追放された俺は「無能」だけでパーティ組んで魔王を討伐することにした。

チャコペン

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1章

14話 かつての仲間を救う?①

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 俺はフェンリィとの特訓を終え、死の洞窟から出ようと帰路についていた。

「ん? フェンリィ、何か聞こえないか?」
「え、私は何も聞こえませんよ」
「ちょっと、能力使ってみてくれ」
「わかりました」





「本当ですね。悲鳴のようなものが聞こえます」
「だよな。他の冒険者が挑みに来たが実力足らずで襲われたってところか」
「助けに行きますか?」
「そうだな。そうしよう」

 ここのモンスターたちはなぜか冒険者をすぐには殺さずいたぶる趣味がある。急げばまだ間に合うかもしれない。

「ナビ頼む」
「かしこまりました」

 俺は誘導に従って入り組んだ洞窟の中を走った。
 最短距離でトラップを回避しながら進んでいく。
 フェンリィもすっかり頼もしくなったな。




「いやああああああああああああ!!!」

「近いです」
「ああ、そうだな」

 悲鳴が鮮明に聞こえるようになった。声の主は女性。どこかで聞いたことあるような気もするが……。まあ行けばわかるか。

「フェンリィ、状況は?」
「おそらく大型の敵が三体。襲われているのも三人ですね。まだ生きています」
「そうか、戦闘の準備……はもうしてるか。さすがだな」
「いえ、お褒め頂き光栄です」

 このモードのフェンリィはマジでしっかりしている。
 戦闘以外なら多分俺よりも有能だ。

「気を付けてください。そこ曲がったら敵がいます」
「オッケー」

 俺は村で借りてきた鉄の剣を引き抜く。
 さて、どんなモンスターが相手か。

 目に飛び込んできたのは大きな蛇──が女の子の頭を咥えている場面だった。

「んんんん! んんんんんん!」

 女の子は必死に足をバタバタさせている。
 まだ辛うじて生きていた。

「大丈夫か? 待ってろ今助ける!」

≪反転≫

──────────
 名称:デス・サーペント
 体力:S → F
 物攻:S → F
 物防:S → F
 魔攻:A → E
 魔防:S → F
 魔力:B → D
 俊敏:A → E
──────────

 バシュッッッッ!!!

 さすが鉄の剣。豆腐みたいに首をぶった切れた。



「よし、ひとまず安心だ……なっ」

 引き起こしてやろうと思ったが俺は足を止めた。
 やはり予感は的中していたようだ。
 保険をかけておいてよかったかもしれない。

 まさかもう会うとはな。
 俺が助けた女はどうやら顔見知りのようで、よく知っている相手だった。

「ルキシアか?」
「な、ななな、なんでリクト、アンタがここに!? てか、え? 今のアンタがやったわけ!?」

 かつての仲間は俺と蛇の頭を交互に見て言った。

「そうだが? お前は随分無様にやられたようだな」

 腰が抜けて立てなくなっているルキシアを見下ろして言う。なんせコイツは俺に散々酒をぶっかけたあげく、何度も罵倒を浴びせながら殴ってきたからな。ちょっとぐらいいいだろう。

「……くっ、別に助けなんてなくたって私たちで倒せてたし。何勝手に救った気になってんのよ」
「それは余計なことをしてしまったな。悪かったよ。で、見たところお前も見捨てられたようだが?」
「ふん! 私から見捨ててやったのよ。アンタと同じようにね。どんな手使ったか知らないけど無能なアンタが倒せるなら私だって本気出せば一人で余裕よ!」

 助けてやったのに感謝もせずマウントを取ってくるか。
 ここまでくるといっそ清々しいな。

「昔みたいに可愛く泣いてお願いすればここを出るまでは助けてやるぞ? 俺は優しいからな」
「はっ! 調子に乗らないことね。アンタに何ができるって言うのよ。そっちこそもう一度仲間にしてくださいって泣いて土下座すれば許してあげるわよ」
「そうか、なら頑張れ」

 そう言って俺は三歩後ろに下がった。


『シーーーーー!』


 切り分けたはずの胴体から頭が再生し、デス・サーペントが蘇った。これが俺の保険。

「え? なに!? いやあああああああああああああああああああああ!!!」

 ルキシアの絶叫が響いた。
 デス・サーペントはルキシアの体をぐるぐる巻きにする。

「おいルキシア、今度は本当に食われるぞ。まあでも一人で大丈夫なんだよな。俺はここで食事シーンを見させてもらうよ」

 とは言ったがさすがに俺もそこまで鬼じゃない。ホントに食われたら助けてやろう。見捨てたらコイツらと同レベルだからな。でもちょっとぐらい懲らしめたって罰は当たらないだろ。

「ぎゃああああああああ! は、早く助けなさいよ!」

「おいおいルキシア、それが人にものを頼む態度か? てか頭が高いぞ。地面でも舐めてお願いしてみろよ」

「誰がアンタなんかに! あっ! やだこないでええええええ!!!」

 死んでも俺には頼りたくないみたいだな。
 俺そんなに嫌われることしただろうか。

「ぎゃああああああ!!! 気持ち悪いいいいいい!!!」

「これがラストチャンスだ。ちなみにそいつは噛まずに丸呑みするから腹の中で消化されるまでお前は苦しむことになるぞ」

「……ご、ごめんなさい!!! 私が悪かったです! 何でもします! だから助けてください! お願いしま、すうううううううううううう!!!!!!」

 ズバッッッ!!!

 胴体を十個に切り分けてやった。
 これで再生することはない。



「大丈夫かルキシア」

 今度はしっかり手を差し伸べる。
 まあ及第点だ。惨めったらしく泣き喚くところも見れたしな。
 十分復讐になっただろう。

「……ありがと」

 すると素直に返事を言ってきた。
 これは俺のよく知ってる方の顔と声だ。
 内気で大人しいオーラを纏っている。
 だからどうってことはないが。

「別に構わねえよ」

 俺は強引に引き起こして立たせる。
 もう慣れ合うつもりもないからな。

「リクトくん、私たちやり直せないかな?」

 だがこの女は甘ったるい声でそう言うと俺の腕にしがみついてきた。
 フェンリィよりも大きなそれを俺に押し付けてくる。

「私気づいたの。リクトくんのこと好きだって」

 あざと過ぎるぐらいの上目遣いで俺の瞳を見つめると、目を潤ませて唇を微かに突き出した。
 やれやれ、俺にそういうのは通じんぞ。

「はぁ、おいルキシア、化粧は顔だけにしとけよ」

 俺は容赦なく言い放った。

「は、はあああああ!? け、化粧って! 調子乗ってんじゃないわよ! せっかく私がここまで言ってやったのよ!?」

 俺の言葉にルキシアは本性むき出しで切れ散らかす。
 まあ当然演技だよな。

「お前は勘違いしてないか? 別に俺はお前のことなんてこれっぽっちも思ってないぞ。どうせ俺をうまく使ってなんか企んでるんだろ。お前のわざとらしい笑顔には騙されねえよ」

「きいいいいい! 許さない! いくら演技とはいえ私を振るなんて! こんな屈辱的なことはないわ!」

 全くうるさい奴だ。

「そんなに私の魅力がわからないなら教えてあげるわ!」
「な、なにムキになってんだよ。くるな鬱陶しい」

 俺は飛び掛かってくるルキシアを全力で阻止する。
 何を教えるって言うんだ。

「ふっふっふ! やっぱりリクト様には私しかいないんですよ!」

 俺たちが争っていると今まで黙って見ていたフェンリィが入ってきた。

「な、なによこのチンチクリン」
「リクト様の嫁です! それにチンチクリンじゃないです! あなたのと違って私のは天然物です!」
「な、なな何言ってるのかしらこの子。あ、頭がおかしいのかしら」
「リクト様、こんな女に騙されちゃだめですよ」
「お、おうそうか」

 ちょっと何の話かわからないけど頷いておこう。

「そんなことより残りの二人はどうした?」

 ルキシアがいるということはアーノルドとハウザーもいるはず。

「あんな奴らほっといていいのよ。早く私を無事に送り届けなさい」
「ホントに顔も心も汚れた人ですね! だからリクト様に捨てられるんですよ!」
「あ!? おいごらテメェもういっぺん言ってみろや。ブチ殺すぞ! てか捨てたのは私なんだよ!」

 二人は取っ組み合いを始めたがこんなことしてる暇はない。
 俺を見捨てたとはいえさすがに見殺しにはできん。
 一応あいつらも助けてやろうと思う。
 ……俺も甘いな。

「やめろってフェンリィ」
「にゃっ!」

 猫の首を掴むようにフェンリィを大人しくさせる。

「ルキシアもだ。てかさっきから気になってたんだがなんでお前全身びしょ濡れなんだ? 頭は食われてたからだと思うがなんかあったのか? 水属性の敵はいないはずだが」

 俺がそう言うとルキシアはみるみる顔を赤くした。
 その様子だけは自然で女の子らしいと思う。

「え、リクト様わかってて言わなかったんじゃないんですか? これはあれですよ。私も経験あるのであんまりバカにできないのですが────」

「ぎゃあああああああああああああ!!!!!!!」

 ルキシアは奇声を上げて全速力で逃げて行った。
 よくわからんが大事なことなのだろう。

「多分あっちの方にも敵がいる。あとを追おう」
「はい! 私あの人可哀想なんで助けてあげたいです」
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