30 / 100
2章
30話 最強の仲間たち
しおりを挟む
近くで複数の悲鳴が聞こえた。
「あ、今の声」
ルーナがその声に反応する。
もしかしなくてもルーナを置いていった奴らだろう。
「来るぞ、注意しろ」
おそらくじきに俺たちとも遭遇する。
そう思って俺は二人に≪反転≫をかけ、戦闘モードに移行した。
そしてすぐにその時はやってくる。
バンッ!
ズバッ!
俺の視界に敵が映った瞬間、二人は奇襲を仕掛けた。
ルーナは剣を振るい、フェンリィは発砲する。
その攻撃は確実に敵に命中した。
しかし、
『おいおい最近の人間は容赦ねえな。どうすんだよ俺が悪い奴じゃなかったら』
攻撃を食らったはずなのにピンピンしてやがる。
息一つ乱さず汚れも一つとして見当たらない。
「そんな殺気放って善人なわけないでしょ」
『お? その赤い髪にその顔、さっき見たぞ。わりい、もしかして身内だったか?』
やはり殺してきたか……。
「別に他人よ。アタシを殺そうとしたんだから罰が当たったんだわ。魔王軍とも手組んで全部壊そうとしてたんだから死んで当然よ」
ルーナは顔色、声音一切変えずに言った。
動揺は全く見られない。
『ホントか? まあいいさ、お前らもすぐに送ってやるよ。≪火炎弾≫』
そう唱えると杖に魔力を集中させた。
魔力が炎へと形を変えて俺たちに放たれる。
フェンリィとルーナは強化されたステータスや身体能力により楽々躱す。
俺は威力と速度を反転させてさばく。
この敵は嫌な予感がする。すぐに殺そう。
「悪いな、リタイヤするのはお前だ。≪反転≫」
────────────
名称:レヴァト
体力:S → F
物攻:A → E
物防:S → F
魔攻:SS → G
魔防:S → F
魔力:S → F
俊敏:A → E
ユニークスキル:?
────────────
俺は愛刀である【森羅万象】を抜き、頭でイメージする。
すると刀身に電流が流れ、雷属性が付与された。
電光石火の攻撃。まさに疾風迅雷。
雷の如き一閃が敵を貫く。
≪雷滅貫≫
刃は敵の心臓を捉えた。
遅れて雷鳴が轟く。
そのままこの敵は滅びゆく……
はずだった──
『『『危なかったぜ。いいもん持ってるな』』』
不気味な声がいくつも重なってこだました。
「な、なんなのコイツら!?」
「なんですかこの人たちは」
ルーナとフェンリィは驚きの声を漏らす。
だが一番驚いたのは俺だ。
「それがお前のユニークスキルか」
俺たちは20体の同じ敵に取り囲まれた。
『そうだ。楽しませてくれたお礼に教えてやろう。俺のユニークスキルは≪分身≫。俺と全く同じ残像を作ることができる』
「丁寧に教えてくれるなんて随分余裕だな」
俺は確かにコイツのステータスを反転させた。
つまり今、コイツの魔力はほぼないはず。
なのにこうして大量の分身を編み出したということは、魔力を使用しないユニークスキルを使ったということだ。
『お前もいい能力を持っているな。俺のステータスを下げたのか。だが問題ないな。いくら魔力が減って攻撃力が下がろうとこれだけ大勢で一斉に攻撃すればひとたまりもないだろう』
そう言って俺たちを囲んだ20体のレヴァトが詠唱を始めた。
それを見てルーナは、
「させるわけないでしょ!」
目に見えないほどのスピードで次々と残像を消していく。
しかし消えたそばからどんどん次が生まれる。
残像のためダメージは与えられない。だが相手の残像はこちらに攻撃可能。
意外と厄介な相手だ。
「くっそ、キリがないわ! 本体どいつよ、イライラするわね」
「ルーナ、一回落ち着きなさい」
やけになったルーナをフェンリィが抑える。
「なによ。てか今更だけどアンタほんとにフェンリィなの? 全然雰囲気違うわね」
「私ですよ? ルーナ、それからリクト様も少し時間を稼いでくれませんか。私がなんとかします」
フェンリィは消極的なことが多い。
そのフェンリィが何とかすると言っている。
