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 レオンがベルダッド邸の前まで送ってくれている間に酔いもだいぶ覚めてきた。
強いお酒だったけれど一杯だけだったし今はスッキリしている。

レオンと別れて使用人用の私の部屋から山の家へ帰ると三毛猫さんが出迎えてくれた。

三毛猫さんと一緒にココさんのところへ行く。
ご飯を食べるようになってから少しずつ体力も回復している。

良かった。三毛猫さんも付きっきりで見てくれているからココさんも安心している。

ココさんに手を伸ばすと顔を寄せてスリスリしてくる。
可愛い。もっと激しく撫でたいけれどもう少し体力が回復するまで待とう。

明日はお城に行く日だから温泉に行って早めにベッドに入った。


翌日、朝起きてココさんの様子を見に行くとやっぱり三毛猫さんも一緒にカゴに入っていた。

私に気がつくと三毛猫さんに続いてココさんもカゴから出てきた。

まだ身体は細いけれど動きたいみたい。三毛猫さんとココさんと庭へ出てご飯にしようと思う。
ココさんにカゴに入ってもらって外へ出ると熊さん親子とキツネさん親子が来ていてみんなでご飯を食べる。

子くまさんも子キツネさんも少し大きくなった気がする。

もふりたい。激しく。

ご飯を食べてから、いいですか? と聞いてモフモフタイム。

「やっぱり大きくなってるなぁ。子供の毛並みは今しか堪能できないからね」

可愛い。フワフワのモフモフゥ~。可愛いねぇ大きくなって偉いねぇ。

モフモフモフモフモフモフモフモフ

よしっ! 充電完了! やっぱりもう少しモフモフ。 


みんなが庭で駆け回るのを見ているとココさんがカゴに戻って丸まっていたのでそろそろ部屋に戻ろうと思い三毛猫さんと一緒に家に入る。

ベッドの上にココさんのカゴを戻してしばらくするとスヤスヤと寝始めたので、三毛猫さんに任せて着替えをする。

今日は午前中街へ行ってお菓子を買ってから教会へ行こうと思う。

髪と瞳の色を明るくしてベールをかぶり街へ出ると、レースや素敵な柄の様々な長さのベールをかぶっている女の子を時々見かけた。
私は髪を隠すためだったけれど、彼女達のはおしゃれでしているのがわかる。

まだそんなに見かける人数は多くはないけれど流行り始めているのかな?

そんな事を考えながら歩いているとお菓子屋さんに到着した。
今回はパウンドケーキを5本買ってシスターに切り分けてもらおう。

包んでもらったパウンドケーキを持って教会へ向かう。

教会に入ってすぐにエミリさんと会ったのでパウンドケーキを渡すと凄く喜んでくれた。

「ありがとうございます、トーカさん。週末は働きに出ている子もいるので帰って来たら大喜びするわ」

「働きに……ジェイドはいますか?」

「夜明け前に仕事に出ました。頑張ればここを出ていく時にそのままそこで働かせてもらえるかもしれないから成人が近い子達は少しずつ働きに出ているの」

夜明け前……馬車で移動しているらしいけれど遠いのかな。

エミリさんにどの辺りで仕事をしているのか聞くと、湖のあるあの森の方で薬草や冬用の薪を集めたりしているのだという。

近頃は忙しいので泊まりがけになることも多いとか。

「今日は用事があるのでこれで失礼します。パウンドケーキは皆さんで召し上がって下さい」

そうエミリさんに言い外へ出て森の方を見る。

一度街へ戻り人気のないところで結界を張り道に沿ってフライで追いかける。

森に入り少し進むとそれらしい馬車に追いつく事ができた。無蓋の馬車だからジェイドが乗っているかすぐに確認できた。

ジェイドの他には大人の男達が5人程乗っていて残りのスペースには道具が積まれている。

ツルハシに桶、ロープと棒、シャベルとハンマーとかがたくさん積んである。

薬草と薪集めだよね? 

乗っている人達の年齢もバラバラで男性のみ。その日暮らしとまではいかなくても街で見かける人達よりも生活に余裕はなさそう。

馬車はそのまま湖まで休むこと無く進んで行った。

湖で一度とまり休憩かと思ったら何やら茂みを数人でガサガサしている。
すると茂みの中から道が現れた。ちょうど馬車が通れる程の。

馬車が通るとその道の入り口は再び茂みで隠された。
木が生い茂っていて薄暗い道は空からでも見えなかった。

馬車はそのまま山の方へ向かい山のふもとまで来ると山に沿って王都に面する方へぐるりと回り込んだ。

そこには来た道と同じように薄暗い道が真っ直ぐ森を突き抜け王都に向かいのびていた。
こちらの道幅の方が広いけれどやっぱり隠しているようだ。

山にも人が入っているのかな……今まで全然気付かなかったけど……でもノシュカトが掛かった罠も仕掛けた人がいるんだよね。
山のふもと近くならけっこう人が来てたのかもしれない。

馬車から積み荷を下ろしてみんなが移動を始めたので付いていく。

すると山肌にまるでカーテンのようにツタ植物が垂れ下がっているところがあり皆そこで立ち止まる。

皆がツタを左右によけ始めると山肌にポッカリと大きな穴が開いていた。


洞窟? ……いや……トンネルだ。かなり大きい。


中から6人の男性が出てきてジェイド達と入れ替わりで馬車の方へ歩いていく。
かなりくたびれた様子の彼らは馬車に乗り湖へ向かって行った。

トンネルを掘っているの? 仕事内容が聞いていたのとだいぶ違うけれど……

トンネルに入って行くジェイド達に続いて私も結界を張ったまま付いていく。

凄い。これだけのトンネル一体何年……いや、何十年かけて掘っているのか。

おそらく元々大きな洞窟があったのだと思う。
奥へ進むほど柱や木の板を使った補強がしっかりとしている。

馬車が余裕ですれ違うことができる……道路でいうと3車線くらいの幅はありそう。高さは2メートル以上はあるかもしれない。

トンネルを掘っている先にはあの国境の街がある。
けれどその街までまだ山がいくつかある。

もしこのトンネルをその街に繋げるのが目的なら…………繋げる? あと2週間程で繋がる……確かそう言っていた。
このトンネルのこと?

本当にこのトンネルが繋がればリアザイア王国とザイダイバ王国間の移動時間はかなり短縮される。
それは良いことの様に思えるけれどなぜコソコソ隠しながら掘っているのだろう?

だいぶ歩いてようやく突き当たりに着くとかなりの人数の男性が作業をしていた。

ジェイドも持ってきた桶と棒とロープで天秤棒を作りツルハシで砕いた岩や土を桶に入れて担いで1ヶ所にまとめる作業を始めた。

これは……大人でもかなりきつい作業じゃないかな……

一旦外に出てまだ繋がっていないトンネルの先を見に行くと次の山でも同じような作業をしていた。
その先の山でも……やっぱりこのトンネルが繋がってザイダイバと行き来ができるようになるみたい。

山を登ったり迂回しなくて良くなると交流の幅も広がって便利になりそうだけれど……国が動いてやっていることではなさそう……この事を国王様には知られたくないということ?

ジェイドには明日、孤児院に戻ってきたら話を聞いてみよう。

彼も……彼はまだ子供だけれど大切な人を守るために1人で戦っているのかもしれない………シュゼット様のように……


ジェイドの側からは離れがたいけれど、私は私が今できることをやろう。


これからお城へ行って皆さんからお話を聞いてみようと思う。


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