七人の魔族と森の小さな家

サイカ

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18 お風呂とベッド

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 驚いてルウを見るとやっぱり不思議そうな顔……


「それはちょっと」

聞こえてなかったかな、と思ってもう一度言ってみた。

「何で?」

何でって……ねぇ……

「ルウも大人だし……」

あれ? 最初から大人だったということは……

「わ、私……ルウの前で……」

裸っ……顔が熱いっ

「今更だよ」

私は今更じゃないっ

「私、今日は女の子達と入るっ」

えっ、と驚くルウを置いてロゼッタとミアが入っているお風呂場へ向かう。

脱衣所でさっさと服を脱いで

「入るよっ」

と声をかけてドアを開ける。

「ちょっと! いきなり何なのよっ」

びっくりするじゃないっ、とロゼッタに怒られた。
ミアを見ると涙目……

「ごめん、一緒に入ってもいい?」

そう聞くと

「もう入ってきてるじゃない……」

ため息をつかれた……
二人の髪を洗ってあげながら改めて痩せているな、と思った。

「お城ではどんな生活をしていたの?」

お城で働いていたのにこんなに痩せる?

「言いたくない」

「…………」

ミアは無言か……じゃぁ

「王子様とかお姫様もいるのかな」

女子が好きそうな話をしてみようと思ったのに……
ヒッ……とミアから小さい悲鳴のような声が聞こえた気が……

「いるわよっ、私達があそこにいる間に王子が結婚したからお姫様もいるわ」

ロゼッタの機嫌がどんどん悪くなっていく……
話を変えた方がよさそう……

「今日作ったおやつとご飯、美味しかった?」

そう聞くとミアの目がわかりやすく輝きコクコクと頷く。可愛すぎか。

今度はオムライスでも作ってみようかな、と考えていると

「……私も作って……みたい」

小さな声が聞こえてきた。
何でもないような一言だったけれども……何だか凄く勇気を出してそう言ってくれたような気がした。

ミアの頭を撫でて、それじゃぁ今度一緒に作ってみようか、と言うと嬉しそうに頷いてくれた。

ロゼッタにも手を伸ばしたけれど

「子供扱いしないでっ」

と払い除けられてしまった……けれども私は気づいている。
ロゼッタがミアの表情が和らいだのを見た瞬間、安心したように微笑んだのを。

ロゼッタも友達思いのいい子だ。
二人がお湯に浸かっている間に私も全身洗い始める。

「ところでなんで急にお風呂に入ってきたの?」

そ……それは……

「ルシエルは大丈夫なの?」

? ルウ?

「大丈夫って……何が?」

ロゼッタとミアが顔を見合わせる。
ロゼッタが何かをいいかけるとミアが首をふって止める。

「……まぁ、いいわ。こっちに八つ当たりだけはさせないでよね」

ため息をつきながらロゼッタがそう言ったけれど……なんでルウが二人に八つ当たりなんてすると思ったのだろう。

「私達はもう出るわ」

と言って出ていってしまったから聞けなかった……

「……! モタモタしていたらルウが入ってくるかもしれないっ」

待ってぇー、と二人を追いかけるように私もお風呂を出た。

暖炉の前で二人の髪に櫛を通しながら乾かしているとルウがお茶をいれてきてくれた。

「ありがとう、ルウ」

ニコリと微笑むルウ、良かった機嫌は良さそう。
ロゼッタが変なことを言うから……

髪が乾いた二人はお茶を持ってどこかへ行ってしまった。

そういえばルウはみんなに聞いてくれたかな、この先どうするか。

みんなで一緒に住むのならこの家は小さい。
増築するか……ルウの力を借りることになるけれど……

思い切って街に住むとか?
郊外なら広くても安い家があるかもしれないし……

お金はこの前みたいにお肉や薬草を売って……それからお菓子を作ってララのパン屋さんで売ってもらうか……他にも売れそうなものは……

と、いろいろと考えていると

「ハル、この家の隣に家を建ててもいいかな」

みんな魔力が回復するまでここにいるらしい、とルウが話す。

「そうなんだ、良かった。もちろんいいよ」

子供じゃないとわかっていても子供の姿でどこかへ行かれるのはやっぱり心配だものね。

「明日、僕達が街へ行っている間にグレンとアレスが設計をしてみんなで建てるから」

帰る頃にはできているはずだよ、って……

「す……凄いね」

でも……魔力……使うんだよね……

「みんな大丈夫なの? 早く帰って手伝おうか」

魔力が回復していなくて子供の姿なんだよね……

「大丈夫だよ、魔力の回復は早くなっているし……それに……その、ハルは手伝わない方が……」

あ……そうだった。ごめん……ルウが気まずそう。

「僕達は街でゆっくり買い物をして帰ろう」

うん、と頷いてルウにあの無限に入る袋を借りて売れそうなものをたくさん持っていこうと決めた。

みんなの新しい家に必要なものを買って帰らないとね。

あれこれ考えていると向かい合っていたルウが私の髪に触れ、櫛を通し始める。

「また熱が出たら明日は街へ行けなくなるよ」

う……うん……近い……

「ルウもお風呂に入っておいでよ」

ここに座っていれば髪もすぐ乾くし……
なんかこの距離……緊張する……

「……ハルと一緒に入れないなら僕はこれで」

一瞬ルウの周りの空気がフワリと揺れた。

「今のは魔法で身体も服も綺麗にしたの?」

凄いな……魔法。

「魔族はみんなできるものなの?」

ルウが私を抱き込むように後ろ髪にも櫛を通す……
だから……近いって……

「魔力量による効果の差や、人によっては得意な魔法や苦手な魔法、それから全く使えない魔法があるらしいから」

それぞれの才能かな、と。

「ルウにもできないことはあるの?」

「………………ない……かな」

今のところはね、と困ったように微笑む。

「まだ試したことがない魔法もあるから」

そっか……生活に必要な魔法って決まってくるし、そうだよね。

「ハル、髪が乾いたからそろそろ寝ようか」

うん、そう……だ……ね……
忘れてたっ、みんなどこで寝る問題……

布団も枕も手に入るのは明日。

「どうしよう、ルウ……」

この一言で察してくれたルウ。

「今夜だけだからみんなはここで寝るって」

暖炉の前のラグの上……確かにフカフカだし暖かいけれど……暖炉の前の子供から目を離すのはなんかちょっと……抵抗がある。

「それなら私もこっちで寝るね、子供達の様子も気になるし。しばらくベッドを一人占めしていたから今夜はルウがベッドを使って」

「何言ってるの? ハルは僕と一緒に寝るんだよ」

……ルウってば身体が大きくなったこと忘れているのかなぁ

「ルウ、さすがに大人二人であのベッドは狭すぎるよ」

フフフッと笑いながら言うとルウもそうかな、と微笑む。

「そうだよ、大きくなったルウには一人でも狭く感じるかもしれないけれど、あのベッドも今夜で最後だから」

我慢して寝てちょうだい、と言うと首を傾げるルウ。

「ベッドを買い替えるの?」

今度は私が首を傾げる。

「ルウもみんなと隣の家に住むのでしょう?」

ルウが少し驚いた気がしたけれどゆっくりと微笑み

「どうして?」

……え? どうしてって

「新しい家の方が広いし住みやすいだろうし……」

「ハルは新しい家の方がいいの?」

ちがうちがう

「新しい家もいいと思うけれど私はこの家で十分暮らしていけるから」 

「…………」

ルウが黙ってしまった……

「明日……街で売るものをまとめておくよ」

うん、ありがとう、とルウの背中に向かって言ったけれど聞こえているのかいないのか……

とりあえずみんなの寝る場所を整えておこう。
暖炉の前だからそんなに寒くなることもないよね。

私も

「みんなそろそろ寝ようか」

子供達が集まってきたから声をかけると

「ルシエルは?」

アレスが聞いてきた。

「ルウはベッドで寝てもらうから向こうの部屋だよ」

「……ハ……ハルはここで寝るの?」

今度はレト。

「うん」

みんなが顔を見合わせる……どうしたの?

「なんで…………まぁいいか」

ライオスが何かを言いかけてやめた……
もしかして私じゃなくてルウが近くにいる方かいいのかな。

「ルウが一緒の方が安心かな」

私よりは付き合いが長いしそれはそうか。
ルウには悪いけれどやっぱりこっちで……

「そういうのじゃないから気にしないで」

ロゼッタが私の考えていることがわかっているようなことを言う。

そう? それなら、と

「明日、街で買い物をしてくるから欲しいものを教えてちょうだい」

そう聞くと別にない、もう寝る、と言ってみんな布団に入ってしまった……

「お……おやすみぃ……」


私も横になったけれども……何だかちょっと寂しかった……

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