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2章
18話 出立
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「お世話になりました」
「また遊びに来ますね!」
アーノルドたちとの一軒も片付き、頼んでいた武器も完成したため村を出発することにした。
「ぐすっ、勇者様、女神様! うぅぅ……末永くお幸せに!」
「泣くなよゲイル、みっともないぞ。それに俺たちは付き合ってすらねえ」
「さびじくなりまず。うおおおおおおん!」
やれやれ。
泣き崩れるゲイルをなだめる。
すると村長にもお礼を言われた。
「この御恩は一生忘れません。なにかありましたら是非この村を頼ってください」
「そうさせてもらいます」
俺は手を出し、村長と握手を交わす。
「武器もこんないいものを作っていただいてありがとうございました」
「それは間違いなくワシの集大成じゃ。これを超える業物はそうそうないじゃろう」
「私も大切にします!」
ドワーフのガム爺は俺の分だけではなくフェンリィの分まで用意してくれた。素人目にも一級品だとわかる。いろいろ機能があるらしいから早く試してみたい。
「お二人とも防具がよく似合ってますよ」
女性の皆さんからは装備も作ってもらった。
俺もフェンリィもボロ雑巾みたいになってたからな。
ようやく冒険者らしくなったと言えよう。
ちなみに俺のローブは今もフェンリィが身に着けている。サイズやデザインが手直しされていてフードも付けてもらったようだ。結構可愛い……と思う。
「貰いすぎなぐらいです。本当にお世話になりました」
こうして俺たちは旅立った。
◇◆◇◆◇◆
ここからならミスウェンの町はそう遠くない。
道もほぼ一本道なのでどんどん進む。
「さんぽー! さんぽー! ぽっぽっぽ♪」
フェンリィはご機嫌のようでルンルン歌っている。
俺もそれをBGMにランラン歩く。
『ガルルルル!』
突然ノイズが入った。
モンスターだ。
それも合唱団が作れてしまうほど多い。
────────────
名称:ワイルドウルフ(×10)
体力:C
物攻:B
物防:C
魔攻:D
魔防:C
魔力:C
俊敏:C
────────────
Cランクの雑魚。とまではいかないが、ただの低級モンスターだと一般的には言われている。
だが、俺にとっては天敵だ。
俺の弱点の一つでもある。
俺のステータスと大した開きが無いということは≪反転≫を使う意味がない。
つまり俺と唯一張り合える敵というわけだ。
受けるダメージは小さくできるため、倒せないことはないが時間がかかる。
しかも数が多いから面倒だ。
前のパーティでもこういう時は助けられていた。
強敵は俺が弱くし、それ以外は倒してもらう。
いい関係を築けていると思っていたんだがな……。
まあ過ぎたことは忘れよう。
今はフェンリィがいる。
「リクト様!」
「任せた。≪反転≫」
・
・
・
「ふぅ、すぐに終わらせます」
能力が上昇したフェンリィは新調した武器を構えた。
俺はこの武器を見たことが無い。
というか多分この世界の誰も見たことないのではないだろうか。
ガム爺が長年開発していた【可変式弾丸銃】という武器だ。
その全長はフェンリィの背中から腰下まである。
遠距離武器と言ったら弓が主流なのだがこの武器は全く形状が違う。
なんというかメカメカしい。
『ワオーン!』
敵は雄たけびを上げて威嚇してくる。
フェンリィに怯む様子はない。
それどころか、
「うるさいワンちゃんですね。残念ですがお亡くなりになって頂きます」
銃口を空に向け、三度引き金を引いた。
「行きましょう」
「え?」
ポカンと見ていた俺の手を引いて歩き始めた。
ちょっと頭がついていかない。
「もう終わりました。危ないので離れますよ」
どうやら終わったらしい。
俺はわけがわからずついていく。
『ガウッ!』
しかし当然ワイルドウルフは俺たちに襲い掛かる。
俺は一応刀に手を当て、戦闘の準備。
だがそれは杞憂だった。
敵が鋭い爪を立て、俺に向けた瞬間──
「ばーん」
フェンリィが呟いた。
すると天から無数の弾丸が降ってきて、ワイルドウルフの体を貫いた。
辺りには鮮やかな血しぶきが舞い、落雷のような轟音と共に呻き声が響く。
その技の名は──≪雷降≫
「ごめんなさいリクト様、ちょっとうるさかったですね!」
死体が転がってる横でフェンリィはニッコリ笑顔を見せる。
これは褒めて褒めてという顔だ。
モンスターに情なんてこれっぽっちも無いが、こんな元気でいたいけな女の子が笑顔で虐殺するとはな。
恐ろしい子……。
「ミーちゃんもえらいえらい!」
突然銃を撫でていい子いい子を始めた。ほっぺもスリスリしている。
どうやらミーちゃんというのは名前らしい。
後で聞いた話だが敵を「ミンチに出来る」とか「醜く死んでくれるから」というのが由来だとか……。フェンリィさんマジ怖い。
こんな感じで低級モンスターはフェンリィが殲滅。
俺は能力を発動するだけで全て片が付いた。
『グオオオオオオ!』
今度は巨大な熊が出現した。
フェンリィがぶっ放したせいかさっきからモンスターが寄ってきてる気がする。
「ミーちゃんの出番ですね!」
すっかりお気に入りの愛銃になったようだ。
さっきからお人形遊びのように一人で会話なんかもしていて、聞いてると結構面白い。
が、悪いけどそろそろ俺も愛刀を使いたい。
ミーちゃんには我慢してもらおう。
「いや、俺がやる」
手で制止すると素直に下がってくれた。
でもなぜか俺の腕にしがみついてくる。
1秒前まで殺る気だったのにすっかり怯え切った顔だ。
それをいつも通り引き剥がす。
「さて。ちょうどいい敵だな」
モンスターにも弱点がある。
炎が苦手だったり氷が苦手だったり。
あるいは魔法が効かなかったり物理が効かなかったり。
こいつは物理攻撃が効きにくい。
ステータスとは関係なしに。
────────────
名称:ロック・ベアー
体力:B
物攻:B
物防:A
魔攻:C
魔防:B
魔力:C
俊敏:C
ユニークスキル:≪物理耐性≫
────────────
俺は普通のバフスキルで強化したものであれば≪反転≫を使用することによりデバフにできる。
だがユニークスキルそのものを≪反転≫させることはできない。
他者からの影響を受けない唯一無二のスキル。それがユニークスキルだからだ。
例えばフェンリィのユニークスキル≪能力低下≫はあらゆるデバフスキルが使えるユニークスキル。それを≪能力上昇≫というスキルに変えることはできない。ただ、≪能力低下≫によって使える一つ一つのデバフスキル──例を挙げるなら≪弱視≫なんかは≪反転≫させて≪強視≫にすることができる。ややこしい。
今回のケースでは物理耐性を下げることはできない。
ユニークスキルに対応できないというのが俺の二つ目の弱点だ。
「切れ味を確かめるか」
俺は新調した刀、【森羅万象】を引き抜く。
この刀は空気中の魔素から魔力を生成し、あらゆる種類の属性を付与することが可能だ。俺にも魔法が使えるというのは、それだけで心が躍った。
こんなことができる刀なんて聞いたことない。
一体ガム爺は何者なんだ?
ドスン! ドスン!
ロック・ベアーとは体中に岩を纏った熊。
自分の体から生えている岩を俺に向かって投げてきた。
「よっと」
それを楽々躱し、刀身に魔力を集中させる。
「このままじゃフェンリィに示しがつかないからな。悪いけど死んでもらうよ」
みるみる冷気を集め、刀には氷属性が付与された。
魔法による斬撃ならば≪物理耐性≫なんて関係ない。
「食らえ!!!」
俺は迷わず懐に潜り込み、一閃を放った。
刀の軌道に沿って追尾するのは白い冷気。
見る者を幻影へと誘うのは雪の結晶。
それらは、滅びゆく者へのイルミネーション。
≪氷滅斬≫
俺は静かに刀を鞘に納める。
振り向くと敵の体は真っ二つになっており、切り口から広がるようにして全身が凍り付いていた。討伐完了。
「さすがリクト様! カッコいいです!」
「俺も負けてられないからな」
「私も負けません! さあどんどん行きますよ! ダブルデートの邪魔する子たちは私のミーちゃんが撃ち殺します!」
フェンリィの中では俺の愛刀とミーちゃんは恋人同士らしい。
疲れるからもう突っ込まない。
こうして俺たちはミスウェンの町に着いた。
「また遊びに来ますね!」
アーノルドたちとの一軒も片付き、頼んでいた武器も完成したため村を出発することにした。
「ぐすっ、勇者様、女神様! うぅぅ……末永くお幸せに!」
「泣くなよゲイル、みっともないぞ。それに俺たちは付き合ってすらねえ」
「さびじくなりまず。うおおおおおおん!」
やれやれ。
泣き崩れるゲイルをなだめる。
すると村長にもお礼を言われた。
「この御恩は一生忘れません。なにかありましたら是非この村を頼ってください」
「そうさせてもらいます」
俺は手を出し、村長と握手を交わす。
「武器もこんないいものを作っていただいてありがとうございました」
「それは間違いなくワシの集大成じゃ。これを超える業物はそうそうないじゃろう」
「私も大切にします!」
ドワーフのガム爺は俺の分だけではなくフェンリィの分まで用意してくれた。素人目にも一級品だとわかる。いろいろ機能があるらしいから早く試してみたい。
「お二人とも防具がよく似合ってますよ」
女性の皆さんからは装備も作ってもらった。
俺もフェンリィもボロ雑巾みたいになってたからな。
ようやく冒険者らしくなったと言えよう。
ちなみに俺のローブは今もフェンリィが身に着けている。サイズやデザインが手直しされていてフードも付けてもらったようだ。結構可愛い……と思う。
「貰いすぎなぐらいです。本当にお世話になりました」
こうして俺たちは旅立った。
◇◆◇◆◇◆
ここからならミスウェンの町はそう遠くない。
道もほぼ一本道なのでどんどん進む。
「さんぽー! さんぽー! ぽっぽっぽ♪」
フェンリィはご機嫌のようでルンルン歌っている。
俺もそれをBGMにランラン歩く。
『ガルルルル!』
突然ノイズが入った。
モンスターだ。
それも合唱団が作れてしまうほど多い。
────────────
名称:ワイルドウルフ(×10)
体力:C
物攻:B
物防:C
魔攻:D
魔防:C
魔力:C
俊敏:C
────────────
Cランクの雑魚。とまではいかないが、ただの低級モンスターだと一般的には言われている。
だが、俺にとっては天敵だ。
俺の弱点の一つでもある。
俺のステータスと大した開きが無いということは≪反転≫を使う意味がない。
つまり俺と唯一張り合える敵というわけだ。
受けるダメージは小さくできるため、倒せないことはないが時間がかかる。
しかも数が多いから面倒だ。
前のパーティでもこういう時は助けられていた。
強敵は俺が弱くし、それ以外は倒してもらう。
いい関係を築けていると思っていたんだがな……。
まあ過ぎたことは忘れよう。
今はフェンリィがいる。
「リクト様!」
「任せた。≪反転≫」
・
・
・
「ふぅ、すぐに終わらせます」
能力が上昇したフェンリィは新調した武器を構えた。
俺はこの武器を見たことが無い。
というか多分この世界の誰も見たことないのではないだろうか。
ガム爺が長年開発していた【可変式弾丸銃】という武器だ。
その全長はフェンリィの背中から腰下まである。
遠距離武器と言ったら弓が主流なのだがこの武器は全く形状が違う。
なんというかメカメカしい。
『ワオーン!』
敵は雄たけびを上げて威嚇してくる。
フェンリィに怯む様子はない。
それどころか、
「うるさいワンちゃんですね。残念ですがお亡くなりになって頂きます」
銃口を空に向け、三度引き金を引いた。
「行きましょう」
「え?」
ポカンと見ていた俺の手を引いて歩き始めた。
ちょっと頭がついていかない。
「もう終わりました。危ないので離れますよ」
どうやら終わったらしい。
俺はわけがわからずついていく。
『ガウッ!』
しかし当然ワイルドウルフは俺たちに襲い掛かる。
俺は一応刀に手を当て、戦闘の準備。
だがそれは杞憂だった。
敵が鋭い爪を立て、俺に向けた瞬間──
「ばーん」
フェンリィが呟いた。
すると天から無数の弾丸が降ってきて、ワイルドウルフの体を貫いた。
辺りには鮮やかな血しぶきが舞い、落雷のような轟音と共に呻き声が響く。
その技の名は──≪雷降≫
「ごめんなさいリクト様、ちょっとうるさかったですね!」
死体が転がってる横でフェンリィはニッコリ笑顔を見せる。
これは褒めて褒めてという顔だ。
モンスターに情なんてこれっぽっちも無いが、こんな元気でいたいけな女の子が笑顔で虐殺するとはな。
恐ろしい子……。
「ミーちゃんもえらいえらい!」
突然銃を撫でていい子いい子を始めた。ほっぺもスリスリしている。
どうやらミーちゃんというのは名前らしい。
後で聞いた話だが敵を「ミンチに出来る」とか「醜く死んでくれるから」というのが由来だとか……。フェンリィさんマジ怖い。
こんな感じで低級モンスターはフェンリィが殲滅。
俺は能力を発動するだけで全て片が付いた。
『グオオオオオオ!』
今度は巨大な熊が出現した。
フェンリィがぶっ放したせいかさっきからモンスターが寄ってきてる気がする。
「ミーちゃんの出番ですね!」
すっかりお気に入りの愛銃になったようだ。
さっきからお人形遊びのように一人で会話なんかもしていて、聞いてると結構面白い。
が、悪いけどそろそろ俺も愛刀を使いたい。
ミーちゃんには我慢してもらおう。
「いや、俺がやる」
手で制止すると素直に下がってくれた。
でもなぜか俺の腕にしがみついてくる。
1秒前まで殺る気だったのにすっかり怯え切った顔だ。
それをいつも通り引き剥がす。
「さて。ちょうどいい敵だな」
モンスターにも弱点がある。
炎が苦手だったり氷が苦手だったり。
あるいは魔法が効かなかったり物理が効かなかったり。
こいつは物理攻撃が効きにくい。
ステータスとは関係なしに。
────────────
名称:ロック・ベアー
体力:B
物攻:B
物防:A
魔攻:C
魔防:B
魔力:C
俊敏:C
ユニークスキル:≪物理耐性≫
────────────
俺は普通のバフスキルで強化したものであれば≪反転≫を使用することによりデバフにできる。
だがユニークスキルそのものを≪反転≫させることはできない。
他者からの影響を受けない唯一無二のスキル。それがユニークスキルだからだ。
例えばフェンリィのユニークスキル≪能力低下≫はあらゆるデバフスキルが使えるユニークスキル。それを≪能力上昇≫というスキルに変えることはできない。ただ、≪能力低下≫によって使える一つ一つのデバフスキル──例を挙げるなら≪弱視≫なんかは≪反転≫させて≪強視≫にすることができる。ややこしい。
今回のケースでは物理耐性を下げることはできない。
ユニークスキルに対応できないというのが俺の二つ目の弱点だ。
「切れ味を確かめるか」
俺は新調した刀、【森羅万象】を引き抜く。
この刀は空気中の魔素から魔力を生成し、あらゆる種類の属性を付与することが可能だ。俺にも魔法が使えるというのは、それだけで心が躍った。
こんなことができる刀なんて聞いたことない。
一体ガム爺は何者なんだ?
ドスン! ドスン!
ロック・ベアーとは体中に岩を纏った熊。
自分の体から生えている岩を俺に向かって投げてきた。
「よっと」
それを楽々躱し、刀身に魔力を集中させる。
「このままじゃフェンリィに示しがつかないからな。悪いけど死んでもらうよ」
みるみる冷気を集め、刀には氷属性が付与された。
魔法による斬撃ならば≪物理耐性≫なんて関係ない。
「食らえ!!!」
俺は迷わず懐に潜り込み、一閃を放った。
刀の軌道に沿って追尾するのは白い冷気。
見る者を幻影へと誘うのは雪の結晶。
それらは、滅びゆく者へのイルミネーション。
≪氷滅斬≫
俺は静かに刀を鞘に納める。
振り向くと敵の体は真っ二つになっており、切り口から広がるようにして全身が凍り付いていた。討伐完了。
「さすがリクト様! カッコいいです!」
「俺も負けてられないからな」
「私も負けません! さあどんどん行きますよ! ダブルデートの邪魔する子たちは私のミーちゃんが撃ち殺します!」
フェンリィの中では俺の愛刀とミーちゃんは恋人同士らしい。
疲れるからもう突っ込まない。
こうして俺たちはミスウェンの町に着いた。
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