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1章
16話【追放サイド】アーノルドの独白
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昨日は一睡もできなかった。
まぶたを閉じると死神が出てきて俺の心臓を掴んでくるような恐怖に襲われた。
この俺がビビっている。認められないがそれは事実だ。
じっとしてると俺を見下すあいつの顔が浮かんでむしゃくしゃした。
はらわたが煮えくり返りそうになる。
こんなに惨めな思いをしたのは初めてだ。
あいつは全く無能ではなかった。だが、それだけは認めるわけにはいかない。
あいつとはそこそこ付き合いが長い。
が、別に幼馴染というわけではない。
冒険者になるための戦闘訓練所に通っていた時に出会った。
そこでたまたま最初にペアを組んだのがあいつだったのだ。
俺は周りより体がでかく、力もあったため近寄りがたい印象を受けていただろう。
俺も慣れ合うつもりはなかったし弱い奴が嫌いだったから周囲を威圧していた。
だがリクトの野郎は全く恐れず俺についてきた。後にハウザーやルキシアとも親しくなり(表面上は)パーティを結成したというわけだ。
あいつはおかしな野郎だ。
平凡で目立たないくせに成績トップの俺に食らいついてきた。
俺はその姿勢にイラついて何度か訓練の域を超えてボコボコにしてやった。
必要以上に殴る蹴るの暴行を加え、何度も教官に止められた。
その時あいつなんて言ったと思う?
「さすがアーノルドだ。これなら魔王を倒せるかもしれないな」
血反吐吐きながらそう言いやがった。
あいつの目に憎しみや殺意なんてもんはこれっぽっちもなかった。
あいつは俺を尊敬し、仲間だと思い、友達だと思ってやがったんだ。
俺ははなから舎弟だとしか思ってなかった。
なのにあいつは俺の隣に立とうとしてきやがる。
対等でいようとしてきやがる。
気に食わねえ。
俺の方が上だ。俺が一番だ。
俺はあいつを荷物運びだとしか思ってねえ。
無能が俺と同じ土俵にいていいわけねえ。
俺は優越感に浸りたかった。
立場をわからせてやりたかった。
お前は弱者なんだと、わからせてやりたかった。
だから追放した。
それなのに、実際は俺が下だった。
雑魚だと思ってた奴が俺よりも上だった。
認めたくないがこれもやはり事実だ。こんなに屈辱的なことはない。
まさか俺が人前で地べたに這いつくばった挙句、泣きわめくことになるとは……。
自分に虫唾が走る。
そしてそれ以上にあいつに苛立ちを覚える。
あいつは心の中じゃ俺を笑っていたのか?
弱いくせに粋がって恥ずかしい奴だと思っていたのか?
なぜ強いことを隠していた?
強敵を倒して俺たちが喜んでいるとき、あいつは何を考えていた?
考えても答えはわからない。
だがこれだけは言える。
あいつは俺を嘲笑っていた。
俺はあいつの手の上で転がされていた。
なら、俺がこれからやることは一つだ。
あいつに屈辱と絶望を味わわせてやる。
そして最終的には……。
「よし、やるか」
血がたぎる。体の奥底からメラメラと燃えるものを感じる。
俺は『新規メンバー募集』の紙を持ち、一人でギルドへ向かった。
やることは山ほどある。
目的を達成するため、まず初めにやることは新たにパーティを組むことだ。
最低人数の三人にするにはあと二人いる。俺のパーティは今一人だからな。
なぜかって? ルキシアとハウザーに追放されたからだ。
いや、あいつらが出て行ったというべきか。
まあいい。すぐにいい人材が見つかるだろう。
まぶたを閉じると死神が出てきて俺の心臓を掴んでくるような恐怖に襲われた。
この俺がビビっている。認められないがそれは事実だ。
じっとしてると俺を見下すあいつの顔が浮かんでむしゃくしゃした。
はらわたが煮えくり返りそうになる。
こんなに惨めな思いをしたのは初めてだ。
あいつは全く無能ではなかった。だが、それだけは認めるわけにはいかない。
あいつとはそこそこ付き合いが長い。
が、別に幼馴染というわけではない。
冒険者になるための戦闘訓練所に通っていた時に出会った。
そこでたまたま最初にペアを組んだのがあいつだったのだ。
俺は周りより体がでかく、力もあったため近寄りがたい印象を受けていただろう。
俺も慣れ合うつもりはなかったし弱い奴が嫌いだったから周囲を威圧していた。
だがリクトの野郎は全く恐れず俺についてきた。後にハウザーやルキシアとも親しくなり(表面上は)パーティを結成したというわけだ。
あいつはおかしな野郎だ。
平凡で目立たないくせに成績トップの俺に食らいついてきた。
俺はその姿勢にイラついて何度か訓練の域を超えてボコボコにしてやった。
必要以上に殴る蹴るの暴行を加え、何度も教官に止められた。
その時あいつなんて言ったと思う?
「さすがアーノルドだ。これなら魔王を倒せるかもしれないな」
血反吐吐きながらそう言いやがった。
あいつの目に憎しみや殺意なんてもんはこれっぽっちもなかった。
あいつは俺を尊敬し、仲間だと思い、友達だと思ってやがったんだ。
俺ははなから舎弟だとしか思ってなかった。
なのにあいつは俺の隣に立とうとしてきやがる。
対等でいようとしてきやがる。
気に食わねえ。
俺の方が上だ。俺が一番だ。
俺はあいつを荷物運びだとしか思ってねえ。
無能が俺と同じ土俵にいていいわけねえ。
俺は優越感に浸りたかった。
立場をわからせてやりたかった。
お前は弱者なんだと、わからせてやりたかった。
だから追放した。
それなのに、実際は俺が下だった。
雑魚だと思ってた奴が俺よりも上だった。
認めたくないがこれもやはり事実だ。こんなに屈辱的なことはない。
まさか俺が人前で地べたに這いつくばった挙句、泣きわめくことになるとは……。
自分に虫唾が走る。
そしてそれ以上にあいつに苛立ちを覚える。
あいつは心の中じゃ俺を笑っていたのか?
弱いくせに粋がって恥ずかしい奴だと思っていたのか?
なぜ強いことを隠していた?
強敵を倒して俺たちが喜んでいるとき、あいつは何を考えていた?
考えても答えはわからない。
だがこれだけは言える。
あいつは俺を嘲笑っていた。
俺はあいつの手の上で転がされていた。
なら、俺がこれからやることは一つだ。
あいつに屈辱と絶望を味わわせてやる。
そして最終的には……。
「よし、やるか」
血がたぎる。体の奥底からメラメラと燃えるものを感じる。
俺は『新規メンバー募集』の紙を持ち、一人でギルドへ向かった。
やることは山ほどある。
目的を達成するため、まず初めにやることは新たにパーティを組むことだ。
最低人数の三人にするにはあと二人いる。俺のパーティは今一人だからな。
なぜかって? ルキシアとハウザーに追放されたからだ。
いや、あいつらが出て行ったというべきか。
まあいい。すぐにいい人材が見つかるだろう。
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