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番外編
星に願いを 6
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「やってしまった・・・」
乱れに乱れきって何がなんだか分からなくなった夜が明け、爽やかな潮風が部屋にそよぐ昼下がりになってからようやく意識を取り戻した私は深く落ち込んだ。
いつの間に眠ったんだろう?それすら覚えていない。とにかく、体力の限界を迎えてこんなお昼過ぎまで寝こけてしまっていた。
・・・まあ、それ自体はシェラさんとの休暇に限らず他の三人の時にもあったと言えばあったことだ。
ただ、今回の問題は。
「・・・なんであんな、魔道具・・・っ!」
ベッドの上で体育座りをしたまま恥ずかしさに膝の間に顔を埋める。あんな、あんな、・・・まるで大人のおもちゃみたいなもの!
そんなの魔導士であるあのシグウェルさんですら出してこなかったのに。なぜそれを騎士のシェラさんが使うのか。
凄かった。初めて感じる刺激の強さに本当に訳が分からなくなった。後半は声を出し過ぎたのとイキ過ぎたせいで体力の限界を迎えイリューディアさんの回復力を使って何度も体が淡く光っていたような気がする。
うう、としばらくの間は顔を赤くして落ち込んでいたけどやがてハッと気付く。
こうしちゃいられない、シェラさんのいない今のうちにあの魔道具を探し出して処分してしまおう!
ベッドは綺麗に整えられ、私も身綺麗になって新しい部屋着に身を包んでいる。
恐らく私が眠っている間にシェラさんが綺麗にしてくれたんだろうけど、きっとあの魔道具も綺麗にしてどこかにしまってあるに違いない。
確か昨日の夜はベッドサイドに手を伸ばしていたような、とベッドサイドに備え付けのランプ台にある引き出しを開けてみれば、隠すでもなく堂々とそれはあった。
柔らかな布の上に鎮座する小指の先ほどの大きさの、小さな茶色い壺。間違いない。
「これだ・・・!」
明るい昼間に見るそれは何の変哲もない陶器に見えるけど、だけど・・・。
思わず昨日の夜のことを思い出してまた赤面し、じわりとお腹の奥が疼いた。いやいや、ダメだって!
「こんな危ない物・・・‼︎」
ガッとそれを掴むと大きく開け放たれていたガラス戸の向こうのバルコニーへと走る。この部屋は無人島に建つ館の最上階だ。
「飛んでけーっ・・・!」
そのままバルコニーから思い切りそれをぶん投げれば、非力な私の力でも放物線を描いた飛んで行ったそれは、何とか眼下に広がる無人島の鬱蒼とした森の中のどこかへと消えていった。
「良かった、悪は滅びた・・・」
ほっとした直後、背後から
「ユーリ様?何をしておられるんですか?」
シェラさんの声がかかった。
「ひゃあ‼︎」
「お目覚めになられたのでしたらお食事をどうぞ。すぐにつまめる軽食を準備していますよ。」
そう言いながらシェラさんは、森の中に壺を放り投げた直後の私の姿とベッドサイドの引き出しが開いている様子にサッと目を走らせた。
「・・・ああ、なるほど」
たったそれだけで私が何をしたのか悟ったらしい。それなのに怒るでもなくにんまりと色っぽく微笑んだ。
「お、怒らないんですか?」
あのとんでもない魔道具、何回も試行錯誤して作らせたって言っていた。失くしたらてっきり怒るかガッカリすると思ったんだけど。
恐る恐る聞けば
「良心を痛めて罪悪感に苛なまれているご様子もまた、抱きしめたくなるほど愛らしいですが・・・ユーリ様のなさる事にオレが怒るなどありませんよ。」
と肩をすくめている。
「それにこのオレが予備の一つも作らないでいると思いますか?」
「・・・‼︎」
た、確かに。私に関する事は何ごとにも用意周到なシェラさんだ、紛失したり壊れた時に備えて予備くらい持っていそう。
そう青くなった私を見て、シェラさんはまた一つ笑みをこぼした。
「まあそれは冗談として。オレとしてはユーリ様のあれほど乱れたお姿を見られたことに満足しておりますし。それに、オレの手よりも道具の方がずっと気持ち良いと思われるのもイヤですので、無ければないでもいいんですよ。」
「はぁ。・・・え?」
まさか自分で作ったくせにそれに対する私の反応を見て魔道具にまで嫉妬したの?
