213 / 251
213
しおりを挟む目が覚めると……三毛猫さん。モフッ幸せ。
それにしても……なんか気持ちいい……というか……いやらしい夢をみたような……恥ずかしい……欲求不満かな。
モフモフ欲求は三毛猫さんのお陰で満たされているよぉ、と三毛猫さんを捕まえて毛布に引きずり込む。
あぁ、可愛い、愛おしい……と勝手に三毛猫さんとイチャイチャしてから気が付いた。私の部屋じゃない……
バッと隣を確認するけれど誰もいない。
念のため服も……乱れていない。
昨日は……ジョシュアに髪を乾かしてもらっているうちにそのまま寝てしまって……
ということは……ここまで運んでくれたのは……ジョシュアはイシュマの部屋かな?
私の部屋に勝手に入るのは悪いと思ったのか……
イシュマは自然に入ってこようとするけれど……ジョシュアはやっぱりジョシュアっぽい。
ベッドから出てリビングへ行くと……ソファーでジョシュアが寝ていた……
もしかして……私が寝ていたベッドで寝るはずだった……?
申し訳ない……毛布もかけずに……今度はジョシュアが風邪を引いてしまう……
そしたらまた私のせいで…………それは嫌だ。
急いで毛布を持ってきてジョシュアにかけてごめんね、とジョシュアの頭を撫でる……
「なにがだ?」
ヒィッ……ガシッと私の手首を握るジョシュアと目が合う。
「おっ……起きていたの? びっくりした」
あぁ、とジョシュアは横になったまま
「それで、何を謝ったのだ」
あれ……? なんか……もしかして眠れなかったのかな……
「昨日の夜……ジョシュアが寝るはずだったベッドを取ってしまって……毛布も……それであまり眠れなかったんじゃないかなって思って……ごめんなさい」
そうだな、と言いグイッと私の手を引き毛布の中に引きずり込む。
「眠れなかった。だから……少し付き合って……もらうよ……」
そう言って眠ってしまった…………
ちょっ……待ってっ……
「ジョシュア、ベッドで寝た方がいいよ。寝ている間に朝食を作っておくし……お昼まで寝ているなら昼食を作るし……ジョシュア……?」
ギュッと腕に力を入れた後は動かなくなったジョシュア……
そしてその腕から抜け出せない私……
……仕方がない……ジョシュアの身体の力が抜けたらそっと抜け出そう…………
……私は昨日の夜ちゃんとベッドで眠らせてもらったし、今はお腹も空いているから全然眠くないけれど…………
と、思っていたのに。
誰かに頬をツンツンされている感覚に気付いて目を開けるとイシュマが私の頬にツンと指を……
「ずいぶんと気持ち良さそうに寝ていたな」
その後ろから少し不機嫌そうなヨシュア……
「なんだ、もう来たのか」
とジョシュア……起きたのなら離して欲しい。
ソファーから起き上がり事の経緯を説明するけれど、何故か浮気の言い訳をしているみたいで嫌になる。
でも変に誤解されて後々面倒な事にはなりたくない。
そうだ…………ジョシュアの額に手を当てる。
良かった……熱は出ていない。けれど
「ジョシュア、体調が悪くなったらすぐお医者さんに診てもらってね」
と言っておく。
「体調が悪くなったらここへ来る」
……だから
「ここへ来られるなら大丈夫でしょ」
ジョシュアは真面目な顔をして冗談を言うからなぁ。
あと、私は医者ではない。
私のお腹がなり、昼食にしよう、とヨシュアとイシュマが持って来たものを広げる。
その間にジョシュアがイシュマに医者には診てもらったか、と聞いている。
そうか、それで入れ替わっていたのか。
ご両親はともかく少し冷たいとか思ってごめんなさい。
うん、もう大丈夫だよ、と頷くイシュマ。良かった、お医者さんに診てもらったなら安心だね。
みんなで昼食を取りながらジョシュアが、イシュマと入れ替わっていたことを私が最初から見抜いていた、と二人に話す。二人は驚いていたけれど
「こっちはいつも通り。家族も使用人も誰も気付かなかったぞ」
トーカはなんでわかるんだろうな、と。
……そうなんだ……ご両親も……
イシュマの演技力が凄いからだよ、と答えておく。
食事が終わり後片付けをしている間に帰り支度を始める二人。
「もう帰るの?」
「あぁ、また来る」
とジョシュアが少しだけ微笑んで私の頭を撫でる。
「なんだ? なんか二人仲良くなってないか?」
ずるいぞ、とヨシュアが私達の顔を交互にみる。
心配しなくてもジョシュアを取ったりはしないよ……私のお兄さんにはならないとキッパリ断られているからね。
あれ? そういえばその後何か言っていたような…………思い出せない。
