上 下
214 / 251

214

しおりを挟む


 「お風呂の用意をするから先に入ってもらってもいいかな?」


その間に夕食の準備をしておくから、と言うとわかったといい持ってきた荷物を手に取る。

そうだ……

「ヨシュアはどの部屋を使う? 布団を敷いておくから」

ん? と首をかしげて

「トーカの部屋で一緒に」

「私の部屋の隣でいいの?」

どの部屋も掃除はしてあるからどこでもいいんだよ、と伝えると

「トーカの部屋がい」

「私の部屋の隣ね、わかった。とりあえず荷物を置いてきてね」

ヨシュアが何か言いたそうだけれど言わせない。
昨日はジョシュアに悪いことをしたけれど今回はどの部屋も掃除済みだからね。

私は今日こそ自分の部屋の自分のベッドで三毛猫さんと寝るのだ。

大人しく私の部屋の隣の部屋に入っていくヨシュアを確認してからお風呂にお湯を張る。

ヨシュアが着替えを持ってお風呂に向かい、私は夕食の準備を始める。

ご飯が出来上がる頃ヨシュアが水を飲みにキッチンへやってきた。
上半身裸……

「寒くないの……?」

コップに水を注ぎながら

「風呂上がりだからな」

と水を飲むヨシュアの髪からはやっぱり雫が垂れている。
もうこれも私の仕事だな……そう思おう。

ヨシュアをソファーに座らせてイシュマとジョシュアにしたようにタオルで髪を拭き始める。

「気持ちいい……」

フフッ……思わず笑ってしまう。

「ちゃんと乾かさないと風邪を引くし枕も濡れちゃうよ」

これも言っておかないとね。

「兄上と……イシュマにもやったのか……?」

「ん? うん、三人とも髪が濡れたままなんだもの」

クスクスと笑いながら言うとふーん……と別に面白くなさそうに返事をする。

それから夕食を食べて昨日と同じように片付けをしてからヨシュアにお茶をいれようとしたら、今夜は酒を飲むぞとニッと笑い

「高い酒を持ってきた」

と得意気に言う。

「風呂から戻ったら付き合えよな」

はいっ! と元気よく返事をしてお風呂に向かう。
高いお酒……フフフッ……お風呂上がりに最高っ……

しっかりと温まってご機嫌でお風呂を出る。
着替えを……着替え……あ、あれ? これ……?

急いでリビングへ向かい

「ヨシュアッ! これっ!」

ソファーでくつろいでいるヨシュアに声をかける。

「おー、着てくれたんだな。似合っているぞ」

嬉しそうにヘラリと笑う……先にお酒を飲んでいる……いや、それよりも

「着るよ、これしかなかったんだから着るよ。私のパジャマはどこ……!?」

えー? どこだったかなぁ? と……
私のパジャマがヨシュアのシャツにすり替えられていた……
これを着ないと部屋にも行けないから着たけれど……

「もぉ……いいよ、別のパジャマを着るから後でちゃんと返してね」

そう言って部屋へ行こうとすると後ろから抱き上げられてソファーにストン……と座らせられた……

「一杯飲んでからね」

とグラスを渡されヨシュアのグラスを当てられる……酔っているのかな……

シャツの裾を押さえてお酒を一口……フワリと花のような香りがして

「おいしい……」

隣でヨシュアがよかったと微笑みながら頷きもう一口、と言う。

もう一口お酒を飲むとヨシュアが……髪、濡れてるな、といいジョシュアがしてくれたようにタオルで拭いてくれる。

「ありがとう……」

と言うとヨシュアが飲んでいていいよ、と言うのですぐに酔わないようにゆっくりと飲む。

ほどよく身体の力が抜けて気持ちいい……思わずフフッと笑うと

「なんだ? 何がおかしいんだ?」

と聞かれてしまった。

「何でもないよ」

と笑うと

「他の二人も同じことをしたのか?」

「昨日、ジョシュアがしてくれたよ」

そう言うと……ふーん、とまた面白くなさそうにこちらを見てお酒を一杯飲み干す。何杯目なのだろう……

「……俺が初めてがいい……トーカの初めて……俺がしてあげられることはもうないのか……」

と……ちょっと泣きそう……えー……まさか絡み酒の泣き上戸じゃないよね…………

「あー……ほらっヨシュアのシャツ着てるし」

ジッとみてうん、可愛い……けど……

「イシュマのシャツも着ていた」

そうだった……後は……えーとえーと……思い付かないっ
私も酔っているのか……たくさんあるはずっ……と、とりあえず

「飲も?」

そう言うとコクリ、と頷く……よかった。
泣かれたらめんど…………アレだし。

今度は私がお酒を注いであげてグラスを渡す。
これを飲んだらベッドに行ってもらった方がいいかも。
私は運べないからね。

ヨシュアがお酒を飲み……そうだ、とこちらをみる。

「トーカを気持ちよくしてあげられる」

……なに? その危険なワード……

いや、あんな夢をみたからそんな風に聞こえるのかな……
手とか足のマッサージかもしれないし……

そんなことを考えているとまた持ち上げられてヨシュアの太ももの上に……向い合わせでまたがる感じに座らせられた…………危険な方のやつっ…………

「ちょっ……ヨシュア、悪ふざけが過ぎるよ」

ぐっと立ち上がろうと力を入れるけれど腰に回されたヨシュアの腕に押さえられる。

「大丈夫、最後まではしないから任せて……」

そもそも求めていない……そんなサービス……

「ヨシュア、お水、お水持ってくるからっ」

「えー……大丈夫」

トロンとした目でそういいながら片手で私が着ているシャツのボタンを開け始める。無駄に器用……

なんて思っている場合じゃない!