予想外の答えに呆気に取られたけど、一度使って満足して、もうアレに執着していないと言うのならそれに越したことはない。
「良かったぁ」
もうアレを使われる事はないらしいと分かってホッとしたら
「とはいえ」
シェラさんは言葉を続けた。
「オレに少しは悪いと思われたようですし、どうせならその罪悪感を消すためにオレのお願いを一つ聞いてくださいませんか?」
「・・・はい?」
「まあこの話の続きはまた夜にでも。それよりも、お食事をどうぞ。昨晩はそのお身体がイリューディア神様の御力で体力を回復するために何度も淡く光り輝く様子がそれはもう美しかったのですが、それだけに魔力と体力も消耗しておられるでしょう?どうぞたくさん食べて寝て、ゆっくり休んでください。」
うやうやしくお辞儀をしたシェラさんが、簡単につまめる様々な軽食が所狭しと並べられたテーブルの椅子を引く。
「だっ、誰のせいだと思ってるんですか・・・!」
昨日の夜の痴態を思い出し、恥ずかしさに頬を染めて誤魔化すように文句を言いながら椅子に座れば
「さて、誰のせいでしょうね?」
うそぶいたシェラさんは素知らぬ顔で微笑んでいる。
そんなやり取りをしていたおかげで、シェラさんのお願いごとって何だろう?なんて事がすっかり頭から抜け落ちたまま私は遅い昼食を取ったのだった。
そしてそんな昼間の出来事を思い出したのは、その夜の寝室のベッドの上だ。
「抱いてくださいユーリ様」
ベッドの端に腰掛けて、その上に対面座位のように私を向かい合わせで座らせたシェラさんはおもむろにそんな事を言った。
「抱い・・・?」
何を言われたのか一瞬良く分からなくなって反芻してしまった。抱きますよ、じゃなくて?
「ええ、そうです。」
膝の上に座らせた私が逃げないようにしっかりと腰を支えているシェラさんの手がそのまますり、と薄手の夜着の上から腰を撫でた。
そのまま私の胸元に甘えるように頭を埋めたシェラさんは続ける。
「オレがせっかく作らせた魔道具・・・職人達の努力の賜物を無人島のこの広い森林の中に投げ捨ててしまったのを少しでも悪いと思うのなら、オレのお願いを聞いてくださいますよね?」
そんなことを言う。
「え、あの・・・」
その罪滅ぼし的なお願いが、なんで『抱いてください』なわけ?さっぱり意味が分からない。
だけどなおもシェラさんは私の胸にふかふかと頭を擦り寄せるようにしながら抱きしめたまま続けた。
「オレの女神がこの手の中に堕ちてくれたのは勿論この上なく嬉しく・・・心が震える思いです。当然、この身も心も惜しみなく捧げることに異論はないのですが、ぜひそんなオレに女神の愛を、ユーリ様自ら与えていただきたいのです。」
えーと、つまりそれが『オレを抱いて』に繋がるってこと?
そう問いたげに見つめれば、胸元から顔を上げたシェラさんはにっこり微笑んでその手を私の腰から肩へと移した。
そしてそのまま勢いよく、腰掛けていたベッドの上へ仰向けに寝転がる。
「ちょっとシェラさん⁉︎」
私も肩を引かれてその勢いのままシェラさんの上に倒れ込みそうになり、間一髪その両脇に手をついてかろうじて倒れるのを防いだ。
危ない、いきなり何するの⁉︎
そう思ってキッとシェラさんを叱るために見つめて気付く。
・・・この体勢って、まるで私がシェラさんを押し倒しているみたいじゃない?
私の下のシェラさんは、ゆるく羽織っていたバスローブの片方の肩がはだけてずり落ち、上半身が半裸に近くなっている。
「さあどうぞユーリ様」
そのまま色っぽく誘うように微笑まれたのでウッと息を呑んで赤くなってしまった。
「どどど、どうぞと言われても!」
何をどうしろと言うのか。
「いつもの逆ですよ。ご自分がいつもされていることを思い出して、それをオレにしてくれればいいんです。」
「ええ・・・」
いつもされてる事?シェラさんに促されて、その色っぽい雰囲気に呑まれたからなのか断ることも忘れてつい真面目に考えてしまった。
いつもされてる事と言われても、キスをされているうちに頭がふわふわしてきて、その後はもうされるがままなんですけど・・・。
「えっと、じゃあ・・・」
とりあえずその微笑みを形作っている唇にそっと口付ける。
何度か軽い口付けをくり返し、段々とそれが深いものに変わっていくとベッドの上に投げ出してあったシェラさんの両手は唇が離れるのを拒むように自然と私の両頬に添えられていた。
「ん・・・、ふ、ぁ・・・」
ちゅく、と音を立ててお互いの唇が離れてやっと大きく息を一つつくと私の下でシェラさんが
「・・・それから?次はどうしていただけますか?」
まるでいたずらを楽しむように目を細めた。
くっ・・・人のことをからかって・・・!