ムッとするヨシュアをまぁまぁ、と困り顔でなだめるイシュマ。
その後、無表情に戻ったジョシュアと騒がしいヨシュアを見送りイシュマと二人になる。
「トーカ……ごめんね、騙すようなことをして」
シュンとして謝るイシュマにニコリと微笑んで
「今日はヨシュアなんだね」
そう言うと
「バレたか」
とすぐにネタバラシをするヨシュア。
「どうしてトーカにはわかるのかな……こんなにそっくりなのに……」
と、イシュマの真似を続けるヨシュアに……イラッと……
「全然違うからね」
イシュマの可愛さはそんなにわざとらしくはない。
「そうか、全然違うか」
ニカッと嬉しそうに笑うヨシュアに私のイラッもおさまる。
「私、これから部屋の掃除をするね」
昨日私が使った部屋と他の部屋も掃除しておかないと。
「夕食は私が作るものでいいかな」
そう言うとやった! と嬉しそうなヨシュア……こういうところは可愛い……
「俺は馬を連れて湖へ行ってくる」
そう言ってヨシュアは出掛けていった。
ヨシュアがここにいる……イシュマは大丈夫かな。
こっちはすぐにバレるから誰かのふりなんて続けなくてもいいけれど……
二日間も別人のふりをして……実家に?
本当におかしな話だ。
昨日使った部屋の窓を開けて掃除を始める。
確か……三つ子で三番目っていうことを気にしている様子だったけれど……私の記憶が曖昧だと伝えた後はその事には触れなくなった気がする。
他の部屋の窓も開けよう。
それから……なんだっけ? そうそう、三つ子。確かイシュマは自分は三つ子の三番目だと言った後に私に嫌いになったか……と聞いてきたんだ。
さっぱりわからない。
ヨシュアが今夜、どの部屋を使うのかもわからない。
また聞き忘れた……とりあえず全ての部屋を掃除して整えておこう。
どの部屋も使われていなかったみたいで少しホコリが溜まっているくらいだからホコリを払って掃き掃除と拭き掃除をしておこう。
布団はどの部屋を使うかヨシュアに聞いてから整えたらいいか……思っていたよりも早く終わりそう。
そういえば三人から直接は聞いていないけれど貴族……なんだよね? 爵位とかもわからないけれど。
名前を聞いた時も名前しか名乗っていなかった。
こういう時、自慢気に爵位まで自分で言っちゃう人もいるけれど……あれはあれで正しい自己紹介なのかな?
よくわからないけれど……爵位や貴族であることを振りかざすような人達じゃなくて良かった。
あと私と三毛猫さんを見て売り飛ばすようなことをする人達じゃなくて良かった。
そんなことを考えながら掃き掃除をしていると、ふと自分の手に持っている箒に目が行く。
あの有名で偉大な魔女の言葉……血で飛ぶ…………試してみるか……
部屋を出て家を出て外へ出る。
箒をグッと握りしめまたがる。
三毛猫さんも外に出てきて……なんかそれっぽいぞ。
意識を集中して自分の鼓動を感じる。
よしっ! 助走をつけてっ……フワリッ
……着地。浮遊感も何もなかった。
くっ…………顔が熱い……
み、三毛猫さん……チラリと見ると……見てらんないよ、と聞こえてきそうなくらいの勢いで目をそらされた……
そもそも私、魔女じゃなかった……箒で飛んだこともなかったし先祖代々の血も魔法とは関係なかった。
「……なにを……しているんだ?」
ハッとして声のする方を見るとヨシュアが……
うそ……でしょ……このタイミングで帰って……
「………………」
「なにをしていたんだ?」
やめて、心底不思議そうな顔をしないで……
「何でもないです……」
そう言ってそそくさと家に入る私を
「え? なに? なんだって?」
と追いかけて来るヨシュア。許してください……
ヨシュアはしばらく私の後を追いかけていたけれどそのうち諦めて、お腹が空いてきたのか夕飯何作るの? と自ら話をそらして行った……
私は夕食のメニューを考えながら……
いくつになっても黒歴史って更新できるんだなぁ……
気を付けよう、と心に決めていた……
1
お気に入りに追加
1,173
あなたにおすすめの小説
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
【R18】騎士たちの監視対象になりました
ぴぃ
恋愛
異世界トリップしたヒロインが騎士や執事や貴族に愛されるお話。
*R18は告知無しです。
*複数プレイ有り。
*逆ハー
*倫理感緩めです。
*作者の都合の良いように作っています。
私、異世界で監禁されました!?
星宮歌
恋愛
ただただ、苦しかった。
暴力をふるわれ、いじめられる毎日。それでも過ぎていく日常。けれど、ある日、いじめっ子グループに突き飛ばされ、トラックに轢かれたことで全てが変わる。
『ここ、どこ?』
声にならない声、見たこともない豪奢な部屋。混乱する私にもたらされるのは、幸せか、不幸せか。
今、全ての歯車が動き出す。
片翼シリーズ第一弾の作品です。
続編は『わたくし、異世界で婚約破棄されました!?』ですので、そちらもどうぞ!
溺愛は結構後半です。
なろうでも公開してます。
転生したらただの女の子、かと思ったら最強の魔物使いだったらしいです〜しゃべるうさぎと始める異世界魔物使いファンタジー〜
上村 俊貴
ファンタジー
【あらすじ】
普通に事務職で働いていた成人男性の如月真也(きさらぎしんや)は、ある朝目覚めたら異世界だった上に女になっていた。一緒に牢屋に閉じ込められていた謎のしゃべるうさぎと協力して脱出した真也改めマヤは、冒険者となって異世界を暮らしていくこととなる。帰る方法もわからないし特別帰りたいわけでもないマヤは、しゃべるうさぎ改めマッシュのさらわれた家族を救出すること当面の目標に、冒険を始めるのだった。
(しばらく本人も周りも気が付きませんが、実は最強の魔物使い(本人の戦闘力自体はほぼゼロ)だったことに気がついて、魔物たちと一緒に色々無双していきます)
【キャラクター】
マヤ
・主人公(元は如月真也という名前の男)
・銀髪翠眼の少女
・魔物使い
マッシュ
・しゃべるうさぎ
・もふもふ
・高位の魔物らしい
オリガ
・ダークエルフ
・黒髪金眼で褐色肌
・魔力と魔法がすごい
【作者から】
毎日投稿を目指してがんばります。
わかりやすく面白くを心がけるのでぼーっと読みたい人にはおすすめかも?
それでは気が向いた時にでもお付き合いください〜。
【R-18】喪女ですが、魔王の息子×2の花嫁になるため異世界に召喚されました
indi子/金色魚々子
恋愛
――優しげな王子と強引な王子、世継ぎを残すために、今宵も二人の王子に淫らに愛されます。
逢坂美咲(おうさか みさき)は、恋愛経験が一切ないもてない女=喪女。
一人で過ごす事が決定しているクリスマスの夜、バイト先の本屋で万引き犯を追いかけている時に階段で足を滑らせて落ちていってしまう。
しかし、気が付いた時……美咲がいたのは、なんと異世界の魔王城!?
そこで、魔王の息子である二人の王子の『花嫁』として召喚されたと告げられて……?
元の世界に帰るためには、その二人の王子、ミハイルとアレクセイどちらかの子どもを産むことが交換条件に!
もてない女ミサキの、甘くとろける淫らな魔王城ライフ、無事?開幕!
最強の英雄は幼馴染を守りたい
なつめ猫
ファンタジー
異世界に魔王を倒す勇者として間違えて召喚されてしまった桂木(かつらぎ)優斗(ゆうと)は、女神から力を渡される事もなく一般人として異世界アストリアに降り立つが、勇者召喚に失敗したリメイラール王国は、世界中からの糾弾に恐れ優斗を勇者として扱う事する。
そして勇者として戦うことを強要された優斗は、戦いの最中、自分と同じように巻き込まれて召喚されてきた幼馴染であり思い人の神楽坂(かぐらざか)都(みやこ)を目の前で、魔王軍四天王に殺されてしまい仇を取る為に、復讐を誓い長い年月をかけて戦う術を手に入れ魔王と黒幕である女神を倒す事に成功するが、その直後、次元の狭間へと呑み込まれてしまい意識を取り戻した先は、自身が異世界に召喚される前の現代日本であった。
飯屋の娘は魔法を使いたくない?
秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。
魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。
それを見ていた貴族の青年が…。
異世界転生の話です。
のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。
※ 表紙は星影さんの作品です。
※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる