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しおりを挟む3日間雨が降り続いている。
この世界に来てから雨は初めてだったから、最初はワクワクした……雷も鳴ってたし。何かワクワクするよね。
でも来たばかりの時にこの天気じゃなくて良かった。
今は家もあるし魔法もあるからいいけど。
庭先とか結界を傘のように使うこともできるけど、恵みの雨っていうしなるべく自然にいこうかな。
ここ最近、魔獣化してしまった動物達が結界の外をウロウロしている。入ってきてもいいのに……入れないのかな?
1日に1体のこともあれば5~7体来ることもある。
私から出向き浄化してあげる。
出来るだけ彼らの子供達は取り返してあげたいけれど難しいことなのかな…………
ノクトと次に会う時に相談してみよう。
やることも特にないので、お菓子を持って教会に行ってみようと思い立つ。
ノクトからの手紙は……あれから3~4日しか経っていないしまだ届いてないかな。
準備をして三毛猫さんにお留守番をお願いする。
「それじゃぁちょっと行って来るね」
「ニャン」
セアラのお店で買っておいた傘を持って結界を張り飛んで教会へ向かう。
教会へ着き、礼拝堂に誰も居ないので手を組みまた試してみるけどやっぱり神様からの説明はなかった。
祈り方間違っているのかな?
孤児院へ向かいドアをノックするとクラリスシスター長が出迎えてくれた。
「あら! トーカさん雨の中来てくれたの? 嬉しいわ。温かいお茶を入れるから入ってちょうだい」
ちょうど子供達のお昼寝の時間と重なっていたようで、今日は大人だけのお茶会になりそうだ。
クラリスシスター長と、以前ノクトと来た時に子供達とお茶をした食堂の椅子に座ると30代くらいのシスターがお茶を持って来てくれた。
「トーカさん、こちらはエミリ。彼女はここで一番若いシスターなのよ。」
「エミリさん、トーカです。よろしくお願いします。お茶をありがとうございます。あの、クッキーを持ってきたので子供達とどうぞ」
そう言って渡すとエミリさんは可愛らしく微笑んだ。
「トーカさん、エミリです。こちらこそよろしくお願いします! クッキーありがとうございます。子供達大喜びしますよ!」
ルンルンとキッチンへ歩いていくエミリさんを見送り、一緒にお茶しないのかぁと呑気にお茶を一口いただく。
ふとクラリスシスター長を見ると何だかソワソワしている?
「あの、どうかされましたか? もしかしてお忙しかったのですか?」
「あぁ……ごめんなさいね。雨の中訪ねて来てくれたし、ゆっくりしていって欲しいのだけど、こちらをお渡ししなければと思って……」
「?……これは?」
何かが束ねてある。
「ノクト殿下からトーカさんに宛てたお手紙です……」
………………!?…………………
12通ある………………えっ!? コワッ
(ノクトごめん!)
だ、だって3~4日しか経ってないのに何というハイペース……暇……なはずはないしなぁ……
「トーカさん、そちら早く中身を確認してお返事を差し上げた方がいいのではと思って……」
「そ、そうですね! あの、あ、お茶ご馳走さまでした。それからお手紙預かって頂いてありがとうございます。お家に帰って確認したいと思います!」
そう言って孤児院を後にした………
「ただいまぁ」
「ニャーン?」
三毛猫さん思いの外早く帰って来たから心配してくれているの? 可愛いなぁもぉ! 撫でちゃお!
…………さて、手紙を拝読しましょうか。
1通目……お城に戻った日に出したみたい。
無事、お城に戻った事と大型の魔獣をどうやって討伐したかをどう報告したか。
弟が山に向かったこと。……弟!?……山に!? 山ってこの山?
……まぁここは? 山の中腹くらいだから? ここまではねぇ? 来ない……よね?
植物が好きなのかぁ。植物学者みたいな感じかな。
ここを見たら大喜びかも。
……ノクト弟もいるのか。お城の屋根から落ちながら目があった人は……弟っぽくなかったけどなぁ……お兄さんかな? 3人兄弟?
それから、次に会う時間を早めに作るとか……
2通目~9通目までは……なんか……私の髪とか瞳とかを誉めてくれてる……王子め。
あと早く会いたいとか……だんだんラブレターをもらっているような気がしてくる…………
ノクトの愛馬メイヒアのことも書いてくれている。
メイヒアとオリバーの愛馬のグリアも可愛かったなぁ。
また会いたい。
特に急いで返事を書く内容でもないような……というか返事がいる内容かなぁ……
10通目を読もうかどうしようか迷いながら手紙に手を伸ばした時、結界の辺りに何かの気配を感じた。
魔獣化してしまった動物かな……早く行ってあげないと……
雨避けに自分にも結界を張り外に出る。
元々ここは魔獣達が集まる場所だったのか、それとも浄化を望んで来ているのかわからない。
人間への怒りや憎しみは解消されないけれど痛みや苦しみからは解放してあげられる。それしか出来ない……今は。
そのコ達もこちらへ向かって来ている。
今まで結界の中まで入ってくるコはいなかったけど……
いつもと違う……どうしたんだろう?
向こうから走って来たのは、魔獣化した動物ではなかった。
どこか必死な様子のキツネの親子だった……
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