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しおりを挟む「エリアス陛下、無理なお願いを聞いてくださりありがとうございます」
きっと……嫌な思いもしたかもしれない。
温泉の街を作るためにたくさんの貴族や街の人達に会ったはずだし……
「シュゼットもいてくれたからね。それに案外皆見慣れるのも早かったよ」
そう言って微笑むエリアス陛下の頬には黒く変色した血管がツタのように浮いている。
皆さんが見慣れるのが早かったのはきっとエリアス陛下の人柄の良さも大きいと思うけれど……
その美しさから取っ付きにくそうな印象だけれどお話をすると気さくな感じもするし人の意見も立ち止まりしっかりと聞いてくれる。
だから今回の温泉の街づくりでエリアス陛下に関わった街の人達は好感度がかなり上がったに違いない。
シュゼット様も同行した際はいろいろと質問をしたり意見を交わしたりしたらしいのでこちらもちゃんと国民の事を考えてくれるいい王妃様になると印象付いた事だろう。
前まで流れていたわがまま令嬢という噂で植え付けられた先入観を払拭することができたと思う。
何よりエリアス陛下のお顔の事を全く気にせず陛下を見つめるシュゼット様の様子に……それだけで噂はデマだったと思ったに違いない。
各国からも招待客が集まりエリアス陛下の顔を見ては驚いたり気の毒そうな視線を向けられたりしていたらしいけれど、エリアス陛下は微笑み耐えてくれた。
シュゼット様にも辛い思いをさせてしまったと思う。
それでも私の願いを約束を守ってくれた……
結婚式当日。
女性達は朝早くから準備を始める。
私も例の如くフルコースで全身ピカピカ。
気持ちよくて後半はほとんど寝てしまっていた。
王妃様と選んだドレスは淡いミントグリーンのドレス。
コルセットはいつも通り締めすぎないようにお願いした。
三毛猫さんの前にリボンを並べると今回は赤いリボンを選んだので結んであげて撫でまわす。
三毛猫さんとリアザイアの皆さんの元へ行く。
ノックをしてお部屋へ入ると皆さん正装で……ゴージャスがゴージャスでゴージャスだ。
つまりゴージャス。これしか出てこない……
私……派手かなって思っていたけれど大丈夫だったみたい……
どうりでドレス選びからアクセサリー選びまでやたらと王妃様がアレもコレもといろいろ買おうとしていた訳だ。
ふと三毛猫さんを見るとリボンがよく見えるように胸を張っている。
皆さーん! うちの三毛猫さん誉めてあげて下さーい!
こんなに豪華なメンバーに1本のリボンを誉めてもらい満足げな三毛猫さん……愛おしい……
ノバルトがエスコートをしてくれて、移動しながらザックリと今日の流れを教えてくれる。
結婚式はお城で執り行われ、バルコニーからエリアス陛下とシュゼット様が国民に手を振りその後王都の大通りでパレードが行われるらしい。
他国からの王族も来ているので公の場では私はリアザイアの皆さんとは離れたところに紛れ込む。
結婚式に参列してから私と三毛猫さんは結界で姿を消してフワリとお城の上空まで飛んでいく。
天気がよくて気持ちがいい。
お城の外には国民がお祝いに集まりものすごい人。
三毛猫さんを撫でながら待っているとざわめきが拍手に代わる。
バルコニーを見るとエリアス陛下と王妃になられたシュゼット様が国民に手を振っている。
みんなに祝福されてお二人ともとても幸せそう。
さて、
「物語を現実のものにしようか」
「ニャン」
三毛猫さんを撫でて一緒にバルコニーまで飛んでいく。
そして私がお願いしたもう一つの事……
お二人が向かい合い優しく微笑みキスをする。
私はその瞬間ヒールをかける。
服や髪がキラキラとした光の粒と共にフワリ、と舞う。
お二人の美しさも相まって神秘的なその様子に国民や近くで見ていた他国の王族貴族達は息をのむ。
キラキラとした光の粒が風と共に消え全員がお二人に注目するとざわめきが広がり、やがて歓声に変わった。
エリアス陛下の呪いが解けたのだ。
真実の愛の口付け。
子供の頃、ほとんどの人が読み大人になっても好きな話の一つだと言う人がたくさんいるお話。
不思議なことに元の世界でも同じような物語はあった。
リアザイア王国から伝わり各国に拡がっていったというお話。
パレードが始まり馬車から国民に手を振るエリアス陛下に呪いの跡は一欠片も残ってはいない。
この現実を多くの人に見てもらうこと、他国のより地位の高い方々にこの現象を見てもらうことに意味があった。
これからこの国の……ザイダイバの印象は大きく変わる。
たくさんの人達が他国からも来るようになり風通しもよくなる。新しい商売を始める者や、様々な国の人達が集まり協力して新しい事業を始める者もいるかもしれない。
国が潤い、またたくさんの思惑が渦巻くようになるかもしれない。
けれど、この物語が……多くの人々が目の当たりにし現実に起こったこの奇跡が語り継がれていけばきっと大丈夫な気がする。
呪いさえ打ち破った大きな愛を、愛する力をもつお二人に愛されるこの国と民。
エリアス陛下とシュゼット王妃の物語はこれから世界へ拡がっていくだろう。
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