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 寝返りをうとうとするとなぜか身体が重い。


身体というか手足? 相当疲れているな……これは。

というか、いつの間にか寝てしまっていたのか……
ゆっくりと目を開けると……

「ヨシュア……?」

戻っていたんだ、と起き上がろうとすると

ジャラッ…………

「トーカ、起きたね。遅くなってごめんな」

と優しい表情で私を撫でる。

お腹が空いていることとか寝ている間に部屋に入ったこととか言いたいことはたくさんあるけれど……

「な……なに? これ……」

私の手足に嵌められた手枷足枷とどこかに繋がっている鎖……

「トーカを守るためだから」

守るって……何から!?
ヨシュアの手にはお香が……私がそれを見ていると

「香を……どうして俺の部屋に置いたんだ? 誘っているのか?」

誘っているって何に? 何で? わけがわからない……

この部屋は煙が籠るからお香は焚かない方がいいってノバルトが……って言えないんだった……

そんなことより

「ヨシュア、これ……これ外し」

「ダメだっ」

食い気味……そうか、ダメか…………って納得できるかいっ!

「なに? 何なの?」

いや、落ち着こう……ヨシュアの様子がおかしいしあまり刺激しない方が……

「あの……トイレとか……」

どうするの……外してよ。

「この部屋のトイレなら行けるよ」

鎖ながっ

「風呂は……これからは一緒に入ろう」

何で!?

「嫌です」

あまり我が儘を言うな、とため息をつくヨシュア……
……我が儘…………ではない。

「何で急にこんなことを……イシュマのところへはいつ戻るの?」

ヨシュアがニコリと微笑みながらお香をサイドテーブルに置いてベッドに上がり近づいてくる。

「戻らない。これからはずっと俺とここに……二人でいるんだ」

そう言って私の髪に触れる。
なに言ってるの? なんでそうなるの? とにかく落ち着かなきゃ……これ以上ヨシュアが変なことを言わないように……

「あ……の、お腹空いたなぁ……」

とりあえず一旦話を変えよう。

「……そうだった。すまない、今持ってくる」

ヨシュアが離れていきホッとする。
どうしたの……寝ている間に何があった!?

何でこんな物を付けられなければならないのか……
守るって……私がイシュマのことを知っているから?

でもそれを知っているのはヨシュア達だけだし……ジョシュアかイシュマが今更私を殺そうとするとは思えない……

むしろ今はヨシュアが一番危険な気がする。

ヨシュアがこちらの部屋に食事を持ってくる。

「持ってくるの大変でしょ? 私は逃げたりしないから……これを外してくれたらヨシュアの部屋へ行くよ?」

逃げたりってなんで逃げなきゃいけないのか……自分で言って不思議に思う。
それにしてもジャラジャラと動く度に鬱陶しい……

「大丈夫だ。トーカの世話は俺がするからな」

頼んでない……

「さぁ、食事にしよう」

手枷と鎖でお皿を割ってしまいそう……
モタモタしているとヨシュアがフォークで私の口元に食事を運ぶ…………食べろと?

「ヨシュア、せめて手枷だけでも外してもらえないかな。食事がしにくいし鬱陶しいし重いしうるさいし肌が荒れそうだし……今はヨシュアと一緒にいるのだからいいでしょう?」

わけのわからない状況とお腹も空いているしでイライラする。少しきつい言い方をしちゃったかな……

「わかった」

ため息をつきながら私の頭を撫でる。
だから私が我が儘を言っているような感じを出さないで欲しい……
ため息をつきたいのはこっちなんだけど……

ガチャガチャと鍵を開けて手枷を外す。
なんかすでに手首が少し赤くなっているし……後でヒールだなこれは……

手首を撫でているとヨシュアが私の手を取る。

チュッと手首にキスをして……離してくれるかと思いきや何度も手首に口付けを繰り返す。

驚きすぎて……う……動けない……

ヨシュアって……こんな感じだった……?

「トーカ、ごめん。痛くならないように後で布を巻いておこう」

それよりも……もう手枷をつけなければいいのでは……
手は離してくれないし…………

まぁいい。一人になれば外せるし部屋からだっていつでも出られる。

今はなるべくヨシュアを刺激しないようにしよう。

グゥ……と私のお腹が鳴るとようやく手を離して食事をさせてくれた。
食事は美味しい……けれども落ち着かない……

「トーカ、ついてる」

そう言って頬を拭いてくれたり

「これも美味しいぞ」

と取り分けてくれたり

「トーカの好きなもの教えてくれ」

デザートも好きなものを用意するから、と楽しそう……
太らせる気か……このままでは私の体重もヨシュアの愛もどんどん重くなりそう……

食事が終わるとお風呂…………私はもう入ったからと断る。
本当に一緒に入る気だった……なぜ……

手枷はどうにか外したままにしてもらったけれど足元がジャラジャラと……

お風呂から出たヨシュアはいつも通り上半身裸で戻ってきた。

「髪を拭いて欲しい……」

拭くよ、いつもしているしそれくらいするけれども……手に持っているシャツはなんだ……自分で着るんだよね……

タオルを受け取り髪を拭いてあげている間、ヨシュアは考え事をしていたのか大人しかった。

髪が乾くまでの間付き合ってくれ、とヨシュアがお茶をいれてくれる。

ベッドに座っている私にカップを渡してヨシュアも椅子を近くに持ってきて一緒に飲む。

「あ、なんかこのお茶いい香りだね」

身体も温まってリラックスする感じ。

「そうだろ? 少しだけ酒が入っているんだ」

チャポチャポとお酒が入っているであろう酒器を揺らす。

お酒……チラリとヨシュアを見る……まぁ少量なら大丈夫そう……?

「そうなんだ、温まるね」

なんか甘い香りがする……

「寒いのか?」

そう言って立ち上がり私の隣に座る……

「寒くないよ」

大丈夫、と言い少しだけヨシュアから離れる。
するとヨシュアが私の足元に跪く……

な……何!?

足枷を外して足首を撫でる。

「赤くなっている……すまない」

そう言って足を持ち上げ手首にしていたように足首にもキスをする。

「ちょっ……ちょっと止めて! 大丈夫だからっ」

驚いてそう言うけれど

「トーカの肌は柔らかいな」

そう言って止めてくれない……
肌が…………またあの感覚……

「ヨシュア、そろそろ寝た方がいいよ。明日も忙しいでしょ」

早く寝てもらって一人になりたい……

「今夜は俺もこっちで寝る」

「それはちょっと」

ヨシュアがジッと私を見る……

「とりあえずこれに着替えてくれ」

「それもちょっと」

そのシャツ……自分で着るのじゃなかったかぁ……
このままでも寝むれるから大丈夫だよ……

「ダメだ、これに着替えるんだ。俺が手伝うから」 

手伝いとかそういうことじゃなくて

「着替えたくない」

一緒にも寝ない、断固拒否だ。

「トーカ……」

我が儘は言っていない、私の意思も尊重して欲しい。

「着替えてくれたら今日は向こうの部屋で寝る……」

今日……は? って言ったよね。
ここでちゃんと断らないとまた同じことに……

それにしても……さっきから身体が……熱い……平静を装っているけれど何かおかしい……

チャポン…………と水音がしたかと思うといつの間にかヨシュアが目の前にいて……

私の顎を指で上げ上を向かせる…………とヨシュアの顔が近づいてきて……

キスをされると思い抵抗するとそのままベッドに押し倒される。
抵抗する両手を片手でまとめ上げもう片方の手で私の顎を押さえて口付けをするヨシュア……

舌で無理矢理私の口をこじ開けて液体を流しこむ。

お酒!? 

無理矢理キスをされ口移しでお酒を飲まされたことに呆然としているとヨシュアがまた酒器をあおりお酒を口に含む。

「やっ……やだっ! やめっ」

また唇を口で塞がれお酒を注ぎ込まれる。
涙が頬を伝う……
飲みたくなくて抵抗すると口の端からお酒が溢れる。

お酒を飲むと魔法が上手く使えなくなってしまう……

溢れて頬を伝うお酒をヨシュアがペロリと舐める。
そしてもう一度……

また抵抗するとヨシュアが私の服のボタンに手を掛け外していく。
驚いた私は口に注がれたお酒を一気に飲み込んでしまった……

「いいコだ……」

頭がボーッとする……強いお酒なのかな……それだけじゃない……身体が熱い…………

ハァ…… と熱い息を吐く私の頭を撫でて満足そうに笑うヨシュア。

さっきから何度かヒールを試しているけれど……効きが悪い。
でも、掛け続けなければ……

再び私の服のボタンを外そうとするヨシュアにお水が飲みたい、と言う。

ほとんど抵抗できなくなったと思っているヨシュアは私から離れて隣の部屋へ行き水差しを持って戻ってくると……

「トー……トーカっ! 何をしている!? そんなところにいたら危ない!」

驚きに見開かれたヨシュアの目を見つめながら…………


私は窓から飛び降りた…………


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