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しおりを挟む翌朝、早めに身支度を整えて三毛猫さんに行ってくるね、といい撫でる。
三毛猫さんがニャァと鳴いて可愛いのでついつい仕事に行きたくないよぉー! と三毛猫さんに抱きついてしまう。
子供に見送られる親の気分だ……きっとこんな感じ……
だが行かなければ、カイル様を起こすために。
ドアを開けると三毛猫さんも一緒に部屋を出る。
一緒に来てくれるのかと思ったけれどトコトコトコトコ……とどこかへ行ってしまった……
お散歩かな……三毛猫さん気を付けてね……
私のところに帰ってきてね……
……さて、カイル様のお部屋は確か……こっち。
適当に何となく覚えていた通りに進んで行くと着いてしまった……
もう一周してこようかな、と本気で思ったけれどそんなことはしなかった。
ノックをしてお部屋へ入り、寝室の部屋も控え目にノックをする。
返事はない……
昨日よりはだいぶ早く来たから今日はまだ寝ているかもしれない。
そっとドアを開ける……カーテンは閉じていて部屋は薄暗い。やっぱりまだ寝ているみたい。
起こし方とか……決まりがあるのかはよくわからないけれど、とりあえず静かにカーテンを開けてベッドへ近づく……
穏やかに見えるカイル様の寝顔はミアが言っていた通り優しく見える。
声をかけるか迷うなぁ……できれば寝ていて欲しい。
でも私は起こしに来た訳で……仕方がない……
「カイル様、朝です。起きてください」
少し離れたところからそっと声をかけるけれど起きない……
寝室でのハプニングはごめんなのであまり近づきたくはないのだけれど……もう少しだけ側に行く。
すると私の気配を感じたのかカイル様がもぞもぞと動きうっすらと目を開ける。
「カイル様……? 起きましたか?」
そっと話しかけるけれどカイル様はボーっとしている。
子供みたいでちょっと可愛い……朝は弱いのかもしれない。
でも起きてもらわないと後で何て言われるか……
とりあえず水差しの水をコップに入れてセットしておこう……そうしているうちに目を覚ましたりは……しないか……
無駄な時間稼ぎはやめよう……
「カイル様……」
そう言って近づきまだボンヤリとしているカイル様の肩に手を伸ばすと
「おはよう、ノア」
爽やかに挨拶をされて……一瞬何が起きたのかわからなかった……上半身裸のカイル様のベッドの上……手を取られあっという間にベッドに押し倒される。
両手を片手でまとめ上げられてしまった……誰が子供みたいだって……? お、落ち着こう。焦ったらきっと面白がる。
「おはようございます、カイル様。起きていたのですね」
ぐっと手をほどこうと力を入れてみるけれどびくともしない。
「うん」
意外と冷静な私の態度におや、と首をかしげた後、ニコリと微笑む。
「カイル様、今日はイアン様がいらっしゃるのですよね? ご準備をされた方が……」
早く退いて欲しい……
「そうなんだよねぇ」
そう言いながら押さえつけている私を眺めるカイル様の髪がサラリと揺れる。
「だから……」
と、カイル様の顔が近付いてきて……キス……をされるかと思い顔を横へそらす……
けれども私の首もとに顔を埋めてくるカイル様……
「おや? 何か期待していたのかな」
耳元でそう囁くカイル様と身体が密着する……と……硬くて熱くて大きなものが私の太ももに当たる……
これって……っ……顔が熱くなる……
「どうした? 男の生理現象だ。わかるだろう?」
現象としてはわかるけれど恥ずかしくはないものなの!? 男同士だと思っているから? それにしても……
「あ、あの……あの……」
なぜ私の方が恥ずかしいのか……
カイル様は嬉しそうに微笑み
「可愛いね、ノア。そんな顔をして男のベッドの上にいたら何をされても文句は言えないよ」
好きでベッドの上にいる訳じゃないですっ、手を離してくれたらすぐに退きますっ、と言いたいのに
「あ、……あの……あ……」
言葉が出ないっ……
カイル様がニヤリと笑う……なんか……危険な笑顔……
どうしたの? と言いながら私の足を指でなぞりながらスカートを上げていく……
「言ってくれなければわからないよ?」
グリッと太ももに押し当てられるソレと口元は笑っているのに肉食獣が獲物をみるような目をするカイル様……
これは本気でヤバイッ……ま、魔法を……
コン コン コン
ピタリ、とカイル様の動きが止まる。
「カイル様、本日は早めに朝食をおとりになると伺っております。どちらでお召し上がりになられますか?」
寝室のドアは閉じれたままだけれど助かった……
「……部屋で食べる」
「では、すぐにお持ちいたします」
と……誰かわからないけれどありがとうっ……助かった……
ハァ……とカイル様と同時にため息をつく。
「そういう訳だから続きはまた後でね、ノア」
私を解放してバスルームへ向かうカイル様。
続きはないですっと閉められたドアに向かい小さな声でキッパリと言ってから急いで起き上がり制服を整えて、息も整えてお部屋を後にする。
はぁぁ……危なかった……危なかったっ!
ミアは優しいと言っていたから他のメイドさん達にはこんなことはしていないと信じたいけれど……
廊下を歩いているとおそらくカイル様の朝食を乗せたワゴンを押しながら、従者の男性がこちらへやってくる。
男性はピタリと止まり私を見る。
「大丈夫ですか?」
と聞かれて何だか泣きそうになる……
寝室での事を見られた訳ではないのでなぜそう聞かれたのかはわからなかったけれど
「はい、ありがとうございます。助かりました」
と泣かないように微笑むと
「いえいえ」
と男性も微笑む。それでは、とワゴンを押して行ってしまう男性……
その後ろ姿に思わず手を合わせてしまう……
よしっ! 気持ちを切り替えてイアン様にバレないようにしなければ!
カイル様は、イアン様がいらっしゃるということで午前中になるべくお仕事を片付けるらしい。
お茶会の時間まで私が呼ばれることはないだろう。
イアン様が来ることを私は昨日知ったのだけれど、もしかしてカイル様も?
それでもちゃんと時間を作るのはいい人だからなのか面白いからなのか……たぶん楽しんでいる……
午後、お茶とお菓子の用意を整えてイアン様をお迎えする。
私と数名の使用人でお出迎えをするように言われた……
カイル様はお茶の席で待っている……と。
カイル様の後ろに控えているだけかと思っていたのにどうやらカイル様は積極的に私のこの姿をイアン様に見せるつもりらしい。
馬車がお屋敷に着く。なるべく顔がわからないように頭を下げてお出迎えをする。
「ようこそお越しくださいました、ご案内いたします」
顔を上げると前髪の隙間から三人の姿が見えた……そう……三人……
イアン様が一人で来る訳がないのだ……ハリスさんとセドリックさんも一緒……という事は三人に気付かれてはいけないということ……
こんなことにも気が付かなかったとは……愕然としながらも悟られないようにニコリと微笑む……と……
三人の左眉が同時に上がる……
あ、バレた……秒でバレました……
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