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 目が覚めると……三毛猫さん。モフッ幸せ。


それにしても……なんか気持ちいい……というか……いやらしい夢をみたような……恥ずかしい……欲求不満かな。

モフモフ欲求は三毛猫さんのお陰で満たされているよぉ、と三毛猫さんを捕まえて毛布に引きずり込む。

あぁ、可愛い、愛おしい……と勝手に三毛猫さんとイチャイチャしてから気が付いた。私の部屋じゃない……

バッと隣を確認するけれど誰もいない。
念のため服も……乱れていない。

昨日は……ジョシュアに髪を乾かしてもらっているうちにそのまま寝てしまって……
ということは……ここまで運んでくれたのは……ジョシュアはイシュマの部屋かな?

私の部屋に勝手に入るのは悪いと思ったのか……
イシュマは自然に入ってこようとするけれど……ジョシュアはやっぱりジョシュアっぽい。

ベッドから出てリビングへ行くと……ソファーでジョシュアが寝ていた……
もしかして……私が寝ていたベッドで寝るはずだった……?

申し訳ない……毛布もかけずに……今度はジョシュアが風邪を引いてしまう……

そしたらまた私のせいで…………それは嫌だ。

急いで毛布を持ってきてジョシュアにかけてごめんね、とジョシュアの頭を撫でる……

「なにがだ?」

ヒィッ……ガシッと私の手首を握るジョシュアと目が合う。

「おっ……起きていたの? びっくりした」

あぁ、とジョシュアは横になったまま

「それで、何を謝ったのだ」

あれ……? なんか……もしかして眠れなかったのかな……

「昨日の夜……ジョシュアが寝るはずだったベッドを取ってしまって……毛布も……それであまり眠れなかったんじゃないかなって思って……ごめんなさい」

そうだな、と言いグイッと私の手を引き毛布の中に引きずり込む。

「眠れなかった。だから……少し付き合って……もらうよ……」

そう言って眠ってしまった…………
ちょっ……待ってっ……

「ジョシュア、ベッドで寝た方がいいよ。寝ている間に朝食を作っておくし……お昼まで寝ているなら昼食を作るし……ジョシュア……?」

ギュッと腕に力を入れた後は動かなくなったジョシュア……
そしてその腕から抜け出せない私……

……仕方がない……ジョシュアの身体の力が抜けたらそっと抜け出そう…………

……私は昨日の夜ちゃんとベッドで眠らせてもらったし、今はお腹も空いているから全然眠くないけれど…………

と、思っていたのに。

誰かに頬をツンツンされている感覚に気付いて目を開けるとイシュマが私の頬にツンと指を……

「ずいぶんと気持ち良さそうに寝ていたな」

その後ろから少し不機嫌そうなヨシュア……

「なんだ、もう来たのか」

とジョシュア……起きたのなら離して欲しい。

ソファーから起き上がり事の経緯を説明するけれど、何故か浮気の言い訳をしているみたいで嫌になる。
でも変に誤解されて後々面倒な事にはなりたくない。

そうだ…………ジョシュアの額に手を当てる。

良かった……熱は出ていない。けれど

「ジョシュア、体調が悪くなったらすぐお医者さんに診てもらってね」

と言っておく。

「体調が悪くなったらここへ来る」

……だから

「ここへ来られるなら大丈夫でしょ」

ジョシュアは真面目な顔をして冗談を言うからなぁ。
あと、私は医者ではない。

私のお腹がなり、昼食にしよう、とヨシュアとイシュマが持って来たものを広げる。

その間にジョシュアがイシュマに医者には診てもらったか、と聞いている。

そうか、それで入れ替わっていたのか。
ご両親はともかく少し冷たいとか思ってごめんなさい。

うん、もう大丈夫だよ、と頷くイシュマ。良かった、お医者さんに診てもらったなら安心だね。

みんなで昼食を取りながらジョシュアが、イシュマと入れ替わっていたことを私が最初から見抜いていた、と二人に話す。二人は驚いていたけれど

「こっちはいつも通り。家族も使用人も誰も気付かなかったぞ」

トーカはなんでわかるんだろうな、と。
……そうなんだ……ご両親も……

イシュマの演技力が凄いからだよ、と答えておく。

食事が終わり後片付けをしている間に帰り支度を始める二人。

「もう帰るの?」

「あぁ、また来る」

とジョシュアが少しだけ微笑んで私の頭を撫でる。

「なんだ? なんか二人仲良くなってないか?」

ずるいぞ、とヨシュアが私達の顔を交互にみる。
心配しなくてもジョシュアを取ったりはしないよ……私のお兄さんにはならないとキッパリ断られているからね。

あれ? そういえばその後何か言っていたような…………思い出せない。

ムッとするヨシュアをまぁまぁ、と困り顔でなだめるイシュマ。

その後、無表情に戻ったジョシュアと騒がしいヨシュアを見送りイシュマと二人になる。

「トーカ……ごめんね、騙すようなことをして」

シュンとして謝るイシュマにニコリと微笑んで

「今日はヨシュアなんだね」

そう言うと

「バレたか」

とすぐにネタバラシをするヨシュア。

「どうしてトーカにはわかるのかな……こんなにそっくりなのに……」

と、イシュマの真似を続けるヨシュアに……イラッと……

「全然違うからね」

イシュマの可愛さはそんなにわざとらしくはない。

「そうか、全然違うか」

ニカッと嬉しそうに笑うヨシュアに私のイラッもおさまる。

「私、これから部屋の掃除をするね」

昨日私が使った部屋と他の部屋も掃除しておかないと。

「夕食は私が作るものでいいかな」

そう言うとやった! と嬉しそうなヨシュア……こういうところは可愛い……

「俺は馬を連れて湖へ行ってくる」

そう言ってヨシュアは出掛けていった。

ヨシュアがここにいる……イシュマは大丈夫かな。
こっちはすぐにバレるから誰かのふりなんて続けなくてもいいけれど……

二日間も別人のふりをして……実家に?
本当におかしな話だ。

昨日使った部屋の窓を開けて掃除を始める。

確か……三つ子で三番目っていうことを気にしている様子だったけれど……私の記憶が曖昧だと伝えた後はその事には触れなくなった気がする。

他の部屋の窓も開けよう。

それから……なんだっけ? そうそう、三つ子。確かイシュマは自分は三つ子の三番目だと言った後に私に嫌いになったか……と聞いてきたんだ。

さっぱりわからない。

ヨシュアが今夜、どの部屋を使うのかもわからない。
また聞き忘れた……とりあえず全ての部屋を掃除して整えておこう。

どの部屋も使われていなかったみたいで少しホコリが溜まっているくらいだからホコリを払って掃き掃除と拭き掃除をしておこう。

布団はどの部屋を使うかヨシュアに聞いてから整えたらいいか……思っていたよりも早く終わりそう。

そういえば三人から直接は聞いていないけれど貴族……なんだよね? 爵位とかもわからないけれど。

名前を聞いた時も名前しか名乗っていなかった。
こういう時、自慢気に爵位まで自分で言っちゃう人もいるけれど……あれはあれで正しい自己紹介なのかな?

よくわからないけれど……爵位や貴族であることを振りかざすような人達じゃなくて良かった。

あと私と三毛猫さんを見て売り飛ばすようなことをする人達じゃなくて良かった。

そんなことを考えながら掃き掃除をしていると、ふと自分の手に持っている箒に目が行く。

あの有名で偉大な魔女の言葉……血で飛ぶ…………試してみるか……

部屋を出て家を出て外へ出る。

箒をグッと握りしめまたがる。
三毛猫さんも外に出てきて……なんかそれっぽいぞ。
意識を集中して自分の鼓動を感じる。

よしっ! 助走をつけてっ……フワリッ

……着地。浮遊感も何もなかった。

くっ…………顔が熱い……

み、三毛猫さん……チラリと見ると……見てらんないよ、と聞こえてきそうなくらいの勢いで目をそらされた……

そもそも私、魔女じゃなかった……箒で飛んだこともなかったし先祖代々の血も魔法とは関係なかった。

「……なにを……しているんだ?」

ハッとして声のする方を見るとヨシュアが……
うそ……でしょ……このタイミングで帰って……

「………………」

「なにをしていたんだ?」

やめて、心底不思議そうな顔をしないで……

「何でもないです……」

そう言ってそそくさと家に入る私を

「え? なに? なんだって?」

と追いかけて来るヨシュア。許してください……

ヨシュアはしばらく私の後を追いかけていたけれどそのうち諦めて、お腹が空いてきたのか夕飯何作るの? と自ら話をそらして行った……

私は夕食のメニューを考えながら……


いくつになっても黒歴史って更新できるんだなぁ……
気を付けよう、と心に決めていた……

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