なら安心して任せられる。
『おいおい待たせるわけねえだろ。さっきの奴らもお前らもそういうところが──』
「そういうところがぬるいよな。俺も同感だ。お前こそ喋ってる余裕はあるのか?」
敵をぶった切る。
『はっ! おもしれえ、久しぶりに本気でいくとするか!』
しかしダメージは無い。
また新たな残像が生まれる。
『遊びは終わりだ。異界より出でよ闇の猛獣、≪召喚≫!』
20体のレヴァトが唱えた。
すると空間がねじ曲がり、中から20体の魔獣が召喚された。
『今の魔力量ならコイツらが限界だな。だが十分だ。さすがにこの数は相手できないだろ!』
────────────
名称:Jr.ケルベロス(×20)
体力:C
物攻:C
物防:E
魔攻:D
魔防:E
魔力:D
俊敏:C
────────────
『行け犬ころ共! あの銀髪の女を食い殺せ!』
ケルベロスが20匹、合計60個の頭がフェンリィを襲う。
一体ずつは強くないがその分、数で押すという作戦だ。
普通の敵なら有効かもしれないな。
だが、
「はぁ、呆れた。アンタ、アタシのこと馬鹿にしすぎでしょ」
20匹の獣に挑む一人の小さな少女。
だが、ただの少女と侮ってはいけない。
その子に手を出せば逆に噛まれる。
襲われるのは獣の方だ。
≪紅円≫
ルーナが一瞬消えた。何をしたのかは目視不可。
だが、彼女の通った軌跡はすぐに結果となって現れた。
ルーナがカチャリと剣を収める。
するとフェンリィを中心に真っ赤な血しぶきが円を描いた。
『な、なに!?』
「数いりゃいいってもんじゃないのよ。時間稼ぎありがと」
一瞬にして60個の頭を持つケルベロスは死滅した。
残りは幹部のみ。
「フェンリィ、そろそろいいでしょ」
「十分です。始めましょうか」
そう言ってフェンリィは【可変式弾丸銃】を構えた。
この銃の強みは手数の多さにある。
それは単に弾数が多いというわけではない。
この銃は状況に応じて姿を変える。
「お二人とも、指示は伝えたとおりです。よろしくお願いします」
さっき指輪を通して指示が飛んできた。
この指輪は敵のステータスを見る以外にも通信手段としても使えるのだ。
「オッケー、頼むぞフェンリィ」
「任せてください。行きますよミーちゃん。ミーちゃんも分身しましょうか」
フェンリィは一つの銃を二つに折り、新たにできた銃を両手に一丁ずつ握った。
これが【可変式弾丸銃】の真価。
状況判断と狙撃センスを兼ね備えたフェンリィのみが使いこなせる武器だ。
「実は私、最近ペットを飼い始めたんですよ。蜂の巣にして差し上げます」
両手を上にあげて引き金を引く。
バン! という音と共に放たれた弾は空中で飛散し、無数の雨となって降り注いだ。
≪蜂蜂弾≫
レヴァトの残像がどんどん消えていく。
本体がわからないならば同時に殺せばいいということ。
やがて目に見える範囲の敵は全て滅んだ。
「終わりですね。あ、そういえばご注意ください。この豪雨は上からだけでなく、真横からも降りますので」
誰かに語り掛けるようにフェンリィが言うと、
「ばきゅんっ」
そう呟いて真後ろにもう一度引き金を引いた。
それと同時に俺とルーナも自分の周りを大きく一振りする。
すると肉体を切り裂く感触が確かにあった。
『ぐあっ!』
そこにいなかったはずのレヴァトが見えるようになった。
俺たちそれぞれの背後にいた三体のレヴァトが一つに戻っていく。
『がはっ、どうしてわかった……』
血反吐を吐いてうずくまるレヴァト。
何が起きたか訳がわからないといった表情を浮かべている。
その悪魔にゆっくりとフェンリィが近づき、上から見下ろす。
「私、あなたみたいな人嫌いなんです。もう力も残ってないみたいなので種明かししてあげますか」
動けなくなった瀕死の敵に一方的に話しかけた。
「まずあなたのユニークスキルは≪分身≫だけじゃないですよね。おそらく≪透明化≫でしょうか。一体倒したら一体また分身が現れる。名演技でした。透明化なんて考えは浮かびません。倒しても倒しても本体が現れない。するとどうするのか。一斉に消せばいいのです。ですがあなたの狙いはこれなんですよね。確実に倒したと思わせておいて背後からぐさり。いい趣味してますね。そんなことせずにさっさと決着付ければいいものを。だから痛い目見るんですよ。自分が気持ちよく勝ち筋に乗れると周りが見えなくなりますよね。そのおかげであなたを見つけることができました」
淡々とフェンリィは説明を行う。
フェンリィの作戦を信じていたが本当に計画通りにいくとは思わなかった。
俺たちは全ての残像を消したら背後に敵がいるから攻撃しろという指示を受けていたのだ。
『……り、理由になってない。なぜ、透明化を見抜いた!』
「うふふっ、私の領域内では呼吸、心音、何一つ見逃しません」
『は!? な、ならどうして最初から俺を殺らなかったんだ!』
「決まってます。あなたと同じですよ。その絶望する顔が見たかったからです」
そう言ってフェンリィはニヤリと笑みを浮かべた。
仲間の俺ですら背筋が凍るような気分になる。
『……くそ、俺一人倒してももう計画は止まらない。あと数分もすればこの町は終わりだ。おい、そこのガキ。お前の親や兄弟も全員皆殺しだ。ざまあみろ!』
「ざまあみろはあいつらの方よ。ルイ兄さま以外はどうなったって構わない。アタシ今、自分でもびっくりするぐらい落ち着いてるの。ホントにどうでもいいんだわ。全部アタシの知ったことじゃないのよ。でも、リクトとフェンリィに会わせてくれたことぐらいは感謝しないとね。仇ぐらいは取ってあげる」
ズシュッ。
ルーナはレヴァトの脳天に剣を突き刺した。
「よし、これで終わりね」
パンパンと手を払い満足そうな顔を浮かべるルーナ。
一生過去は忘れられないが一つ乗り越えることができただろう。
「ミーちゃん今日もよく頑張ったね~。えらいえらい!」
いい子いい子を始める元に戻ったフェンリィ。
この子は何を考えてるかわからない。
「よくやったな二人とも」
俺はその二人に手を向ける。
すると二つの小さな手と合わさり、パチン! パチン! と音を奏でた。
「あ、今の声」
ルーナがその声に反応する。
もしかしなくてもルーナを置いていった奴らだろう。
「来るぞ、注意しろ」
おそらくじきに俺たちとも遭遇する。
そう思って俺は二人に≪反転≫をかけ、戦闘モードに移行した。
そしてすぐにその時はやってくる。
バンッ!
ズバッ!
俺の視界に敵が映った瞬間、二人は奇襲を仕掛けた。
ルーナは剣を振るい、フェンリィは発砲する。
その攻撃は確実に敵に命中した。
しかし、
『おいおい最近の人間は容赦ねえな。どうすんだよ俺が悪い奴じゃなかったら』
攻撃を食らったはずなのにピンピンしてやがる。
息一つ乱さず汚れも一つとして見当たらない。
「そんな殺気放って善人なわけないでしょ」
『お? その赤い髪にその顔、さっき見たぞ。わりい、もしかして身内だったか?』
やはり殺してきたか……。
「別に他人よ。アタシを殺そうとしたんだから罰が当たったんだわ。魔王軍とも手組んで全部壊そうとしてたんだから死んで当然よ」
ルーナは顔色、声音一切変えずに言った。
動揺は全く見られない。
『ホントか? まあいいさ、お前らもすぐに送ってやるよ。≪火炎弾≫』
そう唱えると杖に魔力を集中させた。
魔力が炎へと形を変えて俺たちに放たれる。
フェンリィとルーナは強化されたステータスや身体能力により楽々躱す。
俺は威力と速度を反転させてさばく。
この敵は嫌な予感がする。すぐに殺そう。
「悪いな、リタイヤするのはお前だ。≪反転≫」
────────────
名称:レヴァト
体力:S → F
物攻:A → E
物防:S → F
魔攻:SS → G
魔防:S → F
魔力:S → F
俊敏:A → E
ユニークスキル:?
────────────
俺は愛刀である【森羅万象】を抜き、頭でイメージする。
すると刀身に電流が流れ、雷属性が付与された。
電光石火の攻撃。まさに疾風迅雷。
雷の如き一閃が敵を貫く。
≪雷滅貫≫
刃は敵の心臓を捉えた。
遅れて雷鳴が轟く。
そのままこの敵は滅びゆく……
はずだった──
『『『危なかったぜ。いいもん持ってるな』』』
不気味な声がいくつも重なってこだました。
「な、なんなのコイツら!?」
「なんですかこの人たちは」
ルーナとフェンリィは驚きの声を漏らす。
だが一番驚いたのは俺だ。
「それがお前のユニークスキルか」
俺たちは20体の同じ敵に取り囲まれた。
『そうだ。楽しませてくれたお礼に教えてやろう。俺のユニークスキルは≪分身≫。俺と全く同じ残像を作ることができる』
「丁寧に教えてくれるなんて随分余裕だな」
俺は確かにコイツのステータスを反転させた。
つまり今、コイツの魔力はほぼないはず。
なのにこうして大量の分身を編み出したということは、魔力を使用しないユニークスキルを使ったということだ。
『お前もいい能力を持っているな。俺のステータスを下げたのか。だが問題ないな。いくら魔力が減って攻撃力が下がろうとこれだけ大勢で一斉に攻撃すればひとたまりもないだろう』
そう言って俺たちを囲んだ20体のレヴァトが詠唱を始めた。
それを見てルーナは、
「させるわけないでしょ!」
目に見えないほどのスピードで次々と残像を消していく。
しかし消えたそばからどんどん次が生まれる。
残像のためダメージは与えられない。だが相手の残像はこちらに攻撃可能。
意外と厄介な相手だ。
「くっそ、キリがないわ! 本体どいつよ、イライラするわね」
「ルーナ、一回落ち着きなさい」
やけになったルーナをフェンリィが抑える。
「なによ。てか今更だけどアンタほんとにフェンリィなの? 全然雰囲気違うわね」
「私ですよ? ルーナ、それからリクト様も少し時間を稼いでくれませんか。私がなんとかします」
フェンリィは消極的なことが多い。
そのフェンリィが何とかすると言っている。
なら安心して任せられる。
『おいおい待たせるわけねえだろ。さっきの奴らもお前らもそういうところが──』
「そういうところがぬるいよな。俺も同感だ。お前こそ喋ってる余裕はあるのか?」
敵をぶった切る。
『はっ! おもしれえ、久しぶりに本気でいくとするか!』
しかしダメージは無い。
また新たな残像が生まれる。
『遊びは終わりだ。異界より出でよ闇の猛獣、≪召喚≫!』
20体のレヴァトが唱えた。
すると空間がねじ曲がり、中から20体の魔獣が召喚された。
『今の魔力量ならコイツらが限界だな。だが十分だ。さすがにこの数は相手できないだろ!』
────────────
名称:Jr.ケルベロス(×20)
体力:C
物攻:C
物防:E
魔攻:D
魔防:E
魔力:D
俊敏:C
────────────
『行け犬ころ共! あの銀髪の女を食い殺せ!』
ケルベロスが20匹、合計60個の頭がフェンリィを襲う。
一体ずつは強くないがその分、数で押すという作戦だ。
普通の敵なら有効かもしれないな。
だが、
「はぁ、呆れた。アンタ、アタシのこと馬鹿にしすぎでしょ」
20匹の獣に挑む一人の小さな少女。
だが、ただの少女と侮ってはいけない。
その子に手を出せば逆に噛まれる。
襲われるのは獣の方だ。
≪紅円≫
ルーナが一瞬消えた。何をしたのかは目視不可。
だが、彼女の通った軌跡はすぐに結果となって現れた。
ルーナがカチャリと剣を収める。
するとフェンリィを中心に真っ赤な血しぶきが円を描いた。
『な、なに!?』
「数いりゃいいってもんじゃないのよ。時間稼ぎありがと」
一瞬にして60個の頭を持つケルベロスは死滅した。
残りは幹部のみ。
「フェンリィ、そろそろいいでしょ」
「十分です。始めましょうか」
そう言ってフェンリィは【可変式弾丸銃】を構えた。
この銃の強みは手数の多さにある。
それは単に弾数が多いというわけではない。
この銃は状況に応じて姿を変える。
「お二人とも、指示は伝えたとおりです。よろしくお願いします」
さっき指輪を通して指示が飛んできた。
この指輪は敵のステータスを見る以外にも通信手段としても使えるのだ。
「オッケー、頼むぞフェンリィ」
「任せてください。行きますよミーちゃん。ミーちゃんも分身しましょうか」
フェンリィは一つの銃を二つに折り、新たにできた銃を両手に一丁ずつ握った。
これが【可変式弾丸銃】の真価。
状況判断と狙撃センスを兼ね備えたフェンリィのみが使いこなせる武器だ。
「実は私、最近ペットを飼い始めたんですよ。蜂の巣にして差し上げます」
両手を上にあげて引き金を引く。
バン! という音と共に放たれた弾は空中で飛散し、無数の雨となって降り注いだ。
≪蜂蜂弾≫
レヴァトの残像がどんどん消えていく。
本体がわからないならば同時に殺せばいいということ。
やがて目に見える範囲の敵は全て滅んだ。
「終わりですね。あ、そういえばご注意ください。この豪雨は上からだけでなく、真横からも降りますので」
誰かに語り掛けるようにフェンリィが言うと、
「ばきゅんっ」
そう呟いて真後ろにもう一度引き金を引いた。
それと同時に俺とルーナも自分の周りを大きく一振りする。
すると肉体を切り裂く感触が確かにあった。
『ぐあっ!』
そこにいなかったはずのレヴァトが見えるようになった。
俺たちそれぞれの背後にいた三体のレヴァトが一つに戻っていく。
『がはっ、どうしてわかった……』
血反吐を吐いてうずくまるレヴァト。
何が起きたか訳がわからないといった表情を浮かべている。
その悪魔にゆっくりとフェンリィが近づき、上から見下ろす。
「私、あなたみたいな人嫌いなんです。もう力も残ってないみたいなので種明かししてあげますか」
動けなくなった瀕死の敵に一方的に話しかけた。
「まずあなたのユニークスキルは≪分身≫だけじゃないですよね。おそらく≪透明化≫でしょうか。一体倒したら一体また分身が現れる。名演技でした。透明化なんて考えは浮かびません。倒しても倒しても本体が現れない。するとどうするのか。一斉に消せばいいのです。ですがあなたの狙いはこれなんですよね。確実に倒したと思わせておいて背後からぐさり。いい趣味してますね。そんなことせずにさっさと決着付ければいいものを。だから痛い目見るんですよ。自分が気持ちよく勝ち筋に乗れると周りが見えなくなりますよね。そのおかげであなたを見つけることができました」
淡々とフェンリィは説明を行う。
フェンリィの作戦を信じていたが本当に計画通りにいくとは思わなかった。
俺たちは全ての残像を消したら背後に敵がいるから攻撃しろという指示を受けていたのだ。
『……り、理由になってない。なぜ、透明化を見抜いた!』
「うふふっ、私の領域内では呼吸、心音、何一つ見逃しません」
『は!? な、ならどうして最初から俺を殺らなかったんだ!』
「決まってます。あなたと同じですよ。その絶望する顔が見たかったからです」
そう言ってフェンリィはニヤリと笑みを浮かべた。
仲間の俺ですら背筋が凍るような気分になる。
『……くそ、俺一人倒してももう計画は止まらない。あと数分もすればこの町は終わりだ。おい、そこのガキ。お前の親や兄弟も全員皆殺しだ。ざまあみろ!』
「ざまあみろはあいつらの方よ。ルイ兄さま以外はどうなったって構わない。アタシ今、自分でもびっくりするぐらい落ち着いてるの。ホントにどうでもいいんだわ。全部アタシの知ったことじゃないのよ。でも、リクトとフェンリィに会わせてくれたことぐらいは感謝しないとね。仇ぐらいは取ってあげる」
ズシュッ。
ルーナはレヴァトの脳天に剣を突き刺した。
「よし、これで終わりね」
パンパンと手を払い満足そうな顔を浮かべるルーナ。
一生過去は忘れられないが一つ乗り越えることができただろう。
「ミーちゃん今日もよく頑張ったね~。えらいえらい!」
いい子いい子を始める元に戻ったフェンリィ。
この子は何を考えてるかわからない。
「よくやったな二人とも」
俺はその二人に手を向ける。
すると二つの小さな手と合わさり、パチン! パチン! と音を奏でた。
0
お気に入りに追加
30
あなたにおすすめの小説
スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~
きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。
洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。
レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。
しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。
スキルを手にしてから早5年――。
「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」
突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。
森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。
それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。
「どうせならこの森で1番派手にしようか――」
そこから更に8年――。
18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。
「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」
最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。
そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~
そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」
「何てことなの……」
「全く期待はずれだ」
私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。
このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。
そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。
だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。
そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。
そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど?
私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。
私は最高の仲間と最強を目指すから。
【完結】戦場カメラマンの異世界転生記
戸部家尊
ファンタジー
中村文人はカメラマンである。
二十歳の頃から五十年間、多くの戦場や紛争地域を渡り歩いていた。
ある日、紛争地域で撮影中、謎の光に包まれ、異世界に転移してしまう。
そこで出会ったファーリという、森に住まう異種族と出会う。
誤解を受けつつもひとまずファーリたちのところに
二十歳の若者として暮らし始める。
だが、その集落はチェロクスという獣人たちに狙われていた。
ファーリたちを救い、元の世界に戻るべく、文人は戦いの渦に飛び込んでいく。
【タイトル詐欺です】
※小説家になろうにも投稿しています。
追放された美少女を助けた底辺おっさんが、実は元”特級冒険者”だった件について。
いちまる
ファンタジー
【毎週木曜日更新!】
採取クエストしか受けない地味なおっさん冒険者、ダンテ。
ある日彼は、ひょんなことからA級冒険者のパーティーを追放された猫耳族の少女、セレナとリンの面倒を見る羽目になってしまう。
最初は乗り気でなかったダンテだが、ふたりの夢を聞き、彼女達の力になると決意した。
――そして、『特級冒険者』としての実力を隠すのをやめた。
おっさんの正体は戦闘と殺戮のプロ!
しかも猫耳少女達も実は才能の塊だった!?
モンスターと悪党を物理でぶちのめす、王道冒険譚が始まる――!
※本作はカクヨム、小説家になろうでも掲載しています。
ギルドから追放された実は究極の治癒魔法使い。それに気付いたギルドが崩壊仕掛かってるが、もう知らん。僕は美少女エルフと旅することにしたから。
yonechanish
ファンタジー
僕は治癒魔法使い。
子供の頃、僕は奴隷として売られていた。
そんな僕をギルドマスターが拾ってくれた。
だから、僕は自分に誓ったんだ。
ギルドのメンバーのために、生きるんだって。
でも、僕は皆の役に立てなかったみたい。
「クビ」
その言葉で、僕はギルドから追放された。
一人。
その日からギルドの崩壊が始まった。
僕の治癒魔法は地味だから、皆、僕がどれだけ役に立ったか知らなかったみたい。
だけど、もう遅いよ。
僕は僕なりの旅を始めたから。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる