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 ノックの音で目を覚ますと三毛猫さんも目を覚ましたみたい。

三毛猫さんを撫でてからドアへ向かう。マーサとルークに誰かが訪ねて来てもすぐにはドアを開けないように、と言われていたので

「どなたですか?」

まずは確認。

「俺だルークだ。そろそろ夕食に行くぞ」

知っている人なのでドアを開ける。
夕食の約束は宿のお客さんもほとんど外に出た後のだいたい八時くらいにしていた。

「うん。お腹空いた」

ぐぅと鳴る私のお腹。部屋を出て一階でマーサとも合流して外へ出る。

夜の街は何だかワクワクする。明かりの灯った街並みとたくさんの屋台。
踊り子さんなのか少しセクシーで派手な格好の女性達も歩いていたりして華やかだ。

少し歩くとルークがここだ、とお店に入っていく。
マーサと一緒に私もお店に入ると中は食事やお酒を飲んでいる人達で賑わっていた。

「いい匂い」

席に着き料理は二人のおすすめを、お酒も飲みやすいものを頼んでもらった。

「それで? ノアはこの街でどう過ごすの?」

料理を待っている間にマーサに聞かれた。

「しばらくレクラス王国に滞在する予定だからとりあえず仕事を探してみようと思う。この街には仕事を紹介してくれる所はある?」

ハローワークみたいな所……

「あるけど……ノアはどういう仕事を探しているの?」

あるんだ! 

「ええっと何でもいいのだけれど、できれば住み込みだと有難いかな」

いつでも山の家に帰ることは出来るけれど一応こちらでの拠点も欲しい。

「住み込み……どう思う? ルーク……あなたの知り合いで働き手を探している人はいる? 知っている人なら安心なんだけど……」

「どうだろうなぁ……聞いてみることは出来るがあまり期待は出来ないかな……」

二人が話し始めたので周りのお客さん達の様子をみてみる。
カップルだったり男女のグループだったり。
他国から来たお客さんも結構いるみたい。

鉄の鍵に泊まっている人達なのか時々マーサとルークに手を振っている。
そうして何気なく店内をぐるりと見渡しているとどこかで見たことのある二人組と目が合う。

? 誰だったかな……この国に知り合いはいないはずだけれど……

こちらが思い出す前に向こうが動き出した。何だか怖い顔でこちらに向かって来るけれど……

「マーサ、ルーク……」

二人の話しに割って入るのと二人組が私達のテーブルに着くのがほぼ同時で……

「こんなところにいたのか小僧」

思い出した。確かアルバートさんとイーサンさんだ。

「今晩は、アルバートさん、イーサンさん。私はノアと名乗ったはずですがお忘れですか?」

そう言うと言葉に詰まるアルバートさん。

「何だノアこの二人と知り合いなのか?」

「ルーク、マーサも……鉄の鍵に宿泊することにしたのか」

イーサンさんがいいところを選んだね、と微笑むとアルバートさんがおいっと非難する。

「小僧……ノアッお前のせいであの後リアム様が大変だったんだぞ」

? 何だっけ? 私何かしたかな?

「ノアがリアム様のお話を断ったから、いじけちゃってね……」

参ったよ、とイーサンさんが少し困った顔で言っている。

あ――――そうだ、とりあえず街へ行ってみたかったから丁重に……ではなかったかも知れないけれどお断りしたんだった。

それにしても、

「皆さんお知り合いなのですね」

「そうなのよ。私達は幼馴染みでね、彼らのお家も商売をしていて……まぁ私達とは比べられない規模なんだけれど、それぞれ長男が継いでいるから、将来家業を手伝うにしろ外で働くにしろ礼儀と知識を身につけないといけないから今の仕事に就いているのよね」

マーサがそう言って彼らも一緒に食事をしてもいい? と私に聞いてきたのでいいよ、と頷いた。

アルバートさんがどうもと言い、イーサンさんがありがとうと言って店員さんに頼んだ料理をこちらのテーブルにお願いしますと頼んでから席に着いた。

「それで? ノアは何の話を断わったんだ?」

アルバートさんとイーサンさんがマーサとルークに説明してくれて、みんなにどうして断わったのか聞かれた。
確かに詳しく話しも聞かずに断わったけれど突然のお話だったしそれに……

「まだ街にも着いていなかったので……とりあえず街に行ってみたかったのです」

「そうだったのね。ノア……街にも着いて宿も決まったことだし、改めてこの二人の話を聞いてみてはどうかしら」

まぁ……聞いてみようかな。コクリと頷く。

「改めて自己紹介する。俺はアルバート・スタン」

「僕はイーサン・フランチェだよ。よろしくね」

「私はノアです。よろしくお願いします」

二人とも呼び捨てで構わないと言ってくれてからアルバートが話を始める。

「俺達が働いているのはダンストン伯爵家で当主はアダム・ダンストン様、奥様はルイーザ様とエリー様だ。そして長男のイアン様に次男のリアム様」

イアン様のお母様がルイーザ様でリアム様のお母様がエリー様だ。

長男のイアン様は25才で年上の従者が付いているらしい。
リアム様は13才で23才のアルバートとイーサンが従者として付いていると教えてくれた。


ちょっと待って。


妻が二人いるって言った? どういうこと?

「レクラス王国は一夫多妻制なの?」

リアザイアの皆さんからも聞いたことはないけれど……

おまえは世間知らずなのか? とアルバートに言われながらも

「あぁ、別に決まりごとはないんだよ。本人達の気持ち次第かな。逆に一妻多夫のところもあるからね。経済的に余裕があるとか逆に余裕が出来るからと理由は様々だけれど。子供を育てるのに時間や気持ちの余裕が出来たり、多くの親からそれぞれの得意分野の知識を与えられると言う人もいるし」

ただ気が多い人もいるけれど、それぞれの相手に誠実であればいいんじゃないかなとイーサンが教えてくれた。


へ――知らなかった。そういえばこっち方面の話はほとんどしていなかったかも。

私の学習速度が遅くてたどり着けていないだけかも……

まぁ……この事は一旦置いておけないような気もするけれど置いておいて、話を戻そう……と思ったところでテーブルに食事が運ばれて来た。お腹ペコペコ。

冷めてしまうから食事をしながら話そうということになった。

ダンストン伯爵家の家族の一員、クルクスさん。

リアム様が保護施設で見かけてどうしてもと言い引き取らせてもらったらしい。

保護された時はかなり痩せていて汚れていたし、人を見ると牙を剥いていたから親犬は恐らく人間に……だからやめておいた方がいいと大人達からは止められたみたい。

それでもリアム様はこの子がいいと言い張ったらしい。

僕がずっと一緒にいるんだ、と。

ちょっと見直したぞリアム様。

「リアム様は言っていた通りに一生懸命クルクスの世話をしたんだ。最初は咬まれたり逃げられたりしていたけれど根気強く接していた」

リアム様は本当に頑張ったんだ、とアルバートが当時を思い出しているのか何だか優しい表情で話している。

「だがいまだにあの通り、リアム様以外が近づくと警戒するんだ。リアム様がお出かけになる時にクルクスを連れて行ける所ならばいいのだが連れていけない所も多い」

そこでだ、とアルバートとイーサンが私を見る。


あ、はい。お仕事の話ですね。いいお話をきいたのですっかり油断していた……



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