30 / 87
30 リボン
しおりを挟む森での狩りはやっぱりルウのお陰で早く終わった。
その後のお菓子作りではそれぞれの性格が出ていた。
レトとグレンは細かく正確に分量を計り混ぜていたし、アレスは同じように粉を混ぜて作るのに、前回はフワフワのパウンドケーキで今回は固いクッキーができるのはどうしてかと不思議がる。
ライオスは何でもいいから適当に混ぜて早く作ろうぜ、とざっくりとした感じ。
ロゼッタはミアを手伝いながらも教えた通りにできているし、ミアは周りの様子を伺いながらゆっくりと作業を進めている。
それぞれ好きな形に作った生地をルウが魔法で焼いてくれて出来上がり。
おやつを食べたら別館へ行き、みんなが薬草の仕分けを手伝ってくれた。
「こ、これとこれは残り少ないく、薬の材料になるものだからとっておこう。そ、それからこっちの薬草は寒くても生えているや、薬草だから売っても大丈夫」
こんな具合に分けながら教わりながら作業を進めていった。
「ルウ達も風邪をひいたりした時は薬を飲んだりするの?」
人数も増えたし万が一のときのために備えておいた方がいいよね。
「僕達は飲まないかな。魔族は治癒能力が高い者が多いから」
そうなんだ……でも、子供達みたいに魔力が回復していない状態のときは役に立つかもしれないから後でレトに教わりながら一応多めに作っておこう。
もし、家にある薬で対処できないようならティファナのお店の薬と医者にも頼ることにしよう。
必要になるとすれば私のような気もするけれど……
薬草の仕分けが終わり家に戻るときに思い出した。
みんなには先に家に行ってもらって私は自分の家の荷物の中からロゼッタとミアに買ったリボンを取り出す。
「喜んでくれるかな」
フフフッと思わず笑いながらみんなの家へ向かう。
家に入るとみんなはお茶をのんでいて、ルウが私のお茶をいれてくれた。
ありがとう、と一口お茶を飲んでからロゼッタとミアの近くへ行く。
私が二人にリボンの入った袋を差し出すと二人が顔を見合わせる。
「街で選んできたのだけれど気に入るかな」
なぜか少しだけ照れる。
「私達に……?」
二人はそっと手を伸ばして受け取ってくれた。
「可愛いリボン……」
ミアが嬉しそうに呟くのを見て、ロゼッタも微笑む。
「……可愛い……」
ロゼッタも小さな声でそう言った気がした。
リボンと一緒に持ってきた櫛でミアの髪をとかしてリボンで二つに結ぶ。
「かっ、可愛い……写真撮りたいっ……」
うちの子が可愛すぎる。
「シャシン?」
と首を傾げるミアの可愛さよ……思わず抱き締める。
それからロゼッタに手を伸ばすと
「私はいいわよっ」
と避けられた……
「ロゼッタ……」
ミアとお揃いにしたい、と見つめるけれど
「フンッ」
とされた。ダメかぁ……
「ロゼッタ……私とお揃いは……イヤ?」
ミアがロゼッタの服の裾を摘まむ。
「っ……わ、わかったわよっ、好きにすればっ」
と私に背を向ける。
ロゼッタの髪に櫛を通しながら
「ロゼッタもミアも綺麗な髪ね」
と何気なく言うと
「……ハルの黒髪も綺麗だわ」
と小さな声が聞こえて……ロゼッタの耳は真っ赤。
可愛すぎか……
思わず後ろから抱き締めるとちょっとっ、と怒られたけれども構わずぎゅぅっ、とする。
髪を整えながらこのリボンを買ったお店の話をしたら二人とも興味はありそうだったけれど……行ってみたいとまではならなかった。
それからロゼッタもミアと同じ髪型にして
「はい、出来上がり」
と言うと二人は顔を見合わせて微笑む。写真……
写真が無理ならせめて絵に描いて残そうと思って二人に頼み込んで描かせてもらえることになったのに……
私の絵心の無さに笑われるわ、ロゼッタには怒られるわで散々だった。
「貸して」
ここでグレンの新たな才能を知ることになる。
「おぉっ」
とみんなも驚くほどの早さと上手さ。写真じゃんもう。
ライオスは私の描いたものと比べて爆笑するし、ルウは私の方を額に入れて飾ろうと言うしでもう訳がわからなかった。
でも、みんなが笑っているからいいか、と私も一緒になって笑った。
それからそのままみんなと夕飯まで一緒に過ごして
「ハル、そろそろ家に戻ろう」
と言われてルウと一緒に自分の家へ戻った。
家に入ると静かで……うっかりまた何だか寂しいね、と言いそうになり言葉を飲み込む。
「そうだ、ルウにも渡したいものがあるんだ」
昨日はいろいろとあったからね、渡すタイミングを逃してしまっていた。
「僕に?」
うん、ちょっと待っていて、と寝室へいく。
街でルウのために買ったものを手に取りリビングへ戻る。
「サイズがわからなかったからとりあえず一着だけ買ってきたのだけれど」
と、大人のルウに似合いそうと思って選んだ服を差し出す。
「ハルが僕のために……選んでくれたの?」
うん、でも……
「そんなにいいものではないかも」
手持ちがそんなになくて……甲斐性無しでごめんよ……
「これでサイズがわかればもっといいものを選んであげられるし。後で着てみてよ」
本当は一緒に買い物が出来ればいいのだけれど……もしかしたら行きたくないのかもしれないし。
この辺りのことはみんなが自分から行くと言うのを待った方がいいのかなぁ、と思っている。
まぁ……私もルウに連れていってもらわなければいけないのだけれど。
アオに乗れるようになれば……もしかしたら街まで一人でも行けるかもしれない。
馬には乗ったことはない……ルウは乗れるのかな。
アオは賢そうだから乗せてくれそうな気がするけれど……考えが甘いかな……
「ハル」
いろいろと考えていたら着替えたルウが目の前に……
「ハル、ぴったりだよ。ありがとう」
おぉっ……着てくれている。
高くはない服もルウが着ると高そうに見える。素敵だ。
「次はもっと素敵な服を」
選ぶね、と言い終わる前に抱き締められた。
「ハル、自分の服は買った?」
……買っていない、首を振る。
「みんなの物はあんなにたくさん買ったのに、ハルのものは一つも買わなかったの?」
耳元で響くルウの声……
「こ、今回はみんなのための買い物だったから……」
自分のは……
「私はこれ以上大きくなることもないし今着ているもので足りているから大丈夫だよ。それに私が勝手に選んだものだし、みんなの好みを聞いていかなかったから気に入ってくれたかどうか……」
なぜか口数が多くなってしまう……
ルウが私を落ち着かせるように頭を撫でる。
「ハル、僕も見て欲しいものがあるんだ」
? なんだろう?