ボタンを二つ三つ開けてシャツをずらして両肩を出される。シャツは私の胸の膨らみでかろうじて止まっていて……

ヨシュアがジッと見て可愛い、とギュッと私を抱き締める……

「……柔らかくて……気持ちいい……」

抜け出そうと腕に力を入れてみるけれど……

「あぁ……ごめん、俺が気持ちよくしてあげるんだったね」

そう言って首筋をカプリと甘噛みされる……

ヒィッ……噛まれたっ

身体に力が入る私に大丈夫だから、と私の肩と首筋に唇と舌を這わせる……

ダメダメ……首も弱いからやめて……と抵抗しているつもりなのにびくともしない……そのうえ息も上がってくる……

「……ンッ…………ヨシュア……やめっ……ヤ……ァ……」

ヨシュアの唇と舌で私の身体がピクピクと反応する……

「トーカ……とても綺麗だよ」

そう言って今度は胸元に顔を埋める……

「ヨシュア……お願い……」

本当にもうやめて欲しい……
涙目になりながら非難の意味も込めて睨む。

するとヨシュアが優しく微笑み

「ごめん……我慢できない。ベッドへ行こう」

と、私を抱えあげる。

「え!? ちょっ……」

ジタバタする私に構わず進んだ先は……私の部屋。
あ! 三毛猫さんっ……三毛猫さんがベッドの上に!

「三毛猫さ……」

三毛猫さんがどうぞ、というようにベッドから降りて籠の中で丸くなる…………そんなぁ……

ベッドに寝かされた瞬間に逃げようと思っていたのにすぐに私の上に覆い被さり上着を脱いで上半身裸になるヨシュア……

そして私を抱き込んで…………寝た…………

我慢できないって…………眠かったんかいっ!

紛らわしい……

それにしても……私は新しい能力を身に付けたのだろうか……私にくっついた人を眠らせるという……

自分のベッドでは眠れるけれどこういう形ではなくて三毛猫さんと寝たかった……

三毛猫さんのしっぽがパタリと揺れたのが見えた。
大丈夫だってわかっていたのかなぁ……そうであって欲しい……

なんかドッと疲れた……ヨシュアの腕からは抜け出せないし仕方がないから目を閉じると……
さっきまでのことを考える間もなくあっという間に眠りについた……


翌朝、意外にもスッキリ目が覚めた。

隣を見るとヨシュアがまだ寝ている。
起こさないようにそっとベッドから出ようと試みる。

少し動くとゆっくりとヨシュアの目が開く……
ボーッと私を見つめて

「……トー……カ?」

寝ぼけているのかな。
焦点が徐々に合い……見開かれるヨシュアの目……
グルリと部屋を見回して

「トーカ……俺を部屋に連れ込んだのか……?」

と……そして私の格好をみて

「俺を誘惑しているのか……?」

……頭を抱える私……

「え? ……俺、何かした……?」

混乱しているヨシュアに着替えるから、と隣の部屋へ行ってもらいため息をつく。

鍵、つけてもらおう……

窓を開けて部屋を出るとヨシュアも着替えて出てきた。

「……俺の部屋にあった……トーカのだよな」

と昨日すり替えられたパジャマを持っていた。

「な……なぁ、俺……」

「ヨシュアは……」

というか

「ヨシュアも、お酒の飲み方には気を付けた方がいいよ」

そう言うと

「……ハイ」

と少し考えながら……それでも素直に返事をする。
本当にわかっているのかなぁ……

それからジョシュアとイシュマが来てから部屋に鍵をつけて欲しい、とお願いすると

「「「だめだ」」」

おぉ、ハモった…………じゃなくて、断られてしまった……なぜ……

「外からならつけてもいいけれど……」

誰かの言葉に他の二人もそうだな、と頷く。

……何か言った? 何か…………

「……お腹も空いたしご飯にしようか!」

聞かなかったことにしよう、ニコリと微笑み準備を始めるとみんなも手伝ってくれた。


…………外からって…………何……!?

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ

トール
恋愛
会社帰り、駅までの道程を歩いていたはずの北野 雅(36)は、いつの間にか森の中に佇んでいた。困惑して家に帰りたいと願った雅の前に現れたのはなんと実家を模した家で!? 自身が願った事が現実になる能力を手に入れた雅が望んだのは冒険ではなく、“森に引きこもって生きる! ”だった。 果たして雅は独りで生きていけるのか!? 実は神様になっていたズボラ女と、それに巻き込まれる人々(神々)とのドタバタラブ? コメディ。 ※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

異世界着ぐるみ転生

こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生 どこにでもいる、普通のOLだった。 会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。 ある日気が付くと、森の中だった。 誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ! 自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。 幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り! 冒険者?そんな怖い事はしません! 目指せ、自給自足! *小説家になろう様でも掲載中です

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

処理中です...