上 下
124 / 251

124

しおりを挟む

 
 山の家に戻り三毛猫さんはやっぱり行かないらしいので一人で山の温泉へ向かう。

お湯に浸かり夜空を見上げる。


はぁぁ――――――――・・・・・・


ザイダイバに温泉を! と話をした後セオドアに俺達だけの温泉ではなくなるな、とコッソリ言われたけれど……ここは私だけの温泉になるかもしれない。

セオドアはわざわざ山を登らなくても入れるようになるからね。

この温泉を見つけた時、興味本位で土魔法を使い水脈を辿ってみた。
国境の街へ流れザイダイバの王都へ向かっていた。

その時はあんなに大きな争いが起こるなんて思っていなかったから、北国、温泉、お酒、最高! くらいにしか思わなかったけれど……


ザイダイバから戻る前にエリアス陛下とシュゼット様にお願い事を二つしてきたけれど大丈夫だったかな。


フゥ……身体の力が抜けてリラックスする。

今日は早めに休むため、温泉から家に戻って早めに布団に入った。

そして翌日。

私はトンネルの入り口から森を抜けてリアザイアの王都へ向かう道を整備しながら王城へ向かった。
こちら側でも王都へ向かう魔獣達を食い止めるために戦った後がある……

王城に着くとザイダイバから戻っていないノクト以外の王族の皆さんが揃っている。

「トウカ、よく来てくれたね」

先にリアザイアへ戻っていたノバルトが迎えてくれる。
私は早速気になっていた動物の子供達についてきいてみた。

「魔獣化してしまった動物達が多かったからその子供を保護する施設が足りなくてね」

やっぱり……

「だから教会に……孤児院の皆さんにもお願いをして教会の隣に保護施設を作ることにした。小型の動物達をそちらにお願いして、これまであった施設も広げてそちらで大型の動物の子供を保護することにしたのだよ」

孤児院の子供達にも手伝ってもらい、農家や街の皆さんにも協力してもらって余った野菜や果物など動物達が食べられる物を持って来てもらうらしい。

そうなんだ……良かった……

それからノシュカトに、リアザイアにはザイダイバ側で戦った騎士団ほどの大ケガをした者はいなかったけれどケガをした者はたくさんいる。

だからリライの雫を飲み水に入れてケガの治りを早めたと言われた。
リライの扱いはノシュカトにお任せしているからいいと思う。彼なら使い方を間違う事はないだろう。

それから私に手伝える事があれば何でもお手伝いさせて下さい、とお伝えした。

明日から……もうすでに皆さんにバレバレなお城のメイド、ノアに戻ろうと思う。

「ザイダイバから結婚式の招待状が届いたらお知らせするわね。トーカさんのドレスや必要なものは一緒に選ばせてちょうだい」

娘がいたらやってみたかったの、と嬉しそうに言われては断れない……というか結婚式とかどういう物を選べばいいのかわからないので助かります。


翌日、久しぶりのメイド服に着替えてメリッサメイド長にご挨拶に向かうとメアリも一緒にいた。

「長期休暇ありがとうございました。ただいま戻りました」

「お帰りなさい」

そう言って微笑む二人に何だか安心してしまった。
やっぱりここが落ち着く。

メアリが抱きついてきてメリッサメイド長に、はしたないですよ、と叱られエヘヘと笑う。
私も嬉しくなりメアリを抱きしめメリッサメイド長に呆れられる。

ザイダイバへ行く前の日常が戻りメイドの仕事をこなしていく。

ノクトとオリバー、騎士団の皆さんも無事に戻ってきた。

私は時々教会へお菓子を持って行き子供達と動物達に会いに行く。

教会では一応毎回神様に話しかけて見てるけれどやっぱりお返事はない……長期休暇か?

今回のことでジェイドの頑張りや我慢強さを認めたオリバーがもし興味があるのなら成人したら騎士団の入団試験を受けるよう声をかけているらしい。

これからは入団試験を受ける平民が増えていくかもしれない。

ザイダイバから結婚式の招待状が届いて、王妃様と結婚式に必要な物の買い物をした。

週末にはマナー教室やダンスレッスンも継続して学ばせて頂いて何だかんだ忙しく過ごしているとあっという間に結婚式の日が近づいてきた。

リアザイアからザイダイバまではトンネルを使い馬車で向かうと山を抜けるのに2日、国境の街からザイダイバの王都まで3日。道を整備したからもしかしたらもう少し短縮できているかもしれないけれど最短で5日程あれば着くようになった。

今回は、トンネルやザイダイバが温泉をどのようにしたのかを見ながら向かいたいと言うことで王族の皆さんはゲートは使わずに結婚式の1ヶ月前に馬車でザイダイバへ向かい出発していった。

私も結婚式の1週間前に三毛猫さんと一緒に空からザイダイバへ向かう。トンネルの中も通ってみたけれどラムパはちゃんと明るい。

私が温泉を掘った場所はどちらも街になっていた。

降りて見ると宿屋に食べ物屋、服屋に雑貨屋などが建ち並びそれぞれ高級からカジュアルまで取り揃えている。
貴族も平民も滞在できる観光地として申し分ない感じ。

温泉の説明の看板も出ていてわかりやすい。

この短期間で街を完成させるなんて凄い! 街の人達の話を聞いているとどうやら騎士団の皆さんや領主や他の貴族も積極的に手伝っていたみたい。

エリアス陛下が言っていた通りあの争いの後、国中の団結力が高まっている。

再び三毛猫さんとザイダイバの王城へ向かい、到着後リアザイアの皆さんと合流する。

ザイダイバの王族の皆さんとシュゼット様にもご挨拶をする。
今回はセオドアの弟、第三王子のルシエル殿下もご一緒で初めましてとご挨拶をする。
私のことは陛下からも聞いているようですぐに受け入れてもらえた。
三毛猫さんもココさんとご挨拶をして遊んでいる。

「トーカ、よく来てくれたわ」

シュゼット様が微笑む。

「温泉の街を見て来ました。とても素晴らしかったです」

「ありがとう、トーカにそう言ってもらえて嬉しいわ」

「来てくれてありがとう。君の願い通りあれから今まで顔は隠さずに過ごしていたよ」

と、エリアス陛下。


そう、これが私がリアザイアに帰る前にお二人にお願いした事の一つ目…………



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

脱法ミントの密輸回顧録

針ノ木みのる
ファンタジー
人の思考を読み解く事が出来る猫神様。マダナイ。 しかし、マダナイの怠惰な行いと文春砲が仇となり、天界を追放される事となった。 命さながら逃げ切る事になったが、マダナイの体には死の呪いが掛けられていた。 そこに偶然現れた、下界の魔法使いミント。助けてあげる代わりに、金属の輸入を手伝って欲しいと話を持ち掛けられ、マダナイは契約を結ぶ。 それは天界さえ認知していない、異世界間の密輸入だった。 これはマダナイが自身の地位と名誉と身体の回復を図るため為、ミントと協力し、異世界で物を密輸入した記録であり、邂逅して来た人々の思考の記録である。

【R18】騎士たちの監視対象になりました

ぴぃ
恋愛
異世界トリップしたヒロインが騎士や執事や貴族に愛されるお話。 *R18は告知無しです。 *複数プレイ有り。 *逆ハー *倫理感緩めです。 *作者の都合の良いように作っています。

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。 ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。 ※短いお話です。 ※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。

私、異世界で監禁されました!?

星宮歌
恋愛
ただただ、苦しかった。 暴力をふるわれ、いじめられる毎日。それでも過ぎていく日常。けれど、ある日、いじめっ子グループに突き飛ばされ、トラックに轢かれたことで全てが変わる。 『ここ、どこ?』 声にならない声、見たこともない豪奢な部屋。混乱する私にもたらされるのは、幸せか、不幸せか。 今、全ての歯車が動き出す。 片翼シリーズ第一弾の作品です。 続編は『わたくし、異世界で婚約破棄されました!?』ですので、そちらもどうぞ! 溺愛は結構後半です。 なろうでも公開してます。

転生したらただの女の子、かと思ったら最強の魔物使いだったらしいです〜しゃべるうさぎと始める異世界魔物使いファンタジー〜

上村 俊貴
ファンタジー
【あらすじ】  普通に事務職で働いていた成人男性の如月真也(きさらぎしんや)は、ある朝目覚めたら異世界だった上に女になっていた。一緒に牢屋に閉じ込められていた謎のしゃべるうさぎと協力して脱出した真也改めマヤは、冒険者となって異世界を暮らしていくこととなる。帰る方法もわからないし特別帰りたいわけでもないマヤは、しゃべるうさぎ改めマッシュのさらわれた家族を救出すること当面の目標に、冒険を始めるのだった。 (しばらく本人も周りも気が付きませんが、実は最強の魔物使い(本人の戦闘力自体はほぼゼロ)だったことに気がついて、魔物たちと一緒に色々無双していきます) 【キャラクター】 マヤ ・主人公(元は如月真也という名前の男) ・銀髪翠眼の少女 ・魔物使い マッシュ ・しゃべるうさぎ ・もふもふ ・高位の魔物らしい オリガ ・ダークエルフ ・黒髪金眼で褐色肌 ・魔力と魔法がすごい 【作者から】 毎日投稿を目指してがんばります。 わかりやすく面白くを心がけるのでぼーっと読みたい人にはおすすめかも? それでは気が向いた時にでもお付き合いください〜。

【R-18】喪女ですが、魔王の息子×2の花嫁になるため異世界に召喚されました

indi子/金色魚々子
恋愛
――優しげな王子と強引な王子、世継ぎを残すために、今宵も二人の王子に淫らに愛されます。 逢坂美咲(おうさか みさき)は、恋愛経験が一切ないもてない女=喪女。 一人で過ごす事が決定しているクリスマスの夜、バイト先の本屋で万引き犯を追いかけている時に階段で足を滑らせて落ちていってしまう。 しかし、気が付いた時……美咲がいたのは、なんと異世界の魔王城!? そこで、魔王の息子である二人の王子の『花嫁』として召喚されたと告げられて……? 元の世界に帰るためには、その二人の王子、ミハイルとアレクセイどちらかの子どもを産むことが交換条件に! もてない女ミサキの、甘くとろける淫らな魔王城ライフ、無事?開幕! 

処理中です...