精神科病棟への強制入院

えみ

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決行

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そんなこんなで私は内藤心療内科に到着した。

その頃はある風邪が流行っていたので検温と手の消毒・マスクの着用が徹底されていた。

私は受付案内の人の指示に素直に従った。

しかしながら私は気分が高揚し、目が燃えるように熱く感じ、それをさまそうと言わんがばかりに大きく瞼を見開いていた。

さぞかし私の瞳は爛々と輝いていたであろう。

周りの患者は私と目が合うと挙動不審になり、ビクビクとしながらその場を離れ、外に出て行く。

その様は益々私を図に乗らせた。

もう錯乱状態は止まっていた。

ここですることは一つだった。

私は睨みつけるように第二診察室を見ていた。

そこには私を見捨てた大塚先生がいる。

―――見てろよ―――

私がそう思った時だった。

「岩月えみさん。三番の診察室にお入りください」

とのアナウンスがあった。

そう。

私は、岩月えみ。

そういう名前だ。

第三診察室をノックすると、田中先生が返事をした。

その時、コートのポケットに忍ばせているカッターナイフの刃をチリチリと出していった。

「調子はどうですか?」

田中先生はボサボサの髪を掻きむしりながら私にそう訊ねた。

「そうね?最悪。大塚先生、呼んでよ?」

と私はそう応えた。

「今の主治医は私です。ふざけないでちゃんと僕と向き合ってくださいね?」

不貞腐れた様子の田中先生は、やっと私のカルテから目を離し私の顔を見た。

「!!!!!!!」

私の形相が酷かったのだろう。

田中先生は慌てて席を立ち、大塚先生を自分の診察室に連れて来た。

「岩月さん!!!!!」

第三診察室に入ってきた大塚先生は驚いた様子で、そう叫んだ。

「ね?先生……私をギュッと抱きしめて。私、淋しいんだ……」

私は大塚先生の目を食い入るように見ながらそうお願いした。

「そ、それで岩月さんが落ち着くなら……」

と言って、大塚先生は私に近づき棒立ちしている私をギュッと抱きしめた。

その瞬間だった。

私は大塚先生の腰に手を回す振りをして、右手で握りしめたカッターナイフを思いっきり自分の左手首に切り付けた。
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