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舞踏会当日
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アリシアside
結局、エマがあれから帰って来ても、私には何も言わなかった。
ドレスも王妃様とお揃いの色のドレスのまま
考えあっての事でしょうけど、私にも教えて欲しいわ。
何度となく
「どうなったのかしら?」
「ご安心ください、全て問題なく、進んでおりますので」
の一点張りですもの。
好きになさいとは言っても、教えなくて良いとは言ってないわよ、エマ
そんな事をおもいながら、刻一刻と時間が過ぎていった。
ドレスに合わせた髪型に装飾品、エマは念入りに準備を進めていた。
正式な社交界前の舞踏会は小規模な物とはいえ、各家を背負う事に変わりはない。
入力な準備が行われる。
そして……舞踏会の時刻に
コンコン……「失礼する、アルフレッド・ジュール、アリシア嬢のエスコートの為、お迎えに上がりました」
舞踏会用の正装ではなく、騎士としての正装で来たアルフレッドはアリシアの前で、膝まづいて礼をとった。
「よろしくお願いします、アルフレッド様」
「アルフレッド様、アリシア様をお願い致します、私も付き添いますが」
婚約者の居ない令嬢は、成人を迎えるまで、たとえ社交界デビューを果たしても付き添いを同行させる事を常としている。
婚約者が居る場合は婚約者と同行する事になる。
エマもアリシアの付き添いとして、舞踏会に参加する。
エマもアリシア同様にドレスに身を包み、髪飾りを付けるなどしているが、どうしても瓶底メガネに負けてしまう。
すごく、目立っていた。
「エ、エマ……さすがに舞踏会ではその、瓶底メガネはしない方が……」
アリシアの言葉にエマは首を横に振った。
「メガネがないと身動きが取れなくなりますので、さすがに外す事は出来ません」
それはそうだけど……
「ありがとうございます、そのお気持ちだけで充分です」
「エマ……」
ほんの少し、エマの素顔を見れるチャンスと思ったけど、そう言われてはこれ以上言えないわね。
「そうでした、お嬢様に奥様から言伝がございます。これから本格的に社交界デビューを果たすのだから、今回の舞踏会はいい学びの場にもなると、私や他の方々の行動や仕草、これ程実地で学べる機会はそうそうないと、逢瀬を覗きに行くのではなく、今回はそう言った行動を観察なさいとのことでございます」
(さすがお母さま、釘のさし方が上手だこと……)
そうして、全ての準備が整い、私はアルフレッドのエスコートされながら、会場に向かった。
舞踏会が行われる空夜宮は、天井一面をガラス張りで覆われている為、空の情景を室内にいて感じる事が出来る場所だった。
室内の1つ1つに拘り、ガラスの縁まで綿密な計算の元、空の情景を更に美しくする細工が施されていた。
ここは王妃様の発案から作られた宮で、毎回舞踏会や様々な催しに使われていた。
「ここが、空夜宮なのね、お母様達からお話は伺っていたけど、実際に見るともっと美しいのね」
アリシアはエスコートされながら、宮の美しさにため息を漏らした。
それはアリシアだけではなく、多くの参加者が同様のため息を漏らしていた。
そんな中でも、エマの瓶底メガも異彩を放っていたが、本人は気にする事なくアリシアに付き添っていた。
そして、同じ位目立つのはアリシアのドレスだった。
Aラインのドレスに幾重にもチュール生地を重ね、歩く度にドレスの裾がふわりと浮くように細かい細工がされた赤いドレスに人の視線が集まっていた。
王妃様と同じ赤いドレスに……
集まった人達が、次々と案内されていき……
「アルクレー伯爵令嬢アリシア様、お付の方マルシー子爵令嬢エマ様!」
名前を呼ばれエスコートされながら会場に足を運ぶと、先に案内されていた貴族方々が待っていた。
そんな中、王妃様は赤いドレスを見にまとい、にこやかな笑みを浮かべながら私達を眺めていた。
優雅に腰掛ける王妃様の周りには招待されていた、貴族の方々や不安げな表情を浮かべながら、騎士に寄り添われている黒髪の少女がいた。
(あの方が異世界の方かしら?)