こっちへ来て、と手を取られて連れていかれたのはお風呂場。
「! ルウッこれ!」
うわぁーー!! と喜ぶ私を優しく見つめるルウ。
「浴槽が大きくなっている! 足も伸ばせるし肩まで浸かれる! どうしたのこれ!?」
ルウがクスクスと笑いながら
「喜んでもらえて良かった」
これは嬉しいよ! これから寒くなるしゆっくりお風呂に入れる。
「それじゃぁ、さっそく風呂に入ろうか」
うん、もうお湯も張ってあるしね。
「お先にどうぞ」
と脱衣所から出ようとすると……あれ?
ドアが開かない。
もう一度、力一杯開けようとしてみるけれど開かない。
なんで? と思ってルウを見る。
「ルウ、ドアが開かないのだけれど……」
そう? とルウもドアに手を掛けるけれども
「開かないね。少し待てば開くと思うからその間に風呂に入ろうか」
ニコリと微笑むルウ……やられた……
「ル、ルウ……さすがに大人の男女が」
ってもう脱ぎ始めているし!
「ハルもいつもみたいに思いきりよく脱いでいいよ」
……そりゃぁ、私はもうルウに裸は見られているけれどもね……
「僕ね……家族とお風呂に入ったことがなくて……ハルと一緒に入った時、凄く嬉しくて楽しくて……だから」
それって……私を家族のように思ってくれているということ……?
「ダメ……かな。もう一緒には入ってくれないのかな……」
うっ……眉を下げて悲しげな表情……
浴槽が大きくなって前よりは密着しないだろうし……なんなら交代で湯船に浸かればいいのか。
「タ、タオルを身体に巻いたまま入ってもいいなら……」
私はどうもルウに弱い。
「もちろん、いいよ」
と嬉しそうに微笑むルウに、服を脱ぐときは背中合わせでね、と言っておく。
本当に良かったのかなぁ……となんとなく不安を覚えつつ、私も服を脱ぎ始めた……
72
お気に入りに追加
110
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

【完結】魔王様、溺愛しすぎです!
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
「パパと結婚する!」
8万年近い長きにわたり、最強の名を冠する魔王。勇者を退け続ける彼の居城である『魔王城』の城門に、人族と思われる赤子が捨てられた。その子を拾った魔王は自ら育てると言い出し!? しかも溺愛しすぎて、周囲が大混乱!
拾われた子は幼女となり、やがて育て親を喜ばせる最強の一言を放った。魔王は素直にその言葉を受け止め、嫁にすると宣言する。
シリアスなようでコメディな軽いドタバタ喜劇(?)です。
【同時掲載】アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、小説家になろう
【表紙イラスト】しょうが様(https://www.pixiv.net/users/291264)
挿絵★あり
【完結】2021/12/02
※2022/08/16 第3回HJ小説大賞前期「小説家になろう」部門 一次審査通過
※2021/12/16 第1回 一二三書房WEB小説大賞、一次審査通過
※2021/12/03 「小説家になろう」ハイファンタジー日間94位
※2021/08/16、「HJ小説大賞2021前期『小説家になろう』部門」一次選考通過作品
※2020年8月「エブリスタ」ファンタジーカテゴリー1位(8/20〜24)
※2019年11月「ツギクル」第4回ツギクル大賞、最終選考作品
※2019年10月「ノベルアップ+」第1回小説大賞、一次選考通過作品
※2019年9月「マグネット」ヤンデレ特集掲載作品

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。
完結【進】ご都合主義で生きてます。-通販サイトで異世界スローライフのはずが?!-
ジェルミ
ファンタジー
32歳でこの世を去った相川涼香は、異世界の女神ゼクシーにより転移を誘われる。
断ると今度生まれ変わる時は、虫やダニかもしれないと脅され転移を選んだ。
彼女は女神に不便を感じない様に通販サイトの能力と、しばらく暮らせるだけのお金が欲しい、と願った。
通販サイトなんて知らない女神は、知っている振りをして安易に了承する。そして授かったのは、町のスーパーレベルの能力だった。
お惣菜お安いですよ?いかがです?
物語はまったり、のんびりと進みます。
※本作はカクヨム様にも掲載しております。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる