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しおりを挟むベルダッド公爵家のミランダメイド長に使用人棟に用意された私の部屋へ案内をして頂き、荷解きをする。
用意されているメイド服に着替えてサイズを確認する。
公爵家のメイド服はグレーと白のエプロンドレスにカチューシャに緩めのフリルが付いたもの(ホワイトブリム? だったかな)だから髪はきっちりまとめ上げておく。
「ミランダメイド長、制服のサイズはこちらで大丈夫です」
「そうですか。では後でもう一着お渡しします。希望通り土曜日と日曜日はお休みしていただいて結構です。これから宜しくお願いしますね」
そう言って微笑むミランダメイド長はメリッサメイド長と同じくらいの年齢なんだと思う。
その後仕事場を案内され、仕事内容の説明を受ける。
途中で1人メイドさんを紹介された。どうやらこれから私にお仕事を教えてくれる先輩みたい。
「ティナ、こちらへ。本日よりこちらで働く事になりました、ノアです。経験はあるようなので、お仕事はできるでしょうからここでのやり方を教えて上げて下さい」
「かしこまりました。ミランダメイド長」
ティナさんがそう言うと、では宜しく、とミランダメイド長はどこかへ行ってしまった。
「あの、ノアと申します。宜しくお願いします」
「ノアですね。私はティナ・デル・ブラウンよ。ブラウン子爵家の次女なの」
にこりと微笑む彼女に、許可なしの呼び捨てにフルネーム貴族階級付きをいただいてしまった……初めてのパターン。
どうしよう。正解がわからない。
「ティナさん……ですね。私は家名はないのでノアとお呼び下さい」
ピクリ、とティナさんの方眉が動いた気がした。
「そう……ではノア、2人の時はティナ様と呼んでね」
なるほど、知らなかった。
リアザイアの王城では使用人は大体貴族の後継者以外の方が働いているときいていた。
けれどメアリは平民だったし他にも数名平民出身の人もいた。
貴族も平民も関係なく何となく年が近ければ呼び捨てで呼びあおうということになったし、明らかに年上なら何となく「さん」付けになっていた。
私は明らかに年下の子達にもよく呼び捨てで呼び合おうと言われていたけれど気にしたことはなかったなぁ。
使用人同士で家名を名乗られたのは初めてだったから王城ではみんな本当にフラットな関係なんだなぁ。
なんて考えながらティナ様について行くと洗濯場に着いた。
「皆さん! こちらはノアです。今日から一緒に働く事になりましたので皆さんもここでの働き方を教えて上げて下さい」
「ノアは皆さんのお名前を徐々に覚えていって下さいね。
それから、私達は朝から働いていて疲れているの。これからお茶にするからあなたはこの洗濯物を終らせておいてちょうだい」
洗濯場にいるメイドさん達をみるとクスクス笑っている。数名は目をそらして下を向いている。
これは…………試されているのかな?
新人の洗礼みたいな?
「わかりました。お任せください」
そういうとその場にいた15人くらいのメイドさんが一斉に移動し始めた。
あ、あれ? みんな行っちゃうの?
洗濯物はまだ山のようにある。これを私1人で終らせるの?
驚いている間に全員いなくなった……これはみんなが通って来た道なのか……
よくわからないけれど早く洗って干さなければ午後取り込むメイドさん達が大変だ。
洗濯物は手洗い踏み洗いみたいだけれど、仕方がない……風と水魔法で洗濯機のようにぐるぐる回して絞って籠に移す。
これだけの洗濯物を洗って手が荒れていないと怪しまれると思って数枚は手洗いをした。
荒れた手に泡が染みるけれどまだヒールをかける訳にはいかない。
大きな籠5つ分の洗濯物を1つずつフライで軽くして外へ運び干し始める。たぶん普段は1つの籠を3人で担当しているのかな。
周りを確認してこちらも風魔法で干していく。
只でさえ早く終わってしまうから最後の籠だけはちゃんと自分で干しているとティナ様が戻って来た。
もうすぐ終りそうな事に驚いていたけれど、すぐに悲しそうな表情に変わった…………?
「ノア、なぜ1人で洗濯物を干しているのです。ティナ、他のメイド達はどうしたのです」
振り替えるとミランダメイド長。
「ミランダメイド長! ノアがこれからお世話になる皆様のためにここはどうしても任せて欲しいと言うのでお任せしたのですが……私、心配でお手伝いをしていました」
…………え?
「ノア、以前働いていたお屋敷でのやり方はわかりませんが、それぞれ役割があるのです。あまりこちらのやり方を乱すような態度は感心しませんよ」
え――――
「あの……」
説明しようと口を開くと
「私がいけないのです。いくらノアに強く言われて少し……その……怖かったとしても私がしっかりしていれば良かったのです」
「これからは気を付けるように。ノア、張りきってお仕事に取り組んでくれるのは有難いのですが、目に余るような行動を取ると罰則もありますので気を付けるように」
余りの事に驚いているとティナ様に後ろから腕をつねられた。
「イッッ…………はいっ……」
これは……もしかしていじめられている……!?
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