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2章

 閑話 謎の二人?

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 何もない空間。
 文字通り無機質な空間。
 真っ白な世界が無限に広がっている空間。

 異世界か。夢か。幻か。
 それは誰にもわからない。
 そんな空間に存在する二つの影。

 一人? は見た目では性の判別がつかない中性的な顔立ち。
 小柄な体で腰の下まで伸びる長い髪の持ち主だ。
 容姿は子供のように幼い。
 服は着ておらず、傷一つない白く透き通った肌があらわになっている。

 もう一人? は紳士的な男性。
 人間で言うと二十歳ぐらいだろうか。
 黒いローブに身を包んでいて鋭い牙が生えている。
 ヴァンパイアという表現が近いかもしれない。

「サタナ様、ロヴェッタが死んだようです」

 ヴァンパイアは胸に手を当て、深々と頭を下げた。
 どうやらサタナの部下か何からしい。

「あれは玩具だからいいよ。面倒だからもう作らないかな」

 顔色一つ変えずにサタナは言う。
 ロヴェッタの生みの親だというのに。

「それより面白いものが見れたね」

 サタナは日々に飽きていた。
 常に自分を楽しませるものを欲している。

「人間の狂暴化ですね。ワタシの作った核を取り込んだ人間にステータスの上昇が見られたのは成功です。ですがまだ制御は難しいですね。あのジークという男では耐え切れなかったのでしょう。まだまだ改良が必要です」

 ミスウェンの町襲撃に裏で関与していたヴァンパイア。
 ロヴェッタに攻めさせ、ヴァンパイアは安全なところで事の成り行きを観察していた。
 狂暴化事件の犯人とはこのヴァンパイアである。
 サタナから授けられたその能力でヴァンパイアがモンスターを狂暴化させているのだ。

「楽しみにしてるよ。それとロヴェッタをった人間も興味深いね」

 サタナは飽き性。
 興味が失せればすぐに次の話題へ移り変わる。

「アストレシア家の長男ですね。アストレシア家を根絶やしにするつもりでしたが半分ほどしか殺せなかったようです」

「それは遊びだったからいいんだよ。ろうと思えばいつでもれる」

「もう一人の方でしたか。あのような人間がいたのは私も驚きです」

「まあそれぐらいやってもらわないとね。今から会うのが楽しみだよ」

「なにかあの男にあるのですか?」

「ん。いや、いいんだ。こっちの話だから」

 サタナはふっと口角を吊り上げた。
 こんなに楽しそうなサタナを見るのは久しぶりだと感じるヴァンパイア。
 久しぶりといっても何百年も前の話だ。

「サタナ様、次は何をいたしましょうか? 何なりとお申し付けください」
「そうだねー。もっと派手なことしたいよね。んー……あ、妖精の森を潰してきてよ。種族が多いから減らそう」

 サタナは気まぐれ。
 サタナの気分一つで消えた種族や町も数多い。

「承知いたしました。ちょうど妖精の森は私の実験場となっております。そろそろ花見の季節でございます故、そちらもお楽しみいただければと」

「わかった。他の二人はどうしちゃったのかな?」

「どうせどこかで遊んでいるのでしょう。まったく、四天王だというのにあいつらは……。ワタシからもきつく言っておきます」

「いいよ別に、自由にさせておこう。こっちも最近面白いものを見つけたんだ」

「サタナ様がですか?」

「そう、人間の三人組でね。復讐に燃えてるみたいなんだ」

「サタナ様に目をつけられるとはなんと名誉なことか。ですが人形遊びはほどほどになさってくださいね」

 サタナが興味を持つのは珍しい。
 しかし興味を抱いたものの末路は……。

「わかってるって。人形を集めたらやっぱり戦わせたいからね。それまでは我慢するよ」
「それがいいでしょう。ではワタシは下界に戻りますゆえ、失礼いたします」

 そう言ってヴァンパイアは消えた。
 何もない空間で一人になったサタナは昼寝を始める。
 次に目を覚ますのはいつか、それは誰も知らない。
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