ついムキになって、シェラさんの誘いに乗ってしまう。
確かいつもみんなには首筋とかあちこちに強く吸い付かれてキスマークを残されたりしてるから・・・と、ちゅ、ちゅ、とその唇の側や整ったフェイスラインに口付けながら少しずつ下の方へとその位置をずらしていく。
そうすれば僅かにシェラさんがふ、と甘い息を漏らしたような気がしてそのまま勢いに乗って鎖骨の辺りにも口付けた。
・・・そういえばいつも余裕がなくて今までは私の方から誰にもその口付けの跡を残すように強く吸い付いたことがない。
はたとそれに気付いてしまい、「こ、こんな感じかな?」と私なりに強く吸い付いてみた。
きゅうっ、と頑張って強く口付けて唇を離し、その跡を確かめる。
あ、あれ?何も残ってない。
おかしいな、シェラさんて見た目以上に意外としっかりした体つきだから吸い付き方が弱かったのか、それとも口付けた場所が悪かったのか。
違うところに口付けたらどうだろう?とキスマークを残すために必死でシェラさんの鎖骨の下や胸元、もう一度上の方に戻って首筋などに口付けていた。
すると突然私の頭の上から
「・・・ふっ、くく・・・」
甘い吐息を漏らすどころかシェラさんの堪えきれない笑い声が漏れてきた。
「⁉︎」
その顔を見つめれば、なんとシェラさんはあの金色の瞳に僅かに涙を滲ませてまで笑っていた。
「くすぐったいですユーリ様」
ええ・・・?人がこんなに必死で頑張ってるのに?
乱れに乱れきって何がなんだか分からなくなった夜が明け、爽やかな潮風が部屋にそよぐ昼下がりになってからようやく意識を取り戻した私は深く落ち込んだ。
いつの間に眠ったんだろう?それすら覚えていない。とにかく、体力の限界を迎えてこんなお昼過ぎまで寝こけてしまっていた。
・・・まあ、それ自体はシェラさんとの休暇に限らず他の三人の時にもあったと言えばあったことだ。
ただ、今回の問題は。
「・・・なんであんな、魔道具・・・っ!」
ベッドの上で体育座りをしたまま恥ずかしさに膝の間に顔を埋める。あんな、あんな、・・・まるで大人のおもちゃみたいなもの!
そんなの魔導士であるあのシグウェルさんですら出してこなかったのに。なぜそれを騎士のシェラさんが使うのか。
凄かった。初めて感じる刺激の強さに本当に訳が分からなくなった。後半は声を出し過ぎたのとイキ過ぎたせいで体力の限界を迎えイリューディアさんの回復力を使って何度も体が淡く光っていたような気がする。
うう、としばらくの間は顔を赤くして落ち込んでいたけどやがてハッと気付く。
こうしちゃいられない、シェラさんのいない今のうちにあの魔道具を探し出して処分してしまおう!
ベッドは綺麗に整えられ、私も身綺麗になって新しい部屋着に身を包んでいる。
恐らく私が眠っている間にシェラさんが綺麗にしてくれたんだろうけど、きっとあの魔道具も綺麗にしてどこかにしまってあるに違いない。
確か昨日の夜はベッドサイドに手を伸ばしていたような、とベッドサイドに備え付けのランプ台にある引き出しを開けてみれば、隠すでもなく堂々とそれはあった。
柔らかな布の上に鎮座する小指の先ほどの大きさの、小さな茶色い壺。間違いない。
「これだ・・・!」
明るい昼間に見るそれは何の変哲もない陶器に見えるけど、だけど・・・。
思わず昨日の夜のことを思い出してまた赤面し、じわりとお腹の奥が疼いた。いやいや、ダメだって!
「こんな危ない物・・・‼︎」
ガッとそれを掴むと大きく開け放たれていたガラス戸の向こうのバルコニーへと走る。この部屋は無人島に建つ館の最上階だ。
「飛んでけーっ・・・!」
そのままバルコニーから思い切りそれをぶん投げれば、非力な私の力でも放物線を描いた飛んで行ったそれは、何とか眼下に広がる無人島の鬱蒼とした森の中のどこかへと消えていった。
「良かった、悪は滅びた・・・」
ほっとした直後、背後から
「ユーリ様?何をしておられるんですか?」
シェラさんの声がかかった。
「ひゃあ‼︎」
「お目覚めになられたのでしたらお食事をどうぞ。すぐにつまめる軽食を準備していますよ。」
そう言いながらシェラさんは、森の中に壺を放り投げた直後の私の姿とベッドサイドの引き出しが開いている様子にサッと目を走らせた。
「・・・ああ、なるほど」
たったそれだけで私が何をしたのか悟ったらしい。それなのに怒るでもなくにんまりと色っぽく微笑んだ。
「お、怒らないんですか?」
あのとんでもない魔道具、何回も試行錯誤して作らせたって言っていた。失くしたらてっきり怒るかガッカリすると思ったんだけど。
恐る恐る聞けば
「良心を痛めて罪悪感に苛なまれているご様子もまた、抱きしめたくなるほど愛らしいですが・・・ユーリ様のなさる事にオレが怒るなどありませんよ。」
と肩をすくめている。
「それにこのオレが予備の一つも作らないでいると思いますか?」
「・・・‼︎」
た、確かに。私に関する事は何ごとにも用意周到なシェラさんだ、紛失したり壊れた時に備えて予備くらい持っていそう。
そう青くなった私を見て、シェラさんはまた一つ笑みをこぼした。
「まあそれは冗談として。オレとしてはユーリ様のあれほど乱れたお姿を見られたことに満足しておりますし。それに、オレの手よりも道具の方がずっと気持ち良いと思われるのもイヤですので、無ければないでもいいんですよ。」
「はぁ。・・・え?」
まさか自分で作ったくせにそれに対する私の反応を見て魔道具にまで嫉妬したの?
予想外の答えに呆気に取られたけど、一度使って満足して、もうアレに執着していないと言うのならそれに越したことはない。
「良かったぁ」
もうアレを使われる事はないらしいと分かってホッとしたら
「とはいえ」
シェラさんは言葉を続けた。
「オレに少しは悪いと思われたようですし、どうせならその罪悪感を消すためにオレのお願いを一つ聞いてくださいませんか?」
「・・・はい?」
「まあこの話の続きはまた夜にでも。それよりも、お食事をどうぞ。昨晩はそのお身体がイリューディア神様の御力で体力を回復するために何度も淡く光り輝く様子がそれはもう美しかったのですが、それだけに魔力と体力も消耗しておられるでしょう?どうぞたくさん食べて寝て、ゆっくり休んでください。」
うやうやしくお辞儀をしたシェラさんが、簡単につまめる様々な軽食が所狭しと並べられたテーブルの椅子を引く。
「だっ、誰のせいだと思ってるんですか・・・!」
昨日の夜の痴態を思い出し、恥ずかしさに頬を染めて誤魔化すように文句を言いながら椅子に座れば
「さて、誰のせいでしょうね?」
うそぶいたシェラさんは素知らぬ顔で微笑んでいる。
そんなやり取りをしていたおかげで、シェラさんのお願いごとって何だろう?なんて事がすっかり頭から抜け落ちたまま私は遅い昼食を取ったのだった。
そしてそんな昼間の出来事を思い出したのは、その夜の寝室のベッドの上だ。
「抱いてくださいユーリ様」
ベッドの端に腰掛けて、その上に対面座位のように私を向かい合わせで座らせたシェラさんはおもむろにそんな事を言った。
「抱い・・・?」
何を言われたのか一瞬良く分からなくなって反芻してしまった。抱きますよ、じゃなくて?
「ええ、そうです。」
膝の上に座らせた私が逃げないようにしっかりと腰を支えているシェラさんの手がそのまますり、と薄手の夜着の上から腰を撫でた。
そのまま私の胸元に甘えるように頭を埋めたシェラさんは続ける。
「オレがせっかく作らせた魔道具・・・職人達の努力の賜物を無人島のこの広い森林の中に投げ捨ててしまったのを少しでも悪いと思うのなら、オレのお願いを聞いてくださいますよね?」
そんなことを言う。
「え、あの・・・」
その罪滅ぼし的なお願いが、なんで『抱いてください』なわけ?さっぱり意味が分からない。
だけどなおもシェラさんは私の胸にふかふかと頭を擦り寄せるようにしながら抱きしめたまま続けた。
「オレの女神がこの手の中に堕ちてくれたのは勿論この上なく嬉しく・・・心が震える思いです。当然、この身も心も惜しみなく捧げることに異論はないのですが、ぜひそんなオレに女神の愛を、ユーリ様自ら与えていただきたいのです。」
えーと、つまりそれが『オレを抱いて』に繋がるってこと?
そう問いたげに見つめれば、胸元から顔を上げたシェラさんはにっこり微笑んでその手を私の腰から肩へと移した。
そしてそのまま勢いよく、腰掛けていたベッドの上へ仰向けに寝転がる。
「ちょっとシェラさん⁉︎」
私も肩を引かれてその勢いのままシェラさんの上に倒れ込みそうになり、間一髪その両脇に手をついてかろうじて倒れるのを防いだ。
危ない、いきなり何するの⁉︎
そう思ってキッとシェラさんを叱るために見つめて気付く。
・・・この体勢って、まるで私がシェラさんを押し倒しているみたいじゃない?
私の下のシェラさんは、ゆるく羽織っていたバスローブの片方の肩がはだけてずり落ち、上半身が半裸に近くなっている。
「さあどうぞユーリ様」
そのまま色っぽく誘うように微笑まれたのでウッと息を呑んで赤くなってしまった。
「どどど、どうぞと言われても!」
何をどうしろと言うのか。
「いつもの逆ですよ。ご自分がいつもされていることを思い出して、それをオレにしてくれればいいんです。」
「ええ・・・」
いつもされてる事?シェラさんに促されて、その色っぽい雰囲気に呑まれたからなのか断ることも忘れてつい真面目に考えてしまった。
いつもされてる事と言われても、キスをされているうちに頭がふわふわしてきて、その後はもうされるがままなんですけど・・・。
「えっと、じゃあ・・・」
とりあえずその微笑みを形作っている唇にそっと口付ける。
何度か軽い口付けをくり返し、段々とそれが深いものに変わっていくとベッドの上に投げ出してあったシェラさんの両手は唇が離れるのを拒むように自然と私の両頬に添えられていた。
「ん・・・、ふ、ぁ・・・」
ちゅく、と音を立ててお互いの唇が離れてやっと大きく息を一つつくと私の下でシェラさんが
「・・・それから?次はどうしていただけますか?」
まるでいたずらを楽しむように目を細めた。
くっ・・・人のことをからかって・・・!
ついムキになって、シェラさんの誘いに乗ってしまう。
確かいつもみんなには首筋とかあちこちに強く吸い付かれてキスマークを残されたりしてるから・・・と、ちゅ、ちゅ、とその唇の側や整ったフェイスラインに口付けながら少しずつ下の方へとその位置をずらしていく。
そうすれば僅かにシェラさんがふ、と甘い息を漏らしたような気がしてそのまま勢いに乗って鎖骨の辺りにも口付けた。
・・・そういえばいつも余裕がなくて今までは私の方から誰にもその口付けの跡を残すように強く吸い付いたことがない。
はたとそれに気付いてしまい、「こ、こんな感じかな?」と私なりに強く吸い付いてみた。
きゅうっ、と頑張って強く口付けて唇を離し、その跡を確かめる。
あ、あれ?何も残ってない。
おかしいな、シェラさんて見た目以上に意外としっかりした体つきだから吸い付き方が弱かったのか、それとも口付けた場所が悪かったのか。
違うところに口付けたらどうだろう?とキスマークを残すために必死でシェラさんの鎖骨の下や胸元、もう一度上の方に戻って首筋などに口付けていた。
すると突然私の頭の上から
「・・・ふっ、くく・・・」
甘い吐息を漏らすどころかシェラさんの堪えきれない笑い声が漏れてきた。
「⁉︎」
その顔を見つめれば、なんとシェラさんはあの金色の瞳に僅かに涙を滲ませてまで笑っていた。
「くすぐったいですユーリ様」
ええ・・・?人がこんなに必死で頑張ってるのに?
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