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2章
42話 アストレシア家
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私と兄さまは北に向かった。
北には上級冒険者が集まっているらしい。
フェンリィの作戦によると南に集まった人たちが町民の救助や警護、それから攪乱を行う。
それでこっちの腕の立つグループが本体にダメージを与えるのだ。
この作戦を実行するには上手く人をまとめられるかが問題になる。
フェンリィと二人で話したが私たちを見て協力してくれる人はいない。
だからうまくやろう、挫けちゃダメだよと言ってくれた。
私には兄さまがいるから多分大丈夫だと思うけどどうなるかわからない。
あと少し頑張ろう。
「速いなルーナ」
移動してると兄さまがそう言った。
「そうですか? まだ本気出してませんよ」
「凄いよ、僕は結構飛ばしてる」
兄さまに褒められちゃった。
嬉しいな。
「あと優しく喋ってくれてありがとう。ルーナはこっちの方が可愛いよ」
「べ、別に気分よ。調子に乗らないで」
「そっか……」
なんでかわからないけど昔みたいに喋るのが気恥ずかしくなってしまった。
反抗期ってやつかしら。
てかそんなに落ち込まれても困る。
「着きましたよ兄さま」
「おう、結構多いな」
戦闘員はざっと50人ほど集まっているみたい。
避難所も近くにあって一般市民もたくさんいる。
その集団に近づくと争っている声が聞こえた。
私の嫌いな人たちだ。
「なんでこんなことになってるのよ! 話と違うじゃない!」
「ホントどうなってんのよ。わたくしの可愛いエミリーがいないんだけど!」
「ウチのジェフィーもいないわ! みんなどこいっちゃったの」
話をしているのはアストレシア家の王妃たちだ。
今話していたのは私を置いていって幹部に殺された、ジェフィーとエミリーの母。
それからルイ兄さまの母だ。
その近くで、
「あ、ほんとだあいつら死んだのか? 情けねえな」
「あたしたちは余裕だったよね。狂暴化事件も大したことなかったし」
私と兄さまの兄弟たちも不満や愚痴を漏らしていた。
この場には王妃が5人、他の兄弟が10人いる。
本当はもっといるけど他の場所にいるのかあるいは今朝の任務で死んだのか。
わからないけど誰も悲しがっている様子はない。これがアストレシア家だ。
みんな自分のことしか考えていない。
「あーみんな、ちょっと聞いてくれるかな。話があるんだ」
兄さまが作戦の話を始めた。
すると全員がその姿に釘付けになる。
さすが兄さまだ。
「ルイくん生きてたのね! さすが私の息子。他の子とは違うわ!」
「母様、ちょっと静かにしててくれないかな。緊急事態なんだ」
「わかったわ。ごめんなさい」
兄さまの言うことは大抵みんな聞く。
でもそれは恐怖による支配じゃない。
尊敬と実力によるものだ。
きっとすぐにまとめてしまう。
「見ての通り四天王がこの町を襲ってきた。力を合わせて迎え撃とう」
これであとは作戦を説明するだけ。
──と思ったけど甘かった。
「ホントかねえ。アストレシア家の策略だったりして……」
誰かがポツリと呟いた。
実際にはその通りなのだがこれはまずい。
そんなことを言ってはいけない。
「今の発言は誰だ! 名乗りを上げろ!」
案の定アストレシア家次男のエドガーがキレた。
アストレシア家は無駄にプライドが高い。
自分たちを神かなんかだと勘違いしていて自分たちに盾突くものは容赦しない。
「やめろエドガー、そんなことしてる暇はない」
兄さまがそれを制止する。
「甘いんだよ兄さんは。俺たちはこんな一般人に喧嘩を売られたんだぞ。お前らも許せねえよな?」
「んー、まあ気分は悪いわね」
「血祭りにしましょうよ」
他の兄弟もエドガーに賛成する。
本当にクズしかいない。
「おいお前ら、僕の言うことが聞けないのか?」
兄さまの声音が変わった。
しかしエドガーは恐れず兄さまに食い下がる。
「どうしちまったんだよ兄さん。また昔みたいにひよっちまったか?」
「は?」
ルイ兄さまとエドガーは犬猿の仲だ。
エドガーが兄さまに嫉妬していつも突っかかる。
「ペット飼ってた頃みたいに甘くなったなって言ってんだよ。なんだっけあのボロ犬……ルーナとか言ったか? もう覚えてねえや」
「てめえもう一回言ってみろよ」
兄さまがエドガーに掴みかかった。
この光景はよく見たことがある。
「お、やるか? 今の俺とどっちが強いか、久しぶりに喧嘩しようぜ。昔はよく俺が兄さんのペットをいじめると怒ったっけな。もうあの時の俺とは違うぞ」
「いいだろう。相手になってやる」
まずい。
兄さまは私のことになると冷静さを失う。
こんなことしてる暇はないのに。
周りの冒険者は「いいぞやれ」と煽っている。
みんな状況がわかっていない馬鹿ばっか。
私が止めなきゃ。
「みんな聞いて!!!!!」
私は叫んだ。
すると兄さまは冷静さを取り戻してくれた。
このまま続けて説明する。
「もう敵はあいつだけなの! みんなで協力すればすぐに片付くから力を貸して!」
言い終えると兄さまにアイコンタクト。
頷いてくれたからあとは任せる。
「済まない取り乱した。ルーナの言う通り人手が必要なんだ。協力してくれ」
冒険者たちは「ルーイさんが言うならやろう」と奮起した。
私も少しは役に立てたみたいでよかった。
けど、
「あ? お前いたのかよ。何で生きてるんだ」
「え、ルーイ兄さんまた拾ってきたの?」
「ルイくん、捨てなさいって言ったでしょ!」
アストレシア家は論点をずらし、私を非難し始めた。
昔は怖かったこの声や視線も今では怖くない。
「私がどうとか今は関係ないでしょ!」
恐れずに言った。
こんな意味の分からない言いがかりで時間を浪費してる暇はない。
だけど、
「お前誰の許可とって喋ってんだよ。失せろ」
「そうよ、分をわきまえなさい」
そう言って睨みつけてきた。
話が通じない。どうしたら……。
「おい、何がそんなに気に食わないんだ。ルーナは何も悪いことしてないだろ」
冷静になった兄さまが庇ってくれた。
「おい兄さん、まさかまだこのゴミの肩を持つのか? こいつはアストレシア家を追放されたんだぞ。その辺のモンスターと同じなんだよ。そいつの味方をするってんなら兄さんも同類だぜ?」
エドガーが剣の柄に手をかける。
「ルイくん! ママの言うことを聞きなさい!」
この場に味方は兄さまのみ。
避難の大合唱が私に降り注ぐ。
「チッ、言ってもわかんねえか」
「兄さまダメです。私は辛くありません」
何をするかわからなかったので袖を引っ張る。
けれどそんな心配はなかった。
「大丈夫だよ」
優しく笑って私の頭を撫でた。
そしてエドガーに歩み寄る。
「この話は一旦保留にしよう。相手なら後でいくらでもしてやる。だから今は──」
ドガアアアアアアアアン!!!
突然の爆撃音と共に一瞬にして目の前に大きなクレーターができた。
その攻撃はもちろん巨大ロヴェッタ。
各地にミサイルを撃ち込み始めている。
幸いここに巻き込まれた人はいない。
「な、なんだ!?」
「パパ怖いよー」
「ここは安全じゃなかったの!?」
当然パニックになる。
兄さまが言うには巨大ロヴェッタは意思が無く近くのものを破壊するだけのはず。
けど今は明らかにこちらを狙ってきた。
さっきまでは腕を動かしたりして町を破壊するだけだったのにミサイルによる攻撃もしたのだ。
「兄さま、これは?」
「まずいかもしれない……」
そう呟く兄さまの顔には焦りが見えた。
呪いをかけられたあの日の表情と似ている。
怒りと不安が入り混じったような表情だ。
アストレシア家のクズ共を見ると──笑っていた。
『聞け愚民どもよ! 我はアストレシア家、そしてこの町のトップであるジーク=アストレシアだ!』
町中に悪魔のような声が響いた。
ジーク、つまり私たちの父だ。
確か兄さまに斬られて負傷していたはず。
なのにどうして巨大ロヴェッタに乗っているの!?
『聞け我の愛する家族たちよ。我はこの巨大兵器を乗っ取ることに成功した。どうやら神は我らに味方したようだ。もう小細工は必要ない。これより作戦通りこの町を制圧し、他の町も蹂躙する!』
冒険者と町民は慌てふためき大混乱となる。
私と兄さまは呆然と突っ立っていた。
「き、聞いてないぞそんなの……。おいお前たち、知っててこんなことしてるのか?」
動揺した声で兄さまが言う。
さっきからずっと時間稼ぎをされていたのかもしれない。
「ったりめえだろ。兄さんはまたいつ心変わりするかわからなかったから話してないが俺たちの目的は最初からこれだ。ロヴェッタからこの兵器を奪い、アストレシアがこの世界を征服する」
「くそ、下衆が……」
兄さまが剣を引き抜いた。
それをエドガーに向ける。
「おっといいのか?」
悪人のようなセリフを吐くエドガー。
目の前で起きたその行動に兄さまは動けなくなる。
「きゃああああ!」
エドガーは小さな子供の首に剣を当てた。
女の子は泣きわめく。
「エドガー、なんのつもりだ」
「それはこっちのセリフだ。お前も大人しく俺たちの言うことを聞け」
これは脅しだ。
力で勝てない兄さまを、お人よしの兄さまを屈服させる作戦だ。
「ルイくん、あなたはアストレシア家の長男なのよ。自覚を持ちなさい」
「ルーイ兄さん、一緒に天下を取りましょうよ」
外野のクズ共も兄さまを諭す。
「ふざけるなよ。そんなものこれっぽっちも興味ない。お前たち、これは立派な国家反逆罪だぞ!」
「ふざけてんのはてめえだろ。国家は俺たちだ。やっぱ腕はいいが頭はお花畑の無能だな。お前たち、やれ」
エドガーがパチンと指を弾く。
すると残りのアストレシア家が剣を抜いてこの場の全員に向けた。
「全員人質だ。お前の腐った性根を叩き直してやる」
そう言ってエドガーは不敵に笑う。
北には上級冒険者が集まっているらしい。
フェンリィの作戦によると南に集まった人たちが町民の救助や警護、それから攪乱を行う。
それでこっちの腕の立つグループが本体にダメージを与えるのだ。
この作戦を実行するには上手く人をまとめられるかが問題になる。
フェンリィと二人で話したが私たちを見て協力してくれる人はいない。
だからうまくやろう、挫けちゃダメだよと言ってくれた。
私には兄さまがいるから多分大丈夫だと思うけどどうなるかわからない。
あと少し頑張ろう。
「速いなルーナ」
移動してると兄さまがそう言った。
「そうですか? まだ本気出してませんよ」
「凄いよ、僕は結構飛ばしてる」
兄さまに褒められちゃった。
嬉しいな。
「あと優しく喋ってくれてありがとう。ルーナはこっちの方が可愛いよ」
「べ、別に気分よ。調子に乗らないで」
「そっか……」
なんでかわからないけど昔みたいに喋るのが気恥ずかしくなってしまった。
反抗期ってやつかしら。
てかそんなに落ち込まれても困る。
「着きましたよ兄さま」
「おう、結構多いな」
戦闘員はざっと50人ほど集まっているみたい。
避難所も近くにあって一般市民もたくさんいる。
その集団に近づくと争っている声が聞こえた。
私の嫌いな人たちだ。
「なんでこんなことになってるのよ! 話と違うじゃない!」
「ホントどうなってんのよ。わたくしの可愛いエミリーがいないんだけど!」
「ウチのジェフィーもいないわ! みんなどこいっちゃったの」
話をしているのはアストレシア家の王妃たちだ。
今話していたのは私を置いていって幹部に殺された、ジェフィーとエミリーの母。
それからルイ兄さまの母だ。
その近くで、
「あ、ほんとだあいつら死んだのか? 情けねえな」
「あたしたちは余裕だったよね。狂暴化事件も大したことなかったし」
私と兄さまの兄弟たちも不満や愚痴を漏らしていた。
この場には王妃が5人、他の兄弟が10人いる。
本当はもっといるけど他の場所にいるのかあるいは今朝の任務で死んだのか。
わからないけど誰も悲しがっている様子はない。これがアストレシア家だ。
みんな自分のことしか考えていない。
「あーみんな、ちょっと聞いてくれるかな。話があるんだ」
兄さまが作戦の話を始めた。
すると全員がその姿に釘付けになる。
さすが兄さまだ。
「ルイくん生きてたのね! さすが私の息子。他の子とは違うわ!」
「母様、ちょっと静かにしててくれないかな。緊急事態なんだ」
「わかったわ。ごめんなさい」
兄さまの言うことは大抵みんな聞く。
でもそれは恐怖による支配じゃない。
尊敬と実力によるものだ。
きっとすぐにまとめてしまう。
「見ての通り四天王がこの町を襲ってきた。力を合わせて迎え撃とう」
これであとは作戦を説明するだけ。
──と思ったけど甘かった。
「ホントかねえ。アストレシア家の策略だったりして……」
誰かがポツリと呟いた。
実際にはその通りなのだがこれはまずい。
そんなことを言ってはいけない。
「今の発言は誰だ! 名乗りを上げろ!」
案の定アストレシア家次男のエドガーがキレた。
アストレシア家は無駄にプライドが高い。
自分たちを神かなんかだと勘違いしていて自分たちに盾突くものは容赦しない。
「やめろエドガー、そんなことしてる暇はない」
兄さまがそれを制止する。
「甘いんだよ兄さんは。俺たちはこんな一般人に喧嘩を売られたんだぞ。お前らも許せねえよな?」
「んー、まあ気分は悪いわね」
「血祭りにしましょうよ」
他の兄弟もエドガーに賛成する。
本当にクズしかいない。
「おいお前ら、僕の言うことが聞けないのか?」
兄さまの声音が変わった。
しかしエドガーは恐れず兄さまに食い下がる。
「どうしちまったんだよ兄さん。また昔みたいにひよっちまったか?」
「は?」
ルイ兄さまとエドガーは犬猿の仲だ。
エドガーが兄さまに嫉妬していつも突っかかる。
「ペット飼ってた頃みたいに甘くなったなって言ってんだよ。なんだっけあのボロ犬……ルーナとか言ったか? もう覚えてねえや」
「てめえもう一回言ってみろよ」
兄さまがエドガーに掴みかかった。
この光景はよく見たことがある。
「お、やるか? 今の俺とどっちが強いか、久しぶりに喧嘩しようぜ。昔はよく俺が兄さんのペットをいじめると怒ったっけな。もうあの時の俺とは違うぞ」
「いいだろう。相手になってやる」
まずい。
兄さまは私のことになると冷静さを失う。
こんなことしてる暇はないのに。
周りの冒険者は「いいぞやれ」と煽っている。
みんな状況がわかっていない馬鹿ばっか。
私が止めなきゃ。
「みんな聞いて!!!!!」
私は叫んだ。
すると兄さまは冷静さを取り戻してくれた。
このまま続けて説明する。
「もう敵はあいつだけなの! みんなで協力すればすぐに片付くから力を貸して!」
言い終えると兄さまにアイコンタクト。
頷いてくれたからあとは任せる。
「済まない取り乱した。ルーナの言う通り人手が必要なんだ。協力してくれ」
冒険者たちは「ルーイさんが言うならやろう」と奮起した。
私も少しは役に立てたみたいでよかった。
けど、
「あ? お前いたのかよ。何で生きてるんだ」
「え、ルーイ兄さんまた拾ってきたの?」
「ルイくん、捨てなさいって言ったでしょ!」
アストレシア家は論点をずらし、私を非難し始めた。
昔は怖かったこの声や視線も今では怖くない。
「私がどうとか今は関係ないでしょ!」
恐れずに言った。
こんな意味の分からない言いがかりで時間を浪費してる暇はない。
だけど、
「お前誰の許可とって喋ってんだよ。失せろ」
「そうよ、分をわきまえなさい」
そう言って睨みつけてきた。
話が通じない。どうしたら……。
「おい、何がそんなに気に食わないんだ。ルーナは何も悪いことしてないだろ」
冷静になった兄さまが庇ってくれた。
「おい兄さん、まさかまだこのゴミの肩を持つのか? こいつはアストレシア家を追放されたんだぞ。その辺のモンスターと同じなんだよ。そいつの味方をするってんなら兄さんも同類だぜ?」
エドガーが剣の柄に手をかける。
「ルイくん! ママの言うことを聞きなさい!」
この場に味方は兄さまのみ。
避難の大合唱が私に降り注ぐ。
「チッ、言ってもわかんねえか」
「兄さまダメです。私は辛くありません」
何をするかわからなかったので袖を引っ張る。
けれどそんな心配はなかった。
「大丈夫だよ」
優しく笑って私の頭を撫でた。
そしてエドガーに歩み寄る。
「この話は一旦保留にしよう。相手なら後でいくらでもしてやる。だから今は──」
ドガアアアアアアアアン!!!
突然の爆撃音と共に一瞬にして目の前に大きなクレーターができた。
その攻撃はもちろん巨大ロヴェッタ。
各地にミサイルを撃ち込み始めている。
幸いここに巻き込まれた人はいない。
「な、なんだ!?」
「パパ怖いよー」
「ここは安全じゃなかったの!?」
当然パニックになる。
兄さまが言うには巨大ロヴェッタは意思が無く近くのものを破壊するだけのはず。
けど今は明らかにこちらを狙ってきた。
さっきまでは腕を動かしたりして町を破壊するだけだったのにミサイルによる攻撃もしたのだ。
「兄さま、これは?」
「まずいかもしれない……」
そう呟く兄さまの顔には焦りが見えた。
呪いをかけられたあの日の表情と似ている。
怒りと不安が入り混じったような表情だ。
アストレシア家のクズ共を見ると──笑っていた。
『聞け愚民どもよ! 我はアストレシア家、そしてこの町のトップであるジーク=アストレシアだ!』
町中に悪魔のような声が響いた。
ジーク、つまり私たちの父だ。
確か兄さまに斬られて負傷していたはず。
なのにどうして巨大ロヴェッタに乗っているの!?
『聞け我の愛する家族たちよ。我はこの巨大兵器を乗っ取ることに成功した。どうやら神は我らに味方したようだ。もう小細工は必要ない。これより作戦通りこの町を制圧し、他の町も蹂躙する!』
冒険者と町民は慌てふためき大混乱となる。
私と兄さまは呆然と突っ立っていた。
「き、聞いてないぞそんなの……。おいお前たち、知っててこんなことしてるのか?」
動揺した声で兄さまが言う。
さっきからずっと時間稼ぎをされていたのかもしれない。
「ったりめえだろ。兄さんはまたいつ心変わりするかわからなかったから話してないが俺たちの目的は最初からこれだ。ロヴェッタからこの兵器を奪い、アストレシアがこの世界を征服する」
「くそ、下衆が……」
兄さまが剣を引き抜いた。
それをエドガーに向ける。
「おっといいのか?」
悪人のようなセリフを吐くエドガー。
目の前で起きたその行動に兄さまは動けなくなる。
「きゃああああ!」
エドガーは小さな子供の首に剣を当てた。
女の子は泣きわめく。
「エドガー、なんのつもりだ」
「それはこっちのセリフだ。お前も大人しく俺たちの言うことを聞け」
これは脅しだ。
力で勝てない兄さまを、お人よしの兄さまを屈服させる作戦だ。
「ルイくん、あなたはアストレシア家の長男なのよ。自覚を持ちなさい」
「ルーイ兄さん、一緒に天下を取りましょうよ」
外野のクズ共も兄さまを諭す。
「ふざけるなよ。そんなものこれっぽっちも興味ない。お前たち、これは立派な国家反逆罪だぞ!」
「ふざけてんのはてめえだろ。国家は俺たちだ。やっぱ腕はいいが頭はお花畑の無能だな。お前たち、やれ」
エドガーがパチンと指を弾く。
すると残りのアストレシア家が剣を抜いてこの場の全員に向けた。
「全員人質だ。お前の腐った性根を叩き直してやる」
そう言ってエドガーは不敵に笑う。
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