王妃様に挨拶を済ませ、少し離れた場所に立っていても、人々の視線を集めていた。
口には出さないが、王妃様と同じ色のドレスを着ているのは、どうあがいてもマナー違反に当たる。
楽しそうな表情を浮かべるもの、扇子で口元を隠しながら、せせら笑いもの。すぐさま、状況を判断したのか、あきれた表情を浮かべるものと様々な反応をしていた。
そんな中王妃は気にする様子もなく、立ち上がった。
「今宵はよき星空、この舞踏会に花を添えてくれるであろう、そして今宵は異世界より客人を招いている。環境や文化の違いもあるそうだ、慣れぬことも多いやもしれぬが、客人として誠意をもって対応してほしい、さあ……」
王妃に促されるように、黒髪の少女は緊張した面持ちで皆の前にたった。
「は、はじめまして、えっと、その、ユイ・キノサキと言います、よろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げると、すぐに騎士の傍に戻っていった。
「ユイ殿は、年齢が14歳と聞いている、こちらの手違いとは言え、巻き込んでしまったのも事実。戻るまでの間、年齢の近い者たちと少しでも交流を深められたら、少しは気も晴れるであろう、ゆえにそなた達には協力してほしい」
王妃様の言葉に反論する者などいるわけもなく、異世界の少女は受け入れられた。
「そうそう、今宵の舞踏会には私の甥も参加するいゆえ、紹介しよう。イリス……」
呼ばれて出てきたのは、銀髪の髪に青い瞳に優し気な顔立ちの方だった。
「無理を言って伯母上に参加させていただきました、イリス・サーシル・べリウスです、お見知りおきを」
イリスの挨拶のあと、王妃様が立ち上がり、楽し気な表情を浮かべ
「そうそう、今宵の舞踏会では少し面白い余興を考えていたが、イリスも参加すると少し余興を変えてな、今宵私のドレスと同じ色のドレスを着た者とだけ、イリスとダンスを踊れる権利を与える、事前に連絡でランダムに一人だけ、ドレス指定を変えてある、たまにはそんな余興もよいであろう」
アリシアside
結局、エマがあれから帰って来ても、私には何も言わなかった。
ドレスも王妃様とお揃いの色のドレスのまま
考えあっての事でしょうけど、私にも教えて欲しいわ。
何度となく
「どうなったのかしら?」
「ご安心ください、全て問題なく、進んでおりますので」
の一点張りですもの。
好きになさいとは言っても、教えなくて良いとは言ってないわよ、エマ
そんな事をおもいながら、刻一刻と時間が過ぎていった。
ドレスに合わせた髪型に装飾品、エマは念入りに準備を進めていた。
正式な社交界前の舞踏会は小規模な物とはいえ、各家を背負う事に変わりはない。
入力な準備が行われる。
そして……舞踏会の時刻に
コンコン……「失礼する、アルフレッド・ジュール、アリシア嬢のエスコートの為、お迎えに上がりました」
舞踏会用の正装ではなく、騎士としての正装で来たアルフレッドはアリシアの前で、膝まづいて礼をとった。
「よろしくお願いします、アルフレッド様」
「アルフレッド様、アリシア様をお願い致します、私も付き添いますが」
婚約者の居ない令嬢は、成人を迎えるまで、たとえ社交界デビューを果たしても付き添いを同行させる事を常としている。
婚約者が居る場合は婚約者と同行する事になる。
エマもアリシアの付き添いとして、舞踏会に参加する。
エマもアリシア同様にドレスに身を包み、髪飾りを付けるなどしているが、どうしても瓶底メガネに負けてしまう。
すごく、目立っていた。
「エ、エマ……さすがに舞踏会ではその、瓶底メガネはしない方が……」
アリシアの言葉にエマは首を横に振った。
「メガネがないと身動きが取れなくなりますので、さすがに外す事は出来ません」
それはそうだけど……
「ありがとうございます、そのお気持ちだけで充分です」
「エマ……」
ほんの少し、エマの素顔を見れるチャンスと思ったけど、そう言われてはこれ以上言えないわね。
「そうでした、お嬢様に奥様から言伝がございます。これから本格的に社交界デビューを果たすのだから、今回の舞踏会はいい学びの場にもなると、私や他の方々の行動や仕草、これ程実地で学べる機会はそうそうないと、逢瀬を覗きに行くのではなく、今回はそう言った行動を観察なさいとのことでございます」
(さすがお母さま、釘のさし方が上手だこと……)
そうして、全ての準備が整い、私はアルフレッドのエスコートされながら、会場に向かった。
舞踏会が行われる空夜宮は、天井一面をガラス張りで覆われている為、空の情景を室内にいて感じる事が出来る場所だった。
室内の1つ1つに拘り、ガラスの縁まで綿密な計算の元、空の情景を更に美しくする細工が施されていた。
ここは王妃様の発案から作られた宮で、毎回舞踏会や様々な催しに使われていた。
「ここが、空夜宮なのね、お母様達からお話は伺っていたけど、実際に見るともっと美しいのね」
アリシアはエスコートされながら、宮の美しさにため息を漏らした。
それはアリシアだけではなく、多くの参加者が同様のため息を漏らしていた。
そんな中でも、エマの瓶底メガも異彩を放っていたが、本人は気にする事なくアリシアに付き添っていた。
そして、同じ位目立つのはアリシアのドレスだった。
Aラインのドレスに幾重にもチュール生地を重ね、歩く度にドレスの裾がふわりと浮くように細かい細工がされた赤いドレスに人の視線が集まっていた。
王妃様と同じ赤いドレスに……
集まった人達が、次々と案内されていき……
「アルクレー伯爵令嬢アリシア様、お付の方マルシー子爵令嬢エマ様!」
名前を呼ばれエスコートされながら会場に足を運ぶと、先に案内されていた貴族方々が待っていた。
そんな中、王妃様は赤いドレスを見にまとい、にこやかな笑みを浮かべながら私達を眺めていた。
優雅に腰掛ける王妃様の周りには招待されていた、貴族の方々や不安げな表情を浮かべながら、騎士に寄り添われている黒髪の少女がいた。
(あの方が異世界の方かしら?)
王妃様に挨拶を済ませ、少し離れた場所に立っていても、人々の視線を集めていた。
口には出さないが、王妃様と同じ色のドレスを着ているのは、どうあがいてもマナー違反に当たる。
楽しそうな表情を浮かべるもの、扇子で口元を隠しながら、せせら笑いもの。すぐさま、状況を判断したのか、あきれた表情を浮かべるものと様々な反応をしていた。
そんな中王妃は気にする様子もなく、立ち上がった。
「今宵はよき星空、この舞踏会に花を添えてくれるであろう、そして今宵は異世界より客人を招いている。環境や文化の違いもあるそうだ、慣れぬことも多いやもしれぬが、客人として誠意をもって対応してほしい、さあ……」
王妃に促されるように、黒髪の少女は緊張した面持ちで皆の前にたった。
「は、はじめまして、えっと、その、ユイ・キノサキと言います、よろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げると、すぐに騎士の傍に戻っていった。
「ユイ殿は、年齢が14歳と聞いている、こちらの手違いとは言え、巻き込んでしまったのも事実。戻るまでの間、年齢の近い者たちと少しでも交流を深められたら、少しは気も晴れるであろう、ゆえにそなた達には協力してほしい」
王妃様の言葉に反論する者などいるわけもなく、異世界の少女は受け入れられた。
「そうそう、今宵の舞踏会には私の甥も参加するいゆえ、紹介しよう。イリス……」
呼ばれて出てきたのは、銀髪の髪に青い瞳に優し気な顔立ちの方だった。
「無理を言って伯母上に参加させていただきました、イリス・サーシル・べリウスです、お見知りおきを」
イリスの挨拶のあと、王妃様が立ち上がり、楽し気な表情を浮かべ
「そうそう、今宵の舞踏会では少し面白い余興を考えていたが、イリスも参加すると少し余興を変えてな、今宵私のドレスと同じ色のドレスを着た者とだけ、イリスとダンスを踊れる権利を与える、事前に連絡でランダムに一人だけ、ドレス指定を変えてある、たまにはそんな余興もよいであろう」
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