて心配したわ! どこも……何ともないの?」

可愛い……じゃなくて

「シュゼット様、この通り元気です」

と笑ってみせる。

「ときどきミケネコサンは来てくれるのだけれどトーカの様子はわからなくて……」

なんと、うちの三毛猫さんがお邪魔していましたか。
ココさんに会いに来ていたのかな。

そう思っていると足元にココさんが……ココさんを抱き上げて

「シュゼット様、心配させてしまってすみません」

「ミケネコサンの毛並みはいいし元気だからきっとトーカも大丈夫だとは思っていたけれど……」

三毛猫さんの様子からそこまで察するとは……と感心していると

「とりあえず、掛けてちょうだい。お茶をいれるわ」

シュゼット様がお茶をいれてくれた。
王妃様がいれてくれたお茶……いい香り、と一口いただく。

「美味しい……」

シュゼット様がジッと私を見つめる……これは……

「トーカ、ノヴァルト様と……嬉しいわ」

おめでとう、と自分の事のように嬉しそうに微笑むシュゼット様。

「ありがとうございます、ノバルトと婚約しました」

まだ不安を全て拭えた訳ではないけれど飛び込んでみなければわからないこともあると思う。

そんな私の微笑みにほんの少しだけ不安が滲んでいたのかもしれない。

「王妃としての役割、振る舞い、付き合い、トーカはこれまでの型に嵌まらなくてもいいと思うわ」

きっとノヴァルト様もそう思っているはず……トーカはトーカのままでと。

確かに……そう言ってくれた。

「というか、これまでのあり方を変えていく丁度いい機会だと思っているの」

無駄なことも多いし時代にそぐわないことも、と。

「このことはエイベル様も同意見だから少なくともリアザイアとザイダイバでは少しずつ変わっていくでしょう」

王妃様も……有難い。

「そうは言ってもわからないことだらけよね、悩むことや戸惑うこともあると思うけれど私も力になるわ」

周りにはたくさんトーカの味方がいることを忘れないで、と。

シュゼット様……泣いちゃいそう……

ノバルトも王妃様も同じように言ってくれている……
それでも……同じ立場の女性から……友達からもそう言ってもらえるとやっぱり心強い。

「ありがとうございます、シュゼット様」

こちらこそ、ゲートをたくさん使わせてもらうわ、と。

たくさん会いに来てくれるということか……
これからもよろしくお願いします、と微笑みあう。

それからお互いココさんと三毛猫さん自慢をしておすすめのおやつの話しなんかもした。

セオドアはまだお話し中らしいから、私はしばらくシュゼット様とのお喋りを楽しんでからお城を後にして一度イシュマの様子を見にゲートでリアザイアのお城へ向かうことにした。

ノバルトとはベゼドラのお城を出発して最初に宿泊する街で待ち合わせをしている。

私は一緒に出発するわけにもいかないしノバルトも出発の時は挨拶もあるしいなくなるわけにはいかなかったからそうしたのだけれど……ちゃんと会えるかな。

シュゼット様とまた近いうちに会いましょうと約束をしてゲートをくぐりリアザイアのお城へ。

「ニャーン」

おや……

「三毛猫さん、見ないと思ったら先に帰って来ていたんだね」

三毛猫さんを抱き上げる。

「そうなのよ、トーカさんもお帰りなさい」

た……

「ただいまぁ……あの、でももう少ししたらノバルトのところへ向かいます」

まぁありがとう、トーカさん。とニコニコな王妃様の後ろにイシュマ……

「トーカ、また行っちゃうの……」

あらあら、と王妃様……

「トーカさんも大変ねぇ……」

と楽しそうに微笑む。
王妃様はイシュマに部屋を用意してあると言い案内も済ませている、と。

「とても素敵な部屋を用意してくださったんだよ。トーカ、後で見においでよ」

お誘いを受けてしまった。

「うん、ノバルトと一緒に見に行くよ」

そう言うとイシュマは固まってしまった……
そんなイシュマをみて王妃様が笑う。

「この子には息子達と同じように接することにしているけれど、今後のことはなるべくイシュマの希望通りにしていくつもりよ」

できればこのままお城にいて仕事を手伝って欲しいけれど、もしお城を出て働きたいと言うのなら私達が選ぶことになるけれども公爵か侯爵家の養子になるという手もあるわ、と王妃様が言う。

「トーカはこれからここに住むの?」

イシュマ……ノバルトの側にいたいけれどその辺のことはまだ話し合っていないから……

「まだわから」

「そうしてくれると嬉しいわ」

これからのことを一度きちんと話し合わなくてはね、と微笑む王妃様。
そうなんです……その通りなのです。

「トーカがここに住むなら僕もここにいる……」

……それでいいのかイシュマよ……まぁ、まだ来たばかりだし。
知り合いや友達が増えればきっと考えも変わっていくよね……これまでの分も楽しく幸せに暮らしていって欲しい。

それから三毛猫さんを撫でながらしばらく王妃様とイシュマとお話をして一度山の家に帰ってからノバルトのところへ向かうと言いお城を後にした。

三毛猫さんとゲートをくぐり山の家の庭に出る。
私が手を掛けていなくても綺麗に管理されている温室。

「ノシュカト、こっちにいたんだね」

「トーカ、おかえり」

ただいま、と言いふと思う。

王妃様に言われるといまだに照れてしまうのにノシュカトに言われると自然なただいまが言える……

場所にもよるのかな……

「植物のお世話をしてくれてありがとう」

ごめんね、全然手を掛けていなくて……と笑うと

「やっと帰ってきた……」

そう言って抱き締められた。

「うん……」

そっと頭を撫でると腕に力が入る……

「ミケネコサンも一緒だ」

ノシュカトが私から離れて三毛猫さんを抱き上げて

「トーカ、今はまだ婚約者はノヴァルト兄上だけだよね」

三毛猫さんを撫でながらそう聞いてくる。

「うん」

今はまだって……ノシュカトは私の婚約者が増えると思っているのかな……

そう……、と少しホッとしたような表情を見せるノシュカト。

「母上と一緒にベゼドラからゲートでこちらに来た彼……イシュマはトーカと婚約をすると言っていたけれど……」

彼の片想いか……って……

イシュマ……また誤解されるような言い方を……と頭を抱える私をみてノバルトと同じようにクスクスと笑うノシュカト。

「トーカはノヴァルト兄上と結婚して僕達の家族になるね…………でも……」

でもね……となぜか少し寂しそうな……切なそうな表情をするノシュカト……

「僕と家族になって欲しいんだ。僕の妻に」

ノシュカト……?
そう言って三毛猫さんをそっと下ろして私に近づいてきて抱き締める……

「ノシュカト……」

私は……

「わかっているんだよ……トーカがこの考え方に追い付いていないことは……」

ごめん……でも……と続けて

「トーカの周りにどんどん増えていく男達に焦ってしまうんだ……情けないよね……」

……そんなことはない……

「僕とのことも考えて……欲しい」


そう言って私を抱き締める手が……微かに震えている……

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