19 / 21
舞踏会前夜
しおりを挟む**********************
アリシアside
入れ替わりに来たのは、幼なじみでもあるアルフレッドだった。
「失礼する、エマ嬢は居られるか?」
アルフレッドは騎士団に所属しており、今では第一王子の近衛を務めるほどになっていた。
(でも、私の中ではいつまでも泣き虫アルフレッドなのよね)
その事を思い出したのか、アリシアはクスクス笑い始めた。
アリシアの様子に直ぐに自分の事で笑っていると気づいたのか、バツの悪そうな表情を浮かべた。
「おい、また過去の事思い出していただろ、いい加減やめてくれよ、恥ずかしいだろ」
「あら、それは仕方がありませんわ、幼なじみですもの」
「たく、それよりエマ嬢は? 」
周りを見回しながら、軽く髪を手で撫で付ける。
「 残念ながらここにはおりませんわ」
「残念じゃない、たく……」
本当に素直になればよろしいのに……
エマの事が好きな事なんて、皆知ってますのに、エマを除いてですけど
「はあ、ならエマ嬢に伝えて欲しい。明日の舞踏会のエスコートは俺が務めると」
「まあ、アルフレッドが? 」
「ああ、王妃様からの指名があってな、もちろん、護衛も兼ねてる」
なるほど、王妃様もアルフレッドの恋路は知っていますものね、護衛を兼ねた恋路の応援と言うことですわね。
多分……面白いからではないと思いたいですわ。
舞踏会での事を確認している最中、用事が終わったエマが戻って来た。
「ただいま戻りした、お嬢様」
「おかえりなさい、アルフレッドが来ていましてよ」
「お久しぶりです、エマ殿……この度は王妃様より、舞踏会のパートナー兼護衛にえらばれましたので、ご挨拶に」
礼儀正しく挨拶をする様子に笑みを深めながらうなづいた。
「ええ、聞いております、アリシア様のパートナーの件ですね、護衛含めお願いしますね、でもアルフレッド様でしたら安心しておまかせできます」
そうでしたわ、舞踏会のパートナーは私。
護衛はともかく、今回の目的は私達と王子様との顔合わせ。
チラッ幼なじみに視線を向けると、表情にこそ出してはいなかったが、明らかに落ち込んでいた。
(あらま、王妃様が多少湾曲して伝えた可能性はありますけど、アルフレッドもさすがに可笑しいと思わなかったのかしら? まあエマをエスコート出来ると思い込んで浮かれて居たのかもしれないわね)
(そんな事を考えながらエマに視線を向けると、王妃様が多少湾曲して伝えたと気づいているのか、小さくため息を吐いた。)
(前から不思議に思っていたけど、エマと王妃様との繋がり……エマも貴族の出とはいえ、ここまで親密かしら? 令嬢ならば王妃様主催の茶会に出れるけど、ここまで親しいかしら? )
普段からエマには不思議な所がいっぱいある、1つはもちろん決して外さない瓶底メガネ……
(瓶底メガネはいつか外させましょう、ええ)
そんな事を考えていると、エマとアルフレッドはいつの間にか明日の舞踏会の話を進めていた。
「では、よろしくお願いしますね、アルフレッド、王妃様経由で連絡があったとは思いますが、くれぐれもアリシア様を守ってくださいね、そして決して、1人にさせてはなりません」
「はい、聞いておりますゆえ、全力で職務に当たります! ご安心ください、必ず側にいますので、けっしてフラフラと覗きには行かせません」
付き合いが長いと、アリシアの行動は読めてくる、フラフラさせたら必ず覗きに行くのが明確なのだ。
アルフレッドはアルフレッドで、エマに頼って貰えるのが嬉しいのか、張り切っていた。
(甘いですわ、必ずや抜け出して見せますわ、ふふ楽しみですわね~)
本来の目的とどんどんズレ始めたが、アリシアの普段の行動を考えると自然な流れだった。
そして、一夜明け舞踏会当日に………
11
お気に入りに追加
242
あなたにおすすめの小説

私モブだけどヒロインの代わりに逆ハーして世界を救ったら、最推しと恋愛しても良いよね!
時雨 秋燈
恋愛
ある日、突然自分が大好きな乙女ゲームの世界に転生した事に気がついた私。
だけど、ゲームの中の私はヒロインでも悪役令嬢でも無くて只のモブ。
でも、全然残念じゃないんです。
だって私の最推しはサポキャラだったんですもの!
特等席でゲームも見れて、実際に最推しと恋愛出来る可能性が有るなんて超最高と思ってました……
それなのに、待てど暮らせどヒロインが来ない!
ヒロインが逆ハーしないと王国が滅びる世界でその事を知っているのは私だけ。
え、代わりに私が逆ハーするしかないんですか?
平凡なモブ令嬢が王国を救う為に攻略対象のイケメンを救ったり、悪役令嬢と戦ったり、王国の秘密を知ってしまったり……つまりは全力の逆ハーからの最推しとラブラブを目指す、これはそんな物語。
※小説家になろう様にも投稿させて頂いております。

私はモブ嬢
愛莉
恋愛
レイン・ラグナードは思い出した。
この世界は前世で攻略したゲーム「煌めく世界であなたと」の世界だと!
私はなんと!モブだった!!
生徒Aという役もない存在。
可愛いヒロインでも麗しい悪役令嬢でもない。。
ヒロインと悪役令嬢は今日も元気に喧嘩をしておられます。
遠目でお二人を眺める私の隣には何故貴方がいらっしゃるの?第二王子。。
ちょ!私はモブなの!巻き込まないでぇ!!!!!

転生した世界のイケメンが怖い
祐月
恋愛
わたしの通う学院では、近頃毎日のように喜劇が繰り広げられている。
第二皇子殿下を含む学院で人気の美形子息達がこぞって一人の子爵令嬢に愛を囁き、殿下の婚約者の公爵令嬢が諌めては返り討ちにあうという、わたしにはどこかで見覚えのある光景だ。
わたし以外の皆が口を揃えて言う。彼らはものすごい美形だと。
でもわたしは彼らが怖い。
わたしの目には彼らは同じ人間には見えない。
彼らはどこからどう見ても、女児向けアニメキャラクターショーの着ぐるみだった。
2024/10/06 IF追加
小説を読もう!にも掲載しています。

女性の少ない異世界に生まれ変わったら
Azuki
恋愛
高校に登校している途中、道路に飛び出した子供を助ける形でトラックに轢かれてそのまま意識を失った私。
目を覚ますと、私はベッドに寝ていて、目の前にも周りにもイケメン、イケメン、イケメンだらけーーー!?
なんと私は幼女に生まれ変わっており、しかもお嬢様だった!!
ーーやった〜!勝ち組人生来た〜〜〜!!!
そう、心の中で思いっきり歓喜していた私だけど、この世界はとんでもない世界で・・・!?
これは、女性が圧倒的に少ない異世界に転生した私が、家族や周りから溺愛されながら様々な問題を解決して、更に溺愛されていく物語。

執着系逆ハー乙女ゲームに転生したみたいだけど強ヒロインなら問題ない、よね?
陽海
恋愛
乙女ゲームのヒロインに転生したと気が付いたローズ・アメリア。
この乙女ゲームは攻略対象たちの執着がすごい逆ハーレムものの乙女ゲームだったはず。だけど肝心の執着の度合いが分からない。
執着逆ハーから身を守るために剣術や魔法を学ぶことにしたローズだったが、乙女ゲーム開始前からどんどん攻略対象たちに会ってしまう。最初こそ普通だけど少しずつ執着の兆しが見え始め......
剣術や魔法も最強、筋トレもする、そんな強ヒロインなら逆ハーにはならないと思っているローズは自分の行動がシナリオを変えてますます執着の度合いを釣り上げていることに気がつかない。
本編完結。マルチエンディング、おまけ話更新中です。
小説家になろう様でも掲載中です。

悪役令嬢、第四王子と結婚します!
水魔沙希
恋愛
私・フローディア・フランソワーズには前世の記憶があります。定番の乙女ゲームの悪役転生というものです。私に残された道はただ一つ。破滅フラグを立てない事!それには、手っ取り早く同じく悪役キャラになってしまう第四王子を何とかして、私の手中にして、シナリオブレイクします!
小説家になろう様にも、書き起こしております。

モブに転生したので前世の好みで選んだモブに求婚しても良いよね?
狗沙萌稚
恋愛
乙女ゲーム大好き!漫画大好き!な普通の平凡の女子大生、水野幸子はなんと大好きだった乙女ゲームの世界に転生?!
悪役令嬢だったらどうしよう〜!!
……あっ、ただのモブですか。
いや、良いんですけどね…婚約破棄とか断罪されたりとか嫌だから……。
じゃあヒロインでも悪役令嬢でもないなら
乙女ゲームのキャラとは関係無いモブ君にアタックしても良いですよね?

転生したら乙ゲーのモブでした
おかる
恋愛
主人公の転生先は何の因果か前世で妹が嵌っていた乙女ゲームの世界のモブ。
登場人物たちと距離をとりつつ学園生活を送っていたけど気づけばヒロインの残念な場面を見てしまったりとなんだかんだと物語に巻き込まれてしまう。
主人公が普通の生活を取り戻すために奮闘する物語です
本作はなろう様でも公開しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる